ここを出ろ、そして生きろ

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 107
感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103312413

作品紹介・あらすじ

ルールとカオス、安らぎと興奮、理想と現実…。あなたが求めているのは、一体なに?目の前の誰かを救うためNGO活動に没頭しながらも、戦後利権に群がる民間組織の現実に戸惑いを覚えるさゆり。より危険な道を選ぶことでしか「生」を実感できない焦燥感に悩む、プロの人道支援者ジャン。コソボ、コンゴ、NY、エルサレムを舞台に、生死の境界を往く恋人たちの壮絶な闇を追う長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 一気に読んでしまった。
    NGO団体の職員同士での恋愛から、人道支援団体の実務や国連とのがんじがらめのルールや関係性、それに対するジレンマ、過去のトラウマ、紛争地域の現実が絡み合い物語となっている。
    紛争地域などへ人道支援に行く人たちの綺麗事だけではない、心の闇がリアルに描かれていた。民族間の対立や宗教間での対立。同じ人間同士で争わなければいけない絶対的な現実がある。

  • NGO活動を通じて出会ったジャンとさゆり。過酷な現場を共有し、絆を深めていくふたり。だが、ジャンの過去にはさゆりの思いもしなかった出来事が…。

    半日で読んでしまった。NGOのことなんて何にも知らない私にも、わかりやすく、引き込まれてしまうストーリー。

    文章を読んで、頭では理解できても、本当にそんな酷いことがこの世界で起きているのだろうか、とは今でも思ってしまう。メディアの外側で、今もこんな悲劇が世界中で起こっているんだろうか。

    ここで、当たり前に自分が生きているということ。それだけで、本当は幸せなことなんだ。

  • NGO活動に生きがいを見出だすさゆりと哀しい過去を持つ人道支援者ジャンの切ない物語。プロのジャーナリストの作品だけあって現場の描写がリアル、そこに2人の恋愛が上手く絡まって面白い。「月は群れない、それでいて暗闇を照らしてくれる」が心に残る。

  • 152現場を知った人でないと書けない作品。人道支援って何か、身の回りの一人を救うこととどう違うのか?結論は出ないけど、正しい教育と子供の成長しか世界の平和って語れないのかなあと思う。

  • フィクションとしてではなく、ノンフィクションとして読みたかったなぁと感じた。本書は小説なんだけど、ノンフィクションなのかなぁと思えるくらい情景やお国事情がリアル。

    というのも著者である松原さんの奥さんが国連で勤めていたこともあって、国連やNGOでの課題、コソボ紛争やコンゴ動乱などを目の当たりにしたからだ。

    だから、本書を読んで、コンゴやコソボについてパソコンで調べたし、いくつか本も読もうと思っている。

    そういう意味ではよかったんだけど、読み物としてはすこし物足りないかなぁという感じ。結末もなんとなく読めたし、ジャンの過去もそこまで驚きを隠せなかったわけではなかった。

    とりあえず時間を置いてまた読んでみることにする。

  • 佐藤優氏の「インテリジェンス人生相談」WEB版コラムに本書が引用されていた
    ので、手に取った。
    分量としては多くなく、読みやすい。(私は一日で読み終えた。)
    読後は気持ちが重くなった。
    ただ、佐藤優氏が引用していた、ジャンの仕事に対する考え方は胸を打つ。
    主人公の仕事は利益とは別だと思っていたが、ビジネスになるということを知
    り、驚いた。
    (そういえば、ビル・ゲイツ氏はビジネスにならない分野の支援をしていると朝
    日新聞のインタビューで見た気がする。)

    コンゴのような無政府国家にはどのように支援していくべきなのだろうか。
    世界から貧困がなくなる日はくるのだろうか。
    個人的な考えを述べると、貧困はなくならないと思う。
    ある国家の生活レベルが上がっても、またどこかの国家で内乱や戦争が起きるか
    もしれないからだ。
    人間は過去に学ばないと最近特にそう思う。

  • NGOで働くとは、紛争地で働くとはということをフィクションでありながらよく描いている本だと感じた。(自分も働いたことないのでわからないが)クライシスジャンキーとはよくいったものだ。自分の知り合いにも世界のどこかで紛争が起きることを期待してて、それでUN入りたいといっていたが、それって違うんじゃない?お思ったり。でも、ハートロッカーでも主人公は紛争地の刺激を求めて…っていう落ちだったっけ。
    この本に戻ると、やはり女として生きることをそこそこあきらめていたような節があるさゆりの強さと、ジャンのその壮絶な過去と現場への想いが強く心に残った。

  • フィクション?ノンフィクション?
    国際的なすごく難しい問題を背景にしながらも、主人公の日本人女性とフランス人との揺れる心情、近ずく気持ちにどんどんと読み進めることができた。先日亡くなった山本美香さんの姿ご重なる。死と向き合わせで現場で携わる人の、すばらしい志に頭が下がる。
    誰もが大聖堂の完成を見ずに死ぬだろう。それでも続けるのはなぜか。それが正しいことだと知っているからだ。

  • ジャーナリスト松原さんの処女小説。
    良かった。
    これは、松原さんじゃないと書けないなあ。。。

    トラウマ、人との出会い、愛すること、再生、信頼、正義、信じること。
    そして祈ること。
    小説のテーマすべてが入っていた気がする。
    盛りだくさん過ぎるのかもしれないけど、
    でも、よかった。
    最後は泣いた。

  • コソボの紛争地で支援をしているNGO職員の男女の恋愛小説。
    フィクションなのに、ノンフィクションのような、
    圧倒的展開に引き込まれます。

    自分も関心がある、人道支援。
    その現地での支援の厳しさ、難しさ、暴力の連鎖。


    飢餓や貧困、戦争といった問題はあまりに大きすぎて、
    考えれば考える程途方にくれてしまう。
    でもぼくらの仕事は、大聖堂をたてるようなもの。
    サクラダ・ファミリアのように、自分たちが死ぬまでに建物が完成することがないと知っている。絶対に。
    それでも彼らはやめない。毎日、レンガをひとつひとつ、積み重ねていく。
    僕らの仕事も同じだ。それでも続けるのは、それが正しいことと知っているからだ。


    圧倒された。
    途方もない理想に、何を言い訳して、歩みを止めてよいのだろう?

    少しでも自分も近づきたいし、
    続けてゆきたい。

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著者プロフィール

1960年山口県生まれ。「筑紫哲也NEWS23」「報道特集」のディレクターなどを経て、「ニュースの森」「NEWS23X」のメインキャスターをつとめる。現在、「週刊報道LIFE」のメインキャスター。

「2015年 『聞く力 話す力 インタビュー術入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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