天使も踏むを畏れるところ 下

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  • 新潮社 (2025年3月26日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (552ページ) / ISBN・EAN: 9784103328155

作品紹介・あらすじ

空襲で焼け落ちた明治宮殿に代わる、戦後日本、象徴天皇にふさわしい「新宮殿」を――。敗戦から15年、皇居「新宮殿」造営という世紀の難事業に挑む建築家・村井俊輔。彼を支える者、反目する者、立ちはだかる壁……。戦前から戦中、戦後、高度成長期の日本社会と皇室の変遷を辿り、理想の建築をめぐる息詰まる人間ドラマを描き尽くす、かつてない密度とスケールの大長篇。『火山のふもとで』前日譚ついに刊行!

感想・レビュー・書評

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  • 「皇居」新宮殿の造営をめぐる壮大な長篇小説、松家仁之著『天使も踏むを畏れるところ』(3/26発売)の書影公開!トークイベント&サイン会開催決定! | 株式会社新潮社のプレスリリース
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001957.000047877.html

    『天使も踏むを畏れるところ 下』|感想・レビュー・試し読み - 読書メーター
    https://bookmeter.com/books/22492467

    今週の本棚・著者:松家仁之さん 『天使も踏むを畏れるところ 上・下』 | 毎日新聞 2025/3/29有料記事
    https://mainichi.jp/articles/20250329/ddm/015/070/014000c

    皇居宮殿をつくる、直面する畏れ 松家仁之さん、新刊「天使も踏むを畏れるところ」:朝日新聞 有料記事2025年4月16日
    https://www.asahi.com/articles/DA3S16195776.html

    <著者は語る>小説執筆と重なる建築 『天使も踏むを畏(おそ)れるところ(上)(下)』 作家・松家仁之(まさし)さん(66):東京新聞デジタル 2025年4月20日 有料会員限定記事
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/399686?rct=book

    松家 仁之 - Webcat Plus
    https://webcatplus.jp/creator/2401498

    『天使も踏むを畏れるところ 下』 松家仁之 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/332815/

  • 昭和を語る上で高成長の東京への波は外せない事例だと感じられる。その波はもちろんお濠の内側にも。
    約半世紀前のことなのに随分と昔のように感じられる。
    と言うか約半世紀前のことなのに、現在も変わらない?

  • 上下巻で1000ページ、序盤は長いなと感じていたが、下巻はペースアップ、新宮殿完成までのドラマ、美智子妃の苦労など、読みどころが多く楽しかった。敗戦時の天皇陛下の扱いに関するアメリカの思惑、美智子妃の婚約をきっかけに、国民の皇室に対する意識が大きく変わったこと、それぞれについて、天皇皇后陛下を始め、周りで働く人の対応なども興味深い。日本人という国民が、敗戦時には変化を丸呑み、という考察も面白い。

    宮内庁・牧野は、建設が始まった頃から、村井の基本設計を変更したり、絵画の調達だけでなく家具や内外装の決定も独善的に進めていく。そして、新たに建設省から担当に加わった技術者が主張した、エキスパンションジョイントの追加から、プロジェクトの進め方と自身の立場について、村井は宮内庁の長官あてに質問状を送付するに至る。

    主人公・村井俊輔のモデルは、実際に皇居新宮殿の設計を手掛けた建築家の吉村順三と言われている。調べてみると、新宮殿の実施設計は吉村氏、実施設計は宮内庁造営局との記録があり、吉村氏は途中でプロジェクトから抜けたともあった。

    昭和天皇の侍従・西尾は、巻末の主要参考文献にも記載がある入江相政がモデルで間違いなさそう、そして村井の友人の画家である山口は東山魁夷のよう。実際に皇居宮殿壁画《朝明けの潮》と、東宮御所の壁画《日月四季図》を創った画家。皇太子夫妻を見守る小山内には小泉信三というモデルがいるらしい。

    1945年3月10日の東京大空襲で亡くなった人は、8〜10万人と言われている。主要な武器になった焼夷弾の開発と実験には、日本家屋と街並みだけでなく、家具や布団まで用意され、その効果が検証されたそう。アメリカは日本建築についても、かなり研究したという。

