ふたりぐらし

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 89
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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103277248

作品紹介・あらすじ

夫婦になること。夫婦であること。ひとりでも楽しく生きていけるのに、なぜ、ふたりで? その答えが、ここに輝く。夢を追いつづけている元映写技師の男。母親との確執を解消できないままの看護師。一緒にくらすと決めたあの日から、少しずつ幸せに近づいていく。そう信じながら、ふたりは夫婦になった。貧乏なんて、気にしない、と言えれば――。桜木史上〈最幸〉傑作。この幸福のかたちにふれたとき、涙を流すことすらあなたは忘れるだろう。

感想・レビュー・書評

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  • いや〜桜木さんの小説はなんだかエロティックというか艶めかしい(〃ω〃)
    女性が感じるエロさ的な笑

    子供のない男と女が本当の意味で夫婦になっていく
    数年が淡々としっとりと書かれている。
    2人の親も含めて何組かの夫婦が出てくるのだけど
    それぞれの形があってそれぞれの幸せがあった。

    地味だけど好きな作品_φ(・_・

    「気恥ずかしさを紗弓のコートから払った雪と一緒に玄関の三和土に落とす。
    図らずも、胸奥に降り積もるものが男の恥であったことに気づいた…」
    この表現が好き!ちょっとドキっとした!
    わたしだけだと思います笑すいません(〃ω〃)
    桜木さんはこのエロさが好き嫌いの判断になるかも知れない…わたしは好きですけど笑




    • みんみんさん
      わかる〜今3,4人ごちゃごちゃ笑
      わかる〜今3,4人ごちゃごちゃ笑
      2023/05/24
    • おびのりさん
      ほんと、最近、出版社絡みなのか、みんな連作短編やってくるし。毒親創作してくるしで、ごっちゃです。
      みんみんは、愛知県だよね。今週、名古屋行き...
      ほんと、最近、出版社絡みなのか、みんな連作短編やってくるし。毒親創作してくるしで、ごっちゃです。
      みんみんは、愛知県だよね。今週、名古屋行きます♡
      2023/05/24
    • みんみんさん
      毒親お腹いっぱい笑
      名古屋で何食べるの〜?
      味噌カツ?笑
      毒親お腹いっぱい笑
      名古屋で何食べるの〜?
      味噌カツ?笑
      2023/05/24
  • 桜木紫乃さん、リトライ。
    以前読んだ作品は余りにも艶かし過ぎる男女の描写に圧倒されてしまい挫折してしまった。
    でも!今回の作品で桜木さんの良さが理解できた。

    もう若くはないけど、また年寄りでもない年齢の信好さんと紗弓さん夫婦。
    頼りない旦那さん、でも好きだから見て見ぬふり。踏み込み具合の分からない義理の親。
    大切だけど煩わしい両親、そして旦那を悪く言われたくなくてついてしまう嘘…。
    全部わかる!!

    登場する人物それぞれ、俗っぽくて人間臭い。
    でも、みんな弱くて優しい。うすい霧の中を不安定ながらも補い合って幸せを続けている。

    我が家も「ふたりぐらし」
    小さい幸せを大事にしたい。

















  • 夫婦の静かで穏やかな毎日。
    大きな事件は起きないけれど、つつましい毎日の生活が読んでいて心地よかった。
    お互いの視点で書かれていてそれもまたよかったかな。

  • 仕事をしていない妻はアリで、仕事をしていない夫はナシ?

    それぞれの事情があるのに、外側のニンゲンが、夫婦の姿にアリナシ評価をするのって、やっぱりおかしいんだなあ…

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    元映写技師の夫・信好と、看護師として働く妻・紗弓。
    映写技師として働くことを捨てきれない信好は、妻の収入で暮らしつつ、脚本を応募したりしながら過ごしていた。
    しかし、そんな信好の姿は、紗弓の母からよく思われておらず、裏表のない紗弓の母は、紗弓にも信好にも、遠慮のないものいいをする。

    信好と紗弓、
    紗弓の父と母、
    信好の父と母、
    信好を雇うことになる映画評論家とその恋人。

    信好と紗弓、そしてその周囲にいる「2人」たちの姿とは。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    専業主婦には違和感のない世間。
    けれど専業主夫には違和感ありありで、「ヒモ」という言葉でバカにしてくる世間。
    つくづくこの国には、「夫は芝刈り、妻は川で洗濯」というのが、染み付いてとれないのだな…と思いました。

