沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 453
レビュー : 51
  • Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103228189

作品紹介・あらすじ

巨額のドル先物予約の疑惑をはじめ、航空会社の不正と乱脈が次々と明るみに出始めた。しかし、政・官・財が癒着する腐敗構造の中で、会長・国見と恩地はしだいに追いつめられていく。ドル先物予約疑惑を、隠蔽するために"閣議決定"にまで持ち込んだ…。徹底取材をもとに、企業社会の最暗部に迫る第五巻、待望の完結篇。

感想・レビュー・書評

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  • ド直球の社会派小説。

    あらすじ:
    戦後間もなく半民半官となった国民航空の社員、恩地元(おんちはじめ)は前任者から労働組合の委員長に推薦される。本人の意に反して無理やり押し付けられたその役割を、彼は真摯に受け止める。もとより議員や官僚の縁故採用が多く、本社勤務の彼らは日々半ドンのような状態で、それでも残業地獄の恩地や同期の行天(ぎょうてん)よりも高い給料をもらっており、また整備士などは人数不足ゆえ酷使された上、汚い労働者として見下されていた。そんな状況に疑問を持っていた恩地は副委員長の盟友・行天とともに動く。ストライキなど強硬手段をちらつかせ、勝ち取った労働条件の改善。だがそこで示された移動命令。恩地は海外転勤となる。行先は中近東アジア。事実上の左遷に奥歯を噛みしめた。
    貼られた「アカ」のレッテル、規則無視の僻地たらいまわしで果てはアフリカへ――。心をいやしてくれるのは彼が仕留めたライオンや像の剥製たちだ。また順当に出世する行天といつの間にか溝は深まっていた。
    重なる事故により国民航空は世間からの非難の目を向けられる。その騒ぎもあり、経営者側の社則無視により海外へき地勤務を続けていた恩地は足掛け十年を経て帰国し、遺族係を経てトップが入れ替わり民間企業から初代会長として迎えられた国見の会長室勤務へ。彼の指導のもと「空の安全」のため再び動き出すことになったのだが、利権を守ろうとするトップたちによりことごとく潰されていく改編の機会。そして調べれば調べるほど明らかになる深い闇はどこまで続くのか。汚職・杜撰な経営の果てにあるものは――?

    壮絶としか言いようのない展開に、夢中になって読んだ。直球の社会派小説ってこんなに面白いんだ。最近の作家の作品にはない重厚な物語に圧倒された。「萌え」みたいな要素は、ライトノベルや漫画に任せておけばいいんだよなあ、とつくづく思った。堅実で、まさに読む価値のある小説だ。
    すごいのがフィクションと一概に言えないことだ。労働運動をしたため僻地へ十年とばされ、昇進の道も閉ざされた。そんな非人道的な人事が実際にあったのだ。
    恩地が持ち出した「片目の猿」のたとえがすべてを表している。普通の人が異常に見える――。それほど腐敗した経営陣に、初めの頃抱いた怒りを通り越し絶望すら感じた。会社をなんだと思っているのか。そしてその航空会社を利用する客をなんだと思っているのか。経営陣だけではなく、政治家や取引会社まで巻き込み巨大な私利私欲に塗れた金を生み出す装置を作り出していた。
    読者の側としたらこの巨悪が暴かれ、恩地が救われる展開を期待していたのだが、最終巻の半分を過ぎてもそういう方向にはならない。いまだ悪習が描かれている展開に夢中になりながらどうなるんだろう、なんて思ったのだが。なんともドラマチックなラスト…! 簡単に救われる展開にしなかったのがまた重く響いた。そしてそれすらも実際にモデルとなったと言われる人物が味わったものなのだ。
    なによりも印象的だったのが恩地と行天の対比。志一つに戦っていた二人だが、経営陣の策略で行天が離れていく。左遷された恩地と利権を利用しつつ権力の世界へ足を踏み入れ、出世していく行天の明暗が残酷なまでに鮮やかだ。

