盗人

著者 :
  • 新潮社
3.21
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本棚登録 : 78
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103157342

作品紹介・あらすじ

江戸を揺るがす盗賊集団「幻一味」。だが、一味の面々は、自分たちを仕込み、操る男が誰かを知らない-。怪僧、高野長英、シーボルト、謎の画、もうひとつの盗賊集団「鬼火」-。時代小説界の俊英が、研ぎ澄まされた文体で描き切った「悪党」どもの饗宴。

感想・レビュー・書評

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  • 田牧さんの作品で、捻ってるタイプの話し(ノワール系?)はどうにも上滑りして大変読み辛いのですが、今回はマシ…?と思いつつも、話しが絡まり過ぎて上手く纏まらなかった様子…

  • ★3.5

  • 登場人物達の虚々実々な駆け引きがスリリングなお江戸ミステリー。和製ジェフリー・ディーヴァーとも呼ぶべき展開には文句ないのですが、スケール感が今ひとつ小粒な感じで★一つ減点。

  • 今まで読んだ田村作品とは少しテイストが違って、題材が盗人だけあって奇麗ごとじゃすまない非常な遣り口も多く、暗い感じなのだけれど、それでも面白いです。プロットも一筋縄ではいかない複雑な要素が絡み合って凝ってますが、ただ背景とか会話とかが分かりにくく感じる所もあるのが難点かも。別の作品「三悪人」で出てくる鳥居耀蔵の名前が、ここでもちらほら出てくるのでチョット嬉しい。この一冊で完結かと思ったら、この終わり方だと続きが絶対ないと変ですね。

  •  面白かった!恐ろしいほど頭の切れる主人公があまりに悪人。なんだけど、なんだけど、せつないほどに良い奴でもある。この二面性がとてつもない魅力。
     きっと好みのわかれる作品じゃないだろか?「やっぱり勧善懲悪が落ち着くわ」って人は嫌な気分になるかもしれないが、「魅力的な悪役がいないと小説は面白くないよね」、っていう人に断然おすすめです。

  • 「蛮社の獄」で投獄された高野長英が,牢の火事を機に脱走したのは史実らしい。その後,数年にわたりあちこち逃げ回るが,ついに見つけられ絶命。

    この長英を黒幕の黒幕に仕立てた時代小説。いや,本当に悪いのは誰だ?

    ちなみに,川原慶賀の植物画をシーボルトゆかりの長崎の博物館で見たことがある。あの絵がこんな小説になるとは。。。

  • 愚鈍なふりをしている甲斐.口入屋のえびす屋の奉公人だが、牢名主の高野長英と密かにつながり、盗賊組織「幻一味」の重要な役割を果たしている.「慶賀の画」の行方を探る中で、物語が展開する.どの話も、筋が入り組んでおり、何度も前に帰って読み直し、全貌が捉えることができた.その意味で非常に読み応えがあり、お勧めの楽しい本だ.

  • 「小説新潮」に掲載された7章に、冒頭の書き下ろしを加えて
    単行本化した作品。

    口入れ屋(就職斡旋業)「えびすや」は、その情報網を利用し、
    裏で主人から奉公人までが盗賊団「幻一味」を稼業としている。
    その段取りをつけているのが下働きでうすのろの甲斐だとは
    主人以外誰も知らない。

    主人公の甲斐は、父なし子として母と祖父に育てられたが、
    二人が死ぬと江戸へ出て父親の「えびすや」の主人と会い、
    養子がいたため息子とは遇されず、下働きとして置かれる。

    この甲斐が、実はスーパーマンなのだ。
    気配を消してどこでも忍び込み、声色をまね、変装し、女は
    性技でとりこにする。

    この甲斐の異能に気づいて接近し、シーボルトの残した草花
    の絵を集める手伝いをさせているのが、なんと伝馬町の牢の
    中にいる高野長英だった。

    「鬼火」という織田家再興のための組織の頭目で、超能力者
    の少年僧もからんで、誰が敵なのかもわかりにくい状況になり、
    さいごの結末はこれで終わっていいのか?という感じになる。

    奇想天外といえばそれまでだが、やや凝った趣向のお話し。

  • お・お・お・・・!
    田牧さんの新作は、かなりの“闇”の時代劇でした。

    口入れ屋の愚直な下働き・甲斐は、実は、盗人の影の頭領で、彼の思いが徐々に明かされる面白さ。
    時間の流れが巧みにずらされているため、読者は二転三転する状況にブンブン振り回され、だから、そっか、こういうわけだったのね、と読み返すお楽しみもある、という・・・。

    「小説新潮」で連載中にちょこちょこ読んでいたのですが、なぜ、甲斐があえて自分の本性を隠して、盗人の一味にいなければならないか、がピンと来なくて、そこがネックだったんですよね。
    で、今回、通して読んでみて、初めてその理由がわかり、うん、なるほどね、と。

    甲斐の父親は口入屋の主であり、盗人の親分でもあり、でも、甲斐とのお互い遠慮しあっているような間柄の背景は?
    また、小伝馬町の牢名主である高野長英が甲斐を通してねらっているものは?
    そして、盗みに入られた家のその後は?

    バラバラに展開される話のあれこれに段々と焦点があってくると、尚更、闇が広がる展開で、うん、新しい時代ものの世界を提示された、という意味で楽しめました。

    ただ、いろんな思惑に翻弄されて、人生をガラッと変えてしまう登場人物たちが、甲斐も含めて哀れでやりきれなかったり、おいおい、そうくるか?という強引さも垣間見えたり。

    悪くはない・・・けれど、好きな話か??と言われると、難しいところだなぁ、というのが率直な感想です。

  • 愚直に見える下働きの甲斐だが、実はえびす屋の影の実力者。
    入牢しながらも人を動かす高野長英とのかけひき。
    冒頭と最後がつながっている。

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著者プロフィール

作家

「2022年 『鯖猫長屋ふしぎ草紙(十) 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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