- Amazon.co.jp ・本 (136ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103272090
作品紹介・あらすじ
人生の行き止りを意識するようになった浩平は、雪の日に一度だけ接吻を交わしたことのある学生時代のゼミ仲間・重子と再会する。彼女に勧められ、携帯電話を初めて手にした浩平は、掌の中の重子と密かに交信を始め、しだいに想いを秘めたメールのやりとりにのめりこんでいく…。70歳を越えた男と女の純愛小説。
感想・レビュー・書評
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105 馬場北
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自分が独り生きるようになったら、きっと何かの苗を植えたくなるだろうな。
行き止りと思える人生に、何かを、先があるものを、見たくなるのではないか。
自分がいなくなった、その後に残る何か。
ちょうど両親と同じ年齢の主人公なのだが、何故か親ではなく、自分の老後の姿を想像しながら読み進めた。
どんな毎日が待っているのだろう。
若い頃の思い出の品を捨てられずにとっておくのだろうか。
行き止まりに気が詰まる日々なのだろうか。
ときめく思いは再び訪れるのだろうか。
「春の道標」の際に待ち焦がれた手紙はメールに代わったが、ドキドキする気持ちはあの少年と変わりない。
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主人公の浩平は古希を過ぎた男。妻に先立たれ、未来のない行き止まり感に苛(さいな)まれている。古いトランクを片付けているとき、大学時代に同じゼミだった重子の写真を見つける。一度だけ唇を重ねたことがある。
年齢を重ねることは寂しい。しかしこんな恋愛もできると思えば、希望がある。高齢化とは、行き止まりに向かっているのではなく、重子に再会した時の「途中だよ、長い長い途中だよ」という浩平の言葉通りなのだろう。タイトルは別れの際、重子が「私に見えるように、(手を)大きく振ってね」と浩平に頼むことに由来しているが、作者が同世代の読者に贈るエールなのだ。
***レビュー・書評より***
カミさんと二人だけの生活だけどいずれ何年か後には・・・・ こんなことを考える齢にちかずいたけどまだまだ元気で生きている今を大事にしよう。 -
ちょっと期待外れだった。
おじいちゃんが携帯を掌の中にじっと握りしめている姿はほのぼのとしたものも感じたけどね。 -
70代の男女の純愛物語。
誰しもに訪れる「老い」。その全てが哀しいとはもちろん思わないが、それを見て見ぬふりにはできないのだな、と感じさせられた。
淡々と進む物語の中、凛とした格調高い文章に、漂う空気が澄んでくるようだった。 -
70代の男女の淡い?恋愛模様、どうということのないような物語を格調高い文章が支えているような気がする。
これといった目新しさはないと思うが、どこか惹かれてしまう物語であると思う。
また黒井千次さんの本を読んでみようと思った。 -
70歳を過ぎてもこんなに素敵な恋が出来るのなら、年をとるのも悪くないな。人生の行き止まりを意識し始めるころに思い出す人がいるってのもいい。でもやっとお互いに心の中の何かが動き出したのだからもう一歩踏み出してもよかったのに、と思う。周りの目や財産やそういう色んな問題を考えるとそうそう軽はずみなことは出来ないのかな。うむ、色々考えさせられるなぁ。とりあえず長生きしようかねぇ。
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高齢恋愛の一ページ。さらりと読めるが、共感できる程には、歳が足らなかった。