生きるための読書

  • 新潮社 (2024年12月18日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784103185352

作品紹介・あらすじ

80代半ば、老人でいることにも飽きてきた。「最後の勉強」でもしてみるか。「老化につれて狭くなった私の世界の外で、新しく魅力的な知的世界が着実に築かれつつあるらしい」――ではこれを生きるための読書、「最後の勉強」の対象にしてみたらどうだろう。伊藤亜紗、斎藤幸平、森田真生、小川さやか、千葉雅也、藤原辰史……若い世代の知性にふれ、学んでゆく喜びをいきいきと綴った読書エッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 著者、87歳。ネットで調べるとご存命。よく考えるとリアルに会えやしない著者が亡くなっていても、少なくとも手元の本を読むには影響ない。それが読書の良さとも言える。だが、既にこの世に居ないならば、そこに一入の感情が混じるのも正直な所で。なぜ、こんな出だしかというと著者がしきりに「死ぬまでのひと踊り」「もうすぐ死ぬ人」と自嘲するからだ。そのアンチテーゼとしての「生きるための読書」なのである。

    もう一つ、著者が繰り返し放つ言葉がある。「お祭り読書」。打って変わって何だか楽しそうな響きだ。濫読のことなのだが、とにかく興味の赴くままに読む行為を続け、ざっくばらんに語る。

    語る行為。またこれも感慨深い。なぜなら、著者は脳手術後に、読めはするが語れなくなったと本書で告げるからだ。正確には、「作文のリズム」が駄目なのだという。同じ症状を、かの鶴見俊介も見せたらしい。そんなものなのだろう。脳機能により、語彙とリズムが担う役割の違いを知る。

    その中のモノローグの一つだ。

    ー 養老も千葉も東大出の秀才なので、その名うての秀才が「じぶんの内なるバカ」について率直に語るのと、たとえば私大出の鈍才(たとえば私)がおなじことをやるのとでは、どうしても、ちがう感じになってしまう。後者に比べると、前者の「バカ」には知的(ときに権威主義的)なゆとりがある。そして、そのゆとりと挑発的なタイトルの組みあわせが、読者をして、この「バカ」とはじつはおいらのことなのではないかと感じさせ、その陰性の刺激によって本を買う。もしくは強引に買わされてしまう。著者はともかく、出版する編集者はたぶんそう考えていたのだろうな。と元編集者であった私は、ついそう考えてしまうのです。

    こうして読めば言葉に詰め込まれ、見え隠れする感情に気付く。編集者とは、表現の文脈を最終的に操る自在をもつような印象がある。しかし、結局背後にある最大の文脈は作者の権威であり、ステイタスであった。お祭り読書は、体系的な教養の到達点にもなる「権威のお墨付き」に対するアナーキズムかも知れない。

    権威による余裕のズラし。これはファッションによるクズしのテクニックに近い。その脱構築的態度が、何やら「お祭り読書」に通ずる気がした。クズし過ぎ、お洒落や権威のカタを忘れつつある我が身に染みる。睡眠サイクルさえ、今日はそのリズム感がない。作文のリズムと睡眠のリズム、権威やファッションは全て人類の「心地よさの鋳型」みたいなものなのか。そんな読書だった。

  • ブクログ “今日のオススメ”で知った1冊。

    題名も『生きるための読書』と前向きな言葉だなと興味を持ちました。
    読んでいる途中で、ある人を思い出しました。金融 経済小説を好んで読まれている方でした。オススメされましたが、その時は手にとれずでした。どんな本を好むのか否定もせず聞いて下さいました。
     最近、何歳も上の先輩方が多めの会議に参加する機会が増えていて、まずは若い方 新しい方々の意見を聞きたいと否定もせず聞いてくれる 歩み寄ってくれる方々がいらっしゃいます。
     そんな方々 代表の著者だなと思ってしまいました。
     

     途中 ふむふむと右から左へ聞き流すように読んでしまった部分もありますが、著者の考えに興味ひかれました。
     著者と同じ年齢に達する時、今とまた違った感想や考えが出てくるのだろうかと思いました。

  • 新連載 もうじき死ぬ人――老人でいるのに飽きたよ(津野海太郎)
    小冊子『熱風』2022年12月号の特集は「1/シュナの旅、2/『ジブリパーク』オープニングセレモニーレポート」です。 - スタジオジブリ出版部
    https://www.ghibli.jp/shuppan/np/013698/

    最終回 もうじき死ぬ人(津野海太郎)――生きるための読書
    小冊子『熱風』2023年11月号の特集は「君たちはどう生きるか 第3弾」です。 - スタジオジブリ出版部
    https://www.ghibli.jp/shuppan/np/013787/

    津野海太郎×辻山良雄【対談】書く人と読む人、そして本屋のありようが変わってきた
    小冊子『熱風』2024年9月号の特集は「現代の読書」です。 - スタジオジブリ出版部
    https://www.ghibli.jp/shuppan/np/013883/

