やすらい花

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 144
感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103192091

作品紹介・あらすじ

日常の営みの、夢と現、生と死の境目に深く分け入る8篇。待望の最新連作短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • 美文の極み。場所も時間も生死も幻も越えたとろでループしながらもいつの間にか進んでいる。

    「朝の虹」の書き出しが美しすぎる。

    あと「牛の眼」と「生垣の女たち」がすごく良かった。

  • 難解にして日本語の美しさに気づく。

  • 「生垣の女たち」
    漂う死の匂いと風の音
    生涯、聞いていましたの重み

  • 人生の最晩年に達した男の回想形式による短編小説6篇。
    語り手となる人物は、1937年生まれの古井由吉と同世代に設定されていると思われ、私小説的な一面もあるのかもしれません。

    老境に達した人間がどのような心境になるのか、もちろん自分には想像することも難しいのですが、この短編小説集に触れることで、それを疑似体験できたような気がします。
    「達観」や「郷愁」といったイメージとはずいぶん違って、案外惑っており、情念的でもあるな、という印象。

    回想といっても、時制は単純ではなく、青年時代の出来事を思い出している中年時代の自分を、今、回想しているといった多重階層形式になっていたりします。
    言葉づかいは高尚、かつ、思索的で難解な部分も多く、けっして読み易い小説ではありませんが、なかなか味わい深い。

    6篇の中では、若き同棲時代、宅の離れを自分たちに貸してくれていた老人との交流を描いた「生垣の女たち」が、ドラマチックで印象深かったです。

  • この作家さんには評価をつけるのもおこがましい。
    読みたいのは物語でなくて文章なので、どれを読んでも安定した満足感を得られる。

    ふと、女性の描き方に村上春樹に通ずる非現実性を感じた。
    男から見た女ってのはこういう風なんだろうか。
    私は女であるから、女の俗物性やどうしようもなさ、浅はかさ、計算高さをよく知っているから、どうしても自分とは違う生き物が描かれているように感じてしまう。
    でも女というものを突き詰めると、こういう風になるのかとも思える凄絶さがある。

  • 今、作家で、この人の新作が読みたい、というののトップにいるのは古井由吉なんじゃないかしら、と思ったり。この人の作品は、ゆっくりと一日数ページでいいから、たんたんと、読んでいきたい気分にさせる。そして、70歳を越えての、この創作意欲に、感服する。引き続き、この「やすらい花」の連作短篇後は、新潮から群像に一度、場所を移して、さらに隔月で連作短編をまた発表し続けているわけで。すごい、と思う。そして、それをできるだけ長く続けてほしい、と思う。僕の思う、理想型の日本語の美しい文章。ソリッドで、ほとんど無駄がなくて、でも想いの入り込める隙間はきちんとあって、という。(10/11/25)

  • フルイ ヨシキチ、日比谷高校で塩野七生や庄司薫と同級生だったそうだ。
    内向きの心情を淡々と綴っている。現代屈指の文章家らしいのだが、今は落ち着いて読む状態ではない。 冒頭の「やすみしほどに」(入院のはなし)でくじけた。

  • 「夏のたそがれ時に縁側に坐って庭越しに正面の生垣を眺める老人の姿を、男は妻を亡くして一年ほどになり、そんな時刻に一人暮らしの五階の住まいから思い出して、見えるはずもないその昔の影を探すことがある。」
    という書き出しに、もう読むの止めようかと思いました。
    結局通読しましたが、「え、今何の話してるの?」と迷うことしばしば。
    著者は主語と述語の間をうんと遠くするのが好きみたいで、読点と読点の間に別の時制の話を入れ込むのが好き。まるで関係代名詞を省略した英語の和訳を読んでいるような、詩を読んでいるような、妙な気分です。

  • 地の文でこれほど読ませられる作家さんが今いるでしょうか。
    って、知らんだけですかな。
    最近流行りの小説とはえらい違いです。
    表現を大切に書かれているのがひしひしと伝わって来ました。
    もっと読もう。

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著者プロフィール

作家

「2017年 『現代作家アーカイヴ1』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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