仮想儀礼 下

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 96
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  • Amazon.co.jp ・本 (445ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103133629

感想・レビュー・書評

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  • 新興宗教をビジネスとして始めた男達が、成功への階段をのぼる。
    そしてその先に・・・。
    社会派小説のような前半から、信仰へとのめりこんで行く信者の怖さがホラー小説のように変化してゆくようだ。
    篠田さんの作品は、途中からどんどん踏み外して壊れていくような、どこかに行ってしまうような、そんな人間の怖さを描くものも多いように思う。

  • ゲーム作家という夢を追い、出世を約束された職を失った正彦は、彼を唆した同じく失業中の矢口と共に、思いつきで金儲け目当ての教団「聖泉真法会」を立ち上げ、桐生慧海と名乗る教祖となる。
    悩みを持つ女たち、生き辛さを感じる若者たちの小さな集まりはネットを背景に拡大するが、次第に営利・売名目的の人間たちの介入を招き、巨額の金銭の絡む事件、信者の暴力などを引き起こし-
    いち教団の栄枯盛衰を通し描かれる「宗教」の虚実。上下巻。

    上巻はトントン拍子にスポンサーを得て信者も増えていく様が面白くも、怪しい業者や有名政治家、信者の家族などが不穏な空気を漂わせ。
    下巻は一時の隆盛が一気に崩れて、教祖であるはずの慧海でさえ舵取り出来ない、恐ろしい崩壊が目に見えているのに止まれない流れが本当に怖い…
    正彦も矢口も宗教のトップに居るには善良すぎたよ。
    そして内実がレッテル・フィルターを通して世間に伝わらない事と、集団心理がつくづく怖いと。
    最終的に集った六人も、真の教えを習得して幸せなのか、結局は抜け出せず集まってしまって哀しいのか…難しい。

    上下巻一気に読んじゃうくらい引き込まれる作品でした!

  • やっと終わった、長かった。

    ビジネスとして宗教を始めたが、回りからはカルトだと呼ばれ、信者達は、独自に仏を見るようになり、どんどん歯車が狂ってくる。

    教祖として活動していた桐生は、手におえなくなり、解散しようとするが、信者達は止まらない。

    最後は最悪な事態も発生し、食い止めることができず終止符がうたれる。

  • 理性の上巻、狂気の下巻。理性的な宗教ビジネスから一転、カルト集団へと堕ちて行く様が鳥肌ものでした。教祖の意志とは無関係に暴走する信者、歪んでいく教義、失われていく理性。怖かった。。「俺はそんな教えは説いていない!」主人公の叫びが痛ましい。あの終わり方はほっと安心していいのか、不穏な予感に戦慄すべきか。

  • 下巻になって冗談や漫画のような出来事、展開が続いていきますが、はまった人々の姿がリアルに描かれ圧巻です。

  • よかったなー
    少し前に、新興宗教を描いた作品で少しがっかりしていたから余計に。
    最後の流れ、纏め方は流石の篠田節子!

  • 上下巻、1000p弱。
    ハラハラしながら読ませてもらいました。
    金が儲かれば良いなぐらいの、軽いノリで始めた、エセ宗教。
    ひょんな偶然から、御利益があったという食品業社長の庇護を受けて、どんどん大きくなる教団。

    と、ここまでは良かったけど、脱税事件をきっかけに、奈落の底に落ちるように糾弾されるように…。

    終わり方がイマイチかなー、ハラハラした分、そう決着つけるんだ…みたいな。

  • スキャンダルの末、教団は財産を失う。しかし、残った信者たちの抱える心の傷は、ビジネスの範疇をはるかに超えていた。家族から無視され続けた主婦、ホテルで飼われていた少女、実の父と兄から性的虐待を受ける女性...居場所を失った者たちが集う教団は、次第に狂気に蝕まれてゆく。「カルト」の烙印を押された聖泉真法会。さまよえる現代の方舟はどこへ向かうのか―真の救済の在り処を問う、著者の新たなる代表作。

  • 上巻と打って変わってだらだらの下巻。構成に無理を感じたりするのは、まあ仕方ないとしても(長編だし。長編だからこそ事前の練りが肝要ということか)、不必要に同じ場面が繰り返されたり、登場人物の思考が堂々巡りだったり。中弛みが最初から最後まで続いちゃったかんじ。連載小説のために、帳尻をあわせてる感も漂ってきたり。
    この作者、性別をまったく感じさせないのだが、最後のところは女性じゃないと書けないだろうなと思った。
    と、辛口評価にしたけど、作品全体についてということで星3つ。

  • ☆☆☆☆☆ 最高 すごくおもしろい ぜひおすすめ 保存版
    ☆☆☆☆ すごくおもしろい おすすめ 再読するかも
    ☆☆☆ おもしろい 気が向いたらどうぞ
    ☆☆ 普通 時間があれば
    ☆ つまらない もしくは趣味が合わない

    上巻にコメント

著者プロフィール

篠田節子 (しのだ・せつこ)
1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン‐神の座‐』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。ほかの著書に『夏の災厄』『弥勒』『田舎のポルシェ』『失われた岬』、エッセイ『介護のうしろから「がん」が来た!』など多数。20年紫綬褒章受章。

「2022年 『セカンドチャンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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