奇貨

  • 新潮社 (2012年8月31日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (160ページ) / ISBN・EAN: 9784103327219

感想・レビュー・書評

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  • かなり前に読んだ『親指Pの修行時代』も面白かったが、何故か今まで他の作品を読む機会がなかった松浦理英子。
    短編2本でどちらも同性愛がテーマで会話のやり取りが面白い。
    『奇貨』言葉選びとテンポ、『変態月』は方言特有の柔らかさと大人びた感覚。
    変態月は小説を書くこと、頭の中を文章にする事の作者の考えが垣間見えるのも良かった
    。他も読もう。

  • 表題作と「変態月」の2編を収録。ちなみに「変態月」は1985年の作品。「ナチュラル・ウーマン」の前だからけっこう初期ですね。

    それもあるからか、だいぶ懐かしい感じでした。松浦さんの作品自体、かなり久しぶりでしたが。このむず痒い感覚とまどろっこしい感じ、思い出しました。好きなんですけどね、私にとっては忍耐になります。

  • この人の小説を読むのは高校生(「ナチュラルウーマン」や「セバスチャン」を読んだ)以来だから、25年ぶりくらいになるのかな。
    ルームシェアしている女友達の女友達に嫉妬する男の心理を、生々しく滑稽に描いた中編小説。
    女性同士の友情に対する憧れが歪に募っていき、
    ついには盗聴行為に及ぶのだが、
    不思議とこの男に対する嫌悪感を抱くことはない。
    プライドをあっさり捨て去った清々しいまでの独白により、
    男のひととなりがリアルに浮かび上がり、
    男が自分の10年来の知古であったかのような錯覚を覚えるからだろう。
    衒いのない淡々と落ち着いた文体が非常に心地よい。

  • 表題作は…。主人公の本田の描写がとにかく細かすぎてドン引きしつつも、気が付いたら目で字をひたすら追ってました。何で盗聴なんかしちゃったのかなー…。関係を覗き見したいっていう気持ち(自分の心境に関する理由)以外も何かしらあった気がするんだよね…。七島のキャラは好きでした。ノンケでもない、レズビアンでもない中途半端な存在の人を半端ヘテロとか言っちゃう分析のよさはさすがだと思いました。

    変態月はさわやかに読めました。事件を追っているヒロインもその気があるって事を徐々に自覚していく辺りがちょっと切ないなと思いました。あの後、土手に入って行って、無事に〝生還〟した事を祈るばかりです。続きが何気に気になります。

  • 図書館にて。
    中学生の頃に読んだ「親指Pの修業時代」以来久しぶりにこの人の本を読んだ気がする。
    いろんな雑誌に紹介されていたので手に取ってみた。
    恋愛よりももっと切実な、必要とされたい気持ちがダイレクトに伝わってきた。
    だからといって電話を盗聴するような、プライバシーに踏み込んだからといってなにがわかるというのだろう。
    その先に何が待っているかだって主人公にはわかっていたはず。
    どうしようもないし、どうにもならない。
    お互いわかりあえている相手と、たわいもない会話を交わすかけがえのない日常。それは決して簡単に手に入るものではないのだということを思い知らされる。
    ラストもこの小説にふさわしい。
    表題作の次に入っていた「変態月」も良かった。
    これもラストが秀逸。題名はこんなんじゃなくてもいい気がするが。

  • 奇貨(新潮文庫)
    by 松浦 理英子
    七島 美 野 と一夜恨みを酒の 肴 に飲み明かしたことがある。七島美野は、これまでにも私の小説に「 七 志 田」とか「 七 霜」といった名前で登場した友人で、実は今一緒に暮らしている。と言っても、内縁関係では全くなく、家賃を何割か負担するという条件で、貧乏私小説作家の私が会社員時代の蓄えを元手にやっと買った二LDK+ 納戸 のマンション・ルームをシェアして住んでいる、いわゆるシェアメイトである。七島の恋愛や欲情の相手がすべて同性であることも、以前の作品に書いた通りだ。いや、それは書いてなかったか。書いた後で削ったり、思い直して再度書いたり、さらに気が変わってまた削ったりしていると、書いたのだか書かなかったのだかわからなくなる。面倒なので確かめない。七島のセクシュアリティを書くことについては、七島本人に「本田さんの小説は発行部数四千部だし、本田さんの知り合いすら本田さんの小説は読まないんだから、何を書かれてもかまわない。わたしも読まないし」と承認を得ているので、地球上で四千人以下のわが読者諸賢は心配なきよう。ちなみに七島は私を筆名の梅木ではなく本名の本田で呼ぶ。

