ふたりぐらし

著者 :
  • 新潮社
3.76
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本棚登録 : 434
レビュー : 63
  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103277248

作品紹介・あらすじ

夫婦になること。夫婦であること。ひとりでも楽しく生きていけるのに、なぜ、ふたりで? その答えが、ここに輝く。夢を追いつづけている元映写技師の男。母親との確執を解消できないままの看護師。一緒にくらすと決めたあの日から、少しずつ幸せに近づいていく。そう信じながら、ふたりは夫婦になった。貧乏なんて、気にしない、と言えれば――。桜木史上〈最幸〉傑作。この幸福のかたちにふれたとき、涙を流すことすらあなたは忘れるだろう。

感想・レビュー・書評

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  • 桜木さんの本を読んでいると、やはり北の大地を感じる(今回か道東ではなく札幌付近のようですだけれど)。「最幸」とありますが、あからさまに幸せを歌うものではなく。日々の心の引っかかるところがありながらも、その中で幸せのかけらを感じといった風で、それが現実味を帯びたものであり、桜木さんの世界に共通してある全体の空気感と北の大地の空気感を感じました。一気読み厳禁とあって、本を読み始めた時、そんなの無理かなあと思ったんだけれど、読み始めて、一気に読むのが勿体無く感じ、毎日少しずつ読んだものでした。主人公の信好夫婦、その両親夫婦、それぞれの形、幸せ、愛の満たされがありました。どれも温もりがある。激しい出来事・感情はないのだけれど、すごおく良い。嫉妬心やら親を思う気持ちやら、さらりと書いてるけど、良い。良い良い良い。北の舞姫ますます好き。10ある中で「こおろぎ」、「ひみつ」が気に入ったかな。

  • 男と女の腹の中はわからないことだらけ。
    初めはぎくしゃくしていても、共に過ごす時間がふたりを家族にしていく。
    ゆっくり、じっくり、と。
    思っていることの半分も相手に伝わっていないとしても。
    知らず知らずの内に心に蓋をしていた時があったとしても。
    それでいいのだ、と思えた。

    ひとりを持ち寄ってふたりになり、三人を経て再びふたりを歩む者。
    ひとりになってもふたりぐらしを続ける者。
    強くひとりを意識しながら、ふたりを生きる者。
    ひとりではうまく流れてゆけないからふたりになった者。
    「ふたり」といっても色々ある。
    けれど、どの「ふたり」も正解不正解はない。
    「ふたり」が納得すればそれでいい。
    それが幸福なんだと思えた。
    ふたりっていいな、としみじみいい気持ちになれる物語だった。

  • しっとりした、という言葉が似合う本なきがする。
    ニート同然でヒモ同然な映写技師、脚本家な信好
    それを支える看護師の紗弓
    各々は自らの状態を不満に思い不安に思い
    でも相手のその部分には不満は持っていない
    しかし大事な会話は避け続けるので、不安や不満は解消しない
    だからと言ってものすごくぎすぎすしているわけではなく、日常は表面上はおだやかに過ぎて行く
    夫婦だからといって、お互いのことを何でも知っているわけではなく、なんでも理解できるわけではない。
    私はまだ、夫婦というものに期待しすぎていて、そのことを飲み込めはしないが、でも現実はそうなのだろう。
    秘密にしていることをばれてはいけない。秘密にしていたことで相手を傷つけてしまうから、秘密にすると決めたなら隠し通す義務があると思う。
    読みやすいので一日一遍で十日間、という感じはしないが、でもゆっくり読みたい本。
    資料室で借りた本。とてもよかったが、何度でも読み返したい、手元においておきたい!という強い感情はなく、そういう本があった、と何年かに一度思い出せたら、という感じかな。まぁ、お金に余裕があれば本棚においてあっても、良い...という上からな感じ。

  • 人と人の絆とは何によって保たれているものなのか。それをあからさまに描く物語は読んでいて多少気恥ずかしい。普段はその気恥ずかしさに振り回されて心を閉じてしまいがちにもなるものだけれど、桜木紫乃の「ふたりぐらし」には、知らず知らずの内に惹き込まれる。それは恐らく、交わされる言葉の文字通りの意味ではなくその裏にあった筈の思いが何かを繋ぎ、語られぬままに絆が深まってゆく様が描かれているからなのだろう。

