- Amazon.co.jp ・本 (141ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103284628
作品紹介・あらすじ
永遠子は夢をみる。貴子は夢をみない。葉山の高台にある別荘で、幼い日をともに過ごした貴子と永遠子。ある夏、突然断ち切られたふたりの親密な時間が、25年後、別荘の解体を前にして、ふたたび流れはじめる-。第144回芥川賞受賞。
感想・レビュー・書評
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貴子と永遠子。だからきことわ。
命名センス以外はあまり響かず…。
芥川賞受賞作なのだけれど、地味な印象を受けました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
女性の無意識下のあの願望を刺激するのか
ツイッターでやたらとつぶやかれている作品。
発売から結構時間が経っているのに言及されているので気になっておりました。
この朝吹さんというのは何かのきっかけで小説を書くことを薦められて
作家になったという変わり種の方、というぼんやりした知識での読書です。
なるほどこれは、独特の世界に浸らせてくれる作家さんだなと納得です。
間怠く、とかなんとなく意味は浮かぶけれども、正確な意味はわからず、使ったことがないという絶妙に新鮮な単語のチョイスたち。
辞書で調べても広辞苑では出てこないような漢語だったり、あっても出典が新古今和歌集とか、源氏物語とかそういった古い言葉たち。
興味対象として読んでいた書物が相当なところだったんだとお見受けします。
本のプロフィールに近世歌舞伎で大学の博士課程在籍って書いてありますね。
そうやって得た言葉たちの中から現代21世紀に使うそのチョイス力がすなわち才能か。
また
音に合わせて道路灯が符のようにつづいた。たしかに時間のうえを走行していた。夢の時間軸ではいったいどの線上を走り過ぎているのか。
という文章で、現在過去未来という時間経過を線のように見せ、その線が伸びて世界が広がって行く。
そのように時間の経過を感じさせながら、今と25年前とを巧みに行き来する。
あとは、きこ・とわの二人があいまざっていく感覚、その記述か。
まるでちびくろ・さんぼの絵本のとらのようにとけあっていく様が随所に見られます。
ツイッターで見るファンに圧倒的に女性が多いのが、女性にはこのようなとけあいたい願望が無意識下にあって、それを見事に明示し、刺激するからなのではないかな、と感じました。
逆に男性の全くわからない、伝わらないなんて感想もお見かけしたのはそのあたりに通じるのかな。
この世界にひたりに他の作品も読みたいなと思いました。 -
150ページ弱の短い小説だったのであっという間に読了。2011年に芥川賞を受賞した作品で、若手の美人女流作家だから話題にものぼって記憶にも残っていたけれど、読んだ人の評価はけっこう手厳しかった記憶もあって…
何かを伝えたい的な力強いエネルギーは感じない小説だった。
文章はすごく綺麗で、平仮名が多めで、雰囲気としては童話みたいなものも感じて…文章自体は江國香織さん辺りが好きな人ならけっこう好きなんじゃないかな、と思った。
でもはっきりとしたストーリーがないから、伝わってくるものは少なかった。白昼夢を見ているようなお話、というのが私の感じたこと。
数年前まで芥川賞の審査員をやってた石原慎太郎氏が、最近の芥川賞受賞作は伝えたい力を感じない的なことを言って審査員を降りてたけれど、それも時代の流れで書き手も変わっていって、団塊の世代より上の人たちみたいなハングリー精神を今の若い人はさほど持ち合わせていないわけで、伝えたいことはない、っていうのもひとつのスタイルになりつつあるのかな、と思う。 -
母と叔父と一緒に葉山の別荘を度々訪れていた貴子。最初はその別荘の管理人の母に連れられて、そして次第に自らの意志で夏のひとときを貴子と過ごすために永遠子は別荘に向かう。
別荘でのやりとりも、海辺で過ごす時間も特に印象的ではなく、日常とはそういうものなのだとでもいうように。
当時15歳の永遠子と8歳の貴子が葉山の別荘地で過ごした夏以来、
25年ぶりに会い、当時を回想する。特別な事件があるわけでなく、鮮烈な思い出があるわけでもない。別荘を処分することになった貴子に立ち会うために会って、その当時の思い出を2人でなぞる。
国語の教科書に載っていそうな文章だと思った。
だとしたら、登場人物の心理は?
これは何を暗喩している?
