著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 84
  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103275121

作品紹介・あらすじ

極限のクライミングを描く、究極の筆致。『檀』から十年、最新長編作品。最強の呼び声高いクライマー・山野井夫妻が挑んだ、ヒマラヤの高峰・ギャチュンカン。雪崩による「一瞬の魔」は、美しい氷壁を死の壁に変えた。宙吊りになった妻の頭上で、生きて帰るために迫られた後戻りできない選択とは-。フィクション・ノンフィクションの枠を超え、圧倒的存在感で屹立する、ある登山の物語。

感想・レビュー・書評

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  • ノンフィクションの面白さはそれが実際に起こった事である、という所だと思う。ノンフィクションを読むたびに「人間ってすごい可能性があるのだなぁ」と感動するし、自分自身も頑張ろう、と思う。
    本書ではその醍醐味を思う存分味わえた。

    山に全く登らない私としては、登山者がどうして困難な山に挑戦するのか良く分からなかった。本書を読んだ今、「彼らには理由などなく、ただ登りたいから挑戦するのだ」というのが感覚的に分かった。それはきっと本能的な物で、部外者には理解しがたいものなのだろう。

    正直に言うと、山に縁遠いものとしては、ちょっとうーんと思う部分もあった。妙子さんが死んだかもしれないと思うシーンでは山野井さんのドライさが何となく受け入れがたかったし、困難な山に挑戦して死にかけて荷物を置いてきてしまい、しばらく後で取りに行ったけど氷河が移動してるからありませんでした!というのは自然と対峙すると言いながらも非常に人間都合だなぁと感じた。しかしながら、そういう何となくもやっとする部分もリアルに書いてあるからこそ、山野井さんと妙子さんが身近な生きている人として生き生きと感じられ、二人の行方にはらはらさせられるのだと思う。そして、上記のもやっとした部分に関しても、最後には「私の考え方とは違っても、これが彼らの流儀なのだ」と納得させられてしまう。改めて沢木さんの文章力の凄さを感じた。

    人間って最後には精神力なんだよなぁとつくづく思った。お二人が無事に戻ってきて、今また山に挑戦していると言う事に「すごいなぁ」と思うばかりだ。

  • 2011/10/21

  • いやはや・・・

    すごい話だった。
    ベースキャンプを出てからの13日間の壮絶なこと・・
    しかし、その後の凍傷もまた壮絶な。
    というかすっごく怖くてすっごく痛かった(;;

    全然、同列にできない話だけど、昔、指先に部分麻酔を打って、簡単な手術をしたことがある。
    その注射の痛かったこと!!
    指先っていうのは、繊細で、痛みがダイレクトに脳につながる部分だ。
    それが・・・山野井さんも、妙子さんも、すごすぎます。

    何気なく、作品紹介を読んでびっくり!
    「講談社ノンフィクション賞受賞」

    えー、ノンフィクションやったんか!

    沢木さんに珍しく、フィクションの小説だと思ってた。
    朝日新聞の記事とか、やたら具体的だなぁなんて思っていたけど。
    こんな夫婦がいることに驚き。とても著名な登山家なんですね、無知ですいません。

    頂上まで行き、山から降りるとき。
    雪崩にあい、ロープでつながれた妻が滑降、姿が見えなくなる。
    名前を呼んでも返事がない。
    生きているのか死んでいるのかわからない。意識を失っているのかもしれない。

    “もし死んだのならロープを切らなくてはならない”
    “妙子が死んでいても、ロープは残さなくてはならない”

    すごい状況ですよね。
    妻を何としても助ける、とか、ここにあるのはそういう美談なんかじゃない。
    生きるか死ぬかの、ぎりぎりのところでの選択。
    命がけって、こういうことをいうんだなぁと思った。

    こうまでして、なぜ山に登るのか。
    何ともありきたりな問いだけど、その答えはやっぱり、
    「そこに山があるからだ」
    以外にはなさそうだ。

  • 2019年1月14日読了

  • この実話を読んでレベルの高いクライマーの世界が垣間見えた。ギャチュンカン凄いし、登り切って帰ってきた山野井夫妻凄い。山をやめようとしてまた始めてしまう山野井凄いし、俗世から遠く離れてるような妙子凄い。彼らの世界には辿り着けないだろうけど山に登りたくなった。

  • 山野井と妙子の山に対する想い、登攀の歴史、スタイルがノンフィクションだと知り驚いた。山の空気を吸いたいから、無酸素で登る。山には何も残して来ない。生きて帰る。マスコミ嫌い。凍傷で手足を失っても、山を諦めない2人がとても清々しかった。こういう夫婦のあり方も、良いなと思った。

