とわの庭

著者 :
  • 新潮社
3.57
  • (64)
  • (135)
  • (139)
  • (34)
  • (7)
本棚登録 : 1861
レビュー : 143
  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103311935

作品紹介・あらすじ

帰って来ない母を待ち、〈とわ〉は一人で生き延びる。光に守られて、前を向く。暗い淵のなかに身を沈めて仰ぎ見る、透き通った光。「生きているって、すごいことなんだねぇ」。歌う鳥たち。草木の香り、庭に降りそそぐ陽射し。虹のように現れる、ささやかな七色の喜び。ちっぽけな私にも、未来、はあるのだ。読み終えると、あたたかな空気が流れます。本屋大賞第2位『ライオンのおやつ』に続く、待望の長編小説。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 正直に言うと、結構驚いた。小川糸さんということと、このタイトル、そして優し気な配色とイラストの表紙、心の中でイメージしていたものは完全に癒し系だった。

    読み始めると、前半のストーリーは序盤こそ「愛・優しさ」に満ち溢れているが、徐々に厳しい現実にむかっていく。段々嫌な予感がしだし、そっちの方に向かわないように願うのだが、止まることなくどんどん過酷な現実を叩きつけられていく。

    吐き気さえする現実。何故にそこまで酷い目に合わないといけないのか、、胃の中に黒いものが溜まりだす。

    後半にはいると転調し、事態は落ち着いた方向に向かっていき、どうやら知らぬ間にかなり強張っていたらしい肩の力がここからようやく徐々に抜けていく。

    なかなか厳しい前半であったが、やはりこの物語の伝えたいメッセージはこの前半があるからこそ伝えられるのかもしれないと思う。とんでもなく理不尽な半生を送ってしまった主人公「とわ」。生き切った「とわ」の後半の生き様が優しくも強く描かれている。

    付き添う盲導犬ジョイ、お友達のマリさんとのやりとりを通じて、主人公「とわ」が過去のおぞましい体験を少しずつ少しずつ消化していく姿、その心情を想像し、心に痛みを感じながらも応援する気持ちでいっぱいになる。

    「生とは」「生きるとは」何か、今回も沢山問われた気がした。人は何故生きるのだろう。この物語を見ていると、極限状況に置かれた人間はその渦中ではそのようなことを考える余裕もなく、無我夢中であるのかもしれない。しかし、人間は本能だけで生きているわけではなく、ただ食して排泄し睡眠をとるだけでは生きていけない。極限の状況でも、主人公「とわ」が必死に心の糧を見つけていた姿が心に中に焼き付く。

    生きていくことって本当に難しい。小川糸さんの優しい筆致により描かれた、しかし厳しい命題を突き詰められた小説であったように思う。

    最後は柔らかに優しいタッチでエンディングとなって救いとなった。彼女の後半生が優しさと光に満ちたものであってほしいと願わざるを得ない。

  • 装画の優しい雰囲気と好きな庭のおはなしなんだろうな、と内容を全く知らずに手に取った。

    読み始め、主人公とわとお母さんの蜜月の日々は穏やかな幸せに満ちている。
    けれど徐々に不穏な空気が忍び寄り、想像もしなかった状況に…。始めの数ページの描写が切ないほど美しいだけに衝撃が大きく胸が痛い。

    閉ざされた家から自分の足で外へ踏みだし、とわを囲む世界が動きだす。新しい人生が始まる。
    盲導犬のジョイや知り合う人々によって変わっていくとわの戸惑いや喜びに寄り添いながら、しあわせになってと祈りながら読んだ。

    眼の見えない女の子が世界をどう認識していくのか、盲導犬、録音図書や音声読み上げ機のことなどを知ることができた。

    とわの光の向かって進んでいく素直さは、お母さんに愛されていた記憶によって培われたものなのだろうか?詩を読んで聞かせていたお母さんの愛に偽りはない。
    これは母と娘の物語でもある。

    「わたしは目が見えないけれど世界を美しいと感じることができる。そのひとつひとつをこの手のひらにとって、慈しみたいのだ。そのために生まれたのだから」とはの想いは、晴眼者も同じとしみじみ思う。

  • 小川糸さん、「ツバキ文具店」や「キラキラ共和国」こそほっこり癒し系の作品だが、そこに留まらず、いろんな世の中の側面を我々に提示するような作品を発表されるなと常々思っていた

    「食堂かたつむり」「にじいろガーデン」「ツルカメ助産院」「ライオンのおやつ」「ファミリーツリー」等  
    読んだ後、ああ、おもしろかったでは終わらせない重いものがいつも心に残る

    今回は『ネグレクト』育児放棄の問題を突きつけられる
    それも中途半端な形ではなく、これでもかというくらい強烈に・・・
    想像を絶する15年間にも渡る監禁生活、それでも生への執着、希望を失わず、とわは生き抜いた