    「〈半端ヘテロ〉って、どっちつかずのセクシュアリティのこと?」 「うん。わたしの考え出したことばだから、わたしのまわりでしか通じないんだけど。〈半端ヘテロ〉っていうのは基本はヘテロセクシュアルなんだけど、異性にしか興味がない完全ヘテロの人たちとは違って、同性にもいくらか興味や愛着があるのね。でも、バイセクシュアルの人たちほどセクシュアライズされていないっていうか、自覚的・行動的ではないというか、同性に対して揺れ動いて時には性行為をしたりもするんだけれど、結局中途半端にしか同性とかかわらないの。」 「揺れても帰って行く先は異性愛なんだろ。ヘテロセクシュアルと言っちゃだめなのか?」  私の問に七島はここぞとばかり力を込めた。 「一回でも進んで同性とセックスしてそこそこでも楽しんだ人は、ノンケとかストレートとかヘテロセクシュアルと自称しちゃいけないと思うの。〈半端ヘテロ〉なんだよ。ああ、でも『中途半端にしか同性とかかわらない』なんて断定しちゃ悪いかな。〈半端ヘテロ〉同士で 萌え合って安全に遊んで満たされてる分には、何の問題も起こらないものね。真剣につき合いたがるレズビアンとは求めるものが違うから遺恨を生む場合があるってことだね。」

    自分が何か無神経なことをやったのか、性的技巧が寒咲を満足させるのに充分ではなかったのか、それとも、同性との性行為に 憧れていた寒咲だが、実際やってみると思い描いていたほど素敵ではなくて失望した、というふうなことなのだろうか等々と、うじうじ悩んでいるより率直に本人に思いを伝えてみよう、と決心して、七島はメールを書いた。わたしはあなたが好きなので恋人になれれば嬉しいけれど、もしあなたがあれっきりにしたいならそれでもいい、わたしのいちばんの望みはあなたとはいつでも笑って会いたいということだから──と、七島としては心を込めてしたためたつもりだったが、数日後に返って来た寒咲の返信は、七島の書いた内容にはいっさい 応えず、最近 観 た何とかという映画がとてもよかったというようなどうでもいいことが書かれてあるばかりだった。

    七島は私を人情の機微がわからないと言うが、恋愛の機微にうといだけで、若い頃の私は女の友人たちに「女の気持ちがよくわかる男」と言われていたのだ。「同性同士みたいに話せるから一緒にいて楽」と各種打ち明け話の聞き役として 重宝 された。私としては女性相手に会話する時も特に気を遣うわけではなく自然に頭に浮かぶことを口に出すだけなのだが、言われてみれば子供の時分から、男よりも女相手の方が話したいこともたくさん浮かんで会話が長続きした。二歳上の姉がいて、少女マンガなども読んで育ったのが影響しているかも知れない。それと、あまり性欲が強くなく、女性と楽しく喋っている時に性欲が刺戟されて密着したくなるということがないのも、相手に男性性を感じさせない要因になっているのではないかと思う。「本田くんってホモ?」(当時は「ゲイ」という言い方は一般的ではなかった)と訊かれたこともあるが、今のところ男への欲望は抱いた経験がない。精神的にも肉体的にも女の方が好きだ。

    しかし、 所詮 私は生物学的にも社会的にも男であって、女友達に 完璧 に女同士のようなつき合いをしてもらえるわけではない。温泉に一緒に行っても混浴することはないし、女友達が女だけで集まりたい時には誘われない。どんなに楽しく話せても、おそらく彼女たちと私の間にはどこかに感性や存在感の違いがあるのだろう。では男としてもてるかというと、まるでもてない。複数いた女の友人たちは時期が来るとみんなどこぞの男と結婚した。こちらも彼女たちと結婚したかったわけではないが、一人くらい恋愛結婚ならぬ友情結婚をしてくれる者があってもよさそうなものだ。ある友人などは「どこかにいい男いないかなあ」とぼやくので私が冗談で自分の胸を指差すと「それはない」と言ってぷっと吹き出しさえした。ひょっとすると容姿のせいでもてないのか。「本田くん、見た目は普通中の普通だよね」と言われていたので、フェロモンが 乏しいということか。

    「受け身の方はされることに対して感じるんだから、ごく普通でわかりやすいじゃないですか。でも能動的な側って自分は刺戟されてる側じゃないのに、精神的な喜び以外にどこにどう喜びを感じるんだろうって不思議だったんですよ。ボーイズ・ラブを読んでみて初めて、自分のすることによって相手がいい反応を返すのが面白くて、それ自体がエロティックな喜びになるんだってことがわかりました。わかったって言ってもうっすらと見当がついただけで、〈攻め〉の喜びを自分の喜びにすることはできませんけど。」

