流跡

著者 :
  • 新潮社
3.15
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本棚登録 : 492
レビュー : 98
  • Amazon.co.jp ・本 (102ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103284611

感想・レビュー・書評

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  • すごいなぁ。「きことわ」も素直にすごい、と思ったけどデビュー作のこっちもすごい。文才の化け物みたいな人だな。

  • 朝吹氏の、ことばに対する誠意のようなものがうかがえる作品だと感じた。

    デビュー作には作家の全てが詰まっている、という話はよくある。『きことわ』で朝吹氏を知り、その後『流跡』を読んだ私は、まさにその通りだと思った。

    個人的には、『きことわ』よりもことばの流れが朴訥としていて好感が持てる。
    ただ、小説としての物語内容までもがどこかへ流れていってしまうのではないだろうか、と感じさせられる危うさもある。常に動き続け、小説の枠外へはみ出てしまいたいと願う物語世界がそこにある。

    置き去りにされた枠組みと、枠組みから流れ去った世界。その生々しい流跡が確かに感じられる作品だと思った。

  • なんだろう、これ。とても好きな感じの文章。
    たかだか読書の描写に延々かける冒頭から引き込まれて、川のようにどんどん流されて、すとんとつながる最後に心地よくなる。
    湿度が高いのにサラッとしていて、リズムのいい文体がどうも古文を読んでいるようで不思議な読み心地だなあ、と思ったら著者は近世歌舞伎を専門としている方でした。なんとなく納得。

  • 二度読んだ。
    一度目は全く解らず何日かおいて二度目に入ってようやく解った気がした。

    普段乱暴に本を読む自分はこの本の構成
    (これは特に複雑で解らない時にはこの作品そのものが不可解なものとしか見えなくなる)
    や文章などに感じられる繊細さを判ってもそれを情緒や意味として解き明かすことが出来なかったが「紙を扱うように」繊細に扱って読んでみたら面白く読めた。

  • 凄い才能。
    もう一度、読みたいと思う本に、
    出会った。
    言葉の感覚が凄い。
    小説でも会話が一切なしで、
    原稿用紙換算約100枚弱。
    文が、妙音を出している。
    いや、異音とも云うのでしょうか。
    知らない言葉がたくさんあった。
    昔の言葉だろうけれど、
    それだけでも、
    値打ちがある小説。
    非ポップゆえに、
    読みにくいゆえに、
    もう一度、
    読んでみたい、という
    魅力があります。

  • 先ず言葉に感心しました。忘れていた言葉にここでたくさん出会いました。辞書を引いたりしてうる覚えな部分の確認、これだけでも昨今の本にない成果でした。内容に関しては触れないようにします。こういった、純文学の好きな方には是非読んでいただきたい本だし、この本を要約したり、何かをひもといたりしてはせっかくの楽しみが、薄くなってしまうような気がするからです。
    わたしが辞書を引いた言葉のいくつかをあげてみようと思います。無知の恥ずかしさを押さえて。。。

    <?留> これは係留とも書くようで、繋ぎ止めること。?留機雷。反語として浮遊機雷というような言葉を聞いたことがある気がしました。

    <誘かれる> 「おびかれる」と読みます。だましてさそう。と辞書にはあります。これはルビがふってあったので気がついたのかも。ざっと読むのになれてしまっているわたしは、ルビがなければ「さそわれる」かなんかと誤読してそのまま気がつかないかと思います。

    <うごもち>  土が高く盛り上がること。盛り上がるよりぶるぶる動いている様が見えるような表現でうまいです。

    <おおどかな> おうようでのびのびとしているさま。とありました。そして辞書にはこの先頭に「人の」とついていました。本文の中で、この表現は金魚に使われていました。ということは斬新な表現だということです。おもいきった行動です。

    いい環境で育った人だけあります。きちんと訴えるものを落とさずにここまでこだわれるのは天性でしかないと思いました。

  • 人や人でないものがぬるり蠢き、どろりと消える不思議で流麗な奇譚。鋭い感覚に基づくレトリックの多才さ、文語的な語彙の多さ、すぐれた小説と語るに必要なものはすべてそろっている。

  • 「きことわ」を読んでファンになったので、次にこの処女作を読みました。私はこちらの作品が好みですね。言葉の使い方、特に平仮名と漢字のバランスの面白い文章などは読んでいて惹き込まれる魅力がありますね。内容は流れる水の如く、いくつものストーリーが展開されていき、静かで幻惑的な世界が広がります。若くして素晴らしい才能を持った文学作家だと思います。新作楽しみにしています。

  • 2回読んだ。1度目は通しで,2度目はよめない漢字やことばを電子辞書で確認しながら読んだ。イメージの世界と,皮膚感覚と,緻密な細胞にまでわたる科学的な表現と,現在と,いにしえと,すべてがないまぜになって時空を飛び回り,舞台の仕掛けががつぎつぎにめくられて春のけしきになったり,秋になったり,登場人物もひとになったり,おんなになったり,ひとでないものになったり…で,最後にはそれを書いている人のパソコンの画面になって,文字になって,その文字のドットのひとつひとつになっていく…というなんとも自由自在でものすごい小説に出会った。川や,海や,みずたまりなど,みずの出てくるイメージは,タルコフスキーの映像をほうふつとさせた。

  • 読みはじめから違和感がある。普通の小説ではない。2ページ目を読み終わった後ではやくも1ページ目を読みなおした。だからといって読みにくいということではない。どちらかといえば、読みやすい。幻想的な描写が続き、夢十夜のようなものかと思ったが、どうやらそうではないらしい。気がついたら、語り手が中年のサラリーマンになっていた。最後でどういうことかだいたいわかるけど、それはこの小説の面白さにあまり関係ない。いややっぱりあるかな。よくわからない。多次元に展開する人の思考を文章で表現した、言ってみれば世界地図のようなもの。違うかな。

著者プロフィール

朝吹 真理子(あさぶき まりこ)
1984年、東京生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科国文学専攻前期博士課程修了。「流跡」でBunkamuraドゥマゴ文学賞を史上最年少で受賞。「きことわ」で芥川賞受賞。

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