マーク模試に馴らされた世代は、つい正解を探してしまう。
悪い癖ですね。
逗子、葉山。
子どもの頃、GWや夏休みに幾度か訪れた。やたらと国道が渋滞していた。大人になってシーズンオフに訪れた時、海辺は人影もまばらで国道も混んでいないことに驚き、とても不思議な感じがしたことをふいに思い出した。
久しぶりに会った友人と「あの時・・・。」と話をすり合わせながら話すような、同じものを見ていながら感じ方が違っていたのを確認するような、そんな気持ちをこの本は思い出させる。
日頃好んで読む本は、登場人物に感情移入して泣いたり笑ったりできるものが多い。けれど、この話は読みながら自分の思い出と向き合っているような気がした。 -
芥川賞に彰される見事な作品でした。再会した”キコ”と”トワコ”の過去の回想と折あるごと見るトワコの夢、そして二人のそれぞれの白昼夢の世界の中で二人の心の襞の隙間に在るものや記憶から蘇る感情の遷移が実にうまく表現されていました。なかなか純文学といえるものが商用小説に押され少なくなっている昨今、新進の純文学といえるでしょう。生粋の文学家族の中で育った朝吹真理子氏ならではの作品と思います。この先の作品がとても楽しみです。
読後感=透明な文書に不思議な懐古感が甘く苦く切なく・・・ -
難しかった。
話自体はそんなに難しいわけじゃないから、読み進むけど、理解に時間がかかった。
YAばっかり読んでいるせいかな?改行が少ない文章を読むのにも苦労した。
たまには、こういう文学作品も読まなきゃダメね。
かなりの読書家じゃないと高校生には難しいかな。 -
夏が来るたびに訪れた別荘で幼い頃を共にすごした永遠子と貴子が、25年ぶりに別荘の解体を機会に再会する。時の移ろいの不思議な感覚や、記憶の作り出す幻影の切なさを独特の文章で書いている。芥川賞受賞作品というのは、私には読みにくいのかもしれない。短くて良いお話なのだけれどそのわり読むのに時間がかかってしまった。戻らない子供時代。いなくなった人。移りゆく景色。月さえも1年で3.8cm地球から遠のいているという。変わらないものなんてないけれど、だからこそ幼い頃を共に過ごした友の温もりが心を暖めるのだろう。
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芥川賞受賞作。
「貴子(きこ)」と「永遠子(とわこ)」の話なので「きことわ」。
あいまいな記憶と目の前の現実がとろりと交じり合い、本当に起きたことなのか、幼いころの記憶違いなのか、はたまた夢だったのか、あるいは夢を今、見ているのか。
昔と変わらないものもあれば、変わってしまったものもある。
昔と変わらない二人、昔と変わってしまった二人。
二人に共通の記憶、自分の記憶にない相手の記憶。
永遠子には永遠子の現実があり、百花という一人娘と旦那がいる。
貴子には貴子の現実があり、母を亡くしたという悲しみがある。
永遠子の現実、貴子の現実、永遠子の記憶、貴子の記憶、永遠子の回想、貴子の回想、そして永遠子の夢、貴子の夢。
時間と空間が、語り手の視線とともに自由に行き交う。
作品の語り手は三人称なので、視線の行き来は錯覚なのだが、戸惑う読者も多いかと思う。
僕は戸惑うどころか、この行き来が非常にスムーズなのに驚き、とても心地よく感じた。
25年ぶりに再会することとなった貴子と永遠子の物語。
物凄いことは何も起こらない。
ただそれだけの話である。
僕にはそれだけで充分だった。 -
評価低すぎないでしょうか…。
40歳の永遠子という女性が、昔遊んだ年下の貴子と共に、古い別荘を片付ける話。永遠子、の名前に象徴されるように、時間と記憶と夢について立ち止まり言及されることが多い。時間の話があからさまに多い気がしたけど、確かに、そんなに、日常で「長さの違う時間」を感じる機会って多いんだなと気づいた。
会話の端々の化石の話だったり、食事風景だったり、別荘の庭だったり、出てくる言葉、紡がれる情景、物が全て素敵で、また登場人物がふと思う考えがキラリと考えさせる感じで、センスがある作者さんだな、と思った。
ほどけて絡み体温を移し合う2人の少女。エロくはないんだけど、なんか境界がわからなくなるほどの関係ってときめきがある。
髪の毛を引っ張られる、真相はいかに…??
著者プロフィール
朝吹真理子の作品






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