月桃夜

著者 :
  • 新潮社
3.62
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本棚登録 : 250
レビュー : 58
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103198314

作品紹介・あらすじ

想いは人知れず、この世の終わりまで滾り立つ-。死んでもいいと海を漂う茉莉香に、虚空を彷徨う大鷲が語りかける。熱く狂おしい兄の想いを、お前はなかったことにできるのか?かつて二百年前の奄美にも、許されぬ愛を望んだ兄妹がいた…。苛酷な階級社会で奴隷に生まれた少年は、やがて愛することを知り、運命に抗うことを決意する。第21回「日本ファンタジーノベル大賞」大賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 戦後、1953年まで奄美大島はアメリカだった。
    このことはほとんどの人が知らない。
    戦後ですらそうなのだから、近世の奄美の歴史なんてなおさら。

    薩摩藩の支配下の元、ヤンチュという債務奴隷によって砂糖黍は作られ、
    黒砂糖は、薩摩藩の財源となり、江戸幕府が恐れるまでの力を持った。
    島のヤンチュたちの生活は悲惨で、毒のあるソテツの実を食べなければならないほど。

    と知識として知っていた奄美の歴史が、物語として動きだす。
    はじまりは、現代の奄美の海。
    漂うカヤックの上、世界の終わりを待つ鷲が、死にかけた茉莉香に200年前の島の兄妹の話を語る。

    血の繋がらない兄妹の悲しい恋愛、とありがちな物語だが、「言葉」に囚われる山の神や兄・フェイクサの夢中になる「碁」、妹・サネンの憧れる奄美の女性の刺青(針突:ハヅキ)という小道具で飽きさせない。
    とっちらかりそうになりながらきれいにまとまる。

    ヤンチュの女ミヤソが七夕夜、短冊に願いごとを書いてもらおうとして、
    「…どうしよう、願いごとなんて、なんにも思いつかないよ」と言い、その夜、天の川の下で首を吊る場面の切なさ。

    自分のルーツである奄美大島の物語を読めたのは嬉しい。

  • 【第21回ファンタジーノベル大賞】
     内容は、どちらかというと暗くて重いのだけど、読後はなぜか清々しい。なんだろう。自分でもその源がわかりません。
     好きな作家さんが増えそうな予感。
     21回の大賞をダブル受賞した『増大派に告ぐ』をゴールデンウィークで読む予定。

  • 分からない言葉ばかりなのに、昔の琉球地方の島の様子が伝わってきて、デビュー作とは思えない書きこなれた印象を受けた。
    後半では引き込まれたが、中盤以降までストーリー性がなかなか見えず、やや飽きがきてしまったのはもったいない。

    海のはなし1
    島のはなし1
    海のはなし2
    島のはなし2
    海のはなし3
    島のはなし3
    海のはなし4

  • 元々ファンタジー作品が苦手でほとんど手に取らない。
    帯コピーに惹かれ図書館で借りて読み始めたら、鳥が喋る…無理かも、、と思いつつ読んでいくうちに、いやそんなファンタジーなどと片付けられない深い作品だった。

    折しも大河の西郷どんで舞台になる中、薩摩と琉球の狭間で揺れ、独特の制度が残る奄美大島。特にこの作品は奴隷ともいえるヤンチュ、ヒザの扱いが苛酷に描かれ、このような悲しい歴史があったことを知らず驚いた。
    フェイクサのサネンに対する想い、兄、男を超えた大きなものがある。子どもから少年少女、青年、大人に育っていく過程は男女ともに目をみはる美しさがある。
    サネンに思い描く通りの針突を入れたら、どんなにか美しい女性になっただろう。
    現代版の方は設定が少し曖昧だが、たまに出てくる場面としては程よく、フェイクサの語りが力強く感じられ、良かった。

  •  禁断の恋物語、ではないですよね。もっと深い愛情。

     鳥さんの話は、凄くせつないし、やるせない。この雰囲気好きです
     
     その合間合間に出て来る、漂流している女の子の話がちょっと。どうせなら、こちらももっと書き込んでもらっても良かったかな。

     

  • 奄美大島の沖の海、カヤックに乗った少女・茉莉香がパドルを失い、海を漂っているところから物語が始まる。そこにやって来た鷲一羽。言葉を話すその鷲は、フィエクサと名乗り、自身の昔話を始める。
    奄美の過酷な労働者だったフィエクサの置かれていた状況、そんな中、父を亡くし、一人になった少女サネンの面倒を見ることになったこと、サネンとの暮らし、人の温かさを感じ、サネンを妹として守り生きていこうと山の神に誓ったこと、この事が後に二人の未来を左右することになる。もの悲しい話だったが、生きる気力を亡くしていた茉莉香がフィエクサと話すことで生きる気力を取り戻し、フィエクサもいつかサネンと逢えると未来への希望をもって終わったのがよかった。

  • 不思議な本でした

    生まれは選ぶことができない
    運命に流される・受け入れる

    シマンチュ・ヤマトンチュ
    奄美・薩摩
    藩・幕府

    搾取する者されるもの

    考えるとうんざりする

    どこかに頼らないと生きていくのは難しい
    あこがれだけで生きていくのは難しい

    でもどんな状況でも人はなにか希望を見つけて生きている

    岩樽という人が最後に魅力的に描かれていたのが印象的

  • 2017/5/24

  • 「雪の鉄樹」で圧倒的な筆力に引き込まれた遠田さんのデビュー作。
    日本ファンタジーノベル大賞を受賞した作品なので、鷹が喋るとか、山の神様が登場したり、幽霊が出てきたりとファンタジー要素がふんだん。
    だけど、ファンタジー苦手の私でも、思ったほどそこは気にならなかった。
    ただ、どうしても主人公のフィエクサにもカヌーで漂流する少女に対して全くといっていいほど寄り添えなかった。
    妹のサネンは健気でかわいかったが、フィエクサの妹への愛が、どうしても自分勝手な感情にしか思えなくて、もう、サネンの幸せを邪魔しているようにしか見えなかったから・・・
    サネンを気に入った薩摩から来たお役人、正木様がとてもいい人で、そちらに感情移入してしまってもう後半はフィエクサが鬱陶しくてならなかった。
    自己弁護と、自己憐憫・・・結果、みんなを不幸にしたフィエクサ・・・
    あ~こんな読み方しちゃいけないんだろうな~と思いながら、兄妹の禁断の恋に胸を痛めることもなく、「ハン?」といった感じで読了。

  • さすが、ファンタジーノベル大賞。
    重いし残酷だけど、光の射す方向が確かにあることも
    (全編を通して)不思議と感じながら読み進んだ。

    そして、全然知らなかった奄美の歴史。。。

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著者プロフィール

一九六六年大阪府生まれ。関西大学文学部卒。二〇〇九年、第二一回ファンタジーノベル大賞を受賞した『月桃夜』でデビュー。一二年、『アンチェルの蝶』で第一五回大藪春彦賞候補となる。また、『雪の鉄樹』が本の雑誌増刊「おすすめ文庫王国2017」第一位、『冬雷』が本の雑誌2017年上半期エンターテインメント・ベスト10 第二位となる。その他の著書に『あの日のあなた』『オブリヴィオン』『カラヴィンカ』。

「2018年 『蓮の数式』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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