    著者のデビュー作「火山のふもとで」にも、この物語の建築家・村井が登場するらしい。

  • 全体を通せば面白かったが、上下巻1100頁はとてつもなく長い。中弛みもあって苦痛に感じる所もあった。
    ある程度史実に沿った内容と思われるが、官僚を悪者にした方が話として盛り上がるように仕立て上げた感じがする。
    村井とされる建築家は初めから宮内庁関係者に関与されないように基本設計から見せないようにしていたそうですね。施主と建築家との関係が最初からそうでは起こるべくして起こったトラブルだったように思う。

  • 昭和の新宮殿は、設計者が降りるという事態になる。そういう事だったのか…。
    昭和の建築史と思って読んでいたのだけれど、昭和の皇室と宮内庁の歴史小説、という感じだった。
    現実の皇室は、次期天皇となるであろう方の大学進学で、女性週刊誌を中心にニギニギしくなっているけれど、少しづつ変わっていくのだろうか?

  • 堪能した。「沈むフランシス」、「光る犬」、を読んで、「火山のふもとへ」を読み返してから「天使も踏むを畏れるところ」(上)を読んで、一気に下巻も読み終えた。堪能した。

    池澤夏樹「また会う日まで」
    松浦寿輝「名誉と恍惚」
    小川哲「地図と拳」
    は昭和100年3小説だなあと勝手に思っていたのだけれど、昭和100年4小説になった。

  •  上下二冊本の長篇天皇小説。著者のデビュー作『火山のふもとで』の前日譚にあたるという。いちおう読まないといけないか。
     物語としては、1968年に完成した皇居新宮殿の設計と建築をめぐって、「戦後天皇制」をどう表象するのか、「天皇」が現前する空間をどのように体験させるのか、設計者の建築家と予算を仕切る宮内庁の担当官、「技術」一辺倒の建設省の若い技官とが陰に陽にしのぎを削り合うプロセスが読みどころになっている。特定の視点人物の語りで一貫させず、立場の異なる人物それぞれに語りを担わせてそれを組み合わせていくというスタイルだが、不思議と多声的なテクストとは感じられない。その点がこの小説のポイントであり、問題点だろう。

  • 「火山のふもとで」の村井さんが、戦後に新宮殿を設計した時のお話。史実を元に書かれたエピソードが多々あり、昭和史の一部分を知ることができた。

    牧野の振る舞いには苛立ちを覚えたが、宮内庁造営責任者としての立場からすると、そうしたくなる理由もあったのだろう。村井さんの外部告発以降の話からなんとなくそう思えた。

    上下巻合わせて1000ページ以上の大作。上巻はなかなか読み進められなかったが、下巻はなかなか面白く読めた。ある意味、牧野を悪者とした書き方が作品を面白くしたと思う。

  • 下巻。新宮殿建設は牧野の暴走に伴って歩調が合わなくなり、ついに村井は設計者の立場を降りる選択をすることになる。上巻から皇帝とはどのような存在か、宮殿とはどういう建物であるべきか、などの問いが繰り返し作中で語られているが、登場人物たちの考え方のずれが致命的になっていくのを見せつけられるようだ。
    牧野の暴走と暴言は本当に読んでいて嫌な気持ちになって読むのがしんどくなったが、侍従の西尾さんのパートの軽さに救われる感じがする。とにかく壮大な小説で、この時代を生きてきたような人ならさらにこの小説を楽しめるのかもと思った。緻密な構成に溢れるような専門知識、実在の人物の人柄をちょっとした会話などからにじませるような文章は資料の読み込みや取材の労力がしのばれ、天皇や日本現代史に興味がない自分にはちょっと勿体ない小説だったかもしれない。
    牧野が田舎者の僻みで東京出身の村井の設計を蔑ろにするように書かれているが、ど田舎出身の自分にはちょっと嫌だった。あー、作者のような東京の人って田舎者をそういうふうに見てるんだなと思ってしまう。嫌といえば、相変わらず不倫相手とべったりな村井もどうかと思ったが。牧野に2人でいるところをじろじろ見られて不快だった、と言うけど、そりゃ立場ある人がじろじろ見られるようなことしてるんだからそうなるでしょ(笑)としか思えない。
    そういう不満はあれど、上下巻あわせて1100ページほどの分量に見合う面白さは確かにあった。次の作品はどういうものになるんだろう、楽しみである。

