とわの庭

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103311935

作品紹介・あらすじ

帰って来ない母を待ち、〈とわ〉は一人で生き延びる。光に守られて、前を向く。暗い淵のなかに身を沈めて仰ぎ見る、透き通った光。「生きているって、すごいことなんだねぇ」。歌う鳥たち。草木の香り、庭に降りそそぐ陽射し。虹のように現れる、ささやかな七色の喜び。ちっぽけな私にも、未来、はあるのだ。読み終えると、あたたかな空気が流れます。本屋大賞第2位『ライオンのおやつ』に続く、待望の長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 小川さんの本は3冊目。
    今回の作品は皆さんが書かれているように、前半は暗く辛い場面が多いが、一転して後半は救われたように暖かい心になれる。
    母親と二人暮らしの永遠(とわ)は家が全ての世界。目が見えずに鳥や自然の音、植物の香りに癒されている。その母親との生活が徐々に破綻して、悲惨な状況になって行く。生活のために母親は外出するのだが、帰って来るまで寝ているように睡眠薬とオムツという状態。挙句の果ては母親が居なくなってしまう。数年後に発見された「とわ」は25才になっていた。この辺りが衝撃的。目の見えない子供が放置されて数年経つという状況に、「とわ」よ、もっと早く自力で出られなかったのかと突っ込みたくもなってしまう。
    助け出された後の「とわ」の成長が凄い。良い人達や盲導犬に恵まれ、元の家に戻れるようになった。母親に読み聞かせて貰った本が大好きで、自ら点字・デイジー本にチャレンジしたり、携帯アプリを使いこなしたり、前向きな姿が嬉しくなる。
    捨てた母に恨みを持たず、淡々と生きる姿が尊い。
    沈丁花やスイカズラなど、私自身も好きな花なので、この野趣あふれる庭を見たくなってしまった。

  • 目が見えない十和にとって、光を与えてくれるのは母だった。
    寝る前には自分を抱きしめ、柔らかく温かい声で、自分への愛を伝える詩を読んでくれる母。
    時々母が作ってくれるパンケーキが大好き。

    花と動物に囲まれ、幸福そうに微笑む少女
    長い髪はふんわりと綺麗に編まれている
    花いっぱいで光を感じさせる黄色の表紙。

    読後に表紙を見返すと、とわの庭と少女を繋ぐのは切り取られた窓で、どこかラプンツェルを思い起こさせるのだけど。

    前情報なく読み始めたので、表紙の印象と冒頭の文章から、どんどん重く苦しくなっていく主人公の状況に、読んでいて胸が苦しくなった。
    毒母ものはメンタルにダメージが大きい
    主人公の一人称目線で物語が進むので、そちらに感情移入してしまって特に。

    でも大丈夫。
    十和はずっと、世界を美しく感じ、慈しむ心の目を持っていて、
    「わたしはつくづく、出会いに恵まれている」
    「幸せだねぇ」
    優しい人々に寄り添われていく様子に、読んでいる自分の気持ちも救われる

    「母を抱きしめたい」
    「母は、わたしを愛していたのだ」

    これからも十和は、美しい世界の美しいものを慈しみながら生きていくのだと思わせるラスト

    視覚に頼らない、とわの庭の音や匂いの描写は綺麗だし、柔らかそうな卵をのせた牛丼は本当に美味しそう
    こんな生い立ちなのに、誰かにこんな美味しそうな牛丼を作ってあげられる十和が愛おしい
    泉って自分の中から湧き上がるその人独自のもので、それは中々誰かには奪えないものなのかな、って思った
    母に傷つけられても、視覚を奪われても。

    十和が幸せな気持ちでいられて良かったなとは思うけどでも、やっぱり私は読後もずっと重苦しい感情が残ったままだった。
    感想が長くなったのはそのせいかな
    たまたま十和は女の子だったから命は救われたけど、母の手で存在を消された兄2人には最後までそれ以上の救いも回収もなくて、その上に広がる愛や美しさの話には怖さもある

    母の愛を求める子どもの気持ちは切ない
    (図書本)

