絶唱

著者 :
  • 新潮社
3.42
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本棚登録 : 1914
レビュー : 241
  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103329138

作品紹介・あらすじ

絶唱,湊かなえ著は阪神淡路大震災の後を舞台にした小説。
大震災を体験した人々にはいろいろな人がいます。亡くなってしまった人、大切な人を亡くしてしまった人など様々です。そんな人たちを登場人物にした四つの連作短編からなっている本作はどの短編の主人公も震災で傷を負いながらもトンガという国へ向かうという物語です。

感想・レビュー・書評

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  • 阪神大震災で心に傷を負った女性たちと彼女達をおおらかな心で包み込んだ尚美さんの4つの物語。

    一番好きな話は「約束」。理恵子は誰を亡くし、誰とどんな約束をしたのか気になりどんどん読み進む事が出来た。
    理恵子が震災の日に放ったひとこと。そして、婚約者に聞いた真実。ズドンと胸が苦しくなった。これがみんなの言う湊さんのいやミス?

    「絶唱」もよかったけどこれは少し実話っぽく書かれていて苦しい。
    ガラスの割れる音、家具の倒れる音や叫び声生々しい描写に怖くなる。
    千晴の不器用な生き方が自分と重なり辛くなる。3人という微妙な人数と自分の立ち位置、親友という言葉への憧れ、相手の言葉を素直に受け取れない、あるあるだ。
    自分に自信が持てないんだよね。だから、さらに悲しいお別れになった。
    こんな思いをした人がたくさんいるのだろう。被災をした人の数だけ色んな思いが。そんな人たちの為にも本をずっと書き続けて欲しい。千晴にはその力があるのだから。

  • キーワードはトンガ、阪神淡路大震災、国際ボランティア。

    トンガでゲストハウスをしている尚美さんを軸にした4人の女性の話。
    湊さんだから書けたストーリーなのかな。
    以前「アナザースカイ」で見たから。

  • 湊かなえさんという感じがしない作品だった。
    震災から20年。
    そこで感じた問題や日々感じている問題は自分の中で整理していくしかないのだろう。
    トンガ、素敵なところなんだろうな。
    暖かく人も優しく、セカセカしていない場所なら、色々なことをゆっくりと考えられそう。

  • 阪神淡路大震災がテーマとなった小説。トンガでゲストハウスを経営する日本人女性なおみと、震災にまつわる様々な事情を抱えてトンガに向かった日本人たちの交流が描かれています。心温かいトンガの人々、自然がとても良い背景になっている。

    湊かなえさんは1996年から2年間、青年海外協力隊でトンガに滞在されていたとのこと。登場人物のなおみのモデルになったのはトンガで実際に宿を経営し、トンガの若者が日本のラグビーで活躍できるよう力を尽くされた又平直子さんだとネットで知りました。

  • 所謂イヤミス感(この単語は個人的にあまりすきではない)があまりなく、従来の湊作品と毛色が違う感じがして新鮮だな、と思いながら読み進めていくと、通じているテーマは「阪神淡路大震災」。

    双子の片方を震災で失い、決別するまでの話の「楽園」、婚約者への違和感を契機にある人物との約束を反故にする勇気を得る話の「約束」、震災で父を亡くし現在はシングルマザーとなり、忘れられない人を探すお話「太陽」、そして国際ボランティアで隊で出向いたトンガの恩人に向けて手紙を書くことで新しい一歩を踏み出す「絶唱」。

    絶唱で全ての種明かしがされる。

    このお話はどれも重いのだけど、更に重くさせる要因となっているのが「絶唱」の主人公が湊かなえ自身であるのでは?と思わせるところ。

    another skyに出演していた湊かなえ。
    彼女にとってのanother skyはトンガであった。

    そこまでの情報をもって「絶唱」と再読すると、湊かなえの知られざる一面を垣間見ることができる。

    どこまで本当か、どこからフィクションかなんて判別つかないけれど、真に迫るものがこの作品にある。

  • 見る立場が違うと、話が、印象が少し変わってくる。
    本来生きてる世界もそういうものだけど
    湊かなえさんの作品は
    自分から見た世界しか見れていないな、ということに気付かせてくれる。
    今回はマリエから見た話と杏子から見た話とかでそう思いました。

    阪神淡路大震災を経験した人たちのその後の話?と言う感じです。
    色んな葛藤を抱えてたりして少し生きづらそうです。
    特に最後の話では、どちらが正しいとかではないと思うのだけれど。