  • いよいよ設計図が確定し工事が始まる。堀の外では安保闘争やオリンピックなどで騒がしく、工事にも影響が。宮内庁の責任者の幼少期が語られる唐突感もあるがのちに納得。紆余曲折あるが、静かに丁寧に物語が進む。物語としては無駄なことも多いのだろうが、その細かな書き振りが真実味を増している。最後は驚いたが、この作者ならではの締めかたでなるほど。

  • 戦後の天皇制に対する国民感情、建築、芸術、デザインなど表現者たちの思考のプロセス、組織論、などなど多岐にわたるものごとたちについて、変わったことや、変わらなかったことたちについて建築物が出来上がっていく長い過程を通して語られるという構成は、まさに建築のように立体的に物語が立ち上がっていくような新鮮な読書体験だった。
    ちょっと長かったけど笑

    高度経済成長に向かう上向きの空気感の中で、村井(吉村順三)のような地に足のついた価値観をもった建築家に「新宮殿」造営を依頼したのはあらためて慧眼だったと思う。

    これでもかと粘着質に描かれる牧野の暴走は、凡庸とした人物に能力と権利を持たせたらこうなるのだということだろうが、自身を返り見るに残念ながらこれが最も近そうだなと、、、

    「火山のふもとで」も読み返してみよう。

  • p31 種まきに必要な心得とはなにか それは注意深い楽観主義です と講師はいった

    種子から芽が出るかどうかはあなたが決めるのではなく、種子が決めること。やるべきことは注意深く取り組んで、楽しみに結果を待つのが肝要です。あなたがちが草花にできるのは、半分だけ。残りの半分は草花が勝手にやってくれます。

  • やと、読了。上下巻と長いが、いろいろな立場の方の心情や行動が丁寧に淡々と描かれているせいか、飽きずに最後まで読めた。
    吉村順三先生の建築に対する思いが伝わった。
    今の社会や会社にも通じる社会の澱が見事に描かれていて、今もありそうだと納得しながら読了。

  • 興味深い情報がたくさんあった
    というだけだった

  • 下巻2巡目。

    新宮殿造営の話ばかりでは窮屈だな
    そう思っていると、美智子様と衣子の
    何気ないやり取りに心がほぐれほっとする。

    P223
    〈宮殿はくつろいでもらう場ではない。宮殿はハレの舞台なんだよ〉

    一向に交わることのない村井と牧野。
    ズレはおおきくなるばかりだった。

    読んでいて、牧野を理解したいという気持ちはあったが
    最後まで寄り添うことはできなかった。

    今作はフィクション。
    でも、新宮殿建設に尽力した人々の名は歴史に残り
    この後も消えることはない。
    名を残すことなく去った人たちも
    みな、誇りを持って仕事をしていたのだろうな。

  •  ようやく上下巻を読み終えた。
     上下巻で1000頁以上、しかも会話も少な目で、びっしり詰まった文字の羅列の文章は、なかなか重かった。
     ただ、戦後80年の今年読むに値する内容だった。そんな思いで、ひっしに食らいついた感がある。

     戦禍で焼失した皇居の明治宮殿を戦後に建て直すというお話。建築家の村井俊輔、官庁から派遣役人杉浦の二人を軸に、彼らの戦前、戦中の生い立ちから、敗戦後の日本、皇室のありかた、サンフランシスコ講和条約を機に国際社会へ復帰、高度経済成長を歩みだす時代を追った。

     上巻は、如何に新宮殿を国民が納得するものにするか、戦後の新しい皇室のありかたと共に考えるというお話と思って読む。

    「戦争に負けて、天皇の役割もおおきく変わった。日本はいわば開闢以来、はじめて民主主義の国になったんだ。二千年に迫ろうという制度と、二十年に満たない、しかも勝ち取ったものですらない他国から与えられた制度とを、どう並立できるのか。それを建築によって実現できるのかどうかはわからないが、挑戦する価値はある」

