流跡

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 492
レビュー : 98
  • Amazon.co.jp ・本 (102ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103284611

感想・レビュー・書評

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  • 序盤に書かれていることがそのまんま
    それがこの作品の事だと思った。

    ここではないけどここ
    そこではないけどそこ
    今ではないけど今で
    ないけどあるし
    あるけどない
    季節は春だったり梅雨だったり。


    引き込まれて読み終えてから
    …ここはどこだろう…と思った。

    伝わりにくいと思うけど、こんな感じ。
    表紙にうっすらと金魚のシルエットがある。
    金魚の描写もある。
    イメージは「つみきのいえ」みたいな感じ
    …かな…と思っていました。
    が、サカナクションの「グッドバイ」のような…。


    常に流れつつけて、変化し続ける
    言葉の多様性が生々しい。
    言葉は生きてる、そして死もあるんだ。

    常に流れ形を変え続けるもの=文字・言葉の世界
    言葉って“水”に似ていると
    この作品を読んで思った。

    書かれていることが分からない(難しい)けど
    言葉の使い方が流れるようにきれいでぞくっとする。
    意味が分からないけど、ついつい読んでしまう
    不快感はなくって、気持ちいいとか思う
    クセになる不思議な読み心地。
    何度も読むときっといいと思う。

  • 「きことわ」は、淡い色の水彩画を何重にも合成して動かした映像のようだったが、こちらはモノクロの一筆書きが動く無声のアニメーション、波の音や川の音のBGM付きというイメージ。
    読んでいる本の文字が崩れて、線となり形を作って、男となり、女となり、昔を生き、現在を生き、最後に作者のパソコンの文字に戻り、また、崩壊する。
    人も生きては死に、焼かれて煙となり水となり、空気になり、人になり、また、煙になる。
    豊富な語彙が目に見える映像以上に世界観を映し出している。

  • 作者が芥川賞受賞作「きことわ」の前に発表した作品。
    不思議な世界が繰りひろげられています。

    主人公はもともとは妻子がいる男らしいのですが、
    気づけば、舞人、船頭、文章の読み手、書き手 etc.
    妻と子供を殺した記憶も、事実か確信がありません。すべてが現実のようでもあり、すべてが妄想のようでもあります。

    時代や性別を越えて意識がするりと異なる次元を巡ります。

    雨の日の光景、友人が荼毘にふされた煙、植物繊維がはびこる湿地・・・・。目にしているものが自分の内面のようにも思えてきます。

    つらねられた言葉が、文章となって色や温度や質感を得て、つながりのなさそうの映像たちとなって文章から浮かびあがります。

    こうして浮かびあがった光景が、ふぅっと液体や気体となって、読み手の肌の毛穴から浸みこんで、体を、心を支配してきそうです。

    好き嫌いがはっきりわかれる作家のひとりかもしれません。

  • 前衛的な幻想小説。ちょっぴりメタ。ゆらゆらと揺れる文字に頭もくらくら、酔う。

  • わたし、は何者なのか。
    どこから来て、どこへ行くのか。
    ということが一つのテーマであったように思う。
    何もかもを把握しているようで、実は何もみえてない物語、といいたいところだが、ストーリーなど、ない。その混沌こそが筆者の「わたしは何者か」という命題への混乱なんだと思う。
    おとなのための青春小説でしょう、これは。

  • 芥川賞作家、朝吹真理子のデビュー作。「きことわ」を読んで読んでみたい!と思い手にしました。「きことわ」よりももっと言葉が揺れているような、
    流れているようなそんな印象が強かったです。

    時間と人生と言葉の流れが相まって、戻らぬ流れをゆく感じ。

    言葉とは、掴めそうで掴めない生き物。
    掴んだ瞬間に指の間からすり抜けてゆく感覚がとてもリアルに感じた。

    一つ一つの言葉を丁寧に慎重に選び、はめ込んでゆく作業がとても繊細になされている作品です。

  • きことわで挫折したものの朝吹さん好きなのでこっちも挑戦。
    よかった。
    こっちも段落なくてつらつらと書き連ねてあるんだけど読みにくい、
    と感じることはなくてなんか流れにのるように読んでいけた。
    思うにきことわは女性二人が具体的にでてきてちょっと現実的だったのがおもしろくなかったような・・・。
    こっちはなんだか夢うつつのごとくひとやひとならざるものがふよふよしててすごくイメージが豊かな感じ。
    今野敏さんの映画みたいな。
    ただ書いてあるとおりで何が書いてあるのか最後のページまでいっても
    頭にはいってこないとゆーような印象もある。
    すっごく濁りのない清酒のよう。
    時代ものっぽいかと思えば現代もはいってたり
    この世もあの世もあらゆるものがまぜこぜになった世界。
    こーゆー感じ好きだ。

  • Radiohead の Kid A の様な、
    Led Zeppelin の Dazed and Confused の様なイメージ。
    流れ流され不思議な世界。
    著者はタダものではないな。

    2010 年 第 20 回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞作品(堀江敏幸氏選考)。

  • 文字は、物語は、(私)の命は、「幻」の「煙突」からたちのぼる「煙」のようにたゆたって、それぞれの「記憶」をたがいに吸いこんで。

    というのも明示されるのではなくテーマとして低く流れ、という言い訳も、朝吹さんのことばたちにくらべてあまりに世俗に根づいたものよ!それこそ「中年」的である(という言葉さえも、かの〈空気〉には内包されている。ただし、「遠遠し」さゆえあまりに淡やか!)。

    この「わかる」が「わかっていない」(せまれない)感じは、『どつぼ超然』(町田康)読んだときと近い。

  • 人も時間もシームレスに入り交じり、生臭い川にたゆたっていく。不足分を払わなければならない生業、しかもそれは常におにになったり、もののけになったりする危険が伴う、やめることができるかどうかもわからない生業。それは「生業」というより「生の業」だ。どこか町田康の小説を彷彿とさせる言葉使いも面白い。

著者プロフィール

朝吹 真理子(あさぶき まりこ)
1984年、東京生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科国文学専攻前期博士課程修了。「流跡」でBunkamuraドゥマゴ文学賞を史上最年少で受賞。「きことわ」で芥川賞受賞。

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