豆の上で眠る

著者 :
  • 新潮社
3.18
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本棚登録 : 4086
感想 : 563
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  • Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103329121

感想・レビュー・書評

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  • ------冒頭
    大学生になって二度目の夏------。
    新神戸駅から新幹線こだまに乗って三豊駅まで向かう約二時間、いつも思い出す童話がある。


    神社で、神隠しにあったかのように失踪した小学生の姉、万佑子。
    妹結衣子の回想で綴られるこの物語。
    二年後に突然見つかった万佑子だが、その姿はあまりにも以前とかけ離れていた。
    万佑子が戻って来たのに、父母の喜びは何故か中途半端で、腫れ物に触るような扱い方だ。
    何故? 結衣子は違和感を持つ。
    この万佑子は本当に失踪した姉なのか?

    読み進めていくうちに、首筋をねっとりとした脂汗が流れ落ちてゆくような、このぞわぞわとした感じ。
    湊かなえの作品を読むときのおなじみの感触だ。
    一人称独白形式で語られる結衣子の言葉には、常にその裏に何かが隠されているようなイヤミス感が漂う。

    そして終盤になって明らかにされる驚きの真実。
    実にうまい構成だ。
    「本物のお姫様」とはいったい誰のことを意味するのか。
    そのお姫様は、何枚も重ねた布団なのにどうして豆の存在を感じることができるのか。

    童話をモチーフにしたこのサスペンスミステリー。
    この小説世界は湊かなえの独壇場だ。
    彼女独特のぞわぞわ感を堪能したい方は是非読んでみるべし。
    お薦めです。

  • 久しぶりに、食い入るようにして読みました。
    ページをめくる手がとまらず、、!
    最後、すべてが明らかになってから、混乱するゆいこちゃんの問いかけ、’ほんもの’とは?
    その一文がずっしり重い。
    なんとも湊かなえさんらしい作品だなと。
    どうすれば、みんなが幸せになれたのか?
    その問いかけの答えが、わたし自身わかりませんでした。
    姉妹ならではの、ライバル意識とか、親の前でいい子でいなきゃ、って意識とか、そのあたりの描写がすごくリアル。

  • わーわーわー!!!
    と、思わず叫びたくなる話。衝撃。
    なかなか告白から進歩しない、告白より面白い作品を産まない(個人的感想です)と思っていましたがこれはすごかったです。
    湊さん特有のくどさもなかった。一人称で話しかけるように語り続けるあのくどさに飽き飽きしてたんです。
    ほんと本ものってなんでしょうね。繋がりとか。
    けれどこれで一番可哀想、というより不幸なのはやはり結衣子だけで、なかなかのイヤミスっぷりがたまらなかったです。久しぶりに没頭して一気に読んでしまいました。

  • 幼少期、姉の失踪前、最後に読んでもらった童話『えんどうまめの上にねたおひめさま』を忘れられない妹は、戻ってきた姉に『違和感』を感じ続ける。この『違和感』が、物語の最初から最後まで、消えることなく続いていく。後半の種明かしに、一気に引き込まれるが、『違和感』だけが残る

  • 最後の最後まで読みごたえがある。

  • 今と昔を交互に描きながらも
    一つの真実に交わっていく過程は
    湊かなえらしさであり、大きな魅力です。

    身体がスッと冷たくなるような不思議な恐ろしさと
    数々の疑念が晴れていく清々しさ
    ミステリーなのに怖さだけじゃない絶妙な色味が
    本当に素晴らしかったです。

  • 湊かなえさんらしい最後のどんでん返しが、前半から後半までずっとずっと結衣子ちゃんの思い違いなのか、本当に万佑子じゃないのかドキドキしながら読んでました。アンデルセン童話の「えんどうまめの上にねたおひめさま」は読んだことが無くて、この小説のお陰で探して読んでみました。

  • 見知らぬ人たちのレビューをざっと見渡すと全体的には評価があまり良くないことに驚く。
    評価しているのも、「終盤のスピード感」であったり、「読了後のモヤモヤ感が湊かなえらしい...」のようなふわっとしたものばかり。

    この小説は特に終盤は複雑で、自分は初めてくらいに、部分的に読み進めては読み直しまた読み進める、という順を取った。
    フィクションに対して、設定に無理がある、なんてズボラな批評は的外れではなかろうか。読み切れてないというのが強いと感じる。


    さて、ザッとのあらすじ。(裏表紙に書いてある程度)
    この小説は2人の姉妹(小学校低学年の子ども)がメインキャラクターとなる。主人公は妹。
    性格や身体的特徴の異なる2人だが大変仲が良く、妹は姉をとても慕っている。ある日、姉が行方不明になり、家族総出で奔走するも見つからず、ふと2年後に突然見つかる。
    しかし、帰ってきたのは元の姉ではないと妹は勘付くが、両親は否定、DNAを調べでも両親の子であることが証明される。
    その真実は...(小説で)


    主題は「家族とは何か、血の繋がりとは何か」と言える。ただし、その主題が強くなってくるのは中終盤で、序盤はその主題は極めて弱い。
    主題が設定されているも、それがなかなか出てこないという小説はあまり読んだことがなかったので新鮮であった。
    また湊かなえらしいのかどうかは未だ判断が付かないが、結局のところ主題は完結していない。読者へ考えるキッカケを提供...いや、ブン投げて終わる。考えざるを得ないというのも悔しいが、それは小説家としての技巧が光っているように感じた。

    ごくありふれたテーマではあるものの、ストーリーは丁寧に作り込まれ、楽しめた。

    湊かなえにハマりつつある自分だが、とにかく女性の心理描写が上手い。現実的には、高尚すぎる気もする。(女卑、というわけではなく、人間はそんな頭を使って生きてないゾ、と)
    男性主人公の作品も(あるなら)早く読んでみたい。

  • 今までいた人が入れ替わる。人間の違和感を感じる力は間違いなくある。

  • ここまで切ない物語があるでしょうか。報われない主人公。本当に、本当に、切ない。

    読み終わったあと何日間か胸の中のモヤモヤが消えませんでした。

著者プロフィール

1973年広島県生まれ。2007年『聖職者』で「小説推理新人賞」を受賞。翌年、同作を収録した『告白』でデビューする。2012年『望郷、海の星』(『望郷』に収録)で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞する。主な著書は、『ユートピア』『贖罪』『Nのために』『母性』『落日』『カケラ』等。23年、デビュー15周年書き下ろし作『人間標本』を発表する。

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