    さらにうっかり「おれ、レズビアンになれたら精神的にも肉体的にも深く満足できるのに」と七島の前で口走り、そんな甘いものではないと怒られた。七島の言うことはもっともで、ある種の人間は男であっても女であっても異性愛であっても同性愛であっても、ぴったり合う相手はなかなか見つけられない。七島もそういう種類の人間だからこそ、私などと一緒に暮らしているのだ。だから甘い了見は 棄てるとして、現在の私が抱くせめてもの願いは、プリンスが If I Was Your Girlfriend という曲で歌っているように、女友達と女同士のように仲よく遊んだり世話をし合ったりすることである。プリンスの曲は恋人である女に向かって女同士のような穏やかな親密さがほしいと言っているのだろうけれど、私は女友達とも恋人とも女同士のようにつき合いたい。口に出せば女たちに「気持ち悪い」と言われそうだが。

    「その言い方だと偉そうに聞こえて困るんですけど。ただ、当然のように告白を要求して来る人っているじゃないですか。『自分をあきらかにしないのは不誠実なことだ、悪いことだ、あなたも告白すれば楽になれるはず』みたいなモラルを振りかざして。本当の動機が、こちらのことを聞き出して好奇心を満たしたり、自分たちとは別の種類の人間と確認して改めて線引きすることであっても、 高邁 なモラルが 掲げられる。こういう時のモラルって、ほとんど人を脅迫する道具であり権力ですよ。わたしはそんな権力に従いたくない。『こちらが知ってほしいわけじゃない、あなたがたがむやみに知りたがっているだけだ』と言いたい気持ちがあるんです。そういう立場を取ると知りたがられるネタを持っている方が強くなる。」

    七島と友達の会話に興味が募って行ったのは、そこに私が七島に与えることのできないまばゆい何かがあり、私にとっては未知の幸福を 見出せるはずだ、と考えたからだ。あるいは単に、嫉妬や僻みや寂しさが 昂 じておかしな形に変質したと言うべきかも知れない。いずれにせよ私の頭は熱を持ったようになり、七島が電話で話している気配を感じるとパソコンのキーボードを打つ手も鈍って、会話の内容についてあれこれと空想が 拡がるのだった。二人がどんなに息が合っていて当意即妙の冗談や皮肉を連発し笑い合うのか。親しい仲において生み出されるはずの二人の間だけの流行語や 隠語 はどんなものなのか。音楽のセッションのように会話は盛り上がって行くに違いない。私のことは友達にどう説明されるのか。適当な説明ですまされるのか、面白おかしく語られるのか。「いいことも悪いこともしない無害な人」でもいいけれど、せめて「普通の四十五歳よりは子供っぽいけど憎めない人」くらいの好意を込めて話してほしい。

    ヒサ さっきの、本田さんだっけ? 若々しいね。  七島 本人は「おれは苦労が顔に出ないんだ」って言ってるよ。  ヒサ ゲイに見えなくもないね。  七島 でしょ? だけど女好きなの。セックスしなくても女と一緒にいるだけで楽しいっていうタイプのね。  ヒサ 一緒にいて楽?  七島 うん。つき合いやすい害のない人。あ、でも最近認識が変わったかな。害がないこともないかも。

    七島とヒサちゃんはこれまで自分たちが引っかかって来た数々の〈 半端 ヘテロ〉たちにまつわる愚痴をこぼしていた。うかつに人にレズビアンだと知られて困るのは、一部の人に気持ち悪がられたり憎まれたりすることや、こちらが性的魅力を全く覚えないただの友達が過剰に警戒して部屋に入れてくれなくなったり二人だけでは旅行に行ってくれなくなったりすることだけではない、〈半端ヘテロ〉がなぜか自分も好かれて楽しませてもらえるものと思い込んでべたべたして来ることだ、どうでもいい女なら無視しておけばいいけれども、外見中味ともに魅力のある女だったり、こちらの弱い部分をうまくくすぐって来る女だとほんとうに困る、どうせ適当に遊ばれて終わりだとわかっていても引っかかってしまう──。

    喜久江は性的な意味においても淳美を好きだったのだろうか。私が確認したいのはその点だった。同性を好きになること、同性を欲望すること自体は、現に私の身にも起こっているのだし、問題ではない。数多くはないにせよ世の中に確かにあることである。ただ、幼馴染に手を掛けるまでに喜久江を荒れさせた原因のひとつが性であったら──。

