暗幕のゲルニカ

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 435
  • Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103317524

作品紹介・あらすじ

一枚の絵が、戦争を止める。私は信じる、絵画の力を。手に汗握るアートサスペンス! 反戦のシンボルにして20世紀を代表する絵画、ピカソの〈ゲルニカ〉。国連本部のロビーに飾られていたこの名画のタペストリーが、2003年のある日、突然姿を消した―― 誰が〈ゲルニカ〉を隠したのか? ベストセラー『楽園のカンヴァス』から4年。現代のニューヨーク、スペインと大戦前のパリが交錯する、知的スリルにあふれた長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • ピカソの名作「ゲルニカ」を題材にした作品。
    作者もそうだった、MoMA(ニューヨーク現代美術館)のキュレーターである日本人女性がヒロイン。

    1930年代、スペインのゲルニカが爆撃されました。
    ピカソはスペイン生まれ。義憤を感じて、大作に取り組むのです。
    当時ピカソの愛人だった写真家ドラ・マールは、制作現場の写真を撮り続けます。
    ピカソにもドラにも存在感があり、このあたりのエピソードはとても面白かったです。

    そして、2001年、9.11。
    2003年、MoMAに勤める瑤子は、戦争やテロに負けないというメッセージを改めて発信するため、ゲルニカを展覧会に出品してもらいたいと願います。
    ゲルニカはスペインの至宝として、長年貸し出しはされていないため、交渉は難航しますが。
    美術館の動きは、さすがリアルです。
    現実離れしているぐらい華やかな~有力なパトロンも、意外と実在しているのかと思ったり。

    ヒロインの行動にやや謎があり、クライマックスに向かうあたりがどうもこなれていないので、感情移入できなくなってしまいました。
    この展開、ちょっと肩に力が入っている‥?
    構成や結末で、メッセージは伝わります。

  • 「芸術は、飾りではない。敵に立ち向かうための武器なのだ」(パブロ・ピカソ)

    今世紀最大の芸術作品のひとつであるピカソの大作「ゲルニカ」。

    第二次世界大戦の直前の時代。そして、2001年9月11日、ニューヨークで発生した同時多発テロ。

    戦争ほど、残酷なものはない。
    しかし、半世紀を越えて、人類は戦争という宿命に踊らされていた。

    その人類の宿業とも言うべき戦争に、絵筆一本で立ち向かった、20世紀の巨匠ピカソ。時代を超えて彼を慕い、その魂を受け継ぐ人々の物語。

    主人公・MoMA(ニューヨーク近代美術館)のキュレーターの瑤子は、苦難を乗り越えたどり着いたクライマックスで語りかける。
    「『ピカソの戦争』展。戦争とテロが生み出した第二次大戦下の非常時に、ピカソは絵筆一本で闘いました。絵筆が銃よりも、大砲よりも、空爆よりもずっと強いことを、作品を通して証明したのです」

    ここ数日、電車に乗るのが楽しみだった。
    ピカソに会える。瑶子に会える。バルトに、ドラに、そして楽園のカンヴァスのティムに会えるのだから。

    心の奥深いところに何かが残る快作。
    今のところ、今年のベスト本。

  • ピカソの「ゲルニカ」をめぐる物語。

    ピカソが「ゲルニカ」を描いた20世紀と
    その「ゲルニカ」をMoMAに再度展示したいと
    企画するキュレーター瑤子を中心とする21世紀が
    交互に絡み合い、物語が進みます。

    私は断然20世紀のパートの方が好きです。
    ピカソの愛人、ドラが格好いいんです。
    ピカソのことを全く知らないのですが、
    この時代にこんな自立したパートナー的愛人が
    隣でピカソを支えていたなんて・・・。

    MoMAが舞台に出てきますし
    「楽園のカンヴァス」のティム(トムも!)も出てきて
    続編?っていう雰囲気も持っている気がします。

    「ゲルニカ」という作品自体が
    大きな意味合いのある作品だからか
    マハさんからあふれ出るピカソ愛と
    私のピカソ作品への興味の度合がかみ合わないからか
    ちょっと入り込めない部分がありました。

    でも、ラストの展開は、そうきたかと!!