  • 最後まで読んで良かった。
    目の見えない女の子の“とわ“が母親と二人きりで暮らし、ある日を境に一人っきりになる。保護されるまでほとんど外出したこともなく人知れず生きてきた‥‥。
    もう、この前半部分だけでお腹がいっぱいになってしまいそうでした。救いが無さすぎて‥‥。
    でも、小川糸さんはこんな私を最後どんな気持ちにさせてくれるのか?それが気になって気になって、満腹で苦しいと思いながらも食べてしまう‥‥みたいな感じでページをついついめくってしまうという‥‥完全に手のひらの上状態じゃんか‥‥と気付かされる‥‥。
    結果、読んで良かったです。
    死にそうになったことは何度もあったけど、死にたいと思ったことは一度もなかったという“とわ“。
    生命力に満ち溢れた“とわ“には、信じる友もでき、恋も経験する。
    「幸せだねぇ。生きているって、すごいことなんだねぇ」
    とわちゃん、すごいのはあなただよ。
    読み始めと読後、こんなに印象の違う作品は初めてかもしれません。

    • こっとんさん
      小瓶さん、こんばんは。
      基本的には、ほっこりできてクスクス笑いながら読める本が大好物です。
      この頃は小中学生が主人公のお話に興味があります。...
      小瓶さん、こんばんは。
      基本的には、ほっこりできてクスクス笑いながら読める本が大好物です。
      この頃は小中学生が主人公のお話に興味があります。
      どんな本がオススメされるか楽しみです♪
      2021/08/11
    • こっとんさん
      小瓶さん、ありがとうございます。
      でも、ごめんなさい!
      読んだことあるので、申し訳ないのですが、今一度、よろしくお願いします(>人<;)
      小瓶さん、ありがとうございます。
      でも、ごめんなさい!
      読んだことあるので、申し訳ないのですが、今一度、よろしくお願いします(>人<;)
      2021/08/12
    • こっとんさん
      小瓶さん、本当にすみませんでした!
      ものすごーく昔に読んだので本棚に入れていませんでした。さくらももこさんは本当に面白いですよね。私も大好き...
      小瓶さん、本当にすみませんでした!
      ものすごーく昔に読んだので本棚に入れていませんでした。さくらももこさんは本当に面白いですよね。私も大好きです♪
      「君の友だち」とても良さそう!
      ステキな本を紹介して下さり本当にありがとうございます。
      読んでみます!
      2021/08/12
  • 前半はもうどうなるかと、先が気になってしょうがなかった。描写が本当に生々しくて、ひたすら苦しかった分、後半には救われた。
    読み終えて、改めて序盤から読むと、また、最初と異なるなんとも言えない気持ちになる。

  • 装画の優しい雰囲気と好きな庭のおはなしなんだろうな、と内容を全く知らずに手に取った。

    読み始め、主人公とわとお母さんの蜜月の日々は穏やかな幸せに満ちている。
    けれど徐々に不穏な空気が忍び寄り、想像もしなかった状況に…。始めの数ページの描写が切ないほど美しいだけに衝撃が大きく胸が痛い。

    閉ざされた家から自分の足で外へ踏みだし、とわを囲む世界が動きだす。新しい人生が始まる。
    盲導犬のジョイや知り合う人々によって変わっていくとわの戸惑いや喜びに寄り添いながら、しあわせになってと祈りながら読んだ。

    眼の見えない女の子が世界をどう認識していくのか、盲導犬、録音図書や音声読み上げ機のことなどを知ることができた。

    とわの光の向かって進んでいく素直さは、お母さんに愛されていた記憶によって培われたものなのだろうか?詩を読んで聞かせていたお母さんの愛に偽りはない。
    これは母と娘の物語でもある。

    「わたしは目が見えないけれど世界を美しいと感じることができる。そのひとつひとつをこの手のひらにとって、慈しみたいのだ。そのために生まれたのだから」とはの想いは、晴眼者も同じとしみじみ思う。

  • 食べ物の描写に定評がある小川糸さんが、視覚以外を駆使して世界を鮮やかに描く作品でした。

    とわが家から出ることができなかった時期は読んでいて辛く、投げ出しそうになりました。
    だからこそジョイと出会って、少しずつ世界を広げていくとわの姿は、本当にキラキラしていました。
    どうしてこんなにパワーがあるのだろうと不思議で仕方ありません。

    目が見えないからこそ感じられるものの美しさを教えてもらいました。


    Since when can't I realize my happiness?
    I know that I'm lucky because I have everything to live.
    Even though, why do I need more?

