よるのふくらみ

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  • 新潮社 (2014年2月21日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784103259244

みんなの感想まとめ

人間関係の複雑さとセックスレスというテーマを通じて、登場人物たちの心の葛藤や成長を描いた作品は、リアルな感情を呼び起こします。主人公たちがそれぞれの立場で抱える苦しみや愛情の形は、読者に深い共感を与え...

感想・レビュー・書評

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  • ありていに言えば陳腐な話である。
    一人の女性と彼女を好きになった兄弟の三角関係の話なんて少女漫画かメロドラマみたい。
    とはいえ、使い古されたストーリーを窪美澄が描くとどうなるか。

    “「血の通った」とはよく言われる言葉ですが、
    それをここまで体現する作家は、まれだと思います。”

    これは本の帯に書かれている西加奈子さんの文章。
    まさにその通りで、窪さんの描く世界は圧倒的なリアルで胸に迫る。
    生身の人間が傷ついたり傷つけたり恋したり欲情したり・・・。
    どうにもならない人間臭さに登場人物の全員にあますところなく共感してしまった。

    この物語の核とも言える“セックスレス”。
    私の知人にもこれが原因で離婚した人がいる。
    結婚してから一度もないなんてどういう事よ!と当時は妻の立場になり大憤慨。
    でも今自分が歳を取ったせいもあるかもしれないが、この小説を読み改めて圭祐の立場になって考えると、考えがぐらぐら。
    EDで離婚された男ほど辛いものないんじゃないかと。

    でも、夫婦の形は人それぞれ。他人がとやかく言うもんじゃない。
    改めてそんな風に感じさせてくれた小説だった。

    前回の短編集でちょっとがっかり感はあったけれど、この作品はよかった。
    ドロドロしているだけじゃなく、読後感爽やかな窪さんの小説が戻ってきて嬉しくなった。

  • きっと、あらすじを説明するのは、簡単なことだと思う。そしてその時に、誰を主語にして語るかどうかは、人によって、異なるんじゃないかな。

    窪さんの独特の表現が、すごくすき。ふだん、恋愛小説を読まないわたしだけれど、この作品は、立ち読みをしていたら止まらなくなるほど、引きこまれた。

    『ふがいない僕は空を見た』以来の窪さんの作品。
    また、あの時と似たような感覚。
    それぞれ、みんないろいろあって、それをうまく言えずに、あるいは隠して、一生懸命生きている。苦しいのは、辛いのは、自分だけじゃない。
    みひろが主人公でも、裕太が主人公でも、圭ちゃんが主人公でも、胸が苦しくなった。
    誰かが、何かが、悪いわけではないのに、うまくいかないことは、いくらだってある。それでもきっと、誰かのせいにして、誰かを許して、生きていくのだろう。人のぬくもりを頼りに。

  • 兄、圭佑がEDで婚約者みひろとセックスレスが原因で、弟、裕太とみひろが最終的に結婚する。
    3人とも商店街の幼馴染である。
    人間の本能が勝り性欲の在り方が生々しく感じた。

    よるのふくらみの章で、セックスレスで悩む、みひろが圭佑と別れを切り出す。
    愛があるけどセックス出来ない圭佑を見ていると倦怠感しかなかった。
    ヤゴが孵化し旅立つシーンが、圭佑とみひろの旅立ちの様に描かれたいる点が儚く思った。

    許し許され人は繋がりを持って行く。愛の温もりを感じながら。
    そんな官能的な文体が切なく綺麗に描かれていました。

  • 表題作を含む6つの短編集です。
    圭裕・裕大の兄弟と、みひろの3人がそれぞれ短編ごとに入れ替わり、主人公になります。

    商店街で育った幼なじみでもある3人ですが、高校時代に圭裕がみひろに告白をしたところから、3人のバランスが少しずつ崩れていきます。

    この小説のいいところは、同じ時間を語り手を代えて見るのではなく、次の短編へうつると時間も進んでいるところです。
    3人それぞれの気持ちと体のすれちがいが、痛々しく、でも時間だけは平等に流れていくことで、変わらないように見えた3人も少しずつ前に進んでいきます。

    小さな3人の輪のなかで絡み合った恋愛感情が、オトナになってもここまで絡み合うものなんだろうか?とも思います。
    けれど、そう思っていてもなお、ひとつひとつの物語にひきこまれてしまうのが、窪美澄さんの小説のすごさです。

    気持ちだけでも、身体だけでも、つながりきれないものがこの世の中には存在します。
    それを知ることで、読み終えたとき、たいせつな人に出会えて、一緒に歩めることは、とてつもない奇跡なんだなと、思いました。

  • 自分の生きている狭い世界で、生き続けていくのって難しい。商店街、兄弟、幼なじみ…自分では経験したことのない世界だけど、読んでいてしんどそうだなと思った。
    三人とも自分勝手なように感じたけれど、ある意味人間らしいのかもしれない。

