銀花の蔵

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 511
感想 : 77
  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103198321

作品紹介・あらすじ

秘密を抱える旧家で育った少女が見つけた、古くて新しい家族のかたち。大阪万博に沸く日本。絵描きの父と料理上手の母と暮らしていた銀花は、父親の実家に一家で移り住むことになる。そこは、座敷童が出るという言い伝えの残る由緒ある醬油蔵の家だった。家族を襲う数々の苦難と一族の秘められた過去に対峙しながら、少女は大人になっていく―。圧倒的筆力で描き出す、感動の大河小説。

感想・レビュー・書評

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  • 醤油蔵を営む家に9歳で入った女性、銀花の一代記です。

    時は1968年から始まります。
    山尾銀花は、父の尚孝、母の美乃里とともに、奈良の醤油蔵を営む尚孝の母、山尾多鶴子の所へ越して行きます。
    そこでの生活は銀花にとっては厳しいものでした。

    母の美乃里は手癖が悪く、近所の噂になり銀花はいじめに遭います。
    父の尚孝は醤油蔵を継ぐことより絵を描いて生きていきたいといいますが、絵の売り込みに失敗し、従業員の大原とともに川で、息のない状態で見つかります。

    その後、美乃里と銀花は、多鶴子のはからいで、家に置いてもらえることになりますが、銀花は美乃里の連れ子であり、尚孝とは血の繋がりがないことがわかります。

    そんな中、銀花は一つ年上の若き叔母の桜子の仲間で、暴走族を抜けようとしていた、従業員だった大原の息子の剛に好意を抱きます。
    しかし、剛は、美乃里を助けるために誤って、暴走族のマサルをもみ合いの末に殺めて少年院へ送られてしまいます。

    銀花の剛への想いは日毎に強くなり、銀貨花は多鶴子から醤油蔵を継ぐ決心をした末、少年院から出てきた剛を探し出して逆プロポーズをします。
    銀花24歳、剛23歳です。

    それから、多鶴子の了承を得て二人は結婚し、二人で、血のつながらない子供を育て上げ醤油蔵を繁盛させるまでの物語です。

    銀花がこの家に血の繋がりのないこと、剛が人を殺めてしまったことが、この物語の一番のネックですが、多鶴子は二人の働きぶりを認めて血の繋がりの全くない二人に自分の若いころに犯した罪の話を語るまでの信頼関係が生まれます。

    銀花は、父、母、多鶴子と三人の人物を見送りますが、読後はこの本の表紙の絵のような稲穂が実る田んぼに夕焼けが差しているような充実した一人の女性の人生が胸にせまってきました。
    いいお話でした。

    • くるたんさん
      まことさん♪こんにちは♪
      これもマイルドな遠田作品でしたね。
      逆プロポーズといい、突き進む銀花の強さに涙でました。
      家族感溢れるラストシーン...
      まことさん♪こんにちは♪
      これもマイルドな遠田作品でしたね。
      逆プロポーズといい、突き進む銀花の強さに涙でました。
      家族感溢れるラストシーンも印象的でした。
      2020/11/28
    • まことさん
      くるたんさん。こんにちは。

      本当に、これは、いい話でした。
      銀花の強さに心打たれますよね。
      ラストシーンもよかったですね。
      こん...
      くるたんさん。こんにちは。

      本当に、これは、いい話でした。
      銀花の強さに心打たれますよね。
      ラストシーンもよかったですね。
      こんなに、優しい遠田作品もあるんですね。
      次回作は、どちらの方向へ進むのかが気になります。
      2020/11/28
  • 代々受け継がれてきた醤油蔵、当主にしか見えないと言われている座敷童。そこで暮らした銀花の五十年間のお話。
    どんな人の人生にもある「自分ではどうしようもない、しがらみ」。代々続いている醤油蔵となったら尚更。
    親子間の埋まらない溝、気持ちのズレ。血のつながりとは何なのか?

