ふがいない僕は空を見た

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 5472
感想 : 1045
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103259213

作品紹介・あらすじ

これって性欲?でも、それだけじゃないはず。高校一年、斉藤卓巳。ずっと好きだったクラスメートに告白されても、頭の中はコミケで出会った主婦、あんずのことでいっぱい。団地で暮らす同級生、助産院をいとなむお母さん…16歳のやりきれない思いは周りの人たちに波紋を広げ、彼らの生きかたまでも変えていく。第8回「女による女のためのR‐18文学賞」大賞受賞、嫉妬、感傷、愛着、僕らをゆさぶる衝動をまばゆくさらけだすデビュー作。

感想・レビュー・書評

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  • 「セイタカアワダチソウの空」が凄絶だった。
    ヤングケアラー問題を具体的に書いた物を読んだのが初めてで、想像を絶する絶望感だった。

    登場人物はみんな心が壊れる一歩手前のような感じ。幸せは他者との比較で決めるものではないけど、自分の現状がいかに幸せかを強く感じた。

  • うひゃあ苦手な感じのやつや

    ストレートで爽快な物語を読んだ後だったのでなおさらそう考えたのかもしれないけど
    この深い感じ
    苦手や

    性描写がダメってこともないんだけど苦手な感じのやつやった

  • 図書館で見かけて面白そうだったので、手に取りました。窪美澄さんは初読です。

    不思議な世界観でした。主人公の高校生。自分があるようで、ない。でも、起こったことについては、深く傷付いたり、うまく処理出来ない。刹那的に犯罪にも近い行動をしているのに、後悔しているのか何なのかもよく分からない。

    その主人公の友人。良太も複雑な家庭事情。団地で暮らしぶりは極めて良くない。コンビニのバイトの先輩から勉強の手ほどきを受けて覚醒したかと思ったけど、先輩は猥褻罪で捕まる。大学へ進学してこの生活から抜け出せそうだったのに、その間近でつまづく。

    主人公の母は、多忙で身を削りながら助産院を切り盛りしている。子供の生に関わる大事な仕事なのに、病院からは心無い言葉をかけられる。その上、子供は不登校で絶望のフチに。

    全てが暗くて寂しくて未来が無い。
    わたしには、絶望の中に光が見出せなかった。

  • ずっと気になっていて、やっと読んだ作品。
    5編の話はそれぞれ違う目線から描かれている。
    最初の話は性描写が激しくて、えー?っていう感じがしたが、読み進むにつれ引き込まれていく。
    最後には同じ年頃の子をもつ私は、母親目線で涙が溢れた。
    それは温かい涙かな。

  • とっても生々しい。
    R18な性描写のことではなくて(これも生々しいといえばそうだけど)、
    誰もが持つ道から外れた心のゆがんだ部分が。

    “「おれは、本当にとんでもないやつだから、それ以外のところでは、とんでもなくいいやつにならないとだめなんだ」”

    好きな女の子に告白されてうれしい気持ちがありながら、主婦のもとに
    コスプレセックスに通う卓巳も、
    不妊治療をしながら高校生の卓巳にお金を渡してコスプレさせる里美も、
    家中にビデオをしかけたり妻の浮気を母とビデオで眺めるその夫も、
    新興宗教にはまった兄をもつ七菜も、
    おばあちゃんの看病しながら友達を中傷するビラを配る福田も、
    後輩に優しい家庭教師でありながら、男児に対する性癖を持つ田岡も、
    家族をばらばらにしたという負い目を抱えながら助産師の仕事を続ける母も、

    本当はふがいないのに、
    本当は現実から目を背けて家にひきこもっていたいのに、
    でも自分の足でどうにか歩いていかなければならなくて、
    必死にもがいて何とか生きている。
    その生々しさったらないなと思う。
    ラストだって、全然幸せな空気もないんだけど、
    でも明けない夜はなくて、いつか夜明けは来るのだろう。