    家計が火の車なのに働かない夫または妻のことはちょっと横に置いておきますが、そうではないのなら、それぞれの夫婦にあるバランスがなんとか取れているならば、それでいいじゃないか…と思います。

    だから信好が安定した収入がないことを馬鹿にしてくる紗弓母に、夫ははたらいて妻を養うもの、という考え方を押しつけてくる紗弓母に、本当に腹が立ちました。
    それは紗弓母自身が専業主婦しか経験しておらず、それが女にとっての幸せだと信じて疑わないからなのですが…
    けれど、自分の経験=正しいと思いこみ、それを娘たちに押し付けてくる様子には、本当に怒りを覚えました。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    紗弓にとっても、なにかと干渉してくる紗弓母は頭の痛い存在です。
    しかしそんな紗弓母のことを、紗弓父は「彼女(紗弓母)といっしょにいると、楽なんだ」と言い切ります。

    「あのひとは、裏表がないんだよ。だから、あんまりひとに良く思われないことも多い。ただ、お父さんなりにあの性分をうらやましく思うところもあってね」(50、51ページ)

    「あのひとの近くにいるとね、楽なんだ。多少きついものの言い方はするけれど、そこには彼女しかいないだろう。ひとの腹を探るということがないから、僕みたいな気の小さな人間には、案外向いているのかもしれないと思いながら暮らしてる」(51ページ)

    紗弓父のこの発言には、正直驚きました。
    でも同時に「自分を好きな人2割、どちらでもない人6割、自分を嫌いな人2割」の法則も思い出しました。

    娘である紗弓からみた紗弓母は、「嫌いな人」です。(わたしから見ても、紗弓母は嫌いな人です)
    でも紗弓父からみた紗弓母は、「好きな人」「いっしょにいて楽だと思える人」なのです。だから、紗弓父と紗弓母は「ふたりぐらし」できるのです。
    紗弓からみた紗弓母、紗弓父からみた紗弓母の姿の違いが、このお話の中で一番おもしろく感じました。

    傍目から見れば、合わないように見える2人でも、その2人が一緒にいてお互いしあわせだと感じているならば、それでいいじゃないか。
    もちろん、紗弓のように無理のある形態で働いているならば、そこは見なおしていかないといけないとは思います。
    けれど、そうした無理がない働き方をして収入を得ていて、夫婦どちらもが納得しているならば、「どちらが働いて得た収入で暮らしているか」ということなんて、問題にならないと思うのです。
    そこにお互いのしあわせがあるならば、問題にはならないと思うのです。
    それと同時に、自分に理解できない夫婦像があっても、それはそれで不思議ではないんだな、と思ったお話でした。

  • 桜木さんの本を読んでいると、やはり北の大地を感じる(今回か道東ではなく札幌付近のようですだけれど)。「最幸」とありますが、あからさまに幸せを歌うものではなく。日々の心の引っかかるところがありながらも、その中で幸せのかけらを感じといった風で、それが現実味を帯びたものであり、桜木さんの世界に共通してある全体の空気感と北の大地の空気感を感じました。一気読み厳禁とあって、本を読み始めた時、そんなの無理かなあと思ったんだけれど、読み始めて、一気に読むのが勿体無く感じ、毎日少しずつ読んだものでした。主人公の信好夫婦、その両親夫婦、それぞれの形、幸せ、愛の満たされがありました。どれも温もりがある。激しい出来事・感情はないのだけれど、すごおく良い。嫉妬心やら親を思う気持ちやら、さらりと書いてるけど、良い。良い良い良い。北の舞姫ますます好き。10ある中で「こおろぎ」、「ひみつ」が気に入ったかな。

  • 男と女の腹の中はわからないことだらけ。
    初めはぎくしゃくしていても、共に過ごす時間がふたりを家族にしていく。
    ゆっくり、じっくり、と。
    思っていることの半分も相手に伝わっていないとしても。
    知らず知らずの内に心に蓋をしていた時があったとしても。
    それでいいのだ、と思えた。

    ひとりを持ち寄ってふたりになり、三人を経て再びふたりを歩む者。
    ひとりになってもふたりぐらしを続ける者。
    強くひとりを意識しながら、ふたりを生きる者。
    ひとりではうまく流れてゆけないからふたりになった者。
    「ふたり」といっても色々ある。
    けれど、どの「ふたり」も正解不正解はない。
    「ふたり」が納得すればそれでいい。
    それが幸福なんだと思えた。
    ふたりっていいな、としみじみいい気持ちになれる物語だった。

