- Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103228189
作品紹介・あらすじ
巨額のドル先物予約の疑惑をはじめ、航空会社の不正と乱脈が次々と明るみに出始めた。しかし、政・官・財が癒着する腐敗構造の中で、会長・国見と恩地はしだいに追いつめられていく。ドル先物予約疑惑を、隠蔽するために"閣議決定"にまで持ち込んだ…。徹底取材をもとに、企業社会の最暗部に迫る第五巻、待望の完結篇。
感想・レビュー・書評
-
沈まぬ太陽、完読。
悪い奴は裁かれ、正義が貫かれるのかと思っていたけれど、世の中そうはうまくいかず、ある意味リアルな終わり方でした。
作者の山崎豊子さんが取材時、JAL側からの強い抵抗があった際、「正論が正論として通る世の中にするために、わたしはこの小説をどうしても書きます」と話されたとか。
恩地元よりも不器用で熱い人ですね
そんな山崎豊子さんは、素敵です。
長いものに巻かれまくって生きている自分を少し反省。。。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今もだけど、あの頃の政治家とJALは腐りきってたんだなぁ。良心が何も報われないって恐ろしい。主人公の恩地の不屈の精神には頭が下がる。結局最後まで報われないサラリーマン人生。国見会長も志半ばで退かねばならなかったのは辛かっただろう。
この地球上で最も危険で獰猛な動物は人間である
何一つ遮るもののないサバンナの地平線へ黄金の矢を放つアフリカの大きな夕陽は、荘厳な光に満ちている。それは不毛の日々に在った人間の心を慈しみ、明日を約束する、沈まぬ太陽であった。 -
ド直球の社会派小説。
あらすじ:
戦後間もなく半民半官となった国民航空の社員、恩地元(おんちはじめ)は前任者から労働組合の委員長に推薦される。本人の意に反して無理やり押し付けられたその役割を、彼は真摯に受け止める。もとより議員や官僚の縁故採用が多く、本社勤務の彼らは日々半ドンのような状態で、それでも残業地獄の恩地や同期の行天(ぎょうてん)よりも高い給料をもらっており、また整備士などは人数不足ゆえ酷使された上、汚い労働者として見下されていた。そんな状況に疑問を持っていた恩地は副委員長の盟友・行天とともに動く。ストライキなど強硬手段をちらつかせ、勝ち取った労働条件の改善。だがそこで示された移動命令。恩地は海外転勤となる。行先は中近東アジア。事実上の左遷に奥歯を噛みしめた。
貼られた「アカ」のレッテル、規則無視の僻地たらいまわしで果てはアフリカへ――。心をいやしてくれるのは彼が仕留めたライオンや像の剥製たちだ。また順当に出世する行天といつの間にか溝は深まっていた。
重なる事故により国民航空は世間からの非難の目を向けられる。その騒ぎもあり、経営者側の社則無視により海外へき地勤務を続けていた恩地は足掛け十年を経て帰国し、遺族係を経てトップが入れ替わり民間企業から初代会長として迎えられた国見の会長室勤務へ。彼の指導のもと「空の安全」のため再び動き出すことになったのだが、利権を守ろうとするトップたちによりことごとく潰されていく改編の機会。そして調べれば調べるほど明らかになる深い闇はどこまで続くのか。汚職・杜撰な経営の果てにあるものは――?
壮絶としか言いようのない展開に、夢中になって読んだ。直球の社会派小説ってこんなに面白いんだ。最近の作家の作品にはない重厚な物語に圧倒された。「萌え」みたいな要素は、ライトノベルや漫画に任せておけばいいんだよなあ、とつくづく思った。堅実で、まさに読む価値のある小説だ。
すごいのがフィクションと一概に言えないことだ。労働運動をしたため僻地へ十年とばされ、昇進の道も閉ざされた。そんな非人道的な人事が実際にあったのだ。
恩地が持ち出した「片目の猿」のたとえがすべてを表している。普通の人が異常に見える――。それほど腐敗した経営陣に、初めの頃抱いた怒りを通り越し絶望すら感じた。会社をなんだと思っているのか。そしてその航空会社を利用する客をなんだと思っているのか。経営陣だけではなく、政治家や取引会社まで巻き込み巨大な私利私欲に塗れた金を生み出す装置を作り出していた。
読者の側としたらこの巨悪が暴かれ、恩地が救われる展開を期待していたのだが、最終巻の半分を過ぎてもそういう方向にはならない。いまだ悪習が描かれている展開に夢中になりながらどうなるんだろう、なんて思ったのだが。なんともドラマチックなラスト…! 簡単に救われる展開にしなかったのがまた重く響いた。そしてそれすらも実際にモデルとなったと言われる人物が味わったものなのだ。
なによりも印象的だったのが恩地と行天の対比。志一つに戦っていた二人だが、経営陣の策略で行天が離れていく。左遷された恩地と利権を利用しつつ権力の世界へ足を踏み入れ、出世していく行天の明暗が残酷なまでに鮮やかだ。 -
全5巻読み応えのある内容だったが、終わり方を見るともう1巻行けるのではと思ってしまった。
実際の人物、事件・事故がモデルになっていることもあって、取材力が大いに活かされている小説。
JAL使う機会もあるので、今はまともな会社になってると信じたい。ついでに行政の方も… -
最後に再びナイロビへ。。唯一の救いは東京地検特捜部が動き出したところか。
-
納得いかない。でも、これだけの問題ある組織なので、ハッピーエンドはないよなあ、とも思う。仕方がない。
いくつか予定通り溜飲を下げる事項もあるが、恩地さんがうかばれない。
繰り返しになるかもしれないが、著者はクズの人間の描写がとてもよい。だからこそここまで読みふけってしまうのだと思う。
自分も、経営者とはならないだろうが、人としての言葉を発せられるよう、ありたいと思う。理想だけでは組織は動かないが、理想を忘れてはいけない。