    生きることの苦しみがある傍らで、
    奇跡のように赤ん坊が産声をあげる。
    意図しているのかしていないのか、その対比がすごいと思った。

    このタイトルもいいなぁ。
    ときどき、読む前は全然興味わかないのに、読み終わった後に見ると、すごくしっくりと、ぴったりと嵌るタイトルがある。
    これもそんな感じ。「ふがいない僕は空を見た」って、詩的すぎてイマイチだななんて思ったのに、読み終わってから見ると、表紙もタイトルも、とっても好きになった。

  •  図書館より。
     男子高校生と主婦の不倫関係を中心に据え、その当事者や周りの人々の姿を描いた連作

     連作の初めを飾る『ミクマリ』の性描写がいきなり強烈。女による女のためのR-18文学賞の大賞だったので、多少の性描写は覚悟していたのですが、その斜め上を普通にいかれてしまいました……。

     連作としてはどうなんだろ? 『ミクマリ』は男子高校生目線、2編目の『世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸』は主婦目線の話となっていて、自分自身初の官能的な小説だったので、その描写の生々しさに加え、それぞれの上手くいかないモヤモヤした感情も想像することができ、良かったと思うのですが、3編目、4編目と話が当事者の二人視点でなくなってくると、なぜ連作でこの話を書いたのかな、と思ってしまいました。

     それぞれ出来が悪いというわけではないのですが、冒頭の二人がドラマチックだっただけに、他の登場人物にもそういう話を背負わせると、ちょっと話の軸が見えなくなってしまった印象です。独立した短編集ならあまり気にならなかったと思うのですが……。

     それぞれの短編に安易なハッピーエンドや、問題がすべて解決された描写を用意せず、かと言って全くの救いがないようにも描かないのがこの連作のミソなのかな、と思います。そういう点ではとてもリアルな作品でした。生きるって上手くいかないよなあ、でも生きないとなあ、としみじみ思った作品です。

    第8回女による女のためのR-18文学賞〈大賞〉受賞作『ミクマリ』収録
    第24回山本周五郎賞
    2011年本屋大賞2位

  • どこにでもいる、という訳ではないけれど、若くて年頃の主人公が妙にリアリティを感じた。抑えきれない欲望、反対にある理性と必死に戦っている。そんな彼が最初と最後では命の重さを実感したように、生命の誕生を心から待ち望んでいる。彼の中で芽生えた感情が誠実に成長していったんだなぁと感じた。
    それぞれ苦悩があるけど、どれも一人ではなかった。自分ひとりだけじゃ生きられないし、誰かがそばにいてくれ、誰かのために自分も生きている。生きるとはそういうことなのかな。読んでいてそう感じた。

  • R-18だけあって最初のページからきわどかった…
    5編に別れているけど登場人物は友達や彼女や皆繋がってます。
    それぞれエピソードは全く違うけど、どれも読後切ないような気持ちになる。
    窪先生はエモいんだよな。
    泣いてしまった。 https://t.co/ewcvBixJtX

  • 始めから性描写が多くて、私が読みたいのと違った感じがした。それでも、読み終えて良かったと言う感想に励まされて読了した。内容は感じるところがあったが、これ何でR指定じゃないのか、はたまた私の読解力がないのか、そんな、作品。

  • 「女による女のためのR-18文学賞」大賞受賞作とのこと。性描写多め。窪さんの作品は登場人物の感情や思考がすっと自分の中に入ってくるから好き。ずっと読んでいたい文章です。

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著者プロフィール

窪 美澄(くぼ・みすみ)
1965年東京都生まれ。09年「ミクマリ」で女による女のためのR‐18文学賞大賞を受賞しデビュー。11年『ふがいない僕は空を見た』で山本周五郎賞、12年『晴天の迷いクジラ』で山田風太郎賞、19年『トリニティ』で織田作之助賞、22年『夜に星を放つ』で直木賞受賞。他の著書に『雨のなまえ』『じっと手を見る』『いるいないみらい』『たおやかに輪をえがいて』『ははのれんあい』『朔が満ちる』など多数。

「2023年 『私は女になりたい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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