無垢の領域

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 82
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103277231

感想・レビュー・書評

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  • こういう人たち、いるよね~
    これが普通の人

  • 読んでいる最中も、読後も、暗く重苦しい。

    家計を支える養護教諭である妻と、売れない書道家である夫、介護される母親の3人家族。そこに絡むのは図書館館長である兄と知的障害を持つ妹、そして兄の恋人。無垢な妹以外、全員が自分を取り巻く身近な人たちに対して、重大な不満を持ちながらも、我慢と諦めとで現状を受け入れて暮らしている。が、やがてそれぞれの身に取り返しのつかない破綻が訪れる。

    力量のある作家で、小説としても優れているのだが…。
    厳しい現実の中で自分を偽り、波風を立てないように見せかけてその実、責任放棄をした生き方をする人たちばかりが登場する。そうした生き方が好きではないので、個人的には受け入れにくい作品だ。

  • 母の介護をする書道家、書道家を支える妻、成長できない妹の面倒を見る図書館長…
    それぞれが闇を持っていてその闇に支えられている。
    2014年5月29日

  • サスペンスではないのに、最初から何かに追い込まれていくような、ゆっくり深みにはまっていくような重い感じがしました。
    思ってることを口にしない人たちの生き方、どこか諦めてしまっている生き方になぜか共感しました。
    みんなが幸せになれればよかったのに。

  • 祖母の死後、彼女がともに過ごしていた妹とともに暮らすことになった図書館長を務める兄。妹は知能的な問題があってひとりでは暮らせないが、彼女には稀有な書道の才能があった。そして、兄妹は書家の夫と養護教師の妻と知り合い、縁を深めていくが。
    …というとても淡々とした流れで進むお話なのですが、しょっぱなのほうからどろりと固まった感情の膿のようなものが感じ取れるので、さらさらとは読めません。この4人だけでもドロドロとしだすのに、書家夫婦には介護の事情もはさまれてきて、さらに陰鬱とした雰囲気を高めます。
    彼らは浮かんだ思慕や鬱積などの感情を声高に叫ぶのではなく、飲み込みつづけています。そのため、やりきれなさ、虚しさといったマイナスの感情を与えられつづけて読むほうにも枷が課せられた気分になるのですが、あくまで逃げずにまっとうに描かれる物語に、迫力を感じて読み進めさせられました。
    終盤にとある事故が起こり、ラストではさらに悪意のこもった真実が炸裂するという、かなり救いのない終わり方ですが、だからこそまた印象に強く残りました。
    彼ら彼女らがこの先どうやって生きていくのか。
    やはり、悶々としながら這いつくばって生きていくのか。結局そうするしかないのが、人間なんだろうな、
    なんて思わされたのでした。

  • 夫婦の間、親子の間、恋人の間にも、言葉には出せない裏の感情があるんですね。
    人は、思うがままに行動すれば、人間関係なんて直ぐ崩れてしまう。
    スッキリしないラストだった。

  • 売れない書道家と養護教諭の怜子 夫婦
    痴呆がすすみ看護が必要な母と同居

    釧路の図書館館長の林原は
    少し心に問題がある妹 純香が越してくる

    大人たち4人が主人公の物語

    なんとなく感情を秘めて
    野心とか嫉妬とか犠牲
    不満とか不安を見ないふりして
    あきらめているのか
    思った事も言わずに
    あいまいにそれが良しとして
    暮らしている

    そこに林原の妹 純香が越してくる
    純粋で悪意も邪気もなく
    思ったことを素直に
    言葉や行動で表現する
    そんな姿がオトナたちに
    少しずつ影響を与え心を揺るがす

    そんな鬱々とした暮らしに
    無垢な純香があらわれ
    もっと素直な生き方に
    変わっていくのか・・・

    でも、感情って
    そんな簡単じゃないのかも
    欲望とか煩悩ばかりの結末

  • 指定管理の図書館で、若くして館長を務める、信輝、特殊な才能をもつ、妹の純香。そして、書道教室を営む秋津とその妻、伶子。四人の関係がいびつに歪んでいく。男女関係、家族関係などのいびつさに、この作家独特の釧路の寒さやどこかほの暗い感じが漂い、混じっている作品でした。特に、秋津とその母の行動は読み終わった後に鳥肌が立ちました。

    指定管理の図書館で、若くして館長。そんな職種が小説に登場するとは、時代を感じました。

  • 直木賞受賞の第一作との事。これからも楽しみです。
    知能の遅れはあるが、書道には並外れた才能を持つ少女。彼女の周りの人々の人間臭さがその無垢さの為に際立っているようです。
    湿気が多いという釧路の土地が、北海道という爽やかさを感じさせず、独特の暗さを演出しているようです。

  • 直木賞受賞後第一作
    知的に遅れがあり無垢な存在の妹「純花」と図書館長である兄「林原」。
    純花には一度見た筆跡をそのままそっくりに書く事ができる稀有な才能があった。
    書道家である「秋津」は、彼女の才能に気づき自宅の書道教室の手伝いをさせる。妻の「怜子」は高校の養護教諭をしながら夫の母の介護も頑張っている。
    底の見えない介護にうんざりし、書道家としても世に認められず、収入も妻に頼っている秋津。介護のために子どもを持つ人生を諦めた怜子。
    妹の世話に疲れている林原は、理解者であり長年の恋人でもある「里奈」との仲をただダラダラと続けて、怜子にも心を揺さぶられる。
    うんざりするような日常の中で、玲子もまた林原に惹かれる。
    それぞれに渦巻く黒い感情が恐ろしく描かれている。
    たった一人無垢な存在純花に起こった出来ごとは、あまりにも辛い。
    誰もが幸せになれない悲しい結末だった。

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著者プロフィール

一九六五年釧路市生まれ。
裁判所職員を経て、二〇〇二年『雪虫』で第82回オール読物新人賞受賞。
著書に『風葬』(文藝春秋)、『氷平原』(文藝春秋)、『凍原』(小学館)、『恋肌』(角川書店)がある。

「2010年 『北の作家 書下ろしアンソロジーvol.2 utage・宴』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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