  • 中年男と同性愛者の女性との不思議なルームシェア。女の世界を覗き見することに喜びをもつ本田。ルームメイトの七島は同性の女友達を連れてくる。二人の生活は不思議な色合いを帯びてもつれて行く。

  • 男友達ナシ嫁も彼女もナシの中年男が、レズビアンの女友達へ尋常ならざる友情を抱く表題作と
    思春期女子のお話の、中編ふたつが入った本作。語弊があるかも知れませんが、どんな変態野郎が出てくるか…と思っていたのですが(笑)
    読んでみると「しっくり来る」という感想でした。言いたいこと分かる、そういう気持ち分かる。
    思春期女子のほうも「あるある」でした。ギスギスしていないので読みやすいけど
    心の中には他人に言えない秘密が渦巻いている感じ、共感する部分が多かったです。

  • 私小説家の本田は男っぽさというものが皆無で
    性欲も独特な部分しか持ち合わせず、
    それを安全と判断された10歳も年下の七島と同居している。

    レズビアンの七島が最近親しくしているヒサちゃんにたいして、本田は友情からくる激しい嫉妬に狂い
    彼女の部屋に盗聴器を仕掛けて、会話を盗み聞きする日々。

    男女の関係からはほど遠いけれど
    七島に対する愛情は深い本田の誤ち。
    女々しく、滑稽でいながらも切ない。

    他短編。
    3歳年下の中学生がかつての陰気な同級生に殺害された事件。
    バレー部での日々。同性に対するそう簡単じゃない複雑な気持ち。

    私は同性愛者じゃないけれど
    同じ女の子にたいする愛情というか愛着というか
    ドキドキする気持ち、嫉妬に変わってしまう思いはわかるよ。
    なんか懐かしい気持ちになったな)^o^(

  • 45歳の小説家本田は、35歳の元同僚七島と同居している。といっても内縁関係とかそういう訳でないし、七島はレズビアン。

    男とは上手く友情を築けない本田は、自然な流れで七島と暮らす事になるが、ある日、七島に新しい女友達が出来る。それに本人の自覚なく嫉妬した本田は、七島の部屋に携帯電話で盗聴をしかける。

    でも、その盗聴にも気づかれて、二人の同居生活は終わる。

    本田みたいな人物は今時「草食男子」なんて言われている人から見たら、他人とは思えないんじゃないでしょうか。私は草食男子と話したことありませんけど。

    「レズビアン」だと公表することは別にいいけれど、そうなると中途半端な性的関心をもった「半端ヘテロ」がまとわりついてくる、という七島の言葉に、「あーなんか大変そうだな」とぼけっと思った。

    本田のようにあまり性の香りを感じさせない男性って女の人から重宝されるけど、それ以上の関係にはあまり発展しそうにないですよね。それは、本人はどう思ってるんだろう?

  •  二編とも同性愛が描かれている作品。表題作は、私自身が自分の友達の交友関係に嫉妬をすることがないので共感はできなかったけど、本田さんと似た感情を抱く人はきっといるのだろう。ただああいう行動に走ってしまうかどうかの違いだけであって、抑えがたいほどの衝動を含んだ友情の気持ちも存在するのだなぁ、と。
     『変態月』の方は、私にはより印象的だった。恋する気持ちが強い欲望、そして執念にまで繋がる怖さと脆さ、繊細さがひたひたと伝わってきて良かった。

  • 親指Pの・・・で有名な松浦理英子さんの小説『奇貨』を読了。微妙すぎる小説だ。悪くないけどすっきりしない。テーマは分かるが突っ込みは足りない。正直言って消化不良か。出す作品すべてが凄い分けないので仕方ないが、北が高かったので少し残念。次に期待か。。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/58529

  • 男女の友情なんて原則ないと思っているが、価値観が似ている人ほど恋愛感情は抱きにくいのかもしれない。それと本の内容は全然違うのだけど。
    誰でも他人のち。ょっとした生活の一部を垣間見たいという欲求は少なからずある。ただそれを実行する術を知らないし実行する時間などもないからやらないだけ。
    分かっていたとしても倫理観がそれを抑制する歯止めにはなるのかな。
    二話収録されているがどちらの主人公にも同情の余地もなければ共感すら覚えない。似た感覚にもならないから大雑把に分類するとつまらない部類に入ってしまう。時間潰しにはいいけどね。

  • 同性愛者って対象が少ないからこじれると大変そうだな

  • 前に読んだ『ナチュラル・ウーマン』は出てくる三人の女性の熱量がすごくて、構成も面白く、圧倒される感じだった。『奇貨』は「女の人と、女友達のように接したい男性」という微妙な立ち位置の人が主人公なことで、人が人に惹かれるってどういうことかな、とか一歩ひいて考えさせられた気がする。