    「誰の心にも蛇はいてるやろな」
    「でも、できるだけその蛇に餌をやらんとこう」
    「ああ。太らせたら大変や」

    誰の心の中にもある醜い部分、弱い部分を認めてくれる夫と巡り会えて銀花は幸せだ。
    「ころん、ころころ。どこへ転がろうと、転がった先でやっていくだけだ」

  • じわじわ沁みた、一冊。

    座敷童の言い伝えがある由緒ある醤油蔵に幼い時に移り住んだ主人公 銀花。
    昭和から平成、時代の流れと共に彼女の人生を描いた物語。

    銀花が最初から抱えている苦しみ、そして新たに抱え込む数々の苦しみに何度も胸がしめつけられた。

    それでも自分を見失わず新しい道を掴みとる銀花の強さ、選ぶ道が眩しさ涙と共にじわじわ心に沁みてくる。

    やがて浮き彫りになる誰もの苦しみ。

    誰もがどこかで座敷童に心の救いを求めていたのかもしれない。

    苦しみに寄り添うその気持ち、それが家族の絆へと繋がる。

    優しい余韻が漂うこんな遠田作品も好き。

  • 歴史ある醤油蔵の床下から出てきた子どもの骨、座敷童か…「やっと会えたね」から始まる話は、50年前に遡る。
    父が実家の醤油蔵を継ぐために戻った家で、座敷童の姿を見た銀花の人生を、昭和の出来事を交えながら描く。
    一族にまつわる哀しく辛い過去、次々と起こる惨事。小学生の銀花は母の罪を背負い、どれほど辛く生きにくかっただろう。けれど銀花は醤油蔵を守りここで生きていく事を選択する。強い人だと思う。強く生きられて良かったと思う。
    「かわいくてかわいそう」と父から言われていた母親の弱さを銀花は嫌った。「かわいそう」の中に嘲りや憐れみを感じるから。
    しかし年齢を重ねた銀花が「かわいそうと言える父の強さが母と私を救った」という。母の過去を知ることで母を理解しようとする。
    肯定する、救いはそこから生まれるのか。
    人物描写が細やかで、親子、兄弟、嫁姑、各々の関係においての心情が伝わってくる。
    家族、その親密で複雑、他人以上に強くなる愛と憎悪を、哀しみと共に感じた。
    家を守るってどういうこと。家を守る神さまの座敷わらしって何なのだろうと考えてしまう。

  • 主人公をめぐる荒波、周りの人物の謎、どうなる?と、気になって引き込まれ、一気に読んでしまった。終わりの方、主人公が救われる所は涙。

  • 奈良県の旧家の醤油蔵を受け継いだ銀花の50年にわたる一代記

    縦軸に銀花が10歳から60歳になるまでの人生が、横軸には銀花の人生を良い意味でも悪い意味でも彩った人々の人生が描かれ、それらが織りなす一枚の反物のように壮大なドラマが出来上がっていた

    醤油蔵の後継という宿命のもとに生まれたにもかかわらず画家としての夢が捨てきれなかった父尚孝

    尚孝にかわいそうと守られ、尚孝のために心を込めて好物を作ることでしか存在価値を見出せなかった母美乃里

    愛する男性との愛よりも醤油蔵を守ることがすべてだった祖母多鶴子

    殺人者、少年院上がりの汚名を一生抱えながらも、そこから逃げることなく、銀花と醤油蔵を守る剛

    持って生まれた美貌を武器に金と男を追いかけ、挙げ句自分の子供までも捨ててしまった桜子

    次々と身に降りかかる試練を
    「表、裏、表、裏。いいことがあれば悪いことがある。きっと今は、悪いことが起こるときだ。ふくら雀の土鈴と同じだ。ころころと転がっていけば、きっと今度はいいことが起こるに違いない」
    と受け止めて真正面から困難に立ち向かっていった鈴花

    家族とは何か?
    血の繋がった者だけが家族なのか?
    家を守るとはどういうことなのか?
    いろんな問題提起があった

    一子相伝というしきたりがあるが、そんなことに拘っていたら、少子化の時代、数々の伝統技術が滅びてしまう

    最後に、銀花と剛が築き上げた血は繋がっていないけれど、強い結びつきのある家族の姿が、いろんな問いへの答えを出してくれている気がした

  • 優しい画家の父と、料理上手で愛らしい母の間で育った銀花は小学四年生。
    しかし、母には盗癖があり、何度も万引を繰り返していた。
    また、そんな母をただ「かわいそうだから」と受け入れる父は、画家として芽が出ずにいた。
    ある日銀花は、父の実家に一家で引越すことになったと告げられる。
    父の実家は、座敷童がいるという言い伝えもある百五十年続く醤油蔵を営む旧家だった。


