トリニティ

著者 :
  • 新潮社
3.92
  • (38)
  • (64)
  • (32)
  • (6)
  • (2)
本棚登録 : 503
レビュー : 71
  • Amazon.co.jp ・本 (461ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103259251

作品紹介・あらすじ

第161回直木賞候補作!

「男、仕事、結婚、子ども」のうち、たった三つしか選べないとしたら――。どんなに強欲と謗られようと、三つとも手に入れたかった――。50年前、出版社で出会った三人の女たちが半生をかけ、何を代償にしても手に入れようとした〈トリニティ=かけがえのない三つのもの〉とは? かつてなく深くまで抉り出す、現代日本の半世紀を生き抜いた女たちの欲望と祈りの行方。平成掉尾を飾る傑作!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 仕事、結婚、子ども。
    これら全てを手に入れたい、と思うことはそんなにも欲深いことなのだろうか。

    昭和から平成にかけての50年、激動の時代と闘った女達の物語。
    出版社で出逢った三人の女性。
    新進気鋭のイラストレーター・妙子
    流行の一歩先を行き時代を読み抜くフリーライターの先駆者・登紀子
    そして事務職を寿退社し専業主婦となった鈴子。
    出自も職業も生き方も異なる三人の来し方を交差させながら、この時代の女の生き方を探る。

    新しい女、進んだ女、自由な女を常に追い続けてきた。
    なのに社会により阻まれる「女の自由」。
    三人それぞれが思い描く「自由」の枠組みは自身の結婚、出産、子育て等を経て、めくるめく時代の急速な流れに導かれるようにくるくる変わる。

    「男の社員にだって淹れなくていいのよ。自分で淹れればいいの。日本だってね、そのうちお茶くみなんて女子だってやらなくなるのよ」
    昭和の時代に若かりし頃の登紀子が鈴子に言ったセリフ。
    平成を経て新しい世となった令和の時代の、働く女性が今なお「お茶くみ」をしていると知ったら、登紀子はどう思うだろう。

    長編だったけれど夢中になってほぼ一気読みだった。
    出版業界の女性達が自分の信念のもと、生き生きと仕事に取り組む様はとてもカッコ良くて素敵。
    「女だって自由に生きていいのよ」
    登紀子が繰り返し言ってきたこのセリフは、今なお社会の柵にもまれ悩む女性達へのエールにもなる。

    「ほら、あれ見て。できたときから、夜になると、ちかちかしてるの、あの赤い灯。鼓動と同じだよね。ビルの鼓動。あのビルもまだある。私たちもまだ生きてる。まだまだずっとこのあとも続くんだよ。やりたいことやろう。やりたいことやって、やりつくそうよ」
    令和の時代でもなお、ビルの鼓動と共に三人の魂は生き続ける。

    大島さんの『渦』も良かったけれど、直木賞はこの作品にとって欲しかった。

  • イラストレーターの妙子。
    フリーライターでエッセイストの登紀子。
    寿退社で専業主婦となった鈴子。

    まったく異なる生い立ちの3人が選んだ、それぞれの道のりをえがく。

    女性が働くことへの差別がひどかった時代。
    デモに交じって叫ぶ3人や女子学生たちのくやしさは、痛いほど伝わる。
    逆境の中、実力で仕事をこなしていく、妙子と登紀子がすがすがしい。

    昭和から平成へ。
    時代の変化と、それぞれの生き方と葛藤。

    3人の回想だけでなく、次の世代である孫や息子の思いに、じーんときた。

  • 1960年代から現在まで、東京オリンピック・安保闘争・学生運動・赤軍派による浅間山荘事件・阪神淡路大震災・地下鉄サリン事件等、時々の時代背景を盛り込みながら激動の時代を、自分の生き方を模索し、切り開いてきた三人の女性の物語
    女の来し方、女はどう生きればいいのか、どう老いればいいのか

    妙子が、来る日も来る日もポートフォリオを持って出版社を訪ね歩き、ようやく絵を描いて食べていける目処が立った夜、痩せた黒い野犬のそばにしゃがみ込み、牛乳をやりながら、「私、イラストレーターになるの」と声を出さずに泣くシーンには胸を打たれた

