遠い呼び声の彼方へ

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 1
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  • Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103129073

感想・レビュー・書評

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  • 450

    『ノーヴェンバーステップス』は、国内でも、大きな反響を喚びました。多くの若い作曲家たちが日本的なものに再び目を向けるようになりました。当時私の感情はかなりアンビヴァレントでした。だが今日の若者はそうした感情を抱かない。おそらく危機の意識がないのでしょう。実際、二つの伝統文化を上手に操っています。いずれ将来、新しいユニヴァーサルな、地球的な規模での文化が現れるかもしれませんが、でも時間が掛かるでしょう。先ほども指摘したように、それには時間を掛けなければなりません。もし変化があまりにも急激に進めば、ひょっとするといびつなものが生まれるかもしれないからです。 『ノヴェンバー・ステップス』を作曲したことは、私にとって得難い体験でした。私はあらためて音楽の広大な領域に気付き、また、人間は互いの異なる文化を理解し合えるものだということに大きな希望をもったのです。

    題名の夢窓(Dream/ Window)は、室町期の禅僧、夢窓疎石(一二七五―一三五一)の国師号である夢窓に拠っている。夢窓国師の作庭になる庭園には、西芳寺をはじめとして名園が多い。私の音楽は日本の古い庭園から多くの影響を受けている。かなり具体的な庭のイメージに基いて作曲している。 私は、京都をどのように描こうと考えたか?たんに、夢窓の苔庭の音楽化では、この複雑な都市空間のごく一部分を把えたにしかすぎない。京都という土地柄は、進取の気運と頑な保守性が共存して、東京や大阪とはまた違ったダイナミズムを秘めているように思われる。静けさの底に、 変化の歯車が休むことなく動いている。私の京都に対するイメージの根幹は、こうした相反するものの相剋であり、この時、夢窓という名は、これを表わすまたとない象徴に思えた。

  • 読んでいるときから
    あ これはもう一度読み直す
    と思った

    息をするように 音楽を奏でる演奏家がいる

    さしずめ
    武光徹さんの場合
    息をするように 言葉を紡いていくのだな
    と思った

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