あこがれ

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 1421
レビュー : 145
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103256243

感想・レビュー・書評

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  • パワーストーンの説明に笑った。

    口に出そうとして、
    結局口にすることのできなかった想いというのは、
    一体どこに行くんだろう。
    私たちは思ってる以上に色々なことに頭をめぐらせて
    言葉で上手く表現することのできない想いや悩みを
    自然と消化しているのかもしれない。
    言語化するとき、捨象するとき、
    そこから必ずこぼれ落ちるものがある。
    そこに慈しみを持たなくてはいけないなと思った。

    他人にこの小説はどんな内容か、を問われるなら、
    一言でいうなら「小学生が階段を一歩かけ上がる話」と説明するが、
    簡潔には言い表せないことを小説は言葉にして紡ぐ。

    「AはBだ」と言い切ることは、とても気持ちが良くて
    はたから見たら「何て賢い人なんだ」と
    思われるかも知れないが、
    自分は何か一言では明確に言い表せないことがあって、
    そこに辿り着くまでに様々な道具を下準備して、
    筋道を立てながら伝える方がタイプだ。

    それはとても地味で地道でじれったくてまだるっこくて、
    準備した割には結構フラフラしたりもして、
    寄り道に反れたり戻ったりして、傍目には不恰好で、
    とてもスマートには見えないかもしれないけど、
    そんな工程を経る文章がとても好きだ。

    著者は、すっと言葉が身体の内側に溶け込んでいくような。
    複雑な感情を適切な文字や文章に落とし込むのが素晴らしい。
    言葉を紡ぐというか、丁寧に編みこんでいく感じが好き。

    ちなみに、ミス・アイスサンドイッチは
    グラビアアイドルの森下悠里さんを
    思い描きながら読み進めました。

  • 過ぎ去ってしまった時間の中で見つめていたものが、目の前に現れた感じがする。
    絵を描くことにこだわりがある麦くんと、父親が映画評論家で銃撃戦のシーンが大好きなヘガティー。

    二人それぞれの目線から「あこがれ」を捉えていて、どちらもストンと落ちるストーリーで良かった。

    ほんとうに生きていく上で大切にしていたい感覚や疑問は、いつの間にか、常識や忙しさに追いやられてしまっている。
    生きていく上では大切な感覚や疑問は、大切にしなくても大丈夫なことなのだろう。
    麦くんとミス・アイスサンドイッチのたった一度の触れ合い。お母さんと、おばあちゃんにまつわる、見たくないもの、消えてゆくもの。
    ヘガティーの苦しさ。アオの苦しさ。

    登場する人、それぞれが何かを見つめ、何かを考えてきたことが、なんとなく分かる。
    心情がはっきりと説明されているわけではないのに、気持ちの書き方が上手いんだなぁと思った。
    川上未映子さんの作品は、じーんと鈍く痛むなぁ。

    アルパチーノ。

  • 自分は女性作家の感性に依存した小説があまり得意ではない。どうにも、その言語の向こうに作者の顔が透けて見えてならないからだ。
    川上未映子はデビュー当時から暫くは、確かに彼女特有の世界を持っていたのだけれど、それは他の女性作家と違って独特の節回し、トゲトゲした言語への挑戦みたいなものがあって、それで好んで読んでいた。
    しかし最近になるにつれて、徐々にその傾向は弱くなり、この作品ではすっかりそのあたりにいそうな普通の女性作家の文章になってしまっているように感じた。
    でも、嫌いじゃない。というかむしろ好きだ。
    出てくる印象的な比喩、「アルパチーノ」という挨拶、それぞれのあだ名、どこか可笑しいそれらがすんなりと自分の中に入ってきて、綿あめを食べている気分になる。
    麦くんとヘガティーそれぞれが主人公の話が一本ずつ収録されているのだけれど、どちらも甲乙つけがたい。
    ミス・アイスサンドイッチは結局どんな顔をしていたのだろう?どうしても『ワンダー』が頭の中をちらつくけれど、こちらは最後までその描写がなされることがなかった。
    ヘガティーの話はこれからのインターネット世代になると、恐らくこういった問題はどんどん増えて行くのだろうなあと思う(自身の親がかつてネットにさらされていた、とかそんなのが)。
    どちらの話も優しく、子供の純粋さに包まれていて、そこに一種の危うさみたいなものを感じないでもないのだけれど、とても良い読書だったと思う。

