逃亡

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (622ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103314080

作品紹介・あらすじ

故国が終戦と同時に憲兵に牙をむいた。日本のために諜報活動に明け暮れた報いが、「戦犯」の二文字だった-。身分を隠し名を偽り、命からがら辿り着いた故国も、人身御供を求めて狂奔していた…。

感想・レビュー・書評

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  • 故国が終戦と同時に憲兵に牙をむいた。
    諜報活動に明け暮れた香港から身分を隠し名を偽り、命からがら、苦難の末に辿り着いた日本。

    だが、日本のために諜報活動に明け暮れた報いが、「戦犯」の二文字だった―。

    国家とは何か。責任とは何か。愛とは、死とは…。

    元憲兵の逃亡行、緊張感とヒューマニズム溢れる超大作!

  • 最初見た時あまりの厚さにびっくりしたけど、何とか622pを読むことができました。
    初めの方は、内容が痛々しかったけど、日本に戻ってくるようになってからだんだんと面白くなってきた。

    終戦と同時に憲兵だったという理由から戦犯となり逃亡生活を送ることになった。
    実家に帰って数か月たつと戦犯扱いになったことから、日本中を逃げるようになった。
    知人、親せきを頼ったり、塩を作って売りに歩いたり、畑で作物を作ったりした。

    戦後の描写はひどい状況で、焼け野原、食糧不足、いんじょう者、同じように先般で逃げ惑う人。
    せっかく生きて日本に帰ってきたのに、戦後の裁判で死刑になったり懲役がつくのはおかしいと思う。
    敗戦国は裁かれて勝戦国(原爆や空爆で民間人を無差別に殺害した事実)は裁かれないのはおかしい。

  • 終戦直後の日本軍諜報部員の逃走劇。二段組620頁はとにかく厚い。戦中戦後の中国の事情も詳細に書かれていて内容も濃く、現在中断中。

  • 第2次世界大戦モノ。
    戦争モノを読むと、いつもその理不尽さや
    戦中の人々の苦労・虚しさを想像し
    「現代社会はストレスかかるなんて、ウソだよな。
    この時代の方がよっぽどヒドイ」と思います。
    戦争を知らない世代として
    なるべく知る努力をして行きたい

  • ストーリーに関することもメモ程度ですが記しているので、未読の方は読まない方がよいかもです。

    国内の憲兵に関しては、大体悪者として登場しますが、
    海外にも派兵されていたこと自体知りませんでした。その後の逃走劇も。
    彼らにも当然ですが、戦前、戦中、戦後があった訳ですよね。

    憲兵=悪者って単純なことではなかったんですね。

    憲兵って今の公安をイメージするとよいのかな??

    あと、これだけ戦後直後の福岡の姿が克明に記されているのは、初めての出会いだったかも。よかった。

    戦争って結局誰が悪かったのかって、特に太平洋戦争では言われますが、この作品でも大きなテーマですね。命令された個人がランダムのように罪に問われ、軍隊の責任、組織としての責任がだんだんうやむやになって、今になってる気もします。
    そして今の組織も。。。

    逃亡って題から、少し違った作品を読む前はイメージしていましたが、前半は、海外の収容所、後半は国内、そして収監されてから、と本当に克明に記されている文章には、何か強さを感じました。

    作者の父親さんがモデルということですが、「逃げてくれ!」っていう、過去かもしれないが主人公への強いメッセージが執筆中にも生き続いていたのかもしれないと思いました。

    しかし、これだけのボリュームのある作品の感想は難しいですね。

    ==========メ  モ============

    ◎小さな風呂敷に象を包むようなもの=日中戦争を指して

    ◎香港の胡文虎=架橋=和平の仲介役→蒋介石に通じる
    日本は南方へ集中できる→露見して担当者左遷(久保曹長)
    ※戦後日本にも1千万援助(台風被害時)

    ◎香港から英国を追い出した際の過剰な逸脱行為(婦女暴行、強制移転など)、
    現地の食糧不足、最初からノープラン、現地調達のみ。

    ◎→総督府に移行した際一切を不問→思いやりのなさ、いばり過ぎ→敗戦時に強く影響→主人公所属の憲兵隊、一手に悪者扱い、一般兵科の将兵は内地召還されていても→憲兵隊は最後まで残務処理

    ◎捕虜に対しての拷問→国際条約の概念など全くない(捕虜の辱めを受けるべからず)→全て戦後あだとなる
    →魔女狩り裁判→戦後、海外各地でも裁判(東京、横浜以外でも)

  • 支那で憲兵であった主人公が身分を隠し内地に辿り着く。
    博多で露天商など始めるがやがて国内でも戦犯追及が始まる。

    きっと誰かの手記でもあったのだろうが、それにしても毎度大した筆力だ。

  • おもしろし

    内容の半分は、戦時中の憲兵として見た占領地香港。
    半分は、「戦犯」として日本国内で追われる逃亡劇です。

    人物像のリアリティーに圧倒。
    たくさんの、魅力的・個性的なキャラクターが物語を盛り上げる。

    中国で憲兵隊軍曹として終戦を迎える、主人公守田軍曹。
    戦地憲兵は勝戦国へのスケープゴートとして、
    不公平な裁判の元、死刑になる可能性が高い。

    それを察知した守田は、
    仲間と共に軍を逃亡。
    降伏後の中国から何とか日本に逃げ帰る。

    ボロボロの状態から家族と生活をスタートのも束の間、
    GHQからの逮捕上により、逃亡生活を強いられる。

    転々と場所を変える守田。
    たくさんの支援者によって2年間の逃亡もある時幕を閉じる。

    妻との再会。仲間からの支援。戦時中の回想など、涙なしに読み進められる者はいないっす。

  • 柴田錬三郎賞(10回)

  • 終戦を中国広東で迎えた特高憲兵の守田。戦犯として捕らえられるのを逃れ続ける。収容所に隠れ、引揚船で内地へ。妻子待つ故郷で暮らしながらも、警察に見つかりまた逃亡生活。そして巣鴨プリズンへ収容される。

    誰かの自伝かと思うくらいに憲兵の生活が細かく語られていた。万歳三唱で出兵したのに、戦犯となると手のひらを変えたようになる周りの人々、上層部、そして天皇。ここでも戦勝国が戦敗国を裁くという矛盾が書かれていた。軍上層部や天皇は戦後、兵を見捨てたのではなく、最初からその存在を無視していた。だからこそ終身刑や死刑となったものたちに対して何とも思わなかったのではないか。国旗や君が代に対して複雑な思いを持っている人の気持ちが少しわかった気がする。

  • 今の私たちがこんな思いすることはもうないんでしょうね。。

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著者プロフィール

1947年、福岡県小郡市生まれ。東京大学文学部仏文科卒業後、TBSに勤務。退職後、九州大学医学部に学び、精神科医に。’93年に『三たびの海峡』(新潮社)で第14回吉川英治文学新人賞、’95年『閉鎖病棟』(新潮社)で第8回山本周五郎賞、’97年『逃亡』(新潮社)で第10回柴田錬三郎賞、’10年『水神』(新潮社)で第29回新田次郎文学賞、’11年『ソルハ』(あかね書房)で第60回小学館児童出版文化賞、12年『蠅の帝国』『蛍の航跡』(ともに新潮社)で第1回日本医療小説大賞、13年『日御子』(講談社)で第2回歴史時代作家クラブ賞作品賞、2018年『守教』(新潮社)で第52回吉川英治文学賞および第24回中山義秀文学賞を受賞。近著に『天に星 地に花』(集英社)、『悲素』(新潮社)、『受難』(KADOKAWA)など。

「2020年 『襲来 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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