- Amazon.co.jp ・本 (645ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103169345
作品紹介・あらすじ
史上最悪の航空機事故は仕組まれたのか。『タモリ論』で「いいとも」終了を予見した著者が満を持して放つ大長篇。御巣鷹山の悲劇は空前絶後ではなかった。しかも今度は一機だけでなく、ブラックボックスが見つからず真相は闇に覆われる。事故関係者と遺族、生存者の証言から浮かび上がる人間模様、政府と企業の体たらく、文化芸能、沖縄・原発の問題、そして隠されたこと。刊行自体が「アクシデント」な劇薬小説。
感想・レビュー・書評
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台風24号で、今回5度目になる仙台名古屋往復フェリー8800円の格安旅のはずが、帰りの名古屋発フェリーが欠航になったため、東海道と東北新幹線に乗って帰らなければならなくなり、行きが4400円なのに帰りは25000円もかかってしまった。
私は旅に出る度、かなりの確率でアクシデントに出逢うのだが、今回ほどのアクシデントは久々だなあ、と思っていたらもっと凄い事があったのを思い出した。
そんなわけで、この本を読んだわけでもないのに、私の昔の飛行機アクシデントを単に書いてみる(笑)。
今回の旅のアクシデントで思い出した。
私が生まれて初めて飛行機に乗ったのは新婚旅行。「ウイーン、フィレンツェ、ベニス、パリをめぐる10日間グルメツアー」というものだった。当時ヨーロッパへの直行便はなく、アンカレッジ経由で行くため、やたら乗っている時間が長い。それはまだ良いのだが、アンカレッジで給油し離陸した数時間後、機内アナウンスが英語で流れた。
完全には聞き取れなかったが「this plane has minor damage」という言葉が私の耳に入って来た。「マイナーダメージ??」私が考える間もなく、通路を歩いていたCA(当時はスチュワーデスさんですが)の顔色が青ざめたように見えた。
乗客の殆どが外国人、私たちのようなツアー客少数が日本人だったと思うが、外国人がざわつき始めた。その後、日本語のアナウンスで詳細な説明がなされた。
「アンカレッジ空港から報告があり、飛行機のタイヤの残骸が発見され、この飛行機のタイヤがパンクした模様です。でも安全には問題ありません」とのことだった。
「安全には問題ない」と言いながらも、CAの女性たちはとても怖い、或いは沈んだ形相になっていた。私たちツアー客は添乗員に確認したが、添乗員も不安気に説明するばかりである。
「Oh my god!!」という叫び声がどこからか聞こえて来た。
それから数時間、私は生きた心地がしなかった。生まれて初めて乗った飛行機で事故に遭い死んでしまうのか。なんて運が悪いのだろうと覚悟した。
コペンハーゲン空港に着陸する直前になると、CAが乗客全員に非常時着陸の態勢を取るように指示しながら通路を回る。彼女たちの顔もどこか寂しげである。
前かがみになり膝に手を回していた私にCAが寄って来て「眼鏡を外してください」と英語で言った。ああ、やはりそんなに危険な着陸なのだとあらためて思った。
飛行機が降下体制に入る。僅か数分の時間が異常に長く感じられた。車輪が空港の滑走路に触れた時、衝撃と振動が伝わって来た。心臓に悪い耳障りな音を立てながら、飛行機は滑走路を走る。でも、そのスピードが少しずつ弱まり、何事もなかったように飛行機は止まった。停止が完全に確認されると、乗客から一斉に大きな拍手が起こった。
何とか無事に着陸できたらしい。私は体を起こし、窓のカーテンを開け外を見た。その光景を見た時の驚きは今でも忘れない。
窓の外には、何十台もの黄色い救急車が待機していたのである。つまり、一つ間違えば大惨事になっていたほどの事件だったのだ。
幸い、そのスカンジナビア航空のパイロットが熟練で腕が良かったので助かったらしい。飛行機を降りるとき、CAや乗組員に乗客みんなが「Thank you」と言い、あちらも満面の笑みで返してくれたのは言うまでもない。
今から33年前、昭和60年3月17日のことである。
何故この時のことを思い出したかというと、話はこれで終わりではないからだ。