  • 小さい棘が、知らないうちに心に刺さっていたような気分。読み終わって、晴れ晴れするわけでもないし、むしろ落ち込んでしまっている。土下座をしてまででも好きな人を手放したくなかったこと、ずっと好きだった人が忘れられないこと、誰かに負けること、全部全部がわたしの心を痛める。
    途中で、みひろと裕太が腕を組んでスキップしたという描写があって、それが一番好きだったという、、、
    全体的に心苦しかったけれど、みんなちゃんと道を進むのだなあと思いました。わたしもちゃんと進みたい

  • ある年齢を過ぎると、してない、ということが人には言えない秘密になる。
    言う機会なんてないのだが、それでも秘密を抱えている重い気持ちになる。

  • 窪美澄の書くままならない人たちがもがく姿が好きだ。

  • 最初の『なすすべもない』読み終わって溜め息。ふぅ~凄い、エロさが日常や家族的なものを丁寧に描いてる故に際立ち、彼女の苛立ちが映える、そして最後の行動の熱の行き先と高まりが。
    二人だけでいいのに付随してくるものや関係性。

    『よるのふくらみ』もだし過去作も連載中『さよなら、ニルヴァーナ』も連作短編集として各登場人物の視線から一話が書かれて一冊の小説に綴られている。だから窪さんの連作短編集はやはり素晴らしく巧いし、いろんな読者から支持されるのはいろんな視線があるから。

    『平熱セ氏三十六度二分』はもう、こういう話大好きというかもうねえって感じだわ。窪さんの小説好きな人は『素晴らしい世界』『ひかりのまち』なんかの初期の浅野いにお連作短編好きだと思った。

    『なすすべもない』読み終わった感想。男女の空洞が互いに挿入され擦れ熱が生まれる。溢れでる液体は喜びや哀しみ、愉悦や劣情様々な感情をすでに孕んでいる。熱と液体により生まれた僕たちは空洞を埋めるためにもとめるが満たされることはなく、満たされても刹那という永遠の中に。

    「星影さやかな」を。主要人物三人の視点で各話展開しているから少しずつ同じ時期の出来事に対しての想いやバックボーンがわかってくるから三者三様の中に自分に似たものを見つけることになる。そういうのを読むと窪さんは丁寧な書き手だなあといつもながら思う。丁寧に傷に塩を塗り込んでくるとも言える。

    マリアさんの胸に顔を埋めたいと思わずにいられないのが「星影さやかに」なんだけど、いんらんおんなと言えて自分のしてきたことを引き受けるしっかりしてる女に甘えたいんだよなあ男は。
    で、その弱さもわかるし彼女は何にも言わないからどうにもならい怒りが圭ちゃんみたいに表れるんだよなあ、本当に。最終的にミミと圭ちゃんの関係にも繋がるわけで。

    『よるのふくらみ』表題作を読み終わると朝だった。ふくらんだものは膨張し破裂するか抜けて萎むしかない。生活の中で想いや性欲やそんなものたちは自我で抑え込めるか膨らむのを止めないか、だけどもどちらになろうとも後悔は後ろ髪を引きずっと居座るんだろう。
    羽化(浮か)して翔べるんだろうか?

    六つ目の「瞬きせよ銀星」読み終わり。
    四つ目の「よるのふくらみ」以降が特に心を揺さぶられた。五つ目の「真夏日の薄荷糖」と最後の「瞬きせよ銀星」で泣かされた。心の奥の方の自分だけの場所をかき回された感じがする。正確には読んで波立てたのは自分なのだけど。
    なんだろう、三つ目の「星影さやかに」以降なんか、なにかが明らかに変わってる感じがすんだよなあ。窪さんの執筆力というよりもなんか最初の二編となんか違うものが宿ってるそういう感じっていうか、なんだろうよくわかんないけどギアチェンジというか意識が変わってるというか。そんな気がした。

    『よるのふくらみ』はいろんな人を泣かせる小説になると思う。感動とか泣けるとかじゃなく泣かせるのは無意識化に、ブラックボックスに仕舞いこんだ自分の感情や欲望と小説を読みながら向かい合うことになるから。自分の感情や欲望に向き合うとチャクラが開かれていろんなものが開放されてしまう。
    開かれた後の大問題はそれもう閉まらないよっていうラインを越えてしまうから戻れない。こういう作家は怖いんだ、世界のみえかたを改変させれちゃうから。窪さんといい樋口さんといい、熱狂的な支持を受ける作家は読者のOSを新しく物語によりインストールして尚且つアップデートしちゃう、質が悪いw

  • 恋愛って難しい。

  • みひろ、裕太、圭祐、それぞれの気持ちは理解できるけど共感できなかった。でも後半の展開で圭祐に声援を送りたくなった。彼のみひろに対する態度はフラれるのも納得なんだけど最後の章が切なくて読むのがしんどかった。久しぶりに小説で泣いてしまった。京子と幸せになってほしい。
    みひろは裕太とくっついた方がいいと思ってたので、おさまるべき場所におさまった感じ。でもあのお母さんの娘なのと欲求不満で突発的に行動してしまう面を見ると何年後かに同じことしそうとかゲスな予想してしまった。でも裕太ならそんなみひろも許しそうだけど。
    川島さんとマリアさんはちょっとしか出番ないのに印象に残った。川島さんの「寂しくさせると女は怖いんだ」と「一生のうち、ほんとに好きになれるやつなんて、そう何人もいないんだぜ。出会えないやつもいる」がぐさってきた。

