朝が来るまでそばにいる

著者 :
  • 新潮社
3.44
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本棚登録 : 335
レビュー : 60
  • Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103319634

作品紹介・あらすじ

弱ったとき、逃げたいとき、見たくないものが見えてくる。高校の廊下にうずくまる、かつての少女だったものの影。疲れた女の部屋でせっせと料理を作る黒い鳥。母が亡くなってから毎夜現れる白い手……。何気ない暮らしの中に不意に現れる、この世の外から来たものたち。傷ついた人間を甘く優しくゆさぶり、心の闇を広げていく――新鋭が描く、幻想から再生へと続く連作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 一人ぼっちで過ごす夜はなんとなく寂しく、誰かがそばにいてくれるだけで心強い。
    だからといって朝が来るまでそばにいてくれるのは「人」だけとは限らない…。

    背筋がひやり心がざわざわする短編集。
    しんと静まり返った真夜中、心細い気持ちに付け入るように獣や鬼といった異界のものに絡みつかれる主人公達。
    それらの誘いを拒むことも儘ならず、いつしかそれらの持つ柔らかい湿り気に心地好ささえ感じてしまう。
    人の心を惑わすそれら異界のものはこの世から決して消えてくれることはなく、対抗するためには心を強くする術を自らの力で持つしかない。
    彩瀬さんの独特の世界観に飲み込まれそうになりながら、けれどラストは切なくもどこか晴れ晴れとした気持ちになれた。

    特に『よるのふち』の、いつまでも部屋に漂う亡き母のハンドクリームの香りに泣けた。

  • ぞわっとする。
    それは決して否定的な意味ではなく、彩瀬さんの作品を語るときは必ず哀しさややるせなさが伴ってくる。本書は特にそうだ。全編を通じて、幻想的だけどどこか不気味で、湿り気を帯びた描写。怯えながら覗き見する感覚でページを捲っていった。
    「まるで粘りの強い泥黙りへ踏み込んだかのように」まさに感じられた、五感に訴えてくるような言葉選び。時に、グロさすれすれに感じられる表現は、無意識に己の心に抱えている醜さを見せつけられているような気がして、目を背けたいはずなのに、不思議と目が離せない。人によっては受け付けないかもしれないけど、読了後に感じる余韻は後味が悪いものではなく、彩瀬さんらしい温かさがあった。
    個人的に好きなのは「眼が開くとき」。幻想的で官能的で…甘やかな狂気がたまらなくツボでした。
    夜に読むと、作品世界にズブズブとはまっていき、現実に戻れなくなるような…そんな錯覚に陥った。自分の輪郭が曖昧になるような感覚。怖いのに、一瞬心地よく感じられそうになる、何とも不思議な手触りの一冊だった。

  • 前作「やがて海へと届く」がだいぶ幻想味の強い(純文学的な)作風になったと感じていたので、この作品集はどうだろうかと思ったのですが、これはどちらかというとそれまでの作品群寄りの、けれど比喩表現、作品世界に一層の深度、巧みさが引き立った作品集でした。

    「ようやくできたお腹のなかの子供が…」「晴れて新婚夫婦となったけれどほどなくして新婦が…」など、導入部はいたって現実的な方なのですが、そこからの展開がとても自然に、「普通でなくなる」のが、ぞくっとすごみを感じるほどでした。文章に使われる比喩表現の洗練さ、巧みさがそれを助けているのでしょう。そしてその表される「普通でない」世界が、血と肉と骨、それらの質感を持って描かれているので、やたらと肉感的、蠱惑的なふうに感じ取れるのが特長的に感じたのでした。

    そういう意味で、最後の一編はそのグロテスクさが、姿かたち、精神的、ともにリアルに想像できて差し迫ってくるようで、下手なホラーよりも恐ろしさを感じました。けれど話そのものはとても哀切なものなので…、なんというかひたすらにつらくてたまりませんでした。

    どうしたらこんな表現を自在に操れるのだろう、と正直思います…。素晴らしいです。

  • 執着心の強い愛の話。
    ちょっと苦手だなーと思いながら読んでいたら、すごく怖い夢を見て、起きてしまった。
    好きな人は好きなんだろうなと思うけど、私は苦手だった。

  • 図書館にて。
    ものすごかった。
    読みながらたくさん泣いて、次の日は目が腫れて頭が痛くて大変だった。
    読んでしまった、心の中にこの本の世界が広がってしまった。

    一番泣いたのは「よるのふち」だ。
    これはもうどうしようもない。あまりにもつらい。
    父親の描写も秀逸。
    この他のどの物語も現実から少し離れた存在を扱ってはいるけれど、いつも人は本当はそんな世界に接しているのかもしれない。
    生きている世界だけではなく、死後の世界も過酷かもしれない。

  • この夜が明けるまで、手を握っているよ。

    何気ない暮らしの中で、弱った時、逃げたい時に
    この世ではない外からきた静かに寄り添う影。
    暗闇からの再生を描く短編集。

    彩瀬さんの文章が好きなのですが
    本のタイトルも好きなんですよね…
    しんみりした恋愛ものかな、と思っていたのですが
    ちょっと違うテイスト。ホラーといえば
    ホラーなのですが怖いけれど哀しい。
    ちょっと今までの作品と違う印象。

    死んだ人そのものが現れるというより
    残された人の哀しみや想いが
    誰かに救いを求める心が
    他人への執着が
    姿を持って現れる。
    粘度のある夜の闇、というか。
    割としんどい話が多いので好みが分かれるかも
    しれませんね…

    「朝が来るまでそばにいる」というタイトルに
    対して哀しげな黒い表紙も素敵です。

  • 怖い。怖くて悲しい。
    なんだろう。好きで好きでたまらなく好きだった人の骨をじゃりじゃりと食べてしまったらこんな感じなのかも。

  • ホラー短編集。あの世の者が出す食べ物は食べてはいけない…引き込まれてしまう。どうして愛すべき人をあちら側に連れて行こうとするかな…と思慮の浅い私などは思ってしまう。トシのせいか、温かい話が好きだから、こういう内容は頭がうけつけない(笑) どういう事か誰か説明してーってなっちゃう。気持ち悪いの先の作者の思惑をきちんと読み込めるには どういう読書すればいいんだろーって思った。

  • これはまたくちなしとは違った不気味さがある六つの物語でした。ぞくっとする。
    個人的には眼が開くとき、が好きです。

  • 人の生と死と「食べる」が描かれているホラーファンタジーっぽい短編集。
    「眼が開くとき」の描写がとても良かった。
    幼い頃から美しいものの1番美しく見える構図が思い浮かぶカメラマンの瑠璃が小学校の時の美しい、食べたいと思った転校生、暁に再び出逢い暁を売り出していくお話。

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著者プロフィール

彩瀬まる(あやせ・まる)
1986年千葉県生まれ。上智大学文学部卒業。小売会社勤務を経て、2010年「花に眩む」で第9回女による女のためのR-18文学賞読者賞を受賞。2016年『やがて海へと届く』で第38回野間文芸新人賞候補。2017年『くちなし』(文藝春秋)で第158回直木賞候補。

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