  • これまでの掘り下げに比べて最後、結構駆け足になって尻切れトンボみたいになっている感じ。でも、それでも金融の話など、なんとなく悪いことなんだろうとはわかっても、理解して読むには程遠い。私の側で、描かれている分野に対しての背景知識が圧倒的に足りない。金融のことを知ろうとするにもいいかもしれない。一つ一つ、これはどういう取引、お金の流れのことを書いているんだろう?と。

    でも、著者はそれを求めているだろうか?と、考えても仕方ない問いを自分の中に浮かべる。内容が理解できるに越したことはないだろうけど、一番大切にしているのは問題提起なんだと思う。

    恩地さんはこの本で最後にまたアフリカの支店へ転勤となる。国見会長が退いたすぐ後のことで、結局、根っこの方にある組織の体質が変わっていないことや、それまでに培われた利害関係に基づく人事で地位を得た人々があまりにも多数派で、しかも、権力を持ってしまっているがゆえに、そのような人事異動がなされてしまったということなのかと。

    納得しない終わり方だなーと思ったけど、このもやっと感自体、それでいいの? みたいな気持ちがあるからこそ、出るんだろうなと思った。

  • 最後に再びナイロビへ。。唯一の救いは東京地検特捜部が動き出したところか。

  • 政治家や国民航空の腐敗ぶりと、あまりの理不尽さに怒りしかわかない。フィクションだと分かっていても、こんなに憤りを感じた本は他にない。
    国民航空は末期癌だというのは全くその通で、あとは終わりを待つしかなく、会社を真に思う社員が報われないのはとても無念だ。

  • 納得いかない。でも、これだけの問題ある組織なので、ハッピーエンドはないよなあ、とも思う。仕方がない。
    いくつか予定通り溜飲を下げる事項もあるが、恩地さんがうかばれない。

    繰り返しになるかもしれないが、著者はクズの人間の描写がとてもよい。だからこそここまで読みふけってしまうのだと思う。

    自分も、経営者とはならないだろうが、人としての言葉を発せられるよう、ありたいと思う。理想だけでは組織は動かないが、理想を忘れてはいけない。

  • 池井戸潤の小説のように勧善懲悪で終わって欲しかったけど、こういう終わり方も良いのかもしれない。
    日本航空はこんなに腐敗していたのだろうか? もちろん小説だから全て真実ではないだろうが、親方日の丸だから無責任体質は推して知るべしだろうね。
    結局はこのままの体質で、2010年の経営破綻に至ったのは当然だろうね。
    でも二度と御巣鷹山の悲劇は繰り返さないことを切に願います。

  • 2016_01_13-0007

  • 【配置場所】特集コーナー【請求記号】913.6||Y
    【資料ID】19905623

  • 解説できる程正確に理解できない。でも曖昧にはわかる。「誰の責任も問われないなら、なんでもできる」といった事例は歴史上、枚挙に暇がない。
    ここに出てくる悪人役達もそれぞれの理屈と正義で動いていて、社会悪に手を染める予感を利権を守ることを是とした言い訳で振り払いながら日々を過ごしている。決して「世界征服を企む悪の組織」などではない。
    それでも心の何処かで悪が裁かれて欲しいと思いながら読み進んだ。細井の告発に期待させながらも残りページが少なくなるのに焦り、何ともフラストレーションが貯まるエンディングであった。
    企業告発で誰かに責任を問う反面、人間という生き物の愚かさや虚しさも描かれていると感じた。

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著者プロフィール

山崎 豊子(やまざき とよこ)
1924年1月2日 - 2013年9月29日
大阪府生まれの小説家。本名、杉本豊子(すぎもと とよこ)。 旧制女専を卒業後、毎日新聞社入社、学芸部で井上靖の薫陶を受けた。入社後に小説も書き、『暖簾』を刊行し作家デビュー。映画・ドラマ化され、大人気に。そして『花のれん』で第39回直木賞受賞し、新聞社を退職し専業作家となる。代表作に『白い巨塔』『華麗なる一族』『沈まぬ太陽』など。多くの作品が映画化・ドラマ化されており、2019年5月にも『白い巨塔』が岡田准一主演で連続TVドラマ化が決まった。

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