  • 〈とわのあい〉で結ばれている、母さんとわたし。
    母さんが帰ってこなくても、わたしは待ち続ける。

    とわの目が見えないからこそ、視覚以外の感性がきらめく。

    母とふたりきりの世界が美しく描かれれば描かれるほど、危うさにぞっとする。
    前半はあまりに過酷で、想像するとつらかった。

    仕事はきっちりするけれど、それ以外は自由気ままな、盲導犬ジョイ。
    その仕草が愛くるしく、前半の重さが軽減される明るさだった。

    写真館のエピソードに、じーんときた。

  • 目の見えない少女の物語。
    唯一頼りにしていた母との幸せな日々は、読み手の私たちにそこはかとない不安を匂わせつつ過ぎていく。母を信じ、身の回りにある人形や樹々と対話しながらも、徐々に崩れていく平穏な生活の描写は、読んでいて恐ろしく、続きが気になって一気に読んでしまった。

    目が見えないということは、想像することしかできないのだけれど、こうして作品として読むことで体験できるものがあるなと思った。光を感じられないことで朝と夜がわからない、缶詰の中身がわからない、色々な不便がある。
    もちろん、実際はもっといろんな不便や、心無い出来事などもあるのだろうけれど、知らなかった状態よりも、少しは理解できることが増えるのは、とても大事なことだと思った。

    後半は福祉施設や身近な人々のあたたかさに救われる思いがした。目が見えない上に、ネグレクトまで受けて、本当に大変な思いをしたのに、主人公は物事の受け止め方が前向きだ。そういう心持ちにさせてくれたものは、母が与えてくれた庭の木々や人形、そして母が読んでくれた物語の力である。

    主人公と同じような境遇(視覚障害の有無ではなく)に陥っている人が、いったいこの社会にどれくらいいるのだろう。いや、主人公と同じ境遇になる人よりも、主人公の母にあたる人の方が多いだろう。どうしたら彼らを救うことができるのか、私たちは考えないといけない。
    と同時に、手を差し伸べる人の存在にも気づいて欲しい。自分が知らない、気づかないだけで、きっと近くに助けてくれる人はいるはずだ。そう思える作品でもあった。

  • 刊行前から予約して、ずっと楽しみにしていました。
    今、読み終えて、感動に浸っています。少し興奮気味なので感想を書くには適していないのだけれど、少しでも早くこの感動を誰かに伝えたくて、敢えて。
    作品の前半は衝撃的でしたが、後半は救われて、読後感は爽快。
    一言で言うなら、せっかく生きているんだから自分を楽しまないともったいないって、自然と思えてきた。個性の時代って言われる反面、何となく今の風潮ってものもある。でも、大事なことは自分の感覚(五感)だから。

  • 小川糸さん、「ツバキ文具店」や「キラキラ共和国」こそほっこり癒し系の作品だが、そこに留まらず、いろんな世の中の側面を我々に提示するような作品を発表されるなと常々思っていた

    「食堂かたつむり」「にじいろガーデン」「ツルカメ助産院」「ライオンのおやつ」「ファミリーツリー」等  
    読んだ後、ああ、おもしろかったでは終わらせない重いものがいつも心に残る

    今回は『ネグレクト』育児放棄の問題を突きつけられる
    それも中途半端な形ではなく、これでもかというくらい強烈に・・・
    想像を絶する15年間にも渡る監禁生活、それでも生への執着、希望を失わず、とわは生き抜いた

    母がいつか戻ってきてくれると信じるのをやめ、母と訣別する
    それがとわが生き続けるための必要条件だったのだ

    そして、とわは自らの手でチェーンを外しドアを開けゴミの山をかき分け外の世界へ踏み出した

    25年間を生き直し、次々といろんなことを吸収し年相応のすてきな女性に変身していくとわ
    まるで狼に育てられた少女カマラを思い出した

    訣別し、封印した母ではあったが、最初の頃は間違いなく母は自分を愛してくれていたことを知ることができたのが良かったなと思う

    小川さん、次作ではどんな世界を見せてくれるのだろうか



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著者プロフィール

作家。デビュー作『食堂かたつむり』が、大ベストセラーとなる。その他に、『喋々喃々』『にじいろガーデン』『サーカスの夜に』『ツバキ文具店』『キラキラ共和国』『ミ・ト・ン』『ライオンのおやつ』『とわの庭』など著書多数。

「2023年 『昨日のパスタ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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