短篇集モザイク―完本

著者 :
  • 新潮社
4.41
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本棚登録 : 89
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (573ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103209225

作品紹介・あらすじ

娘が幻の父と対面する一瞬の情愛がせつない「じねんじょ」老夫婦の哀歓が静かな絶頂に達する「みのむし」-二つの川端賞受賞作を始め、避暑地で起きた珍事が清涼な余韻を醸し出す「山荘の埋蔵物」など遺された未収録の三作を収めて作品発表順に新たに編纂された完本。

感想・レビュー・書評

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  • 小学館の書評バトルに審査員として出席していた鈴木るりかさんが「昭和文芸で一冊挙げるとしたら三浦哲郎の「みのむし」です。一文の無駄もありません」と紹介してくれたので、早速、読みました。自分が末期がんと知らず、喜んで一時帰宅したおばあさんがとった行動とは?読み終えて心が凍りついてしまうような傑作です。昭和世代のくせに平成の中学生に教えてもらうとは!「ボーと生きてんじゃねェよ!」と独りごちました。

  • 何気ない日常の一こまに、ふと胸をよぎる小さな何かをこれほど見事に切り取ってみせる作家が他にいるだろうか。
    決して押しつけがましくなく、でも確実に誰もがその思いにそっと寄り添えるような、そんな心の内を、さりげなく穏やかな筆致で描いている。

    菊池寛を読んだ時も短編の名手と思ったが、彼が簡潔で直接的であるのとは対照的に、三浦氏の場合は、一歩離れた所から、余韻をもたせつつその余韻のなかから滲み出るものを感じ取らせるような、そんな作品の作り方だ。
    菊池寛とはまた別のタイプの短編の名手と言っていいのではないだろうか。

    小川洋子の「偏愛短篇箱」で初めて三浦氏の作品(本書にも収録の「みのむし」川端康成文学賞受賞)を読み気になり、「肉体について」を手にしてその魅力にとりつかれた。
    とにかく、三浦氏の文章が好きだ。
    久しぶりに自分が「気に入っている」と思える作家に出会えたかもしれない。もう著者の新作は読めないと思うと悲しくなる…。

  • 4.38/76
    内容(「BOOK」データベースより)
    『娘が幻の父と対面する一瞬の情愛がせつない「じねんじょ」老夫婦の哀歓が静かな絶頂に達する「みのむし」―二つの川端賞受賞作を始め、避暑地で起きた珍事が清涼な余韻を醸し出す「山荘の埋蔵物」など遺された未収録の三作を収めて作品発表順に新たに編纂された完本。』

    じねんじょ
    (冒頭)『もしかしたら、どこか内臓をわずらっているのかもしれない。それとも、血圧の具合でも思わしくないのだろうか。なにしろ、さかんなころには、この地の花街の売れっ妓に子を産ましたほどの道楽者だから、いまでも相当な飲み手に違いなかろうと思われるのに、問い合わせてみると、案に相違して、会うなら白昼、しかも場所は街なかのフルーツ・パーラーがよろしかろうということである。……』


    『完本 短篇集モザイク』
    著者:三浦 哲郎(みうら てつお)
    出版社 ‏: ‎新潮社
    単行本 ‏: ‎573ページ

  • 短編集、古いかんじ?
    なんか読みやすくてグイグイ行けた。
    続きがきになる話が多かった。そこを書かないのが美学なんだろう。

    職場のベテランおじさんに とんかつ のことを教えてもらって気になったので購入。
    結局とんかつを食べたと思った。

    他の話もいろんな年齢の人が主役で、世知辛いような、なんとも言えない、嬉しい悲しい腹立つとかそういうぱっきりとした感想では片付かないような気持ちになるものが多かった。

    船の中から命日に花束落とす話と、とんかつと、おばあさんが実家に帰らされて居場所がない話と、甲子園でキャッチャーフライ打つプレッシャーにやられてるコーチ的な先生の話が心に残った。

  • ごく短い短篇集。
    どの作品も著者独特のノドカさとユーモアを含んだトーンで書かれているが、多くの話の結末は沈鬱であり高いレベルである。

  • 穏やかな日常が、急に狂い出す、落とし穴にでも嵌まったような、胸がすぅとする感覚は慣れない。

  • もう数えきれないくらい読んでいるけれども、飽きない(^^)それぞれ味わい深い短編♪ずっと図書館で借りて読んでいるけれど、そろそろ購入した方が良いかも!?と思う今日この頃(^_^;)

  • 読み始めました。(2012年3月22日)

    読み終えました。(2012年4月12日)

  • 短い話ばかりだが,ほろっとするもの,にやっとするもの.楽しめます.

  • 教科書に載った「とんかつ」、父娘の絆を描いた「じねんじょ」等
    はどこかで読んだことがある人もいるかもしれない。

    ごくふつうの日常のなかで、しぜんと感情があふれ出す一瞬。
    筆者は瞬間にあらわれる心の機敏を捉え、丁寧に磨かれた言葉を用いて心の中に再現してくれる。
    たった数ページの短い物語に凝縮された、さまざまな思いたち…
    めくるたび、ひとつひとつの話の完成度に驚くばかりだ。

    色の違うモザイクガラスはたくさん集まって一幅の絵を作る。
    タイトルの付け方も洒落ている。

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著者プロフィール

三浦哲郎

一九三一(昭和六)年、青森県八戸市生まれ。早稲田大学文学部仏文科を卒業。在学中より井伏鱒二に師事した。五五年「十五歳の周囲」で新潮同人雑誌賞、六一年「忍ぶ川」で芥川賞、七六年『拳銃と十五の短篇』で野間文芸賞、八三年『少年讃歌』で日本文学大賞、八五年『白夜を旅する人々』で大佛次郎賞、九一年『みちづれ』で伊藤整文学賞を受賞。短篇小説の名手として知られ、優れた短篇作品に贈られる川端康成文学賞を、九〇年に「じねんじょ」、九五年に「みのむし」で二度にわたり受賞。他の著作に『ユタとふしぎな仲間たち』『おろおろ草紙』『三浦哲郎自選全集』(全十三巻)などがある。二〇一〇(平成二十二)年死去。

「2020年 『盆土産と十七の短篇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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