四龍海城

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 288
感想 : 66
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  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103299813

作品紹介・あらすじ

健太郎の家の近くの海に、ずっと前から不気味な塔が建っている。地図にもインターネットにも載っていない、謎の建物。夏休みの最初の午後、憂鬱な気持ちで海岸にいた健太郎は、気が付くとその塔に「さらわれ」ていた。そこには感情がなくなった人々の群、閉じ込められた十数人の大人たち、そして昏い目をした少年、貴希がいた。健太郎と貴希は次第に心を通わせ、塔を出るための「出城料」を共に探し始める…。少年たちのある夏、切なすぎる冒険譚。

感想・レビュー・書評

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  • ラストが切ない。一緒に外に出ていれば、もしかしたら、もしかしたらいつか、また出会えたかもしれないと思うと。一人は約束を信じ、一人は思い出を大事にした結果、二人の道は永遠にすれ違ってしまった。でも貴希は後悔しないだろうし、健太郎はトランペットを聴くたびになぜだか胸が締め付けられるような想いがするのだろうと思うと、じんわりと胸に迫るものがある。
    …でもやっぱり、貴希はガキで、大馬鹿者だ。

  •  乾さんの本好きです。城から出るための「出城料」が何であるか、途中でなんとなく予想はつくのですが、それでもそれぞれの下した決断のせつなさに茫然としてしまいました。
     この本に限らず私たちも日常の中で常に決断を迫られていると思います。いつか失うとわかっていても手に入れようと思うのか、手にしたものを然るべき時にきちんと手放すことができるのか。きっと、未来のために今を捨てることができ、手にした過去を後悔しないようになるのが大人になるということなのでしょう。
     いろいろ解決していない謎もあったような気がしますが、本編にはあまり関係ないですし、現実ってそんなものですよね。だらだら後日談なんて書いちゃわないところも余韻を残していてよかったです。

  • <内容>
    日本領海内にありながら、その存在を認められていない不気味な塔「四龍海城」。そこに閉じ込められた2人の少年同士が交わす友情とほの暗い冒険の物語。

    <感想>
    不穏な城、内部の町、感情を失った城人たちなど、細かい設定がなかなか面白いファンタジーだった。物語の鍵である「出城料」については結構早い段階で気付いてしまい、また、そこから最後の結末までもなんとなく予想がついてしまったのがちょっと残念。ただ、それでも貴希と健太郎の友情の描写が眩しく綺麗で、だからこそわかっていてもラストは切なかった。

    読んでいて共感を覚えたのは、2人の少年よりも関という登場人物だった。貴希や健太郎よりも後から入城しながら、2人を明るく励ましつつ未来への道標を立ててやる人物として描かれており、読んでいて気持ちのいいキャラクターだったように思う。末っ子だからこそ、歳若い少年たちを前にして兄貴面をしてしまうメンタリティみたいなものもちょっと自分に似ていて、中盤は関と自分を重ねながら読んでしまった。思えば自分は主人公たちよりも関のほうの年齢に近く、彼のように少年たちに良い影響を与えていかねばと反省する次第。

    ともあれ、少年たちの友情や関を含めた3人のやりとりが妙に温かく微笑ましい一冊だったと思う。

  • 読んだことを後悔しそうになるほど切ない話。
    でもすごく大事なことが描かれている。
    映像化されたら美しいだろうなあ。

  • オホーツク海に佇む謎の影「四龍海城」とは、いったい何を意味するのでしょう(電力会社という設定なのですが・・・) そこに入ってしまった者は「出城料」を支払わない限り、出て行く事が出来ない。その「出城料」が何なのか、謎を追い始める二人の少年。

    ファンタジーは、ちょっと苦手。。。でも、この不思議な世界観は楽しむことが出来ました。

    「・・・もう二度と戻らない時間を見ている気がする。きれいに思うのはきっとそのせいです」少年貴希の言葉が印象に残ります。

    余談ですが、日本の総電力の四割以上を担える波力発電所、本当にあったらいいのに。。。

  • 中学生の夏休みの出来事…にしてはハードな設定だ。

    大体、学校もソコへは近づいてはいけないと言っている時点で少し無理があるか?

    半分位読んでいて大体コレが出城料かな?というのは判るのでは。

    ジャンル的には青春物でしょうか?

  • あまりにも切ないラストに愕然。少年たちの心の動きがみずみずしく、希望も見えて、輝いていた。それだけにあのラストはいたたまれない。泣けてくる。

  • 「四龍海城」という北海道近海の謎の城に拉致されてきた男子中学生2人、城を出て日本に戻るには「出場料」が必要で、それが何かを探るうちに、2人の間に友情が生まれる。

    いよいよ城を出られるときの2人のやりとりが切なかった。なんでああなるのよー!という思いでいっぱい。違う結末が見たかった。

  • 切ない。苦しくなるラスト。
    でもそれが美しく尊い…

    だいたいの謎解きができた後も、ラストはどうなるのかとハラハラ。
    序~中盤の説明文が長くて挫折しそうになったけど、最後まで読んで良かった。
    泣いた。

  • 北海道の沖に浮かぶ地図にものっておらず都市伝説のように伝わる謎の塔「四龍海城」に迷いこんでしまった少年のお話。「出城料」を払わなければ出られないが出城料がいったい何かもわからず、出会ったもう一人の少年と探して一緒に帰ろうと試みる。
    出られなければ無気力になり、閉じ込められ城人となってしまう…というダークファンタジー。

    何このラスト!!こんなの、嫌なんですけど!!もう少しなんとかなるのかと思ったけど、こんな終わり方なの!?と読後感すっきりせず。途中は読みごたえもあって面白かったから、最後はちょっと「えーー!!」が残る。

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著者プロフィール

乾ルカ
一九七〇年北海道生まれ。二〇〇六年、「夏光」でオール讀物新人賞を受賞。一〇年『あの日にかえりたい』で直木賞候補、『メグル』で大藪春彦賞候補。映像化された『てふてふ荘へようこそ』ほか、『向かい風で飛べ!』『龍神の子どもたち』など著書多数。8作家による競作プロジェクト「螺旋」では昭和前期を担当し『コイコワレ』を執筆。近著の青春群像劇『おまえなんかに会いたくない』『水底のスピカ』が話題となる。

「2022年 『コイコワレ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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