    いつもながら、その作品をこの目で見てみたいと
    思わせるストーリーがたまらない一冊です。

    個人的には日本の画家や絵師の話か
    アジアの画家の話も
    マハさんのストーリーで読んでみたいです。
     
    次はどんな作品がクローズアップされるのか。
    楽しみに待ちたいと思います。

  • 絵画に疎い私にも原田マハさんの数々の作品を通して色んな画家や作品や背景や美術館などの拙い知識を素人ながらに持つことに繋がりました♪
    この本でもかのピカソ本人や纏わる人々の群像と背景、主役たる作品「ゲルニカ」の誕生と意義 さらにはゲルニカを巡って展開する息詰まるストーリーと結末。
    画家と絵画作品に関する話に今回は事件性を加味して読み物としての面白さも追った作品になっていますね。

  • <感想>
    個人的に好きな作家、原田マハさんのアート系小説。
    文庫まで待つ予定だったが、結局待ちきれずに購入、読了…

    伝家の宝刀・アート系作品だったので期待し過ぎてしまったかも。
    十分面白いのだけれど…ちょっと自分の中での期待値が上がり過ぎていたので、若干の不完全燃焼感があった。
    どちらかというと「楽園のカンヴァス」の完成度が高過ぎるような気もする。

    過去・ドラマール、現代・瑤子の2パートが交互に展開されながら、少しずつ繋がっていくストーリー。
    「ペンは剣よりも強し」的な「芸術による反戦」がメインテーマの作品。

    個人的にはドラマールのピカソへの「思い」が最も印象に残った。
    こんなにも情熱的に誰かを愛したことなんてあるのか?と、気付けば自問自答をしている自分がいた。
    恥ずかしながら、自分はこれ程熱い感情を持ったことはないのかもしれないなぁ…

    ちなみに、「楽園のカンヴァス」から引き続きティム・ブラウンも地味に登場。
    前作ファンであれば、きっと思わずニヤリ…(笑)

    <印象に残った言葉>
    ・私たちには〈ゲルニカ〉をニューヨークで展示する権利があります。(P221、ルース)

    ・わかっていた。ー最初から。ピカソの愛を永遠に得られる女などこの世には存在しない。オルガ・コクローヴァも、マリー=テレーズも、そして自分も…たとえほんのひとときであっても、あの心の奥底までを見透かすような視線を一身に浴びて、その筆でカンヴァスの中に封じ込めてほしいと願ったのだ。たとえ、それがどんなに醜い姿であろうとも。「泣く女」として、永遠に残されることになろうとも。この七年間、その思いを胸に生きてきた。そして、ピカソとともにあったことを、一度たりとも後悔したことはない。(P308)

    ・ドラは、迷わずに「鳩」の絵を選んだ。戦争を想起する陰鬱な静止画でもなく、泣きじゃくる女の肖像画でもなく、飛び立とうとする白い鳩が描かれた一枚を。(P334)

    ・会場の誰もが息をのんだ。バサリ、と音を立てて、スクリーンの中で、黒い長方形が床の上に落とされた。暗幕の下から現れたのは、タペストリーではなく、壮大な一枚の絵。〈ゲルニカ〉だった。(P357)

    <内容(「BOOK」データベースより)>
    反戦のシンボルにして20世紀を代表する絵画、ピカソの“ゲルニカ”。国連本部のロビーに飾られていたこの名画のタペストリーが、2003年のある日、忽然と姿を消した…。大戦前夜のパリと現代のNY、スペインが交錯する、華麗でスリリングな美術小説。

  • 2016年上半期直木賞候補作品。
    ピカソが「ゲルニカ」を描いた時代背景、そしてその後の「ゲルニカ」の経緯。反戦シンボルとして飾られている国連本部の「ゲルニカ」タペストリーが、暗幕で覆われた。9.11で夫を失った日本人キュレーターが、MoMAの展覧会「ピカソと戦争」を企画するが。。。
    実在の人物や史実を軸にしていて、勉強になった。芸術作品は誰のものなのか?芸術は決して飾りではなく、戦争やテロリズムや暴力と闘う武器ともなりえるのだと考えさせられた。年末~年始と、読むのに時間がかかってしまったのが残念。

