陰徳を積む: 銀行王・安田善次郎伝

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103260110

感想・レビュー・書評

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    安田善次郎

  • 安田財閥を作った「安田善次郎」氏の伝記。
    いつ生まれたか、ということも、当たり前だが人の人生に大きく影響を与えるものだと思う。

  • 幼少期からの商売と人に対しての見方・考え方は素晴らしい。それが考えなくても自然とできるということはやはり才能なのだろう。
    ずっと読んでいって、後半の刺殺される状況、その後の日本社会の反応は心が荒むし、やはり昔も現代も変わらないんだなと実感した。

  • ★4つ、立派な銀行家の話。普通の銀行家は利益の出る案件に投資する。偉大な銀行家は夢に投資する。そして、夢は大きければ大きいほどワクワクする。

  • 安田財閥を一代で築き、晩年には当時の国家予算の1/8にも匹敵する資産を築いた男・安田善次郎の伝記。「陰徳を積む」というタイトルの通り、目立たない所での善行と比類なき克己心という人物像が描き出され、総じて好意的な書きぶりとなっている。しかし陰徳の裏返しとして表立っては私生活の吝嗇ぶりやお金を正しく使おうとするあまり寄付にも難渋を示す一面もあり、それが災いして暗殺という非業の死を遂げる。社会インフラの整備事業等大きな視点で日本社会に多大なる貢献をしながら誤解を招きがちだったその人生は少し切なくてホロリときた。

  • こういう時代だからこそ、生き方自体が派手な(派手に演出されている?)坂本龍馬だけではなく、安田善次郎や岩崎弥太郎、渋沢栄一などの多くの明治を生きた経済人の精神を学ぶべきではないか。
    そういう意味で、多くの銀行に勤める社員をはじめとする“金融マン”と安田の流れを引き継いでいる多くの会社の社員に読んでほしい。

    <感想の詳細はブログに書いています。>
    http://blog.goo.ne.jp/hoddy/e/7d0e5cb16f1481b9f114af26586f3ffe

  • "金貸し"とい蔑称があるように、金融マンはとかく世の尊敬を得にくい。彼らにすれば不満もあろうが、最近のように、事業会社よりも金融が主役のような顔をする風潮は決して好ましくない。縁の下の力持ちであることをむしろ誇りに持つことが、金融マンの志であるはずだ。(本文「空前絶後の成功者」)

    安田財閥(後の芙蓉グループ)の創始者である安田善次郎が亡くなったときの個人資産は、大正十年当時の国家予算の実に八分の一相当した。善次郎は銀行王として日本銀行の設立にもかかわり、日本経済を深刻な危機から救うために多くの銀行を倒産から救い、日清・日露戦争では戦費の調達のために尽力しながらも、誤解と悪意から人々の理解を得られず吝嗇などの悪評を立てられた。そのため、ついには国粋主義者・朝日平吾に刺殺されてしまう。
    本書は「陰徳を積む」という信条で明治期の日本経済を支えた善次郎の姿を描き出す。それはまた現代の金融マン、企業人が学ぶべき生き方でもある。

  • 安田善次郎という人が築いた財産がどれほどのものか、亡くなった当時の資産は2億円。
    大正10年の年間国家予算は15億9,100万。国家予算の1/8に相当する富を1代で築いた個人資産家です。

    一般には、「ケチ」と呼ばれて、そのためにも誤解を生み、
    最後は社会運動家を名乗る男に刺されて悲劇的な死を迎えるのです。

    日本経済を作りだした「金融の神様」であり、金を無造作にばらまくのではなく、生かして使う。企業を支える黒子に徹するのが銀行の役目である、との信念を貫きます。

    伝記ものの楽しさは、その人の子供時代、若いころに触れられることです。
    子供の頃から心がけが違っているし、健気だなー、すごいなー、ほほえましい。

    善次郎は農家の三男に生まれ、朝早くから働き、寺子屋で勉強し、塾から戻ると日暮れまで一心に働き、夜は読書や習字をいそしむ、夜寝る前にも天井に向かって字の練習をするほど熱心だったそうです。

    厳しい父から自分を律して勤倹を旨とし、向上心を持って日々を送る大切さを徹底的にたたきこまれた。

    特に「陰徳を積め」誰にも知られずとも人のためになることを、
    黙々と行っていくことこそ人格は磨かれていく。

    この父の教えを、大金持ちになっても終生肝に銘じて実践していくんです。
    大富豪となっても、質素な生活を守りつづけたくさんの親孝行をします。

    銀行家として、国立銀行をどんどん開業していき、近代的銀行制度を充実させていきました。
    そして、今の日銀立ち上げに全力を傾ける。
    それから、銀行の経営指導、破たん銀行の経営再建、不良債権処理に手腕を発揮します。
    数多くの銀行再建をおこなって、金融界の危機を救うのです。

    安田銀次郎がいかに銀行家としてすぐれていたか、大きな功績を残したかは、著者自身が銀行出身なので感嘆しながら、わかりやすく描かれています。

    潤沢な資金で社会資本整備に尽力。鉄道網整備や惚れ込んだ人材、大きな事業をやってのける人にはとことん、融資をし、応援し、亡くなった後も面倒をみました。

    安田善次郎の成功のキーワードは、「勤倹 克己心 向上心」

    たいていの人は、自分はこれをやった、これだけやった、自分のしたことを
    自己PRされるのではないでしょうか。

    陰徳を積みながらも、世間には誤解されることもあり、報われなかったことが残念ですが、「積善の家に必ず余慶あり」(易経)と、いいますが、安田財閥はその後も善次郎の陰徳の余慶によって、繁栄をつづけるんですね。

    偉人の伝記というのは、死後、えてして美化されることもありますが、

    同じ人間として、または、日本人として、これだけ素晴らしい人がいたんだ、こんな知恵と勇気と行動があったんだ、自分たちも頑張ろうと背中を押されます。

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著者プロフィール

昭和35年12月24日愛知県名古屋市生まれ。東京大学法学部卒業後、富士銀行入行。資産証券化の専門家として富士証券投資戦略部長、みずほ証券財務開発部長等を歴任。平成20年6月末でみずほ証券退職。本格的に作家活動に入る。
著書に『白洲次郎 占領を背負った男』(第14回山本七平賞受賞)、『福沢諭吉 国を支えて国を頼らず』『吉田茂 ポピュリズムに背を向けて』『佐治敬三と開高健 最強のふたり』(以上、講談社)、『陰徳を積む―銀行王・安田善次郎伝』(新潮社)、『松下幸之助 経営の神様とよばれた男』(PHP研究所)、『西郷隆盛 命もいらず名もいらず』(WAC)、『胆斗の人 太田垣士郎―黒四(クロヨン)で龍になった男』(文藝春秋)、『乃公出でずんば 渋沢栄一伝』(KADOKAWA)、『本多静六―若者よ、人生に投資せよ』(実業之日本社)などがある。

「2022年 『稲盛和夫伝 利他の心を永久に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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