  • 川上未映子さんの小説を読んでみよう!と借りた本。同時に彼女のブログをまとめた本を借りて、そちらから読んだら、あまりに馴染みのない文体でリタイアしてしまったので、大丈夫かなと思いながら読み始めたら面白かった。

    1章の最初、外国の話かと思ったけど、スーパーの構造とかで、あれ、日本かな?と思い始める。あえてあまり意識させないように書いている気もした。
    小学校高学年の頃の自分が何を考えてたかほとんど思い出せないけど、読んでいると、こんなこと考えていたかも…と思わせられる、感情のリアルさが良かった。
    ---
    他の方の感想を読んで、追記。タイトルとの関連。1章はミスアイスサンドイッチに、っていうのは分かりやすかったけど、2章は家族に、ね。なるほどー。
    そして些細なことだけど、タイトル検索で文庫版しか出ず、バーコードスキャンでハードカバーの表紙を見つけた。文庫版だと、表紙から日本人だな笑

  • .

  • 誰しも強い誰かに憧れてる。

    時給以上の対応を求められる、物を売って渡すだけなのに個性すら消すことを求められる。

    そんな「当たり前」に人々が我慢してしまってることを、間違ってるときちんと言える人がミスサンドイッチだと思いました。

    世間体を気にすることは私たちの体に染み付いてしまってなかなかその殻を破るのって簡単じゃないですよね。

    自由に生きることって難しいです。

    人々のおかしな点に気付いて、自分を貫くミスサンドイッチに憧れた麦くんも、理想と現実の差に傷ついても、意見をはっきりいえる人を凄いとおもった、言えるベガティーも、きっと誰かが憧れるような人になれると思います。

    他の人とちょっと違う人が増えてそれが当たり前の世界になればいいなと思いました。

  • 川上未映子作品を初めて読んだ。
    「お姉ちゃん」の突き放しっぷりが、自分を捨てたお父さんのへの恨み辛みが無意識に出たものなのか、ヘガティーのお父さんを所有することに一切競合するつもりはないから安心しなさいの「姉心」なのか、言葉通り本当に他人としか思えないのか、真意の程はよくわからなかったけど、あそこまで容赦なかったら、ヘガティも吹っ切れ易いかしら。
    麦くんは、きっと、素敵な大人になると思う。

  • 子供目線の物事のとらえ方、表現がおもしろい。

  • 川上未映子さんの本は初めてかな?小六の麦くんとヘガティの二人の視点から描かれた成長物語。序盤は話と文体に入り込むのに時間を要したけど良かったです。

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著者プロフィール

川上未映子(かわかみ みえこ)
1976年大阪府生まれ。大阪市立工芸高等学校卒業。2002年から数年は歌手活動を行っていた。自身のブログをまとめたエッセイ『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』で単行本デビュー。2007年『わたくし率 イン 歯ー、または世界』『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』で早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞、2008年『乳と卵』で芥川賞、2009年詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で中原中也賞、2010年『ヘヴン』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、紫式部文学賞、2013年詩集『水瓶』で高見順賞、『愛の夢とか』で谷崎潤一郎賞、2016年『マリーの愛の証明』でGRANTA Best of Young Japanese Novelists、『あこがれ』で渡辺淳一文学賞を受賞。2017年、『早稲田文学増刊 女性号』で責任編集を務める。2019年7月11日に『夏物語』を刊行し、注目を集めている。

川上未映子の作品

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