    また、後に新宿騒乱と呼ばれたデモに三人が参加し石を投げながら叫ぶシーン
    「鈴ちゃんなんて慣れ慣れしく呼ぶな!お茶くみなんて誰にでもできるって馬鹿にしないで!
    「男どもふざけるな!女を下に置くな!」
    「男の絵なんか描きたくない!好きな絵を好きなだけ描きたい」
    今まで、男社会で働く中、抑えられ鬱屈した思いを吐き出すシーンに感動した

    食わせてやっている 食わせてもらっているんだから浮気のひとつふたつでガタガタ言うな
    家だけにいる君には分からないことがたくさんあると一蹴されると言い返せない
    ハイヒールの踵を鳴らして出勤するお隣さんを羨ましげに見てしまい、自分の娘には専業主婦なんかつまらないわ 。あなたは仕事して自由に生きなさいとつい言ってしまう

    方や、働く女性も夫とギクシャクする関係でありながら、妻という立場を失いたくない 妻という着ぐるみを失いたくないと、今の
    立場に固執する

    いろんな問題は、女性の心に巣食っているのかと思うが、そうさせているのは、やはり世の中の常識やら世間体というものなのか

    先駆者として新しい女性の生き方を示したものの、寂しい晩年は
    気の毒だ
    三人の生き様が書籍化するよう奈帆子の奮闘に期待したい

    働く女性が当たり前になり、少しずつ少しずつ働く女性の立場が改善されつつはあるが、職場での仕事と同等に家庭内の仕事も評価される世の中であるべきだ
    女性の社会進出に伴って、子育てしながら外に出て働く女性だけが立派?という世の中の趨勢は、これまた問題がありそうな気がする




  • デビュー時の2・3編を読み、するどい描写はなかなかだが、扱ってるテーマが今一つでこの先どうなるのだろう、と思っていた作家さん。直木賞候補になったのを機に読んでみた。題材もテーマも言うこと無しの傑作だと思う。
    70年代からの記憶しかないので、平凡パンチもアンアンも持って歩くことがオシャレという時代は終わっており、後追い雑誌に部数も負けていた頃からしか実体験はないが、黎明期を支えたイラストレーター・大橋歩、ライター・三宅菊子ぐらいは知っていたので、半分懐かしさも感じながら読んだ。
    タイトル通り、戦後の3人の女性の3者3様の生き方とその時代の世相も反映しながらの感じ方を通して、人生を考えることができる。勿論正解など無いし、感じ方・捉え方も人それぞれだろうが、間違いなく一生懸命生きる「人間」がしっかりと生き生きと描かれている。「愚か者たちのタブロー」共々、何故受賞できなかったのか不思議なぐらいの作品。絶対読んで損はない。勿論私のような男性でも。

  • イラストレーターの朔、ライターの登紀子、OLをやめて専業主婦となった鈴子。昭和から平成、3人の女性はそれぞれの道を突き進む。彼女たちが望むものは、そして、選んだもの、手に入れたものは何か、そしてその先は…。
    男か、仕事か結婚か、そして子供か。女は岐路に立たされる(ましてやこの小説では60年代よりが舞台だ、今以上に壁はあるであろう)。才能を持ったイラストレーター、ライターが登場し、新しい生き方を求め、人生をゆく。そして、若者へバトンを渡す時、必ずやってくる老い。喜びも悲しみも三者三様見事に描き切れている。私も若くない部類だし、要所要所で同感するところがありました(彼女たちのようなクリエイティブな才能はないけどね)。そしてモデルとなった方もいらっしゃるだろうし、時代を語るものでもあり、実に読み応えがある物語でした。女の悔しさや貪欲さ、逞しさ、それでも輝きがありました。時代に流れも味わえて良かったです。

  • 3人の女性が歩んだ各々の道を当時の時代背景にトレースしながら展開させて行く。大規模雑誌社の職場で出逢った3人だが時代の先端を行くイラストレーター妙子とエッセイスト登紀子とOL(懐かしい響き)鈴子の3人。男 仕事 結婚 子供 いずれを選択するのか、したいのか、出来るのか、その難しさや壁を三者三様の歩みに絡ませて語る。

  • 「男、仕事、結婚、子ども」のうち、たった三つしか選べないとしたら――。どんなに強欲と謗られようと、三つとも手に入れたかった――。50年前、出版社で出会った三人の女たちが半生をかけ、何を代償にしても手に入れようとした〈トリニティ=かけがえのない三つのもの〉とは? 