    追悼・小沢信男さん 大震災・大空襲の記憶、手放さず 評論家・津野海太郎|好書好日(2021.05.19)
    https://book.asahi.com/article/14351384

    津野海太郎「死ぬことがあまり怖くなくなって…」 新刊『かれが最後に書いた本』 | AERA dot.(2022/05/30)
    https://dot.asahi.com/articles/-/40118?page=1

    最後の読書 | 津野海太郎 | 連載一覧 | 考える人| シンプルな暮らし、自分の頭で考える力。知の楽しみにあふれたWebマガジン。 | 新潮社
    https://kangaeruhito.jp/articlecat/lastreading

    生きるための読書 津野 海太郎(著/文) - 新潮社 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784103185352

  • 「老人でいるのに飽きたよ」で始まる本書ですが、「八十代も半ばの老人」が書いたとは思えない生き生きとした、好奇心旺盛の、知的欲求を満たして行く過程を傍で見ているような本でした。
    アナキズムについての記述はちょっと難しかったけど津野海太郎さんの「お祭り読書」は読んでいて楽しかった。
    あとがきとそのひとつ前の章の内容でも、とても客観的にわかりやすく書かれていてすごいなあとしみじみ思いました。「もうじき死ぬ人」と言いながらも「続・百歳までの読書術」やその続きもどんどん書いて頂きたいです。

  • 感想
    体験できない世界。聞けない話。本を通して触れる。自分が知らないこんな面白い世界があったなんて。知らずに終われない。いつでも遅くはない。

  • 自分の生活に染み込ませるような、生きる力を静かに養うような、そんな読書

    ほとんどジャケ買いのような形で購入したので、著者のことをまったく知らずに手に取りました。読み始める前に調べてみると、アングラ劇団の演出家、出版社取締役、小林信彦や植草甚一などレジェンド文化人との仕事と、”戦後サブカルの生きる地図”のような人なんだと知り期待が高まりました。

    御年86歳の著者が自身で「最後のお祭り読書」と表現した、老年の読書について書かれています。ブックレビュー然としてなくて、読書記録や読書周辺のよもやま話など著者の生活や考えが見えてくる、とても読みやすいエッセイです。著者が今まで触れることのなかった30〜40代の若い研究者・学者の本を読み刺激を受ける前半と、それら読書から読み解く、現代によみがえる新しいアナキズムの形について語られた後半で構成されています。

    開発途上国でのフィールドワークなどの文化人類学系の本は、ここのところ個人的に興味のあるジャンルです。政府の力がまだ及びきってない途上国の社会モデルからアナキズムを読み取って、生きにくい現代を生きるヒントにするような書籍も本屋で見かけます。この本の中で指摘されている、新しい形のアナキズムを提唱しはじめた世代に私も入っているし、実際にそういった本も数冊ですが読んでます。この世代が今、アナキズムに接近しているのはなぜ? 景気のいい時代を知らないから?脱・保守的なマインド? そんな問いが生まれました。

    この本を読み始めた当初、「希望あふれるタイトルの割には、自分のことを“もうじき死ぬ人”と頻繁に言うなあ」と少し気になっていました。照れ隠しの皮肉とも感じないし、老いに対する諦観のようなものかなと思っていたのです。しかし読み終わって、私のタイトルの解釈のほうが違っていたのだと思いました。タイトルの『生きるための読書』は、自分の生活に染み込ませるような、生きる力を静かに養うような、そんな読書のいちスタイルのことを言っているのであって、著者個人の生とは関係ないのだと。

    尽きぬ知的好奇心、あと切実に視力と認知力(笑)。それがあれば、老いても若い世代の本を読むことができる。老いて固まってしまいそうな脳みそを柔軟に開くことができ、若い風を招き入れることができるということか。私が高齢者になった時、それができるかどうか…

    あとがきで階段から転倒し緊急入院、そして退院後についての著者の生活が書かれていますが、本当に、ただただ大事になさってほしいと願うばかりです。


  • あと数年あるかも分からない人生の中で、
    未来ある若者の書いた本をどう読むか。
    なかなか興味深かった。

    私自分が老いたらどうなるだろうか。
    そもそも読書したいと思わなくなっていくのかなとも思うし、
    やっぱりその年齢その年齢で読んでおいた方が良い本って言うのがあるなと思う。
    私が今青少年向けの本を読んでも、ティーンの時のような感動を持って読めないだろうし。
    なかなか時間が捻出出来ないけど、後で読めば良いやーじゃなくて、読みたいと思った時にはちゃんと読めるようにしたい。



