- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103319849
作品紹介・あらすじ
それで誰かを助けられるなら、うそぐらいつく。大学のサークルを抜けたい姪のため、うその辞める理由を考えてあげたことをきっかけに、「うそ請負人」と頼みにされるようになった女性の困惑。会社の自転車置き場で、人間関係へのストレス発散のために同僚がとっていた思いがけない行動。日常の困ったことどもをやり過ごし、目の前の「今」を生き延びるための物語11篇。
感想・レビュー・書評
-
表題作を含む11篇の物語。
もしかしたらこんな人、近くにいるかも…と思うようなありふれた日常の一コマのような感じ。
ゆるゆると気軽に読める。
「うそコンシェルジュ」は、他の短編と比べると続編もあり読み応えがあった。
うそを吐く気はないけれど、なんか会うのが嫌だなぁとか…思うときが確かにある。
なんとなく外出ってのが気乗りしないとか…だけどそんな時って相手にも伝わるのか、相手から断られたりしてほっとしたこともあったと。
そんなことを思い出しながら読んでいたが、これはうそをつくと言うよりも、もう少し上をいく高度というかテクニックを感じた。
つまりはうそを回避して考え出した策といったほうが、しっくりくるような話だった。
布の展示会で知り合って、何度か会ったことのあるくらいの人についたうそというか、誤魔化しのような感じだったが、そこから姪のサークルをスムーズにやめさせること、姪と同じ大学に通う男子から祖母のお金を守るべき手立てや職場の部長からも、そして部長の妹のことも…とかなりの難題をなんとか切り抜けていく、そういう意味でもいちばん印象に残ったのがこの「うそコンシェルジュ」だった。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
会社の人に勧めるようにと買った本作。日常が切り取られたほのぼの感が醸し出され、読後にじっくりとした余韻を感じさせる素朴な作品だったかなと思います。
本作は短編集であり、11編からなります。なお、表題である「うそコンシェルジュ」は2編に分かれて収録されており、10個の物語を味わうことのできる作品。
私の個人的なお気に入りは「うそコンシェルジュ」でした。ウソを上手くつくための相談を受ける主人公がとても愛くるしく、コメディ感があって好みでした。 -
短編が苦手であんまり読まないのだけど津村記久子さんだったら即買い。(しかもわたしはキンドル派なのに紙の本で)
安定のおもしろさ。しかも、ほかにない感じ、新鮮な感じ、津村さんならではという感じ、がしたんだけど。
どの話も、登場人物はみんなごく普通の人たちで大きなことが起きるわけでもなく、しかもみんな「リア充」とは遠い感じで、おもしろいとかやりがいがあるとは思えないような仕事をしていて、お金もなくて、あんまり楽しそうでもないし、っていうのが親近感がわくというか。そしてみんなちょっと困ってるようなことがあって、それをけっこう意外というか斬新というか、そんなふうな形でなんとか解決していくような話。
好きだったのは「誕生日の一日」とか。「誰かにお茶を出して話を聞くために生まれてきたんならそれでいいわ」っていう一文がなんだかすごく印象的だった。
あとは「二千回飲みに行ったあとで」とか。わたしはすごくしみじみしてしまい、悲しい話とかではないのになんならちょっと泣きそうだった。
津村さんの書くものを読んでてよく思うのは、対人関係についてすごくよく考えているな、っていうことで、例えば、愚痴とか自分の話を人にきいてもらうことについて注意深い、とか。タダで人に話をきいてもらえると思うな、とか、話をきかせて人の時間やエネルギーを奪ってはいけない、とか。同時に、他人の話をきかせられることによる自分の消耗にも敏感で。津村さんを読むようになってから、わたし自身、あんまり話をきいてもらうのも悪いなとか思うようになったかも。(人の話をきくほうについては、人づきあいがない人間なのでだれかが話をきいてほしいとか言ってきたら喜んでしまう。そんなこと言われないけども)。 -
11編集奇想天外で余韻の残るお話ばかり、なかでも「買い増しの顛末」祖父の形見の緑のペン168本の顛末がおもしろかった。「我が社の心霊写真」専務の写真に写り込んだ心霊写真の顛末が粋でよい。あなたも11編の面白おかしく意外なお話を読んで心安らかになって下さい。
-
感想
人は幸せになるために選択を繰り返す。毎日毎日何度も選び他を捨てる。もうひとつを選んでいたらどうなったんだろう。なんて儚いことも考える。 -
「サキの忘れ物」に続き津村記久子さんの短編集、今度は最新刊でジャケ買い。日常の人間関係の面倒くささがユーモアを交えて描かれる11編。メインの表題作+続編はまさに〝うそっぽい〟展開であまり好みではなかったけれど、職場を舞台にした「第三の悪癖」「我が社の心霊写真」「二千回飲みに行ったあとに」は意外性があって胸のつかえが下りたし、「買い増しの顚末」「居残りの彼女」も優しさに満ちた話でよかった。
-
短篇作品の登場人物の中に過去や現在の自分がいて、ひょっとすると未来の自分を予感して見つめたような気もして、胸がずっとざわざわしています。
人間関係に区切りをつける決断をしたり、自分の気持ちを自分でコントロールしたり、うそをついたり、日々のちょっとしたことでも人は何かを選んだり決めたりしながらよりよい未来を願って選択していくことで「自分」というものを形成しているのだと感じます。
くすっと笑えたりほっこりしたり、しんみりしたり…津村先生の描き出すたくさんの感情は、他人に押し付けるものでなく自分の胸の大事なところにとめておけるところがとても好きです。 -
一つ一つ話が長くなかったので読みやすかったです。
終始和やかな雰囲気で進んでいったのであっという間に読み終わりました。 -
「うそ請負人」となったみのり、52歳の誕生日を
ひとりで静かに祝う佐江子さん、祖父の遺品の
幸福な行先を探すえいちゃん…。日常の困った
ことどもをやり過ごし、目の前の「今」を生き延びる
力をくれる物語11篇。