  • 子供が学校でこの本を読むように言われ
    図書館からかりてきたのを 借りてきて読んだ。

    しばらく前に アーチャーの「遥かなる未踏峰」を読んだのである程度知識はあった。
    無酸素で、また単独で8000m級の山に登る大変であること

    また 夫婦の強靭な精神、体力には驚愕するしかない。

    凍傷で指の多くを失ったことは象徴的な出来事だが

    本質は そこにはない。だれから言われたわけでもないのに
    目標と設定し、そのための準備をし

    そして成し遂げるという姿である。

    実は登山は過程は恐ろしく困難であるのに
    目標の設定は比較的簡単である。

    地図や写真であるいは麓から山肌をみることで
    目標を設定できるからである。

    目標を設定することが 何よりも先立つ

    そのことに改めて気付かされる ノンフィクションであった。

  • あまりになじみのない地名が出てくるので、
    GoogleMAPsや、写真を探して
    本書と照らし合わせながら読んでいくのが
    また色々と面白かった。

    下降中の生死の狭間での体験は怖い。
    極限の寒さの中で、心臓が止まりそうに感じる、
    足が悪くなってくることが感じられる、
    眼が見えなくなる。
    そんな状況の中でも何とか生きて帰ろうとする。
    それは本当にすごいことなのだと感じる。

  • 登山家”山野井夫妻”のヒマラヤでの登山の様子を
    沢木によって纏められた”ドキュメンタリー”です。

    ドキュメンタリーではあるのですが、下手な小説よりも、
    スリルはあるし、緊迫感もあります。

    たまたま、山野井という名を知って手にした本です。

    ストーリーはヒマラヤにあるギャチュンカン(7,952m)の
    北東壁をソロクライムで登攀する予定で準備し、現地に向かうも、
    その北東壁は登攀には向かず、既に登攀されている北壁を
    夫妻で昇る事に。

    天候の崩れや不測の事態などで、ベースキャンプへ戻る予定日が
    大幅に遅れることに。

    休む事もままならない状況の上に天候悪化で多くの雪崩が発生。
    辛くも生還はしたものの、妻、妙子は以前に凍傷で失った指に
    加えて、手の指を全て失ってしまう。

    山野井自身も、凍傷から逃れる事が出来ず、右足の指を全てと
    両手から5本の指を失ってしまう。

    なぜ、そこまでして登山をするのか。
    正直、読み終えた後でもそのことは理解できませんが、
    どんなに過酷な状況というか、絶体絶命の状況で”死”よりも
    過酷は生還を選択するのは余程、生に拘っている夫妻なのだと
    思わされました。

    つまり、山を登るということはこの夫妻にとっては生そのもの。
    息をする事ぐらい当然なことなのだと言う事だと。
    それがこの夫妻を山に向かわせている原動力なのではないかと
    思わされました。

    死に対する恐怖心は無いと言う描写がありますが、
    それは強がりではなく真実だと思います。

    この2人は、死ぬ事より恐ろしいことは山に登れなくなること。
    事実、夫妻の残った指を合わせても1人分の指の数にすら達しないのに、
    未だ登山は辞めていません。

    人生の全てを登山に使う。
    本当に絵に描いたような一つのことだけに全てを使う。

    そんな人生を送れたらどんなに幸せなのか。
    過酷なドキュメンタリーを読んだのにそう思わされてしまう、1冊です。

  • 夏の帰省で本棚に眠っていたこの本を何気なく手に取りました。惹きこまれて一気読み。

    沢木耕太郎の短く鋭い文章と、極限で闘うクライマーの姿の相乗効果で、強烈なインパクトを与えてくれました。

    長く記憶に残りそうな1冊。

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著者プロフィール

沢木 耕太郎(さわき こうたろう)
1947年東京生まれのノンフィクション作家、小説家。横浜国立大学経済学部卒業。大学卒業後、ルポライターとして活動、注目を集める。
浅沼稲次郎暗殺事件で刺殺された浅沼と、その犯人である少年を描いた『テロルの決算』で第10回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。以後、バックパッカーのバイブル『深夜特急』をはじめ、スポーツや旅などを題材にした多数のノンフィクション作品、小説などを発表。2000年に初めての書き下ろし長編小説『血の味』を刊行し話題となる。
2003年これまでの作家活動で第51回菊池寛賞、2006年 『凍』で第28回講談社ノンフィクション賞、2013年 『キャパの十字架』で第17回司馬遼太郎賞をそれぞれ受賞。

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