これはペンです

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 977
レビュー : 150
  • Amazon.co.jp ・本 (173ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103311614

作品紹介・あらすじ

文章の自動生成装置を発明し、突飛な素材で自在に文章を生み出す叔父と、その姪の物語「これはペンです」(芥川賞候補作)。存在しない街を克明に幻視し、現実・夢・記憶の世界を行き来する父と、その息子を描く「良い夜を持っている」。書くこと、読むことの根源を照らし出し、言葉と人々を包み込む2つの物語。

感想・レビュー・書評

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  • この本を読むために、これまでの何十年、自分は読書をしてきたのではないかと思った。

    文章の美しさとリズム、パズルや数式を解くように、自分の頭のなかで展開されていく情景。言葉を読み、書くこととは何なのか、その答えの物語だ。

    『これはペンです』という、洒落た題名も、装丁も、何から何まで良い。

    文章の自動生成を研究し、さまざまにとぼけた手紙を送りつけてくる、実在するかどうかも不明な叔父と、それを解読(読解)しようとする姪。表題作の『これはペンです』に照らされることで、併録の『良い夜を持っている』がさらに儚く切ない物語となっている。

    この人の書く、文学の方向性を維持しながら、言葉の可能性を探る文章は、読んでいて本当に気持ちがいい。

    実験性やSF作品の文脈で評価されることが多いが、円城塔は、稀代のロマンチストなのだと思う。

    今年は、震災を隔てて出版された、『こちらあみ子』(今村夏子)と、この作品で、ほぼ満足。つながった。

  • わりと読みやすかった。けれど、読みやすいこととわかりやすいことは、また別の問題だし、わかりにくいからっておもしろくないかというと、それもまた別の問題。満喫しました。

  • 文章の生成に関して思考を展開する「これはペンです」、決して忘れない超記憶の持ち主を描く「良い夜を持っている」の2編。
    やはり円城塔は難しい。しかしこの眩暈がするような読み心地はけっこう好き。言葉の根源を掌に乗せて差し出されているような気がする。

  • 表題作の『これはペンです』と、『良い夜を持っている』の2編を掲載。
    『これはペンです』は最初の方に「疑似論文生成プログラム」というのが出てきて、神林長平の『言壺』中の一編を連想したのだが読み進むうちにどうやら違うということに気がついてきた。
    姪と叔父の物語、言葉を題材にしている、それはわかる。
    しかし、「なんだこれは?」というのが読後の正直な感想である。
    そして、本は静かに答えた「これはペンです」

    『良い夜を持っている』
    「これはペンです」の登場人物を想起させる記述があるが、明示されていないので実際のところは分からないし、それは本質ではない。
    不思議な記憶力を持った男の物語である。しかし、この表現ではミスリードになってしまう。
    この物語をどう解釈すればいいのか分からない。そうさせる魅力は何なのか分からないが、しかし、くいいるように読んでしまった。

  •  文章の自動生成装置を発明し、擬似論文生成事業を成功させた叔父と、その叔父から受け取る謎の手紙を解読し続ける姪の物語。
     「叔父は文字だ。文字通り」と、叔父の正体を探る姪。あらゆる推論をすり抜ける叔父は、小文字の他者であると同時に大文字の他者でもある。
     馴染みの薄い理系知識も散りばめられているが、その難解さもユーモラスさで解きほぐされ、そして読後感はなぜかほのぼのとしている。
     あまりに面白くて、続けてもう1回再読してしまったよ。

  • 「これはペンです」「良い夜を待っている」の2篇。小説です。
    私なんかは小説に「今の弱い自分に何かサプリとなる言葉を」なんて求めてしまうので、その心づもりで読もうとすると、まず読み進められません。
    けれど、そういう効果を持つ作品だけが小説じゃないんだよ、と切り替えると、途端に面白くなりました。
    内容云々というより、自分の既存を良い意味で変えてくれた、という面に星4つです。

    要所要所で「ここの文章は円城さん、ニヤニヤしながら書いたんじゃなかろうか?」と疑うほど彼自身の哲学を散りばめてる箇所があって、こうやって自慰的に文章を書く人、嫌いじゃないな、と思いました。

    内容についてのレビューは正直できません。結局何も残らないんだもの笑

  • これはパンです。文字も鍋で炒めて食べられます。

  • 文字とは。言葉とは。文章とは。小説なんですけど哲学的で、私には難しかった。。。

  • すごいなぁ。芥川賞の選考で評価が割れたのも頷ける。
    芥川賞の当落よりもこれを候補作に挙げたスタッフを評価したいな。
    「ものを書くとはどういうことか」を問いただすかのような思索に満ちた小説。
    高校の頃、筒井康隆を読んだときのような衝撃。

    私には三読くらいしてもよく判らないだろうなww

  • 数式のように、美しい世界。
    確かに在るのに掴めないもの、というのは存外あるけれども、在るということを確かめるための旅、のような印象を受けました。

    E=mc²という世界一美しいとされる数式と、それから生まれた混沌を、なぜか想う。

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著者プロフィール

円城塔(えんじょう とう)
1972年、北海道生まれ。東北大学理学部卒。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。複数の大学で研究員を務める。34歳の時、研究を続けることが困難となり、2007年にSEとして一般企業に就職。2008年に退職、専業作家となる。
デビューのきっかけは、研究のさなかに書いていた「Self-Reference ENGINE」。各所で認められデビュー作となった。2007年『オブ・ザ・ベースボール』で第104回文學界新人賞、2010年「烏有此譚」で第32回野間文芸新人賞、2012年『道化師の蝶』で第146回芥川賞、同年『屍者の帝国』(伊藤計劃との共著)で第31回日本SF大賞特別賞、第44回星雲賞日本長編部門をそれぞれ受賞。他にも2012年に咲くやこの花賞(文芸その他部門)、2017年「文字渦」で第43回川端康成文学賞をそれぞれ受賞している。
その他代表作に『これはペンです』『エピローグ』などがある。「新潮」2016年5月掲載号で川端康成文学賞を受賞した短編小説、『文字渦』が2018年7月に発売された。

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