写楽閉じた国の幻

著者 :
  • 新潮社
3.66
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本棚登録 : 699
感想 : 150
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  • Amazon.co.jp ・本 (684ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103252313

作品紹介・あらすじ

わずか十ヶ月間の活躍、突然の消息不明。写楽を知る同時代の絵師、板元の不可解な沈黙。錯綜する諸説、乱立する矛盾。歴史の点と線をつなぎ浮上する謎の言葉「命須照」、見過ごされてきた「日記」、辿りついた古びた墓石。史実と虚構のモザイクが完成する時、美術史上最大の迷宮事件の「真犯人」が姿を現す。

感想・レビュー・書評

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  • 東洲斎写楽とは一体何者だったのか?という謎に、かなり説得力ある結論を導き出している小説です。
    主人公が写楽の謎を追う形にはなっているのですが、そちらの考察に力が入りすぎたが故に、この小説のもう一つの軸であったはずの、主人公自身の身に起こった大事件については中途半端な感じのまま終わってしまいました。

    写楽の謎の部分は面白かったです。

  • 主人公の息子が、回転扉に巻き込まれて亡くなってしまうところから物語が始まります。

    謎が多い人物の写楽。一体、写楽は何者なのか?

    いや、亡くなった息子はどうなっているの?と思うことがしばしばあり。

    でも、結果に無理矢理こじつけた部分というのが全くなく。

    これが写楽の正体ですとなっても、ああ、そうなのね。と受け入れられます。

    ただ、長いのと、浮世絵とか興味がある人は楽しいのだろうけれど、普通の人はどう思うのだろう?と言うぐらい専門的な部分もあり。

  • 2020/04/25読了
    #このミス作品23冊目

    日本の美術史上の命題「写楽探し」
    に一石投じる、ミステリーを超えた作品。
    著者のこの作品にかける思いや探究が
    熱く注がれている。

  • 写楽の謎解きはおもしろかったけれど、主人公を巡るいろいろな出来事の行きつく先が消化不良かな。。

  • 面白かった~!
    塾教師で元々は北斎の研究家・佐藤貞三が、しだいに仕事も家庭も上手くいかなくなっていくという状況の中、ある日、悲劇に…

    一緒に連れて出かけた幼い我が子が勝手に走り出てしまい、事故にあったのだ。六本木の茂木タワーの回転ドアで。
    妻と義父は激怒、佐藤は言われるままに家を出る。

    絶望の日々、ふと手に入った一枚の古い絵。江戸時代の肉筆画はデフォルメがきつく、写楽を思わせる筆致。
    まさか、これは…?
    それをきっかけに、写楽の正体をめぐって、思いがけない探求の旅が始まる。
    回転ドア事故の調査委員会に一人だけ呼ばれた佐藤は、東大工学部の教授だという美しい女性、片桐に出会う。
    妻と義父がビルやドアの会社を訴えたため、訴訟に使うためではないのでと調査委員会では除外されたのだ。
    佐藤はその後に自殺しかけた所を様子を見ていた片桐教授に救われ、ほのかな交流が始まる。
    突然、雑誌に、佐藤がいぜん出した本の批判が載る。
    訴訟を巡ってイメージダウンを狙った相手方から、インチキ学者のような悪評を立てられ、危機に陥れられそうになるとは。
    それを跳ね返すためにも新説の本を出そうと、出版社に応援されることに。

    江戸時代の描写も挟まり、筆力があって、生きがいい。
    写楽は魅力がありますからねえ!
    春信、歌麿、北斎と絵柄は区別がつくけれど、年代や性格の違いなど、よくは知らないので、とても面白く読みました。
    わすか10ヶ月ほどの間に140点もの多作。
    能役者だったという説があるが、それは似た名前の別人との混同らしいと解き明かされます。
    版元の蔦屋重三郎がいきなり上等の刷りで新人の作品を出したのはなぜか?
    異版が多く、売れて増刷されたのは確かだという。
    どうして誰も写楽の正体について言及していないのか。
    歌麿が悲憤に満ちた言葉を書き残していた意味は?
    平賀源内に目を付けた佐藤は研究を進めるが、もう亡くなっていたとわかり、がっかりする。
    しかし、さらにオランダの資料まで調べていくと・…?
    とんでもない展開なのに~いくつか見落とされがちな点に整合性を通した推理で、説得力があります。