     ただ、それだけでは済まず、時代が進むにつれ、関係者それぞれの様々な思惑が錯綜し、けっして一枚岩のプロジェクトでなくなるあたりから、新宮殿建設が迷走しはじめる下巻は、なかなか読むのも辛い話になっていく。

    「無であったところに、なにかをあらたに建てようとするとき、見えないものに頭を下げ、無事を祈るのは自然な行いではないか。それくらいの謙虚さを持ち合わせなければ、建築はとどまるところを知らないバベルの塔のごときものになってしまう。」

     と村井は述懐するが、謙虚さを持ち合わせない人間の跋扈、私利私欲ではないが、「公」として建物として、さまざまな人の思いが入り乱れる。

    「人が生きていくとき、つまり制限のある三次元の空間と時間に身をおくとき、二次元の視覚芸術は重さのある世界から人間を解き放つ作用があるのではないか」

     建築という実用の世界に身を置く村井だからこそ、ふと二次元の世界の自由さに憧れを抱くシーンには、責任の重さと、やるせなさが現れていて、なんともイタタマレナイ。

     村井俊輔は、著者のデビュー作『火山のふもとで』を読んだときに、吉村順三であるというアタリは付けていたので、本作も、いろんな登場人物が誰だろうと、実在の人物を当て嵌めていく作業はそれなりに面白かった。

     ストーリーが暗転していく中で、いったいどうなるのか? とつい実際の吉村順三の業績も探ってしまった。結末は小説上の脚色か? とも思ったのだが……。
    「皇居新宮殿の設計において基本設計を担当した後、途中で辞任しています。
     具体的には、彼は宮内庁から委嘱を受けて新宮殿の基本設計を行いましたが、実施設計の段階で宮内庁との意見の相違が生じ、設計者としての立場を明確にするために辞任したとされています。その後はアドバイザー的な立場に回ったとも言われていますが、竣工式には出席していません。」
     とのことで、史実に基づいて、ある程度忠実に描かれていたのだなと驚いた。国家プロジェクトは、なかなか難しいものだ。

     その他、戦後の日本立ち位置や、1960年代の国土の開発、首都復興の動きを、皇居新宮殿建設を軸に見通せたのは、戦後80年の歴史を振り返る意味でも、非常にためになる作品だった。
     1952上映の黒澤明作品『生きる』がたびたびフィーチャーされているのも本書の裏テーマでもあったかな。

  • 上巻よりスラスラ読めた。

    防弾ガラスが後から付けられたものとは知らなかった。

    村井の立場になって読むものだから、ホントに腹立たしくなった。
    でも牧野は悪役に描かれ過ぎているような。モデルになった人も、あんな感じだったのか。そうでないなら、ちょっと悪役に寄り過ぎてる感じがする。牧野が「田舎出身」のエリート、さもありなんって感じで書かれてるのだが、作者が東京出身のようで、これもさもありなんって感じ。
    不倫関係が爽やかに描かれているのもちょっと…
    村井が都会的で、洗練されて、冷静で、対応が大人ででも肝心なところは譲らない、筋の通ったセンスと才能のある人であることはわかった。

    侍従長のパートが一番ホッとした。なければ読むのも辛かったと思う。

  • 下巻は⭐️⭐️⭐️⭐️にしたけど、穏やかな上巻では5つ。
    女性の登場人物がほぼ2人なのにも関わらず、優雅で静かな時が流れる…

  • 侍従西尾氏ほかが殿下、妃殿下のことを語り合う場面でそれぞれ長男、お嬢さんと名付けるのが何ともよく、いっぽう美智子妃のご結婚以降の生活を思うに辛いものがある。

  • ふむ

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著者プロフィール

1958年生。大学卒業後、新潮社に勤務し、海外文学シリーズの新潮クレスト・ブックス、季刊誌「考える人」を創刊。2012年、長編『火山のふもとで』で小説家としてデビュー、同作で読売文学賞受賞。第二作は北海道を舞台にした『沈むフランシス』。本書が小説第三作になる。


「2014年 『優雅なのかどうか、わからない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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