  • しっとりした、という言葉が似合う本なきがする。
    ニート同然でヒモ同然な映写技師、脚本家な信好
    それを支える看護師の紗弓
    各々は自らの状態を不満に思い不安に思い
    でも相手のその部分には不満は持っていない
    しかし大事な会話は避け続けるので、不安や不満は解消しない
    だからと言ってものすごくぎすぎすしているわけではなく、日常は表面上はおだやかに過ぎて行く
    夫婦だからといって、お互いのことを何でも知っているわけではなく、なんでも理解できるわけではない。
    私はまだ、夫婦というものに期待しすぎていて、そのことを飲み込めはしないが、でも現実はそうなのだろう。
    秘密にしていることをばれてはいけない。秘密にしていたことで相手を傷つけてしまうから、秘密にすると決めたなら隠し通す義務があると思う。
    読みやすいので一日一遍で十日間、という感じはしないが、でもゆっくり読みたい本。
    資料室で借りた本。とてもよかったが、何度でも読み返したい、手元においておきたい!という強い感情はなく、そういう本があった、と何年かに一度思い出せたら、という感じかな。まぁ、お金に余裕があれば本棚においてあっても、良い...という上からな感じ。

  • 働かない男に優しくされるだけで満足できるほど自分を低く評価したくないと思った

  • 桜木紫乃は好き。
    北の地の空気感が、経験がないからこそ好きなのかも。
    荒涼とか寂寞とか諦念とか、話し言葉で表現しようとするのに二文字熟語しかしっくりしないところとかも好き。
    ラストで「明るき未来」、いや、「読み手の私が明るく受け取りたい未来」がかいま見えることがあるのも好き。

    この本は、著者の本の中でも好き。
    結末に明るさがほの見えるのが好き。
    言葉にすると消えてしまいそうな、小さな点のような明るさ。

  • 人と人の絆とは何によって保たれているものなのか。それをあからさまに描く物語は読んでいて多少気恥ずかしい。普段はその気恥ずかしさに振り回されて心を閉じてしまいがちにもなるものだけれど、桜木紫乃の「ふたりぐらし」には、知らず知らずの内に惹き込まれる。それは恐らく、交わされる言葉の文字通りの意味ではなくその裏にあった筈の思いが何かを繋ぎ、語られぬままに絆が深まってゆく様が描かれているからなのだろう。

    連作の短篇は夫婦二人が交代に主人公となり、その胸の内を訥々と語りながら進んでゆく。思い違いや疑心暗鬼に自問自答を繰り返す様はすれ違いと言ってもよいような話。だがお互いの気持ちは一話毎に強くなる。主人公達の視線はお互いを直視するのではない。そこには必ず第三者へ向けられた眼差しがある。それは自分の親であったり職場の人々であったり。けれど、その直接はお互いを結びつけない人間関係のさらにその先に、お互いのことが透けて浮かび上がる。そのもやもやとした思いは読む者にも伝染し、その着地点のない不安定さが、不快であるのかそうでもないのかをきちんと決めることが出来ぬまま、一篇、また一篇と進んでゆく。

    語り得ぬことがある一方で、語らずともよいことがある。そういう事ばかりが腑に落ちてくる。

    大きな幸せも小さな不幸も、全部まとめて幸福ということ、と主人公達は達観したかのような態度だ。北海道という土地柄のせいか、もちろん精神的な逞しさは女性の方が際立っている。札幌、江別、という懐かしい響きと伴に、冬の曇天の灰色が脳裏を過ぎり、不安とも郷愁ともつかぬ思いが胸の内を去来する。ひょっとしたら、石油ストーブの匂いと踏みしめる雪の感触や短い夏が連れて来る儚さに思い出のある人にしか、この小説の描く幸福というものは理解出来ないのではないか、そんな思いで読み終える。

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著者プロフィール

一九六五年釧路市生まれ。
裁判所職員を経て、二〇〇二年『雪虫』で第82回オール読物新人賞受賞。
著書に『風葬』(文藝春秋)、『氷平原』(文藝春秋)、『凍原』(小学館)、『恋肌』(角川書店)がある。

「2010年 『北の作家 書下ろしアンソロジーvol.2 utage・宴』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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