  • 美術作品には関心が薄いので美術館に行っても強烈にメッセージが伝わって来たことがない。
    ピカソは気持ち悪さを秘めた奇抜な絵を描く画家という程度の認識しか持っていなかった。
    <ゲルニカ>に関しては作品自体を知らなかった。
    だが、この本を読む前と後では、<ゲルニカ>から受ける印象とピカソに対する感情が全く違っている。
    音楽でも体制への批判や反戦のメッセージを込めた作品があり、その曲が生み出された背景を知っているか否かで聴く耳が変わる。
    本書はフィクションとノンフィクションを融合してできた作品であり、美術がよくわからない自分には作品の解説書より役に立ったに違いない。
    ナチス将校の「この絵を描いたのはお前か?」に返すピカソの一言がたまらない。
    本書からは、戦争やテロのない世界になって欲しいという気持ちがひしひしと伝わってきた。

  • 終わり方がかっこいい!

    パルド・イグナシオに惚れました。
    原田さんの創作とのことですが、やっぱりアートにはパトロンがつきもので。きっと似たような支援を受けていたのではないかと思う。

    MoMAのキュレーターを勤めるヨーコを軸にした9.11後の現代と、ゲルニカ製作当時のパリが交互に書かれている。

    ヨーコはMoMAで「ゲルニカ」を展示できるのか、という点がストーリーの核になっているのだけれど、「そりゃフィクションなら最後には」と侮っているとハラハラドキドキワクワクします。

    反戦のメッセージよりも、「ゲルニカ」の製作風景をカメラで撮り続けたドラ・マールの葛藤が印象深い…

    アートの力は強い。良くも悪くも。
    「ゲルニカ」に否が応でも振り回される人々に、アートの悪魔的な魅力を感じました。

    浪漫があるわ〜

  • 原田マハさんの新作「暗幕のゲルニカ」、2016.3発行です。子供の頃ピカソを恋人として過ごした原田マハさんのピカソへの思い、そしてそのピカソの作品「ゲルニカ」を通しての平和への思いが詰まった作品だと思います。大変な労作と感じますが、読むのにも労力を要する作品でした。頑張って読み進めましたが、率直に言って面白くなかったです。原田マハさんの作品が大好きな一読者としては、美術、キュレーターへのこだわりを捨てて(隠し味程度にして)作家としての道に没頭して欲しいと思いました。

  • 原田マハ3作目。

    楽園のカンヴァスで彼女の芸術への考察の深さに感銘を受け、それ以来ファンになって、久々の彼女の作品。相変わらず芸術への愛と知識の深さに感心させられました。

    しかし、後半のフィクションが明らかに強いと分かる要素が入ってきた瞬間に、筆力が落ちるというか、彼女の才能の限界が見えてしまう。展開も急に早まるし、登場人物の性格の一貫性がなくなるしと、面白さは激減していきました。

    彼女は、芸術家としての才能が際立っている分、そちらに思い切り舵を切った方が魅力的な作品になる気がする。

    ピカソの「この絵の作者はあんたたちだ」とナチスに言ったセリフのキレ、美術を武器として考えていた想い、この当たりの描写は非常に優れていると感じた。後半が残念な作品。

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著者プロフィール

原田 マハ(はらだ まは)
1962年東京都生まれ。小6から高校卒業まで岡山で育つ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部美術史学専修卒業。
馬里邑美術館、伊藤忠商事株式会社、森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館での勤務を経て、2002年よりフリーのキュレーターとなる。
2005年小説化デビュー作の『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞。2012年『楽園のカンヴァス』で第25回山本周五郎賞、『キネマの神様』で第8回酒飲み書店員大賞をそれぞれ受賞。2013年には『ジヴェルニーの食卓』で第149回直木賞候補、2016年『暗幕のゲルニカ』で第155回直木賞候補となる。2017年『リーチ先生』で第36回新田次郎文学賞受賞となり話題になった。

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