  • 同棲して結婚寸前までいった兄から弟へ、相手が変わるというのは、う〜ん、理解できない。

    健司が言った「みひろはさ、昔からおまえといるときだけよく笑うんだよ」という言葉が印象的だった。自然体でいられる相手がいいということかな…。ずいぶん遠回りした二人。相手を大事にして仲良く暮らしてほしい。

  • 情なのか欲なのか。
    かなり近いところで線が交わる。
    この結末みたいに、
    みんな素直に生きて、
    みんな幸せになれればいいなー。

  • 読み終わって泣いた。みひろの圭ちゃんへの思い、祐太への気持ち、圭ちゃんのみひろへの思い、京子の救い、祐太の里沙さんへの思い、みひろへの思い全てが共感できて、ただただ切なかった。

  • 女も性欲がちゃんとあったり、色気にほだされて人を好きになったり、喜んじゃいけないところで喜んじゃったり、そういう、人間くさいところに、共感してしまう自分がいる。
    窪さんの小説は、人の隠したいところをあけっぴろげにしてしまうんだけど、そこを突いて責め立てるでもなく、ありのままを描き切ってしまうので、それがなんとも言えない読後感を出しているように思います。
    心だけじゃどうにもならない、身体的な男女の関係を、臆せずに、そして美化せず描き切って作家さんとして、窪さんを尊敬しています。
    このお話では、3人の男女の気持ちが交互に描かれます。「ふがいない」に似ているけれど、読み終えた後なんだかスッキリした本作と、希望は見えても棘が刺さったまんま、ってかんじの「ふがいない」だと、読み終えたあとの感覚が違いました。
    不思議と圭祐のストーリーが好き。

  • 子供の頃は深く考えずにただ笑っていれば良かった。
    大人になると人間関係も複雑に絡み合い柵に揉まれたりと溜め息をつくことが多くなる。

    同じ商店街で生まれ育った幼馴染みの3人。
    性格が正反対の兄弟と、弟の同級生であり兄の恋人の彼女。
    3人が交代で主役になって物語が進んでいき、三人三様の複雑な心境が徐々に明らかになる。
    優等生の兄は兄なりの自由奔放な弟は弟なりの、その両者の間で揺れ動く彼女には彼女なりの。
    窪さんがそれぞれの思いをスパッとセキララに描いていく。

    誰も傷つけずに生きていくことなんて不可能だ。
    傷つけ合って相手を憎んだり、そんな自分を卑下したり。
    厄介なことが色々あっても、そうやって人と人が一緒に生きていくことはやっぱりいいものだ、と窪さんから教わった気がする。
    ラストで自分の気持ちを言葉にして伝えられた兄に幸せが訪れますように。

  • 理性と感情、心と体はシンクロしない。自分はこの作品の登場人物ではあきらかに圭ちゃん気質なので、読んでいてちょっと辛かった。

  • 章ごとに語り部が変わり、それによってそれぞれの本当の感情が明らかになる。
    人と人との結びつきは心だけでも、体だけでもうまくいかない。
    好きな人に求めてもらえない
    好きな人を抱くことができない
    女の人にも性欲がある、その当たり前のようでみんなが避けることを描いていて、とても面白い作品でした。

  • どうしようもない遣る瀬無さ、後悔、でも最後にはほんのりとした救い。こういう小説が最近多いような気がする。時代の求めるところなんだろうか。

  • この世のなか真っ当な生き方をしてる人間なんているんだろうかと、窪美澄作品を読むといつも思う。
    みんな何かしらの後ろめたさや秘密を抱えて生きている、そういう闇の部分を描くのが本当に上手だなぁと思う。
    快晴のように晴れやかな気持ちにはなれないけど、雲間から一筋の光がさすような結末に少しほっとした。

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著者プロフィール

窪 美澄(くぼ・みすみ):1965(昭和40)年、東京生まれ。2009(平成21)年「ミクマリ」で女による女のためのR-18文学賞大賞を受賞。受賞作を収録した『ふがいない僕は空を見た』が、本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10第1位、2011年本屋大賞第2位に選ばれる。また同年、同書で山本周五郎賞を受賞。2012年、第二作『晴天の迷いクジラ』で山田風太郎賞を受賞。2019(令和元)年、『トリニティ』で織田作之助賞を受賞。2022年、『夜に星を放つ』で直木賞を受賞。その他の著作に『アニバーサリー』『よるのふくらみ』『水やりはいつも深夜だけど』『やめるときも、すこやかなるときも』『じっと手を見る』『私は女になりたい』『ははのれんあい』『朔が満ちる』など。

「2022年 『タイム・オブ・デス、デート・オブ・バース』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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