    七島のような、さっぱりと自立していて、周りに対して毒舌だけれども弱さもあり、でもやっぱり一本筋が通っている女性……って実はなかなかいないキャラクターだと思う。女性とのセックスに興味があるといいうだけで自分と関係を持ちたがる女を《半端ヘテロ》というのは痛快。

    主人公の男性がした、盗聴ってひいてしまうけれど、七島みたいなさっぱりした人間が自分の知らないところで精神的に密な関係を結んでいる相手がいると知ったら、秘密を漏れ聞くスリルみたいな感じで、やってみたくなるのだろうか。
    共感は出来ないけれど、描写に引き込まれた。

     主人公も七島もやっていることは読者とは離れていたりちょっと気持ち悪かったりするんだけど読後感は悪くない。
    丁寧に心情描写するところと、読者に想像させるところのバランスが良いのかな?

  • 中篇がふたつ。久々の松浦理恵子だ。
    表題作は、45歳の私小説作家の男、本田が、10歳年下のレズビアンの七島美野と同居し、別れる話。
    同居といっても、性的な関係はなく、お互い性的な興味を持たないのだが、あるとき、七島が特定の誰かと長電話をし始めたことに本田は嫉妬してしまう。

    ―私はあきらかに七島にとって二番手以下の友達に成り下がっていた。今までにも女友達をめぐっては覚えのある経験だったが、今回ほど落ちつかない気分に支配されたことはない。私はこれほど七島に依存していたかとおののいて、他の人間関係が希薄なせいだ、少しは外に眼を向けようと思い、近くの将棋会館に行ったり、親しい編集者を誘ってキャバクラに遊んでみたりしたが、…ますます七島の充実が羨ましくなった。-

    とにかく、いっしょにいると心地よい七島と離れたくないという本田の気持ちが、彼女の部屋に盗聴器をしかけさせるのだ。

    表題の奇貨とは、珍しい品物や人材のこと。
    本田は、七島をそういう存在として、持っていたかったのかもしれない。
    しかし、盗聴器はばれてしまい、七島は彼のもとから離れていった。

    性的な興味でなく、女友達のように気に入った女の子と接していたい男、本田。性的とはどういうことか、肉体的な接触はなくとも、いっしょにいたいということの中に性的な匂いはあるだろう。

    いっしょにいて気持ちが良い関係ということのは何かと改めて、思った。

    もうひとつは、「変態月」という話。
    こちらは、逆に、同性愛の肉体的な欲望が主題になっていて面白い。
    昔親しかった後輩の中学生が殺され、その加害者が、同級生の女子だと知る中、自分の同級の友達に対する性的な思いが露出していく、といった話。

  • 表題作「奇貨」、「変態月」の2編。表題作は楽しめる。こういう男性がいるかどうかは、別として、七島はよい。なかなか芳しい読後感でした。

  • ★2,8 誰からも安全圏と言われる男がレズの女性のルームメイトを迎えた。心地よい友人関係を続けていくうち、少しずつ変わる気持ちが綴られていた。自分にはラストがすっきりせず、消化不良だった。

  • 『親指Pの修業時代』『犬身』で熱狂的な支持を得る著者5年ぶりの新作! 男友達もなく女との恋も知らない変わり者の中年男・本田の心を捉えたのは、レズビアンの親友・七島の女同士の恋と友情。女たちの世界を観察することに無上の悦びを見出す本田だが、やがて欲望は奇怪にねじれ――。濃く熱い魂の脈動を求めてやまない者たちの呻吟を全編に響かせつつ、男と女、女と女の交歓を繊細に描いた友愛小説(amazonより抜粋)

    初読み作者です。
    けっこう絶賛されている作者みたいですが、あまり魅力がわからない。
    むしろ私的には書き方が好みではないんだと思いました。
    ダラダラと文が詰まっている感じというのか、すらすら読める時もあれば、ウっと詰まってしまう処も多々ありました。
    やっぱり好きじゃないのかなぁ。
    展開も魅力的ではなかったけど。でも情緒的ではあったなぁ。
    レズビアンの話なだけに?

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著者プロフィール

1958年生まれ。78年「葬儀の日」で文學界新人賞を受賞しデビュー。著書に『親指Pの修業時代』(女流文学賞)、『犬身』(読売文学賞)、『奇貨』『最愛の子ども』(泉鏡花文学賞)など。

「2022年 『たけくらべ 現代語訳・樋口一葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

松浦理英子の作品

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