銀花の蔵

著者 :
  • 新潮社
4.08
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本棚登録 : 259
レビュー : 42
  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103198321

作品紹介・あらすじ

秘密を抱える旧家で育った少女が見つけた、古くて新しい家族のかたち。大阪万博に沸く日本。絵描きの父と料理上手の母と暮らしていた銀花は、父親の実家に一家で移り住むことになる。そこは、座敷童が出るという言い伝えの残る由緒ある醬油蔵の家だった。家族を襲う数々の苦難と一族の秘められた過去に対峙しながら、少女は大人になっていく―。圧倒的筆力で描き出す、感動の大河小説。

感想・レビュー・書評

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  • じわじわ沁みた、一冊。

    座敷童の言い伝えがある由緒ある醤油蔵に幼い時に移り住んだ主人公 銀花。
    昭和から平成、時代の流れと共に彼女の人生を描いた物語。

    銀花が最初から抱えている苦しみ、そして新たに抱え込む数々の苦しみに何度も胸がしめつけられた。

    それでも自分を見失わず新しい道を掴みとる銀花の強さ、選ぶ道が眩しさ涙と共にじわじわ心に沁みてくる。

    やがて浮き彫りになる誰もの苦しみ。

    誰もがどこかで座敷童に心の救いを求めていたのかもしれない。

    苦しみに寄り添うその気持ち、それが家族の絆へと繋がる。

    優しい余韻が漂うこんな遠田作品も好き。

  • 歴史ある醤油蔵の床下から出てきた子どもの骨、座敷童か…「やっと会えたね」から始まる話は、50年前に遡る。
    父が実家の醤油蔵を継ぐために戻った家で、座敷童の姿を見た銀花の人生を、昭和の出来事を交えながら描く。
    一族にまつわる哀しく辛い過去、次々と起こる惨事。小学生の銀花は母の罪を背負い、どれほど辛く生きにくかっただろう。けれど銀花は醤油蔵を守りここで生きていく事を選択する。強い人だと思う。強く生きられて良かったと思う。
    「かわいくてかわいそう」と父から言われていた母親の弱さを銀花は嫌った。「かわいそう」の中に嘲りや憐れみを感じるから。
    しかし年齢を重ねた銀花が「かわいそうと言える父の強さが母と私を救った」という。母の過去を知ることで母を理解しようとする。
    肯定する、救いはそこから生まれるのか。
    人物描写が細やかで、親子、兄弟、嫁姑、各々の関係においての心情が伝わってくる。
    家族、その親密で複雑、他人以上に強くなる愛と憎悪を、哀しみと共に感じた。
    家を守るってどういうこと。家を守る神さまの座敷わらしって何なのだろうと考えてしまう。

  • これまでの遠田さんの作品とは違い少し柔らかいというか主人公に負荷があまりかかっていない。それでも血縁、慣習、過去、現在とたくさんのものに翻弄され抗おうとする小学生の銀花の姿がある。徐々に負荷がかかりだし、理不尽なことがあり、苦しみや悲しみ、怒りが溢れてくる。でもそれだけじゃないものがあって辛い日々を送ってきたはずなのにどこか幸せな空気があってそのあたりの具合がとても良くて銀花という女性の人生の大きさ、強さ弱さ、そして喜び、幸福を感じられる。今回もいい作品でした。

  • 奈良にある醤油蔵を舞台に主人公・銀花の激動の人生を描いた物語です。
    主に10代、20代を中心に描いていますが、とにかく凄まじい日々を送っているなと思いました。次々と出てくる展開に、もうお腹いっぱいなくらい濃厚でした。
    銀花が抱える苦悩、力強く生きようと奔走する姿、愛の力など骨太なんだけれども優しく愛のある文章にグッと惹きよせられました。
    血は繋がらなくても「家族」としての在り方や絆が、良いも悪いも、この作品の醍醐味でもあり、圧巻でした。

    時たま、時代背景として、昭和や平成の出来事が登場し、懐かしむ人がいるかと思いました。若い人にとっては、新鮮な感覚で楽しめるかと思いました。
    比較的現代に近い時代を描いているのですが、どことなく時代小説を読んだ感覚がありました。時代劇もいけるのではと思ってしまいました。

