絶唱

著者 :
  • 新潮社
3.42
  • (83)
  • (269)
  • (337)
  • (80)
  • (12)
本棚登録 : 2480
感想 : 288
  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103329138

作品紹介・あらすじ

絶唱,湊かなえ著は阪神淡路大震災の後を舞台にした小説。
大震災を体験した人々にはいろいろな人がいます。亡くなってしまった人、大切な人を亡くしてしまった人など様々です。そんな人たちを登場人物にした四つの連作短編からなっている本作はどの短編の主人公も震災で傷を負いながらもトンガという国へ向かうという物語です。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 短編4作の連作。女性4人それぞれの視点から語られる各編それぞれに味があり、ぞわっとすることもあるが、その内面世界に引きずり込まれる。“楽園”が好みかな。著者の体験も踏まえた真情の吐露は、過去を変えることはできないが、今の未来の行動は変えることができることを語りかけてくる。『望郷』の読後感に近いかな。

  • 阪神淡路大震災で傷付いた心をトンガの国で癒す4人の女性の物語です。
    この作品は、著者の実体験が深く関わっています。
    というのも、湊かなえは1995年に起きた大震災の翌年に、青年海外協力隊でトンガに赴任していたという経歴の持ち主であるからです。

    この予備知識をもった上でもう一度本を手に取ると印象がガラリと変わります。
    湊かなえ自身のリアルなココロと生暖かい息遣いが聞こえてきそうな生きた作品です。

    彼女は、表現しがたい罪悪感というものをずっと背負ってきていたのだと思います。
    それが過去のさまざまな作品に反映されていたのは間違いないというのも感じます。
    そして、当時の内容を振り返るとも思われる小説をついに解禁した彼女の勇気は凄まじいもので、それらを考えた上でよむと涙が止まらなかったです。

  •  阪神淡路大震災に遭い、傷を負った4人の女性達が、トンガを訪れそれぞれの人生を再生させていった4つのお話。
     最後の「絶唱」の話で、自身も震災で怖い目に遭い、なんとかバイト先の知人宅に避難させてもらったのに、それよりひどい状況にいた友達を救いにいかなかったことを責められてしまったシーンが心に残りました。
     「太陽」の話で、避難所での辛い生活も知りました。震災が起きました→ボランティアがきて助けてもらっています、復興に向けて頑張ります、日本ってこういうところが素敵です、忘れないでいることが大切です、と一般的には言うけれど、簡単に、一括りに語ることのできることではないんだと思い知りました。
     トンガの明るく信仰深いお国柄と、その考え方に癒されました。

  • 「楽園」・「約束」・「太陽」・「絶唱」
    四編からなる連作短編集

    自分を取り戻す為に
    約束を果たす為に、逃げ出す為に
    忘れられないあの日の為に
    別れを受け止める為に
    傷付き『死』に打ちのめされた彼女達が辿り着いた場所は、
    太平洋に浮かぶ南の島トンガ


    母親から自分の存在を否定された毬絵
    婚約者との将来に疑問を抱いてる理恵子
    幼い娘との生活に行き詰りを感じている杏子
    震災で心に傷を負った千晴

    阪神・淡路大震災を体験した、それぞれの主人公達の
    深い心の傷や葛藤が丁寧に描かれている。
    南の島・トンガという美しい景色と、トンガタイムと呼ばれる程
    のんびりしておおらかで大雑把で明るい人々
    南の島が持つ特有のパワーが、ほんの少しかもしれないけど
    前に進む力をトンガで得られる。
    誰かが誰かの支えになって助けてる。
    そんな姿が描かれてる。

    死は悲しむべきことではない…。
    悲しいのは別れであって死ではない。
    宗教の違い・死生観の違いかもしれないが、
    でも、そんな考え方も救われるなぁ。

    震災が長い月日を経ても、いかに多くの人の人生を
    変えているかを改めて感じたし、悩んだり苦しんだり
    しながらも前向きに生きようとしてるんだって感じました。

    「絶唱」は、湊さん自身の体験なのでは…とまで思わされました。
    一番最後に書かれてる『宣言』が心にグッと来ました。
    これは、湊さんの決意表明なんでしょうね。
    『覚悟』が、あのラストには刻み込まれていました。


  • 湊かなえさんの本は
    不可抗力の課題が淀めいているのが物語にスパイス感じる理由でしょう。
    これは、阪神淡路大震災。
    実際の出来事が題材だから、いくらできすぎた偶然を感じることがあってもそこまでの違和感とならないです。

    4章からなるのですが、
    最後の章だけ毛色違いを感じます。
    まあ、それもそうなのですが。
    当事者の境界線って難しいですね。
    被災に関しては結局は自分との比較でしかない。
    自分より内側の者には同情し頭が上がらないような気持ちになり、
    自分より外側の者は見下したくなる。所詮外側って。
    気持ちはわかるなあ。
    どちらも被害者ってことには変わりないのに。
    これも外側すぎる(生まれてもない)私だから抱く客観的、平等的な感情なのでしょうが。


    それにしても、トンガというところについて、
    文化とか言葉とか宗教や生活を学ばれたんだなあということが感じられました。
    自分らの住む日本との違いを感じ、日本の宗教性が比較的薄いことは自力本願で現実主義な人間性と、結束力のなさという利点欠点を感じました。
    絶唱、使ったことない言葉だなあ。

