- Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103300120
感想・レビュー・書評
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内田樹さんが、道場兼自宅を建設したときのエッセイ。
いいなとおもった点。
(1)飛騨の檜と加古川の杉をつかい、左官による塗り壁、淡路の瓦をつかった伝統木造工法であること。
(2)下の道場は、合気道と能の練習にのみ使用する。管理は書生に任していること。
(3)書斎は、白木の床に白木の本棚、天井まで本を整理できること。
内田さんは長く、哲学を神戸女学院で教え、現在は、文筆業と合気道の先生として活躍。
やはり、若者に教えるということはうらやましい。自分もたくさんの都市計画に関する経験、知識を積んできたし、これからも東日本大震災の復興と災害法制の見直しに全力をあげるつもり。
一段落したら、この経験と知識を是非、若者に伝えたい。何か法学部でも公共政策大学院でも都市工学科でも建築学科でも、お役に立てる話ができると思う。
災害法制の見直し、あと1年間で決着つけるので、それ以降、是非、若者に教える機会を与えてください。強く念じればかなうと合気道の多田先生がおっしゃていたそうだが、自分もそう思って強く念じる。 -
12/08/06。
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建築家サイドの「みんなの家」に続き、施主サイドの「ぼくの住まい論」を読む。
凱風館が建つまでのエピソードがより濃く感じられたのは勿論、住まい道場としての「場」が語られて、内田先生の思想が形を持ったものなんだなぁと納得。
人々が集うのは、こんなに風通しが良く、大きな人がいるからこそでしょうね。
箱よりヒトなんだと思いました。 -
書店の棚で何気なく手に取ったのが「みんなの家。建築家一年生の初仕事」。表紙帯に”施主の希望は合気道の道場と能舞台のある武家屋敷みたいな家”という文句に??単なる建築の話では無い感じがぷんぷん匂う。更に良く見ると施主は(個人的には読んでないけど)「日本辺境論」「街場の教育論」で知られる内田樹というではないか。何故に学校の先生が道場で武家屋敷?と更に疑問が膨らみ購入。
著者の光嶋祐介は大学を出てから欧州に留学し、ドイツの設計事務所で4年ほど修行を積み、日本に帰ってきて時分の事務所を開いたばかりのまさに建築家一年生。とは言え、修行時代の逸話を読むと、随分と人懐っこいというか物怖じしないというか旅先で有名建築家の事務所を発見するといきなり飛び込みで面会を求めたりするような人物。
その人懐っこさが生かされたのか、知り合いに誘われ麻雀に行ったらそこに居たのが内田で、「家を建てたい」と言うので「是非やらせて下さい」と答えたのがこの武家屋敷建築に携わる第一歩というのだ。この人懐っこさがずっと年上で一家言ある施工会社・棟梁・瓦職人・左官職人らを纏めて一軒の家を完成させたのだろうという気がする。
但し、施工会社も棟梁も使用する木材も瓦も左官も実は皆、超一流。余りにもオールスターでちょっとばかり鼻白むところが無いわけではない。このメンツでロクでもない建物は逆に建たないだろとも思ってしまう。苦労らしい苦労もないし、あの赤瀬川源平邸建築(屋根にニラが植えられている!)の際にあったような行き当たりばったり感が無いのがちょっとばかり物語性を損ねているのかも知れない。
唯一、面白かったのが光嶋が内田に提案した設計案に対する反応だ。「この水槽みたいな四方をガラスに囲まれた中庭のテラス、きっと綺麗だけど掃除はどうするの?」「建築家のアイディアはスペース・オリエンテッドなあまり生活者の視点を軽視しがちだと思うな」という至極真っ当な意見。確かに有名建築家やTVで紹介されるデザインのなかにはこういう機能性に欠けるものが多々ある(例えば東京都庁、水漏れが凄いらしいし、一般家屋の吹き抜け・・・冬は寒いだろうなと思わず思ってしまう)ので常々疑問に思っていたところだが、明確に拒否するところがなんとも良かった。これを肝に銘じて、折角良い才能を持つのだからデザイン第一の建築家に成らないで欲しいものだ、なんて思ってしまう。
で、これを読んだ直後に今度は内田自身による「ぼくの住まい論」が出た。今度は発注者側の視点なのでこれも乗り掛かった船、とばかり購入。そこには大学を定年退職し、道場を作りたい、公共の場を作りたい、みんなが使う家を作りたいと念じたことが通じて、どこからともなく資金も知恵も集まってきたと述べる。パスをするプレーヤーのところへボールが集まると比喩を交えているが、それが多分、内田の言いたいところなんだろう。
そして最後の章にまたパスをする喩えが出るのだが意外な含蓄があり納得できるところだ。「貨幣というのは交換を加速するために発明された商品です」「手元に来たら間髪を容れずにただちに次のプレーヤーにパスをしなければなりません」「だから貨幣はそのような金離れの良いパッサーのところに吸い寄せられてくる」と言う。まさに金は天下の回り物ということだ。更に「身体という限界を超えた消費をしようとすると、(中略)もうあとは貨幣を貨幣で買うしかない」というようなくだりには、昨今の金融バブルとその崩壊の過程を見事に表わしているとも言える。なぜか家の本を買ったはずなのだが経済の話になってしまったが、建築の話は光嶋のほうが詳しいのだから仕方が無い。 -
家を建てる人も建ててしまった人も。
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7/29 ,12 読了。
あまりにも沢山のことが頭の中に流れ込んできて、
まだ整理つかない。
『みんなの家。』とおなじく、清々しさ爽やかさを感じた。
いい「氣」を運んでくれる本。
それに加えて、
内田樹さんの哲学が大変刺激的だった。
日本の未来についてもよくよく考えさせられた。
『みんなの家。』→『ぼくの住まい論』
の順に読むのがいい。
休み明けに貸してね。
休み明けに貸してね。