電車道

著者 :
  • 新潮社
3.14
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本棚登録 : 167
レビュー : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103177128

作品紹介・あらすじ

鉄道開発を背景に、日本に流れた百年の時間を描いた著者最高傑作! 橋を架け山を切り開き、四六時中ひっきりなしに電車を走らせよう。そうすればこの国の人間たちも、絶望の淵からほんの何歩かは引き戻されるはずだから――。日本の近代から現在に至る百年の時間を描き、自然災害、戦争、さらには資本主義経済と抗いがたいものに翻弄されながら、絶えまなく続いてきた人間の営みを活写した長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 明治から大正・昭和・平成へ、変わりゆく日本の「風景」を百年にわたる群像劇で描く。
    軸に据えられるのは、鉄道敷設と宅地開発。

    だがそのテーマは直截的には主張されない。
    文体も個性的だ。
    章の区切りもなく、いつの間にか場面と時代と登場人物がシームレスに切り替わっていく。
    その流れに身を任せているうちに、自然とテーマが浮かび上がってくる。

    人々の生活(養蚕農家、丁稚奉公)、娯楽の在り方(リゾート地、映画)、そして震災と戦争、復興。
    メインの舞台となる「高台のまち」は、成城学園がモデルなのかなとも思った(東宝の映画スタジオも近いし)が、学園創立者のプロフィールを考えるとある程度モデルにはしていたとしても、実話に基づいているわけではないのだろう。

    表紙の装丁もとてもよい。

    磯崎ワールドを堪能できる一冊。

  • 文学

  • 2015.03.26 出口氏の書評より

  • 鉄道会社を興した男の人生を当時の時代背景をベースに描きながら綴られた物語。女優の件は何となく小津安二郎の映画になりそうな雰囲気を感じながら読んでいた。

  • 20161210読了

  • これまでの著者の短編小説と同様、時の流れをテーマとしているのだろうけど、人生の半分に差し掛かったアラフォーの私にとっては、この早すぎる時間経過と徒労感は凹む。今日、会社帰りに散歩してたら、昔お世話になったライブハウスが駅前の再開発のせいか跡形もなくなくなっており、この小説の事と少し重なってさらに凹んだ。

  • 家族を捨てて農村の洞窟に住み着く男がいる、選挙に敗れ湯治場でただ湯に浸かるだけの日々を過ごす男がいる、凍りつくような真冬の京都で裸足で使いに出される丁稚の少年がいる…そんな書き出しにひょっとしてこれは連作の短篇集なのでは?と思ったりするが実はいくつもの路線がひとところに集まるターミナル駅のような凝った創りになっていたのだ。
    明治大正昭和と100年の線路を辿る鉄道王一族と彼らによって切り拓かれて変貌を遂げていく街の物語、その独特なリズムを掴むまでに少し戸惑うが糸口を掴むと一気に流れる。
    ただこれだけの長編、巧さだけではちょっとしんどい。
    ドラマあってこそのターミナル、単なる起終点ではつまらないではないか

  • 小田急線!?

    3世代の歴史を描く。

  • 出だしは物語に入れず、中盤は奥泉光に通じる計算された奔放さに期待を抱いたが、終盤の尻すぼみが拍子抜けだった。

  •  鉄道開発を背景に
     日本を流れた
     百年の時間を描く
     著者最高傑作。

    と、帯にあります。確かに「鉄道についての歴史と百年の間の物語」でした。
    でも、「電車道」というほど鉄道開発の話というわけではありません。私としてはもっと鉄道に沿ったの方が知らない事を知る楽しみがあってよかったように思います。

    途中、ねじめ正一さんの『荒地の恋』を読んでしまい、そちらがものすごく良かったので、戻って来てから何だか物足りなく感じました。『荒地の恋』が実在の詩人・北村太郎の本だったので、『電車道』の人物たちが薄っぺらく感じました。
    その前には滝口悠生さんの『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』を読んでいて、こちらが作家の伝えたい思いが情熱を持って溢れていたので、『電車道』の淡々とした物語が物足りなく感じてしまいました。

    電車が走り始める頃からの百年の間の話、という意外に何もないのです。
    何人もの登場人物が少しずつ繋がってはいるのですが、そこに意味があるわけでもなく、言うほど電車と関係もない。
    何というかバラバラとしている感じでした。

    文章が読みやすく丁寧なので、面白く読めましたが、私は先の2作の方が良かったです。
    鉄道会社を興す男の話は小林一三を思い出しました。

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著者プロフィール

磯崎憲一郎(いそざき けんいちろう)
1965年千葉県生まれの小説家、研究者。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。早稲田大学商学部卒業後、三井物産に勤務。一ファンから始まり交友を深めた保坂和志に執筆を薦められ、40歳を前に小説を書き始める。2007年「肝心の子供」で保坂和志が審査員をしていた第44回文藝賞を受賞し小説家デビュー。保坂和志に認められなければデビューはできない、と自分に課していたという。
2009年「終の住処」で第141回芥川賞、2011年『赤の他人の瓜二つ』でBunkamuraドゥマゴ文学賞、2013年『往古来今』で泉鏡花文学賞をそれぞれ受賞。
芥川賞受賞の際に会社員と明かし、翌日も普段通りに出社した逸話がある。広報部長まで出世を果たしたが、2015年1月社長交代のタイミングで「芥川賞作家の責任を果たしているか?」という思いから退職し、専業作家になる。
同年10月から大学に籍を置き、小説が生成される原理、そして小説という表現形式の構造的独自性を実作者=小説の書き手の立場から研究。

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