豆の上で眠る

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103329121

作品紹介・あらすじ

行方不明になった姉。真偽の境界線から、逃れられない妹――。あなたの「価値観」を激しく揺さぶる、究極の謎。私だけが、間違っているの? 13年前に起こった姉の失踪事件。大学生になった今でも、妹の心には「違和感」が残り続けていた。押さえつけても亀裂から溢れ出てくる記憶。そして、訊ねられない問い――戻ってきてくれて、とてもうれしい。だけど――ねえ、お姉ちゃん。あなたは本当に、本物の、万佑子ちゃんですか? 待望の長編、刊行!

感想・レビュー・書評

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  • 幼いころに突然失行方不明になった姉。
    事件は姉が2年後に無事保護されることで解決した。
    しかし妹には小さな違和感が大人になってもくすぶり続けていた。

    タイトルは「豆の上で眠る」。
    これはアンデルセン童話の「エンドウ豆の上に寝たお姫さま」から貰ったもの。
    この童話自体知らなかったけどなるほど巧い。
    背中に小さな豆粒ほどの違和感を感じるお姫様か。
    でも、どうなの?
    戻ってきた姉が以前の姉だとは信じられないとしたら、豆粒ほどのかすかな違和感じゃなくて絶対的な違和感でしょう!
    なんて言うのは無粋か(笑)

    どこかで読んだことあるような設定だったりオチだったりするものの、一人称で終始語られる主人公の心理描写はさすが。
    湊さんの作品らしく飽くことなく一気に読めた。
    この伏線回収しないの??なんて部分もあったり、重いテーマの割に軽すぎやしないかなどど色々感じる部分もありますが・・・。
    全体的には面白く読めました。

  • ある日、大好きだったお姉ちゃんが突然いなくなってしまった。
    まだ小学三年生。
    自らの意志での失踪なんて可能性は低く、
    手掛かり皆無で焦燥しきる家族に、彼女が与えたダメージは計り知れないものだった。

    それから二年、
    まさかの無事帰還である。
    変わり果て、記憶を失った状態で発見された彼女に対して、喜びながらも小さな違和感を抱く妹。

    (この人は本当に私のお姉ちゃん…?)

    何重にも重ねられたシーツの下に隠されたたったひとつの小さな小さな豆。
    その一粒が気になって今夜も眠れないのは(あの人は姉じゃない)と見抜いている私だけ。

    (ある)とは気付いていても
    シーツさえ被せれば、穏やかに眠ることはできる平穏。
    ニセモノの平穏と
    ホンモノの平穏がかけられていた天秤が、ラストでぴたりと吊り合ってしまう物語。

  • 湊かなえならでは、の作品。

    13年前、小学生のときに、結衣子の姉・万佑子は行方不明になった。
    お人形のように可愛らしかった姉。
    後に戻ってきた姉は記憶をほとんど失っていた。
    似ているけれど、どこか違う気がする姉。
    本当に、姉の万佑子なのか?

    子供の頃に起きた衝撃的な事件の謎。
    緊迫した展開と、姉を偏愛していた母親の言動がちょっと怖いものがあります。
    戻ってきてから、違和感を抱く妹に対して、まわりはほとんど放っておくというのも。

    幼い妹にすべてを話すわけにはいかなかったという事情もわからないではないのですが‥
    終わってみると、一番割りを食ったのは実は妹?
    いや、そんなはずは‥
    さらわれた当事者の苦しみも、母の苦しみも、別な意味では犯人の苦しみもあるはずですよね。
    そのへんがあまり描かれていないため、妹は気の毒だけど、やや他への配慮が足りない気もします。

    こんな嫌な状況があり得るのね、という~湊さんの世界に興味をひかれているのは否定できませんが。
    考えてみると悪意型の人間はほぼいないにもかかわらず、これだけ後味が良くないって!?
    感心するようなしないような、妙な後味でした。

  • 結衣子が小学1年生の夏休み、一緒に神社で遊んでいて先に帰った姉の万佑子が
    行方不明になった。
    必死の捜査にもかかわらず見つからない…。
    しかし、2年後突然万佑子は帰って来た。
    遊んでいた神社の前で、失踪当時の服を着て…。記憶を失って…。

    結衣子の視点から現在と過去を行き来し物語は進んでゆく。

    一目見た時からの違和感…。
    拭っても拭っても消えない『違和感』
    布団の下に隠されたえんどう豆のように気に掛かる…。
    結衣子の疑念はどんどん膨れ上がっていく。
    訊ねられない問い………。
    大学生になった今でも結衣子の心には『違和感』が残り続けていた。
    苦しめられていた。

    行方不明の姉を捜す母親の常軌を逸した行動
    結衣子は、自分が一緒に帰らなかったという後悔があるから、
    無理な言いつけを受け入れ奔走する。
    それによって、深く傷付けられる結衣子がとっても可哀相でした。