    30年前ぐらいに読んでいたら感想は違っていたかもと本を閉じた。東京の下町に生まれ育ったお茶くみOL、親子三代物書きのライター、母に捨てられた過去を持つ売れっ子イラストレーター。昭和時代に東京の出版社で巡り合い、50年にわたりつながりを持つ3人の女たちの紡ぐテーマは何十回も繰り返された物語で、残念ながら新鮮味が感じられない。
    その上に、還暦を過ぎた3人の主人公・女たちが沈んでいるのだ。三人三様が違う人生をたどったのに、後悔と悲しみがまとわりついているように思えた。確かに女をとりまく環境は厳しい。私も場面場面で痛いほど感じて来た。だけど、それだけではなかったはず。彼女らのその後を後ろ向きな面ばかりでなく、明るい面も描いて欲しかった。そうでなければ後に続く後輩たちに背中を見せられないではないか。

  • 高度成長期、時代の先端をいく雑誌にかかわった3人の女たち。
    物書きの母と祖母をもつお嬢さん育ちのフリーライター、貧しい母子家庭で母と肩を寄せ合って暮らしてきたイラストレイター、平凡で幸せな家庭に生まれ家族の愛に包まれていた出版社女子社員。
    まったく異なる環境で育った彼女たちの人生は、交差し、また離れていく。
    違う色の花だけれど、その根には女という性の宿命が絡みつき、同じ香りを放っていた。
    女たちの懸命さがリアルであればあるほど、読後に虚しさがつのる。
    モデルになった雑誌は平凡パンチ、ananあたりかと。

  • 東京オリンピックが開催された1964年、出版社で出合った三人の女性のそれぞれの50年間を、激動の時代を背景に描いた長編。

    田舎の貧乏暮らしから這い上がり売れっ子となったイラストレーター、恵まれた家庭で奔放に育ち女性雑誌の先駆者となったフリー編集ライター、寿退社の夢を叶え専業主婦となった元事務員。女性の社会進出が始まったばかりの60年代から始まり、バブル期を経て、現代に至るまでの人生は三者三様だ。とは言え、メインは仕事を続ける二人で、専業主婦は孫とともに狂言回し的な存在となっている。
    作品の根底には常に女性であることの制約、生きにくさがある。男、仕事、結婚、子どものうち、3つを選ぶとしたらどれを取るか。すべて欲しいけれど、女性であるがゆえに何かを犠牲にしなければならず、選択を迫られる三人には厳しい現実が待ち受けている。感情の爆発する新宿のデモのシーンは圧巻で、胸が熱くなった。

    そして何よりも、実在するモデルの存在が大きい。大橋歩、三宅菊子、清水達夫とマガジンハウス、anan。世代こそ異なるけれど、同じ業界にいた私にとって最盛期のマガジンハウスは憧れの会社だった。個人的な懐かしさと、フリーライターの経験もある作者ならではの素材への熱い思いも伝わってきて、思った以上に印象に残る一冊となった。

  • 50年前、出版社で出会った3人の女たちが半生をかけ、何を代償にしても手に入れようとした<トリニティ=かけがえのない3つのもの>とは? 昭和・平成から未来へと繫ぐ希望を描く。

    2019年上期直木賞候補作。物語が過去形と現在進行形で描かれているので、読んでいる途中で少し混乱した。3人の女性の個性は伝わるものの、どの女性にも共感できるところがなかった。「直木賞のすべて」というサイトに出ている選者たちの多くはこの時代に出版界に関わった人たちなので、「誰が」「どの雑誌が」本作のモデルなのかわかるようだ。
    (Ⅽ)

全71件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

窪美澄(くぼ・みすみ)
1965年東京都稲城市生まれ。カリタス女子高等学校卒業。短大中退後、広告制作会社勤務を経て、出産後フリーランスの編集ライターとして働く。2009年「ミクマリ」で第8回R-18文学賞大賞を受賞し小説家デビュー。2011年、受賞作収録の『ふがいない僕は空を見た』(新潮社)で第24回山本周五郎賞受賞、第8回本屋大賞第2位。同作はタナダユキ監督により映画化され、第37回トロント国際映画祭に出品。2012年、『晴天の迷いクジラ』で第3回山田風太郎賞受賞。2018年『じっと手を見る』で直木賞初のノミネート。2019年『トリニティ』で第161回直木賞、二度目のノミネート。

トリニティのその他の作品

トリニティ Kindle版 トリニティ 窪美澄

窪美澄の作品

トリニティを本棚に登録しているひと

ツイートする