  • キーワードはトンガ、阪神淡路大震災、国際ボランティア。

    トンガでゲストハウスをしている尚美さんを軸にした4人の女性の話。
    湊さんだから書けたストーリーなのかな。
    以前「アナザースカイ」で見たから。

  • あらすじ 「楽園」「約束」「太陽」「絶唱」の4編が収録された連作短編集です。
    雪絵が誰にも行き先を告げずに向かったのは南の島のトンガ。
    ゲストハウスで相部屋になったのは、5歳の子を抱えた
    キャバ嬢の杏子だった。自分が被災した年齢と同じ子どもを見て、思い出される震災の光景。
    双子の姉妹、毬絵を震災で失った雪絵が抱え続けていた深い闇を底抜けに青い海と眩いほどの「太陽」が追い払う、「楽園」
    おそらく著者が作家を志すきっかけとなった尚美さんとの出会いを語る「絶唱」など、阪神淡路大震災がそれぞれに与えた苦悩や試練を描き出す4編。

    南の楽園トンガを舞台にした人間ドラマの話で村山由佳さんの「遥かなる水の音」なんかを連想させるなあと思いながらほんわかと読み進めていくと阪神大震災の話に展開し、ぐっと物語が引き締まりました。
    連作短編で各章ごとに物語が絡み合って登場人物たちの人生に係わり合いが出てきますが、物語を読み終えた今、最大のミステリーは本書が創作だったのか実話だったのかということです。
    著者自身の経歴からしても最終章「絶唱」はきっと著者の実話だったのではないかと思うのです。
    私も阪神大震災の経験者ではありますがこの章に
    「震災の話はナシにしてください。わたしは被災地の内側を知りません。だから、震災を語れる資格はないんです。」こういった千晴のセリフがありますがとても共感できます。
    この話が実話であったのであれば、著者の「ありがとう」がしっかり尚美さんに届いていますように。


    気に入った文章
    p97 悲しいのは別れであって、死。いきてではない。むしろいることが試練であって、私たちは毎週日曜日に教会に通い、イエス様のお声を聞かせてもらう練習をしたり、同じ世界に住むのにふさわしい人間になるために日々、鍛錬を積まなければならない。つまり、死とはイエス様と同じ世界に住むことが許された証で喜ばしいことなのだ。
    だから、死は悲しむべきことではない。親しい人との別れは悲しいけど、祈りを欠かさずにいれば、いずれまた同じ世界に住み、話したり笑いあったりすることが出来るようになるのだから。




    p227
    「親孝行の孝という字は、子が土を掘る様子を表しているの。つまり、子が親の墓をつくるということ。どうか、あなたたちはお父さん、お母さんよりも長生きして、親孝行してくださいね。」

  • 湊かなえさんという感じがしない作品だった。
    震災から20年。
    そこで感じた問題や日々感じている問題は自分の中で整理していくしかないのだろう。
    トンガ、素敵なところなんだろうな。
    暖かく人も優しく、セカセカしていない場所なら、色々なことをゆっくりと考えられそう。

  • 一つ一つが独立した話として面白いし、最後まで読むとそれぞれの話に対して違った印象を与えてくれる。
    震災というナイーブなテーマでそれぞれの話を作り上げつつ、最後まで読むと全体で一つのストーリーでであるかのような読後感と独特な感慨がある。

  • 今年最初の読破本。
    1月は、山登りとピアノに夢中になりすぎ、読書をあまりしていなかった。

    最初は、いつもの湊かなえさんの作品とは全然違うな、ヒューマン系いったのかな、物足りない、、
    と思いながら読んでいたけど、タイトルにもなっている最後の『絶唱』という章で、自身の体験談だったのかと思い至り、急に涙が出た。

    内から外へ行く人と、外から内へ行く人。
    前に何かで見たけど、燃える車の中の子供を助けたいと取り乱すお母さんは、周りの人に止められなければ、本当に助けようとするのか、という話。実際は手が焼け爛れて、ドアを開けることは難しい。それでも、最後まで助け出そうとできるのか、という。
    外から内へ行く人は、これに近いものもあるのかも。
    私はどちらだろう。
    行きたいけど怖くて行けなくて、きっと後悔しながら生きていく気がする。

    いつもの湊かなえさんを求めて読むと、これじゃない感があるけど、最初から体験談なことを知って読むと、もっと違う感想が湧き上がると思う。

    トンガの描写は、目の前にラッセンの夕焼けが広がるような気持ちになった。素敵なんだろうな。

全288件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1973 年広島県生まれ。2007 年「聖職者」で小説推理新人賞を受賞。翌年、同作を収録した『告白』でデビュー。本著は、「2009 年本屋大賞」を受賞。12 年「望郷、海の星」(『望郷』収録)で日本推理作家協会賞短編部門を受賞。16 年『ユートピア』で山本周五郎賞受賞。18 年『贖罪』がエドガー賞ベスト・ペーパーバック・オリジナル部門にノミネートされた。その他の著書に、『少女』『高校入試』『物語のおわり』『絶唱』『リバース』『ポイズンドーター・ホーリーマザー』『未来』『落日』『カケラ』などがある。

「2021年 『ドキュメント』 で使われていた紹介文から引用しています。」

湊かなえの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

ツイートする
×