    母がいつか戻ってきてくれると信じるのをやめ、母と訣別する
    それがとわが生き続けるための必要条件だったのだ

    そして、とわは自らの手でチェーンを外しドアを開けゴミの山をかき分け外の世界へ踏み出した

    25年間を生き直し、次々といろんなことを吸収し年相応のすてきな女性に変身していくとわ
    まるで狼に育てられた少女カマラを思い出した

    訣別し、封印した母ではあったが、最初の頃は間違いなく母は自分を愛してくれていたことを知ることができたのが良かったなと思う

    小川さん、次作ではどんな世界を見せてくれるのだろうか



  • 〈とわのあい〉で結ばれている、母さんとわたし。
    母さんが帰ってこなくても、わたしは待ち続ける。

    とわの目が見えないからこそ、視覚以外の感性がきらめく。

    母とふたりきりの世界が美しく描かれれば描かれるほど、危うさにぞっとする。
    前半はあまりに過酷で、想像するとつらかった。

    仕事はきっちりするけれど、それ以外は自由気ままな、盲導犬ジョイ。
    その仕草が愛くるしく、前半の重さが軽減される明るさだった。

    写真館のエピソードに、じーんときた。

  • 刊行前から予約して、ずっと楽しみにしていました。
    今、読み終えて、感動に浸っています。少し興奮気味なので感想を書くには適していないのだけれど、少しでも早くこの感動を誰かに伝えたくて、敢えて。
    作品の前半は衝撃的でしたが、後半は救われて、読後感は爽快。
    一言で言うなら、せっかく生きているんだから自分を楽しまないともったいないって、自然と思えてきた。個性の時代って言われる反面、何となく今の風潮ってものもある。でも、大事なことは自分の感覚(五感)だから。

  • 題と表紙の絵に惹かれて手にした本。ネグレクト。なんとなく不穏な空気漂う文章に、だんだん息苦しさを覚え、何これ⁈。まだ文章だから悲惨さが柔らいだんだろうけど、親の身勝手に腹が立った。
    後半は穏やかな感じで、人生をやり直す、みたいな展開にほっとしたけど、何となく作り話しっぽさがありありで、話しの重さの割りにはこんな都合よくいくのかと最近読んだ小説の中では腑に落ちない感満載のラストまででした。
    人生はやり直せる、てことかしら。いい人との出会いももちろん重要な要素で。

  • こんなにすごいお話は、未だかつて読んだことがありません。前半の怖くて暗いお話が、これからどうなるかと不安に思えてなりません。盲目の主人公「とわ」は母親がいてくれたおかげで生きている。「母さんはわたしの太陽だ。文字通り大地をあたたかく照らす太陽だ。」その家にある庭を「とわの庭」と名づけ、この庭がとわのことを元気づけてくれる永遠の庭ですね。とわにとってのオットさんの存在がきわだって見えました。後半の飢えとの戦い、そして光明が見えて助けられた時のうれしさ、そして盲導犬「ジョイ」との幸せな生活。ああなんと言う光ある生活。ラストこれからの希望ある生活が楽しみだなぁとつくづく感じました。最初はどうなるかと思いましたが、とても良い気分で読み終えました。読んであなたも興奮して下さい。涙して下さい。感動して下さい。

  • わたしの小川糸イメージを覆す作品でした。出だしは生まれつき目の不自由な女の子と彼女を愛して止まない母親とがひっそりと暮らす日々が綴られている。しかしながらある日ふと何故だか置いてけぼりになった女の子は全く世間を避けた生活を選択して これでもかという悲惨な閉じ籠り暮らしを十年以上もする様子が露悪的に中盤まで延々と続き、イヤミスかと思うほど読み手はどんより気分を否応なしに味わう。
    後半は打って変わって自ら殻を破って 閉じ籠り暮らしに訣別した彼女の順調過ぎる生活が展開していくので安心安定な流れとなり、その落差に戸惑いながら読了。中盤までの緊張感と後半の弛緩との関連性が腑に落ちなかった。

  • 本当に想像力だけでこの本のみ世界を書くことが出来るだろうか?!と思う。私にも目が見えない友人がいたが、本の内容があまりにもリアルだった。聞こえるものや匂い、触った質感、歩いた足の裏の感触、変わる空気感…すべてを組み合わせて「視て」いるのだ。そして、それぞれに幸せや苦しみなどの感情が結びついている。

    「幸せ」って何だろう?
    私たちが苦しみを訴えるこの世界の知覚は、本当に見えているだけがすべてなんだろうか?
    もちろん創作の世界ではあるのだけれど、それを問い直さずに居られなかった。今の自分の環境や生活に不満を抱くのは簡単だけれど、それは本当に「不幸」なのか?
    とわは、あまりに素直でまっさらで、そして何があっても生きていく幸せを噛み締めていこうとしている。
    今は、今しかない。たった今辛くても、明日は?来週は?来月は?来年は?誰にも分からない。自分が作り出していけるのだから。
    私もとわのように、今を生きていきたい。
    今は辛くても。そう思った。

    小川糸さん、すごい。
    一見逆境で最悪な人生に見えるところに、光明を見出していける、自然に。それはまるで本当に起きた人生の日記を垣間見るようだった。
    こんな小説見たことない、確かに!

  • 小川糸さんの小説は過去に3冊読んでいて
    「登場人物が立派すぎて、イマイチ共感できない」
    と記録しています。

    しかし、この本は、その先入観を大きく変えました。
    後半はともかく、前半が…。
    とわちゃんの見る世界を、
    一生懸命想像しながら読みました。
    ある意味ミステリーでした。

    読んで凄く良かったから、
    たくさんの方々に読んでほしいです。

    でも、読者の皆さんに
    一つだけ誤解してほしくない
    お願いしたいことがあります。

    「街で盲導犬を見かけても
    決して声をかけないでください。」

全143件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

作家。デビュー作『食堂かたつむり』が、大ベストセラーとなる。その他に、『喋々喃々』『にじいろガーデン』『サーカスの夜に』『ツバキ文具店』『キラキラ共和国』『ミ・ト・ン』『ライオンのおやつ』『とわの庭』など著書多数。

「2021年 『グリーンピースの秘密』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小川糸の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

とわの庭を本棚に登録しているひと

ツイートする
×