    結末には、とても驚かされましたが、13年間も悩み苦しんでいたのに
    余りにもあっけなく淡々と語られる真実…。
    どうして、それ程ひた隠しにしていた事をこんなにもあっけなく語れるのか?
    釈然としない思いでした。

    本物の家族って何なのだろう…。
    本物の姉妹って何なのだろう…。

    現実感が得られなかったのか、他の作品の様に読了後
    気持ちが重く嫌な気分になる事はなかった。

  • ------冒頭
    大学生になって二度目の夏------。
    新神戸駅から新幹線こだまに乗って三豊駅まで向かう約二時間、いつも思い出す童話がある。


    神社で、神隠しにあったかのように失踪した小学生の姉、万佑子。
    妹結衣子の回想で綴られるこの物語。
    二年後に突然見つかった万佑子だが、その姿はあまりにも以前とかけ離れていた。
    万佑子が戻って来たのに、父母の喜びは何故か中途半端で、腫れ物に触るような扱い方だ。
    何故? 結衣子は違和感を持つ。
    この万佑子は本当に失踪した姉なのか?

    読み進めていくうちに、首筋をねっとりとした脂汗が流れ落ちてゆくような、このぞわぞわとした感じ。
    湊かなえの作品を読むときのおなじみの感触だ。
    一人称独白形式で語られる結衣子の言葉には、常にその裏に何かが隠されているようなイヤミス感が漂う。

    そして終盤になって明らかにされる驚きの真実。
    実にうまい構成だ。
    「本物のお姫様」とはいったい誰のことを意味するのか。
    そのお姫様は、何枚も重ねた布団なのにどうして豆の存在を感じることができるのか。

    童話をモチーフにしたこのサスペンスミステリー。
    この小説世界は湊かなえの独壇場だ。
    彼女独特のぞわぞわ感を堪能したい方は是非読んでみるべし。
    お薦めです。

  • それにしても、親の万佑子に対する扱いひどすぎないか?
    猫を探しに行かせると見せかけて、怪しい家に訪問させたり、明らかに姉との態度に差があったり、口調も少しきつかったりとひどい。
    確かに、娘が誘拐された時の親の心情を考えれば多少はしょうがないかもしれないが、それにしてもやりすぎ。娘が学校でどんな扱いを受けるかなど想像できないものなのだろうか?
    結末は、どこかのドラマでありそうなものでした。あまり意外性を感じなかったです。後半から物語に引き込まれていきました。ぜひ、機会があれば他の作品も読んでみたいです。

  • 湊さんらしいモヤモヤ感が読後も残る物語。

    小学3年の姉が、ある夏の日突然姿を消した。
    事故か誘拐か神隠しか…?
    様々な憶測がなされ必死で捜索するが見つからない。

    そんな姉がその丁度2年後、これまた突然姿を現す。
    しかし2年ぶりに再会した姉は…一体誰?

    幼い頃から仲の良かった妹は「姉」に違和感を抱く。
    両親は「姉」だと主張しDNA鑑定でも白。
    それでも何かが違う。幼い頃の記憶が違うと囁き続ける…。

    幼い頃姉がいつも読み聞かせをしてくれた童話。
    本物のお姫様を探す童話の内容とリンクしながら、記憶を頼りに本物の姉を必死で探す妹の気持ちは痛いほど分かる。

    血の繋がりとか血液型とか科学的根拠なんて関係ない。
    大切なのは幼い頃の二人っきりの思い出なのだと痛感した。
    湊さんらしくハラハラさせられ、ダークな余韻がいつまでも続く。

  • 半ば過ぎまではテンポよく引き込まれて行くけど、終盤のネタバレ部分で捻り過ぎてあり私にはスベった感が感じられる展開だった。ちょっと策に溺れた感じ。

  • 第六章に全てが詰まってた。
    むむむ・・・だけど、なんだろう、この満たされない感じ。
    ちゃんと本当の事を結衣子ちゃんにも教えてあげてたら良かったのに。
    違うのに本当だって言われても、人生悩んだままになっちゃうよ。

    突然、子供が行方不明になってしまったら、春花のような行動をとってしまうのだろうか・・・

  • 湊氏の新作本、図書館でかなり早くに入手。兄弟姉妹モノには弱いわたしですが、本作は、なぁ。あいかわらずの読後にじとーっと残る不快感。ある意味さすがですわな。

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著者プロフィール

1973年広島県生まれ。2007年『聖職者』で「小説推理新人賞」を受賞。翌年、同作を収録した『告白』でデビューする。2012年『望郷、海の星』(『望郷』に収録)で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞する。主な著書は、『ユートピア』『贖罪』『Nのために』『母性』『落日』『カケラ』等。23年、デビュー15周年書き下ろし作『人間標本』を発表する。

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