ツナグ

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 648
  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103283218

感想・レビュー・書評

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  • 私なら、誰に会わせてと依頼するだろう?と思いながら読み始めたのだけれど
    この世を去った後に、もし会いたいとお呼びがかかったら
    呼んでくれた誰かの心の重荷を少しでも軽くして
    やわらかい気持ちでそれからの日々を過ごせるような言葉をかけてあげられる
    そんな存在でありたい、と思いながら頁を閉じた。

    生きて残された人と死者との、ただ一度の再会の仲立ちをする使者(ツナグ)。
    「死者」と読みが同じ「使者」をツナグと読ませるところが、辻村さんらしい。

    お試し期間の初仕事では、祖母特製のノートを棒読みするかのような
    ぎこちなさと戸惑いを見せ、心情的には完全に生者寄りだった歩美が
    経験を積むにつれ、生者と死者両方の気持ちに寄り添って
    「ツナグ」らしく、生と死のあわいから人の世を静かに見つめ始めるのが、とてもいい。

    映画ではカットされた『アイドルの心得』の、過呼吸で苦しむ見ず知らずの酔っ払いを
    荷物を放り出して躊躇なく助けたことなど、当たり前のこととしてすっぱり忘れる一方で
    気に掛かるファンレターの内容はしっかり覚えていて、一ファンのために
    たった一度の「ツナグ」の機会を使ってしまう水城サヲリに惚れ惚れし

    演劇部の主役を巡っての諍いで、親友の心に芽生えた嫉妬と出来心は許せても
    自分の言葉を騙って、好きだった少年と会話することは許せないという
    思春期の少女独特の論理と復讐を冷え冷えと描く筆づかいに戦慄し

    死者が抱えた物語は、生きて残された者のためであって欲しいと
    息子夫婦の死への後悔に震える祖母を、信頼に満ちた言葉で温める歩美に安堵して

    この世に残る、かつて「私だった」欠片や記憶が
    少しでもやさしく温かいものになるよう生きなくては、と思う1冊だった。

    • まろんさん
      樹木希林さん、CGや特殊効果なんてなくても
      死者の魂とコンタクトできてしまいそうにイメージぴったりで
      雰囲気のある演技でした!
      口ずさんでい...
      樹木希林さん、CGや特殊効果なんてなくても
      死者の魂とコンタクトできてしまいそうにイメージぴったりで
      雰囲気のある演技でした!
      口ずさんでいた詩があまりに素敵だったので、内容をはっきり知りたくて
      迷わずパンフレットを買ってしまいましたよ~♪
      2012/10/31
    • macamiさん
      >「死者」と読みが同じ「使者」をツナグと読ませるところが、辻村さんらしい。

      私も全く同じことを思いました!こういうのすごくうれしいです^^...
      >「死者」と読みが同じ「使者」をツナグと読ませるところが、辻村さんらしい。

      私も全く同じことを思いました!こういうのすごくうれしいです^^

      まろんさん、映画もご覧になられたのですね!
      まろんさんの感想を聞き、いまさら気になってきました。(笑)

      2013/02/03
    • まろんさん
      おお、macamiさんも「使者」=ツナグの部分に辻村さんらしさを感じたのですね。
      同じ本を好きなだけでもうれしいのに、ディテールでさらに同じ...
      おお、macamiさんも「使者」=ツナグの部分に辻村さんらしさを感じたのですね。
      同じ本を好きなだけでもうれしいのに、ディテールでさらに同じ思いを共有できるなんて
      私こそ、とてもうれしいです♪

      映画は、『アイドルの心得』のエピソードがないのだけが残念でしたが
      キャストはとても雰囲気に合っていたし、
      映画でだけ挿入された詩も素晴らしかったので、機会があったら、ぜひ♪
      2013/02/03
  •  生きているうちに、一人だけ死者と会うことができる、その窓口「使者(ツナグ)」。
     生きているものは、使者を介して、たった一人、たった一晩、会いたい死者に会うことができる。憧れていたアイドルに、母親に、親友に、婚約者に、生者は会いたいと願う。

     会いたいと願う人がいて、会うことが実現する。そこにドラマが生まれるのは、いわば当たり前。この作品のすごいところは、「使者(ツナグ)」自身にも焦点を当てたところだと思う。死者とつながれる人なんて、この世の人じゃないんだろうと思っていたら、使者である彼は、普通の男子校生徒。
     生者が死者を呼び出すなんて、傲慢なことではないのかと考えあぐねる歩美くん。ただ、憧れのアイドル、サヲリに会った後の平瀬愛美が、まるでサヲリのように生き生きとしているのを見た彼は、自分の考えを改める。