3月というのはヨーロッパではストライキが盛んな時期で、帰りはシャルルドゴール空港から成田への便のはずだったのに、航空会社の乗務員たちもストに参加したため、その飛行機が欠航となり、韓国の金浦空港経由、京都行の飛行機に振り替えられたのである。
お陰で京都に一泊する羽目になった。私は緊急の仕事などなかったので、タダで京都の高級ホテル一泊追加になったと喜んでいたが、急ぎの仕事がある人もいて、かなり困っていた。
会社の同僚や上司にはヨーロッパに新婚旅行に行くと伝えていたのに、お土産として韓国の「キムチ」と京都名物「おたべ」をあげたので「本当にヨーロッパに行って来たのか?」と疑われましたが(笑)。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
架空の飛行機事故を国家的アクシデントのネタに、取材者によるインタビューの集積という形を取って、現代日本の影を抉り出すノワールな創作小説、という解釈でよいのかな。いや、それではあまりに作者に対し失礼すぎる。二機の航空機衝突事故による約700人の被害者を出した延べ登場人物の多さでは比肩すべくもない大作、という意味では労力と資質と奇想がなければできないし、三日で読了することもできない二弾抜き640ページである。
ぼくの読書傾向はまず大作志向である。ページ数の多さ、そしてそれを読ませる筆力、人間の面白さ、個性、といったところまでが求めてやまない点であるのだが、すべてをクリアしていないまでも、この大風呂敷の広げ方は、『雑司ヶ谷』二部作で出発した樋口毅宏という作家の揺るぎない独自性という意味ではぶれがない。むしろ真っ黒い墓標のような装丁の分厚い本を手に取った重量だけでも、作者の趣向に頷かされてしまう気がしてしまう。
内容は飛行機事故に関わった様々な人々のインタビューで成り立っている。村上春樹が地下鉄サリン事件をもとに集積したインタビュー大作『アンダーグラウンド』みたいに。もちろんその影響も受けていると思う。村上春樹も樋口毅宏も現代の日本を抉り出すのに、ある大きな事件・事故を題材としたインタビュー大作を生み出した。村上春樹は実際に自分で試みたインタビューであるのに対し、樋口毅宏は架空の事故をもとにした創作されたインタビューなので、いわば『アンダーグラウンド』のパロディとすら読めないこともない。
その辺りに樋口毅宏のえげつさがあり、内容的にも、村上春樹の品の良さからは程遠い、硬軟併せ持ったエログロまみれのいわば樋口毅宏独壇場といった自虐的なものですらあるのだが、飛行機事故がこんなにも多くの側面を描ける題材になるのか、と思うと背筋がすっと冷たくなった。というのは一つ一つのインタビューは10ページそこそこのものが多いのだが、実はそれぞれが長編小説になり得る題材ではないかと思えるからだ。
敢えてかなり短めの短編作品集として全体を描こうという構図になっているのは誰でも気づくことだろうが、もったいないくらいのアイディアを10ページ平均のインタビューに詰め込んでしまっているところに、本書の力作たるゆえんがあるか、と唸ってしまうのである。
気位の高い文学賞は目指せないかもしれないが、暗黒小説賞のようなものがあるとすればそちらでの大賞獲得に見合った作品になるかもしれない。王道ではなく、暗い方のアンダーグラウンドを覗いてみたい怖いもの見たさ大賞というものがあれば、確実に受賞しそうな負の迫力に満ちた大作であることは間違いあるまい。 -
航空機衝突という未曾有の出来事の関係者への取材をまとめたかたち。事故なのか事件なのか?関係者のそれぞれの証言が繋がってたり反対のことだったり。証言自体が物語として面白かった。でも最後まで読んでもやもや残った、分厚いからさ…
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1995年7月26日に起きた大洋航空の事故。どの立場の人が証言するかで、物事の印象は変わるし、メデイアや国に隠された事実なんて山のようにあるんだろうなーと。
この本のボリューム相当だけど、読みがいがあった。 -
日航機墜落事件をモチーフに、関係者の証言を積み重ねていく藪の中形式だけれど、如何せん長い!
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事故で遺された遺族へのインタビュー集という体の小説。2段組で600ページ以上とかなりのボリューム。話し言葉の独白調なので読みやすい。