    子供の事故死はむごいけど、回転ドアの不備がいかにして起こったかを具体的に描き、告発的な意味があるようです。
    そして、日本で起こりがちなことに警鐘を鳴らしている点では…
    真面目に研究し工夫するうちに、経済や見栄えが優先されて、大事なことをどこかで見落としてしまうという。
    原発の事故も思い起こさせますね。

  • 面白かった。面白かったのだけれど、作者の言う通り不完全燃焼。
    伏線は回収して終わって欲しいよ。

  • 2014年読み初め。
    写楽とは一体誰なのか、という謎に迫るミステリ。
    以前、写楽を特集したテレビ番組で島田荘司がインタビューを受けていたのは見たのですが、ぼんやり見ていたので、写楽がこんなに魅力的な謎に満ちた人物だったということを初めて知りました。
    この結論に信憑性があるのかどうかは分からないけど、本当にこうだったら面白いなぁというようなロマンを感じます。ネットで写楽の絵を画像検索しながら読んだらよりいっそう楽しめました。写楽の絵はどこかユーモアがあって、なんだか可愛い。現代の漫画絵にも通じるものがある気がします。あと、外国人を魔物か何かと思っている江戸の人の描写が面白かった。
    現代編の回転扉事故のいざこざや、歴史の教科書を延々と読まされているようなところは読んでいて疲れたけど、終盤パズルがぴたぴたとはまっていくところからがとても面白い。途中は苦行だけど、そこを乗り越えての頂上からの眺めは最高、みたいな、まるで山登りのようだ。
    見切り発車で書き出したというのにも恐れ入りました。そのせいか、投げっぱなしの謎や、意味ありげな片桐教授の発言など、回収されてない部分がたくさんあり、続編も書きたいということをあとがきで書かれてましたが、どうせなら序盤のあたりを少し削って一冊で完結してほしかった。
    評価は現代編★2、江戸編★4の間を取って★3で。

  • 面白い。
    後書きに続編についての記載があるが是非書いてほしいと思う。
    裏面のストーリーが読みたい!

  • 面白かったw私の好きな歴史ミステリー。この時代に生きた天才たちの記述が沢山出ていて刺激的でした。蔦屋重三郎の先見の明と男気が素敵すぎる。芸術というのは後世まで形として残るので素晴らしいですね。

  • 寛政6年[1794年)5月という日程に長崎から江戸に参府したという記録が書かれている「オランダ商館日記」の日付が重要な意味を持っていることが小説の中で主人公佐藤、そして美人大学教授・片桐の間で問題になりますが、実はそのことが、著者がこの小説を書けるかどうかの生命線だったことが後書きで明かされています。この年に忽然として起こった写楽現象の謎を追って、いろいろな説がこれまでに流布されてきたのですが、この本の中ではびっくりするような説が展開され、小説の中で、写楽・歌麿・北斎・京伝・一九、出版業者・蔦屋重三郎を中心とする200年前に遡った時代小説が挟み込まれているその理由が最後にやっと分かりました。小説の中で、写楽と歌麿の絵の違いと共通点など特徴が詳しく出てきたり、浮世絵の勉強になります。(P432前後)最後の方になって、片桐教授という想像を絶するような日本人離れした美人を登場させる必然性も良く分かりました。

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著者プロフィール

1948年広島県福山市生まれ。武蔵野美術大学卒。1981年『占星術殺人事件』で衝撃のデビューを果たして以来、『斜め屋敷の犯罪』『異邦の騎士』など50作以上に登場する探偵・御手洗潔シリーズや、『奇想、天を動かす』などの刑事・吉敷竹史シリーズで圧倒的な人気を博す。2008年、日本ミステリー文学大賞を受賞。また「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」や「本格ミステリー『ベテラン新人』発掘プロジェクト」、台湾にて中国語による「金車・島田荘司推理小説賞」の選考委員を務めるなど、国境を越えた新しい才能の発掘と育成に尽力。日本の本格ミステリーの海外への翻訳や紹介にも積極的に取り組んでいる。

「2023年 『ローズマリーのあまき香り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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