     「死者を、自分の生に活かす。その生者のわがままは、肯定されてしかるべき感情だ」、と。

     死んだ人の時間はそこで止まってしまう。けれど、生者である私たちの時間は流れ続ける。私たちは、傲慢に、図太く、生きていくしかない。

     そして、私は死んだ後、誰かに呼ばれるような、そんな生き方ができているのかな。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「そんな生き方ができているのかな。」
      そうありたいですね。
      読む前は、逢いたい人のコトを思い浮かべましたが、、、
      話を変えて、映画で歩美役を...
      「そんな生き方ができているのかな。」
      そうありたいですね。
      読む前は、逢いたい人のコトを思い浮かべましたが、、、
      話を変えて、映画で歩美役を演じた、松坂桃李はピッタリだと思いました。。。
      2013/01/21
    • HNGSKさん
      にゃんこさん>>私も、この作品を読んでいて、樹木希林さんと、松坂桃季くんが出ては消え、出ては消え、しました。ピッタリですね。
      にゃんこさん>>私も、この作品を読んでいて、樹木希林さんと、松坂桃季くんが出ては消え、出ては消え、しました。ピッタリですね。
      2013/01/22
  • 「ツナグ」に依頼すると、一生に一度だけ死者に会うことができる。
    会いたい人に会えたからといって 必ずしも癒されたり、救われたりするわけでもない。会うことによって後悔が残るだけのこともある。

    癒されたりするとよかったな~と単純に思えるけど、後悔が残るのは切ないし、怖いな・・とも思う。

    5つのお話からなっているけど どれもが最後に繋がっていて 辻村作品!!と思わせてくれる。

    私だったら誰に会いたいだろう・・会いたい人は何人かいて選べないな・・
    また私が死んだとき 会いたいって思ってくれる人がいたらいいな~

    • まろんさん
      おお!最後に繋がる短編集、大好きです♪
      「ツナグ」という設定もおもしろそう!

      辻村さんの本、上巻とか中巻しか手許になかったりして
      なかなか...
      おお!最後に繋がる短編集、大好きです♪
      「ツナグ」という設定もおもしろそう!

      辻村さんの本、上巻とか中巻しか手許になかったりして
      なかなか読めないでいるのですが、
      これは1冊で読めるんですね。
      図書館にあるか、早速調べなくちゃ!
      2012/07/03
  • 死んだ人間に一度だけ会える、死者と生者を繫ぐ使者(ツナグ)の話。連作短編になっています。

    実際にはありえない設定なんだけど、それぞれにきちんと人間ドラマがあって、さすがだな〜と思わせてくれました。わたし、完全に辻村深月信者になってるかも…(笑)

    死んだ人間に会いたい、会って聞きたい事が沢山ある。思い残すのは死んだ人間だけじゃない、残された人間の方がその呪縛に囚われてしまう。
    特に自分に近い近親者ならなおさら、後悔や疑問を持たないなんて人はほぼいないでしょうから。

    死者に会う事で前向きに気持ちを切り替えられる人もいれば、逆に重い十字架を背負ってしまう、
    単なるファンタジーで終わらないところが良かったです。

    なんと、『ツナグ2』が今連載中との事。楽しみですね。映画も観なければ!

    • mattun08さん
      「思い残すのは死んだ人間だけじゃない」本当にそうだと思う!辻村深月は、人間のマイナスの部分もちゃんと描いているからすごいと思う。
      「思い残すのは死んだ人間だけじゃない」本当にそうだと思う!辻村深月は、人間のマイナスの部分もちゃんと描いているからすごいと思う。
      2014/09/12
    • 及川さん
      遅れてしまいましたが、こないだコメントを頂戴しました及川です。 文章が上手いと言われたのは初めてで、素直に嬉しかったです。お礼申し上げます。...
      遅れてしまいましたが、こないだコメントを頂戴しました及川です。 文章が上手いと言われたのは初めてで、素直に嬉しかったです。お礼申し上げます。
      『ツナグ』に限らないですが、辻村作品は少し特殊な設定がありますよね。それを上手に活かしているところ、そしてただの青春ミステリとしてだけでなく感動できるところがすごく好きです。『ツナグ2』も楽しみでなりません。
      2014/12/27
  • 読み始めはそんなでもなかったが、
    読み進むほどに、深く感じられた。
    視点が依頼者側、亡くなった人、使者といろいろあって、
    グッと深くなっていると思う。

    もしも本当にこんなことができるなら、
    私は誰に会いたいかな・・・会う決断はできるかな。

  • 生者と死者を会わせることができる存在、ツナグ。そのシステムにはいくつかルールがある。

    ①依頼人が死者に会えるのは一生に一回だけ。
    ②死者も生者に会えるのは一回だけ。ただし、死者のほうからオファーすることはできない。
    ③会えるのは月の出る夜、夜明けまでの限られた時間まで。

