- Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103317098
作品紹介・あらすじ
現代歌人の先駆となった啄木の壮烈な生涯をたどる渾身の本格的評伝! 生地日戸村には一切触れず、啄木が自らの「故郷」と呼んだ渋民村。函館、小樽、釧路を転々とした北海道での漂泊。金田一京助とのあいだの類いまれなる友情。そして、千年に及ぶ日本の日記文学の伝統を受け継いだ『ローマ字日記』。膨大な資料をもとに啄木の生涯と作品を丹念に読み解く、九十三歳の著者が精魂傾けた傑作評伝。
感想・レビュー・書評
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アメリカの文学研究者、なんていうと失礼になってしまうドナルド・キーンさんの啄木伝。短歌の英訳、明治的古語の現代語訳がすべてに付けられています。特に啄木短歌の英訳は、注目されていい仕事なんじゃないでしょうか。国語の先生とか、啄木に興味を持っている人の入門としては最適。いや、ちょっと分厚いか?
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啄木は、千年に及ぶ日本の日記文学の伝統を受け継いだ。日記を単に天候を書き留めたり日々の出来事を記録するものとしてでなく、自分の知的かつ感情的生活の「自伝」として使ったのだった。啄木が日記で我々に示したのは、極めて個性的でありながら奇跡的に我々自身でもある一人の人間の肖像である。啄木は、「最初の現代日本人」と呼ばれるにふさわしい。
日本で最も人気があり愛された詩人だった三十年前に比べて、今や啄木はあまり読まれていない。こうした変化が起こったのは、多くの若い日本人が学校で「古典」として教えられる文学に興味を失ったからだった。テレビなどの簡単に楽しめる娯楽が、本に取って代わった。日本人は昔から読書家として知られていたが、今や本はその特権をはく奪されつつある。多くの若い男女が本を読むのは、入学試験で必要となった時だけである。
啄木の絶大な人気が復活する機会があるとしたら、それは人間が変化を求める時である。地下鉄の中でゲームの数々にふける退屈で無意味な行為は、いつしか偉大な音楽の豊かさや啄木の詩歌の人間性へと人々を駆り立てるようになるだろう。啄木の詩歌を読んで理解するのは、ヒップホップ・ソングの歌詞を理解するよりも努力が必要である。しかし、ファスト・フードから得られる喜びには限度があるし、職はいとも簡単に満たされてしまう。啄木の詩歌は時に難解だが、啄木の歌、啄木の批評、そして啄木の日記を読むことは、単なる暇つぶしとは違う。これらの作品が我々の前に描き出して見せるのは一人の非凡な人物で、時に破廉恥ではあっても常に我々を夢中にさせ、ついには我々にとって忘れ難い人物となる。(p329-p330) -
角地幸男先生訳
通常の配架場所: 開架図書(2階)
請求記号: 911.162//I76 -
大逆事件の本を読むと、啄木のことが良く出てくる。