  • 84歳の著者があと何年生きられるかという気持ちから、もうじき死ぬ人、メキシコ人の死者のおまつりを連想し、死は怖くない→最後のお祭り読書として、6人の作家の評を記したのが本書。伊藤亜紗、斉藤幸平、小川さやか、森田真生、千葉雅也、藤原辰史。後半は鶴見俊輔のアナキズム論やブレイディみかこの著述からの国際情勢や思想に言及されている。大変勉強になる一冊。

  • 新聞の書評欄での紹介と、「私の履歴書」での連載記事のどちらも気になり、読んでみた本。手にとったら主に取り上げられた6冊の多くが私の積読本のでなおさら、読むべき!と。

    軽妙な語り口、けれど紹介される本はどれもなるほどな本ばかりで、内容の紹介と津野さんの個人的な語りが絶妙に混ざり合う。とり上げられた本はどれも読むべき!と感じられて、読書リストを増やしてくれた良書だった。

    「読めるけど書けないし話せない」
    人生の晩年に、そんな状態になっても私もまだ本を読んで生きたい。まだだいぶ先だけれど、そんな目標ができた良い読書案内だった。

  • 「なにか新しい問題にぶつかるたびに、それと「直接間接にかかわる本を、ひとまず満足できるだけの量、むちゃくちゃに読む」」その勉強法を「お祭り読書」と呼ぶようになったとあとがきにありました。若い未知の研究者の本を取り上げお祭り読書。老いた体で怪我して入院、退院後読めるが、書くとき脳がぼんやりする。老いた体による読書、アウトプット体験まで共有できた、普段考えの及ばない視点を持った本でした。

  • 前半で著者から見て非常に若い世代の著者の本を紹介していたが、小生も後期高齢者なので読破リストに登録しておいた.後半ではアナキズムについて面白い議論が続いた.「権力による強制なしに人びとが助け合って生きていく」がアナキズムの理想の由だが、60年代の安保闘争やベ平連の活動もアナキズムの実践だと評価できるとの論評.なんとなく理解できる.

  • 書いてあることは難しかったけど、
    もうすぐ死ぬ人、過去と現在はあるけど未来のない人、付記のせん妄についての記載はぐさっと刺さった。
    高齢の方のストレートな言葉が詰まった貴重な本

  • こういう老人?になりたいものだ。

  • ●読書論を書きたいのか、アナキズムについて書きたいのか、よくわからなかった。

  • 歳をとるとどういう具合になっていくか、その具体的なことを細かく書いてくれているものを読んだことがなかったので、最初の「老人でいるのに飽きたよ」から引き込まれた。
    感心されている若い書き手の方が、私も関心を持っている方たちばかりなので、そのことはうれしかった。
    「若いつもりでいても確実に歳を取る」ということを考えるにあたって、とても参考になった。柔らかい語り口が、柔らかく年老いていきたいと思わせてくれた。


    ブクログ「読み終わった本」1000冊目のようだ。
    「生きるための読書」ホントそう!

  • ふむ

  • (借.新宿区立図書館)
    刊行は昨年。86歳時点での著者の読書記録エッセイ。アナーキズムもそうだがミレニアル世代の本を「お祭り読書」しているのはさすが。十余年後、私にそれだけの気力が残っているだろうか(いやそもそも生きていないか?)
    でも最後に著者が自宅階段から転落入院のくだりを見てちょっと心配に。前著でも外での転倒記事があったが気を付けてほしいもの(階段に手すりはついていないのかな?室内エレベーターは無理か)。読書人の先輩として注目してきた著者にはもうちょっと長生きして書き続けてほしいので。

  • 口調が安定していない。言いたいことが伝わらない。

  • 自称「もうじき死ぬ人」の筆者よりも読み手の自分の方が日常に忙殺され息も絶え絶えな状態でこの本を読んだので、筆者の知的好奇心についていけず、、
    80代でこんなにあらゆる事象に関心を持って本を読めるの、すごいな〜

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著者プロフィール

1938年、福岡県生まれ。評論家・元編集者。早稲田大学文学部を卒業後、演劇と出版の両分野で活動。劇団「黒テント」演出、晶文社取締役、『季刊・本とコンピュータ』総合編集長、和光大学教授・図書館長などを歴任する。植草甚一やリチャード・ブローティガンらの著作の刊行、雑誌『ワンダーランド』やミニコミ『水牛』『水牛通信』への参加、本とコンピュータ文化の関係性の模索など、編集者として多くの功績を残す。2003年『滑稽な巨人 坪内逍遙の夢』で新田次郎文学賞、09年『ジェローム・ロビンスが死んだ』で芸術選奨文部科学大臣賞、20年『最後の読書』で読売文学賞を受賞。他の著書に、『したくないことはしない 植草甚一の青春』『花森安治伝 日本の暮しをかえた男』『百歳までの読書術』『読書と日本人』『かれが最後に書いた本』『編集の提案』『生きるための読書』など多数。

「2025年 『編集の明暗』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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