    連作の短篇は夫婦二人が交代に主人公となり、その胸の内を訥々と語りながら進んでゆく。思い違いや疑心暗鬼に自問自答を繰り返す様はすれ違いと言ってもよいような話。だがお互いの気持ちは一話毎に強くなる。主人公達の視線はお互いを直視するのではない。そこには必ず第三者へ向けられた眼差しがある。それは自分の親であったり職場の人々であったり。けれど、その直接はお互いを結びつけない人間関係のさらにその先に、お互いのことが透けて浮かび上がる。そのもやもやとした思いは読む者にも伝染し、その着地点のない不安定さが、不快であるのかそうでもないのかをきちんと決めることが出来ぬまま、一篇、また一篇と進んでゆく。

    語り得ぬことがある一方で、語らずともよいことがある。そういう事ばかりが腑に落ちてくる。

    大きな幸せも小さな不幸も、全部まとめて幸福ということ、と主人公達は達観したかのような態度だ。北海道という土地柄のせいか、もちろん精神的な逞しさは女性の方が際立っている。札幌、江別、という懐かしい響きと伴に、冬の曇天の灰色が脳裏を過ぎり、不安とも郷愁ともつかぬ思いが胸の内を去来する。ひょっとしたら、石油ストーブの匂いと踏みしめる雪の感触や短い夏が連れて来る儚さに思い出のある人にしか、この小説の描く幸福というものは理解出来ないのではないか、そんな思いで読み終える。

  • 映写技師で脚本も書く信好と、看護師の紗弓。
    2人は紗弓の収入で暮らしていた。

    じんわりくる話だった。
    前半は、2人がお互いに不満を持っているようにも感じてましたが、いやいや2人はこれ以外ない对でした。

    色々なふたりぐらしが出てきます。
    紗弓の実家の両親の、父の秘密が興味深い。
    最後まで母を不安にさせないよう秘密を隠し通して欲しいと願います。
    信好の元実家の隣の夫婦の妻タキの「年を取れば、どんな諍いも娯楽になる」が深い。

    我が家も子供が大きくなり、近い将来ふたりぐらしになると思います。
    どんなふたりぐらしになるか、不安ながらも楽しみになりました。

  • ここまで平坦なのに飽きさせない小説も珍しい。事件もハプニングも謎解きもなく淡々と夫婦生活を描く。子供がいないと夫婦はこうなっていくのかと妙に納得してしまった。

  • 桜木紫乃は好き。
    北の地の空気感が、経験がないからこそ好きなのかも。
    荒涼とか寂寞とか諦念とか、話し言葉で表現しようとするのに二文字熟語しかしっくりしないところとかも好き。
    ラストで「明るき未来」、いや、「読み手の私が明るく受け取りたい未来」がかいま見えることがあるのも好き。

    この本は、著者の本の中でも好き。
    結末に明るさがほの見えるのが好き。
    言葉にすると消えてしまいそうな、小さな点のような明るさ。

  • ふたりで暮らしていくことは
    淡々とした毎日の積み重ねであり、生活であり。自分とは異分子である人との距離の取り方が大切になってくる。
    連続短編でそこを上手に表現。
    見かけや社会的立場を度外視し、ふたりの人間としておたがいを大切にしているのが垣間見られたのがとても素敵で。
    そして物語はあくまでも淡々と進行しているのがとても良かった。
    諍いも焼きもちやかれることも娯楽という歳のとりかたができていったら良いなぁとしみじみ。

  • 映像技師の夫と看護師の妻。
    ふたりの暮らしが双方の立場から書かれています。

    ふたりの実家の母親、両親への思い、お互いが相手に対する思い、自分の心のありようなど、淡々と過ぎていく日々の生活の中ですごく丁寧に描かれていておもしろかったです。
    何があったわけでもないのにあっという間に読み終わりました。いい本だなぁという印象。

  • いつも悲愴な本を書いているので、この本の帯は幸せ小説のように書いてあります。他の作者からしたらという所なので内容的に甘々だったりはしません。
    駄目男と言ってしまっては可哀想だけど限りなくヒモにちかい男と、その男が好きで仕方が無い女の夫婦の物語です。
    世間一般の幸せとはどこかずれているけれど、小さな幸せの積み重ねで夫婦が出来上がっていく所を見ているのが楽しいです。

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著者プロフィール

1965年北海道生まれ。2002年「雪虫」で第82回オール讀物新人賞を受賞。07年、同作を収録した『氷平線』で単行本デビュー。13年、『ラブレス』で第19回島清恋愛文学賞、『ホテルローヤル』で第149回直木三十五賞を受賞。『ワン・モア』『起終点駅(ターミナル)』『ブルース』『それを愛とは呼ばず』『霧(ウラル)』『裸の華』『氷の轍』『ふたりぐらし』『光まで5分』『緋の河』等、著書多数。

「2020年 『砂上』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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