    読んでいてとても魅力的なシステムだなあと思った。もし、現実にツナグのような案内人がいたら、僕は依頼するだろうか。でも、一人に一回しか会えないなら、ちょっと選べないな。会いたい人がたくさんいすぎるから。後悔のないように生きよう――。読み終わって一番最初に思った。普段変わらずあなたの傍にいる家族、友人、恋人...いつ離れ離れになるかわかりません。言いたいこと言っていますか。両親とはもう何年も会ってないなあ、なんてことになってませんか。当たり前が当たり前でなくなるその前に、当たり前のことに日々感謝しながら生きなければと思います。映画化も決定しているので、映画を観る前にぜひご一読を。

  • 辻村深月の『ツナグ』を読了。

    一生に一度だけ死者に会わせてくれるという、SF(少しフシギ)的な力を持つ使者(ツナグ)の話。

    全5章からなる短編連作小説となっているが、使者を中心としつつも、それぞれの章の主役というのはまた別にちゃんと存在する。

    アイドルを心の支えにしていたOL、母に癌告知できなかった頑固な息子、親友に嫉妬していた女子高生、婚約者の帰りを待つ会社員。そして使者自身の物語。

    最初の章でいきなり「なるほど、辻村深月らしい作品だな」と思った。すべての作家に当てはまる訳ではないが、作家というのは文体や作風で判別することができる。辻村深月の場合は作風で判別できるし、とても読みやすい。

    読後感がいい話や感動した話、バリエーションに富んでいるが、やはり本領発揮していたと思えたのは第3章の女子高生の話ではないだろうか。さすがの一言…。

    最後の章、使者の話で解き明かされる謎には、少しミステリに通じるところもあって面白い。

    一生に一度だけ死者との再会を叶えてくれる使者だが、ルールがある。それは、「会えるチャンスは生者にとっても死者にとっても一度だけ」ということ。少し変わるだけでプロットも大きく変わる。

    感動も大きく変わってくる。作品内設定をきちんと決め、なおかつそれを最大限に活かしているから素晴らしい作品になり、感動も増すのだろう。

    特に、死者にとっても一度しか会えないというのは考えさせられた。自分が会いたかった死者が、自分以外の人にもう会っていたとしたら、もう二度と会えない。

    そして誰に会いたいかも。オレは家族で数人は亡くなっているが、正直決められない。家族以外になるかもしれない。

    フィクションではあるが、大切な人を考えさせてくれる感動作。

  • 駆け足で読み終えてしまった。

    あらすじを読んで感動の涙は出るだろうと予測できるだろう。
    ただ、これは感動だけの話だけではない。

    愛に包まれる涙、後悔の涙、頑張った涙、
    なんとも言えない想いで胸いっぱいになる。

    そして最後には、驚き。


    ハマりました。辻村さん。

  • この世の人間が、どうしてももう一度会いたいと願ったあの世の人間に、連絡をとってわずかな時間会うための仲介役をしてくれる「使者」がいる。ただし、会うチャンスは、この世の人間も、あの世の人間も、一度だけ、ひとりだけ。
    様々な理由から、一生に一度、どうしても会いたいと願う人と願われた人と、さらには両者をツナグ使者を描いた連作短編集だ。
    設定だけだとよくある幽霊譚やファンタジーになってしまうところを心地よく裏切ってくれるのがさすが辻村深月だ。
    最終章の「使者の心得」に至って、小さな謎や引っ掛かりが伏線として浮かび上がり、さらにはそれまで語られた四編の裏側の顔が見えてくる。
    ただ語られたように感じた前の四編が必然の物語であったことがわかり、そうして最後、とても優しい、あたたかな結末が物語の輪を閉じる。
    まるであちこちと居場所を探していた光の輪が照らす場所をようやく見つけ出したような結びの導きに、心がほっこりとした。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      映画を観て来ました!とっても良かったです。
      私にしては珍しく素直に、自分ならどうする?どうしたい??(チャンスを活かせない優柔不断な猫なので...
      映画を観て来ました!とっても良かったです。
      私にしては珍しく素直に、自分ならどうする?どうしたい??(チャンスを活かせない優柔不断な猫なので)でした。
      2012/11/08
  • 上手いですね。ありがちな設定ですが、陳腐にならないのは筆力の賜物でしょう。「待ち人の心得」が特に印象に残りました。

著者プロフィール

辻村深月(つじむら みづき)
1980年山梨県生まれ。千葉大学教育学部卒業後、2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。2011年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、2017年『かがみの孤城』で「ダ・ヴィンチ ブックオブザイヤー」1位、王様のブランチBOOK大賞、啓文堂書店文芸書大賞などをそれぞれ受賞。本屋大賞ノミネート作も数多く、2018年に『かがみの孤城』で第6回ブクログ大賞、第15回本屋大賞などを受賞し、2019年6月からコミック化される。他の代表作に『子どもたちは夜と遊ぶ』『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』『名前探しの放課後』『ハケンアニメ!』『朝が来る』など。新作の度に期待を大きく上回る作品を刊行し続け、幅広い読者からの熱い支持を得ている。2020年、河瀬直美監督により『朝が来る』が映画化される。

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