    夾竹桃に例えられる毒母の存在を筆頭に、次々に起こる悲劇や秘されてきた事実の悲惨さは、いつもながらの容赦のなさ。
    けれど、だからこそ、苦しみながら前に進む銀花の、苦しい日々の中の幸せが、あまりにささやかでもろく、かけがえのないものとして刻みつけられる。
    父の描いたスケッチ、剛の煙草の火、母の遺したノート…銀花の心が感じた美しさは、誰にも奪われることのない輝きで、銀花を支えてきたのだろう。

    デビュー作からずっと読んできた遠田潤子さん、このところ悲惨なだけではなく、幸福や希望もより強く感じられるようになって、本作は直木賞候補に。
    嬉しいような、ちょっとさびしいようなファン心理です。

  • 銀花の強く生き抜く姿に圧倒された。
    母、父への想いを抱え、辛い境遇や困難に立たされながらも、自分を見失わず、最後には幸せを手に入れた。よく頑張ったなぁ・・・と拍手を送りたい気持ちです。
    だけどもう少し、銀花の支えとなる、信頼できる人がいなかったんだろうか?なんて考えながら読み進めていました。大原杜氏の冷たさに嫌悪感を抱いたぐらい、冷たい大人だなぁって思った。ただ、多鶴子さんは厳しい中にも優しさがあって、地の繋がりのない銀花をずっと山尾家におき、蔵を継がせた。そして彼女も色々な想いを抱えていたんだと、ちょっと胸にくるものがあった。山尾家をはじめとする様々な秘密が明かされていく終盤は、読み進めるのに必死で、ペースも速くなる。色々、本当に色々あったんだと、何かが繋がったようで、逆にスッキリした。
    高度成長期の昭和から平成に渡り、時代の流れとともに、銀花という1人の女性の、翻弄されつつも懸命に生き幸せを手に入れた人生が描かれた、心にしみじみ沁みこむ一冊でした。

  • これまでの遠田さんの作品とは違い少し柔らかいというか主人公に負荷があまりかかっていない。それでも血縁、慣習、過去、現在とたくさんのものに翻弄され抗おうとする小学生の銀花の姿がある。徐々に負荷がかかりだし、理不尽なことがあり、苦しみや悲しみ、怒りが溢れてくる。でもそれだけじゃないものがあって辛い日々を送ってきたはずなのにどこか幸せな空気があってそのあたりの具合がとても良くて銀花という女性の人生の大きさ、強さ弱さ、そして喜び、幸福を感じられる。今回もいい作品でした。

  • 主人公をいたぶる事に関して日本有数のサディストとの評判も高い(勝手に決めました)遠田潤子さんが、初めて主人公が初めから光の中を歩いている印象の本を書きました。
    前々作の「ドライブインまほろば」で大分希望のある本になっている印象でしたが、針の穴からのぞく光をはいずりながら目指すような悲壮感のある本が殆どです。
    本作は王道の大河ドラマのイメージで、女の一代記といった風情の本です。主人公銀花が父母や血族の秘密に翻弄されながら自分の道を真っすぐ歩いていく感動巨編で、かび臭いどんよりした空気はまとっているものの、先へ先へとページを繰らせるリーダビリティーはさすがだし、人間ドラマとして1人1人の人生を大事に書いている事が伝わってきて、皆幸せになって欲しいと強く思いました。
    これで直木賞取れてたらよかったなあ。いい本ですよこれは。

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著者プロフィール

遠田潤子(とおだ・じゅんこ)
1966年大阪府生まれ。2009年『月桃夜』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。12年、『アンチェルの蝶』で大藪春彦賞候補、16年『雪の鉄樹』で本の雑誌増刊『おすすめ文庫王国2017』第1位、17年に『冬雷』で「本の雑誌 2017年上半期エンターテインメント・ベスト10」第2位、第1回未来屋小説大賞受賞。同17年『オブリヴィオン』で「本の雑誌 2017年度ノンジャンルのベスト10」第1位。2018年、『冬雷』で日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門候補、’20年『銀花の蔵』が直木賞の候補作に。人間の抱える理不尽に迫る、濃密な世界を描く。

「2022年 『人でなしの櫻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

遠田潤子の作品

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