    また、醤油蔵内での家族の物語が中心でしたが、世間での空気感、経営状況についての描写が個人的には少なかったので、どのようにして経営を保っていたのかが気になりました。倒産してもおかしくないのではと要らない考えが思い浮かんでしまいました。
    心に染み入る作品で、ちょっとディープな朝ドラを見ているようでした。

  • 読み始めてすぐにこれは面白そうだとワクワクしました。
    銀花が切ないのですが、其々皆んなが優しくて切ない物語です。
    作家さんの他の本も読んでみたいと思います。

  • 染みる、刺さる物語だ。

  • 座敷童の言い伝えが残る歴史ある醤油蔵の実家に身を寄せることになった銀花。蔵に縁のある人々のさまざまな人生や因縁、そして自身へ降りかかる災難を経ながら、彼女が蔵を背負っていく姿を描いた物語。

    登場人物にこれでもかと業を背負わせる小説の多い作者ですが、このお話でも例外ではなく、銀花の幼少時からの境遇はあまりにも「かわいそう」なところも少なくありません。それでも前を向き自身の矜持を持って生きていく姿が颯爽としていて、不安定なほかの登場人物たちに影響する柱として頼もしくすら見えてきます。

    終盤までぞろぞろと浮かび上がってくる様々な登場人物たちの秘密や真実は、どれもが明るくないものばかりでしんどさを感じさせますが、それでも彼らはしっかりと生きたし、「かわいそう」と寄り添ってくれる人も得られたという事実には、真摯に日々を生きていくことの大切さを思うのでした。

    主人公の語尾に、「~やよ」と多用されているんですが、実際耳にすることもあり自身もたまに使うだけあって、とてもやわらかなニュアンスに聞こえたのも個人的にはほっとさせられる点でした。

  • 主人公をいたぶる事に関して日本有数のサディストとの評判も高い(勝手に決めました)遠田潤子さんが、初めて主人公が初めから光の中を歩いている印象の本を書きました。
    前々作の「ドライブインまほろば」で大分希望のある本になっている印象でしたが、針の穴からのぞく光をはいずりながら目指すような悲壮感のある本が殆どです。
    本作は王道の大河ドラマのイメージで、女の一代記といった風情の本です。主人公銀花が父母や血族の秘密に翻弄されながら自分の道を真っすぐ歩いていく感動巨編で、かび臭いどんよりした空気はまとっているものの、先へ先へとページを繰らせるリーダビリティーはさすがだし、人間ドラマとして1人1人の人生を大事に書いている事が伝わってきて、皆幸せになって欲しいと強く思いました。
    これで直木賞取れてたらよかったなあ。いい本ですよこれは。

  • 初・遠田潤子さん。友達のサイトで見かけて読む気になりました。2020年上半期の直木賞候補作。

    読み始めてすぐの感想は「しまった!」に近いですね。何やら家族のドロドロを描いたTVドラマみたいで、あまり好きなタイプの物語じゃない。

    それでも読み進めていると、だんだん手が止まらなくなります。ナルホド「良く出来たTVドラマだな」。同じTVドラマでも小路幸也さんの小説がホンワカしたホームドラマとすれば、こちらはヒロインの艱難辛苦を描いたNHKの朝ドラですね。
    ある人曰く「人の不幸を書かせたら右に出る者はいない、遠田潤子」・・・確かに。

    後半になると真っ黒になったオセロの盤面を返していくような流れです。それもバサッとでは無く、コツコツ丁寧に、白く返していきます。この流れが良い。ウン!「非常に良く出来たTVドラマ」。

    他にどんな作品が有るのか調べてみると、やはり家族のドロドロが多いみたいです。というか、むしろこの作品は軽い方のようで。。。面白かったのですが、次に手を出すかと言えば(やはり元が苦手なタイプの為)ちょっと微妙です。

  • 久しぶりに
    本を読んで泣きそうになった。

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著者プロフィール

一九六六年大阪府生まれ。関西大学文学部卒。二〇〇九年、第二一回ファンタジーノベル大賞を受賞した『月桃夜』でデビュー。一二年、『アンチェルの蝶』で第一五回大藪春彦賞候補となる。また、『雪の鉄樹』が本の雑誌増刊「おすすめ文庫王国2017」第一位、『冬雷』が本の雑誌2017年上半期エンターテインメント・ベスト10 第二位となる。その他の著書に『あの日のあなた』『オブリヴィオン』『カラヴィンカ』。

「2018年 『蓮の数式』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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