    読みやすいですが、ちょっと暗めなテイストでしょうか。
    セミシさんが出てきてくれたら良かったなぁと思います。

  • 語り手が替わっていく連作短編は湊さんのパターンで、つい、どんな仕掛けが待っているのか期待してしまいます。今回の物語は阪神淡路大震災に関わる話で、当時のニュース映像が頭の中によみがえり、心痛みました。
    『楽園』で子どもを置いて遊びにでかけてしまった母親杏子が、娘の花恋を産み育てている頃を書いた話『太陽』は、ラストにじんわりしました。途中まではダメ親すぎて、どうして産むという選択をしてしまったのだろうと思いましたが、ちゃんと大事なものに気付けて良かったです。尚美さんのダンナさまがそういう形で登場するのも巡り合わせですねぇ。
     『絶唱』が一番湊さんらしい話でした。女友達、罪悪感、偽善、様々な感情が短い話の中に凝縮されていたと思います。
     胸に苦いものが残る読後でしたが、これを機に震災があったこと、自分が出来ることを考えた、ということで、作者に応えられたなぁと思いました。

  • トンガ王国で尚美という女性が営んでいる「ナオミズゲストハウス」を中心に、阪神淡路大震災を経験した人達の短編ストーリー。

    子供は太陽。
    子供たちが輝かない場所に作物は実らない。
    人は集まらない。
    町はできない。
    だけどどんなに絶望的な出来事が起きても、子供たちが輝いている限り、そこには必ず未来は訪れる。

    素晴らしい言葉がありました。

  • アナザースカイで拝見して読んでみようと思いました。何度かテレビに出演している港さんを見たことがありますが、港さんのアナザースカイであるトンガでのご本人の印象がそれまで見ていた印象とは、思い入れのあるせいなのか違うような気がして興味を抱きました。
    作品もやはり、今までのミステリーとは違いますね。
    そしてこの時期になったから完成させられたという一作なのだと感じられました。

    こちらを読んでから番組を見たかったと思いましたが、読後は見た後でよかったかも、と感じました。
    番組中でトンガ滞在中の恩人である方のお墓にこの本を
    祀っているのを拝見しましたが、最終章の「絶唱」を読んだ時、そのシーンが頭に浮かび目頭が熱くなりました。
    港さんにとっては書かずにはいられない作品だったのでしょうね。作品中には他の方も書かれていますが、ご自身の本音と思われるような言葉も時々出てきます。
    ご本人は嫌かもしれませんが、本作も震災文学の一つでしょう。

  • ストーリーも文章も、湊かなえっぽくない作品だった。
    湊かなえの小説は好きではないという人に向いているかもしれない。


    日本から遠く離れたトンガに逃げてきた人々が、過去と向き合う連作短編集である。
    キーワードとなっているのは阪神大震災。
    震災から20年が経ち、その日を境に失ったものやこじれてしまった人生を見つめなおす。

    『楽園』は、誰にも告げずにトンガへやって来た女子大生が主人公。
    大学教授の母親による歪んた愛情を押し付けられ、震災で死んだ双子の妹・雪絵として育てられた毬絵は、自分を取り戻し毬絵として生き直すためにトンガへやってくる。
    他の短編と比較し、双子は本当に震災で入れ替わったのか?その理由は?という部分でミステリ要素あり。

    『約束』
    2年間、海外協力隊のメンバーとしてトンガへやって来た家庭科教師の理恵子。日本から遊びに来た婚約者へ、婚約解消を告げる3日間の物語である。
    恋人への小さなわだかまりが積み上がっていく回想をはさみ、最後はどういう結論を出すのか。
    『楽園』より時系列的に前になっており、帰国後彼女の教え子が毬絵という設定で、『楽園』の中で物語の後の理恵子がかいま見られる。

    『太陽』
    『楽園』と同じ時間軸で展開し、毬絵が出会った母娘連れが、どうしてトンガへやって来たのかわかる構造になっている。
    『楽園』ではどうしようもない母親として描かれていた女の別の面が見られる。

    『絶唱』
    震災で生き残った罪悪感からトンガへ逃げてきた主人公が、現地に住む日本人の尚美とのふれあいを通して自分を開放していくという流れ。
    震災前後の物語が間に挟まる入れ子構造。
    長い独白というかメッセージ性の強い話だった。


    あらすじにしてみると悪くない気もするけれど、冗長な部分が多くまどろっこしいなと感じた。
    それに個人的にはどうしてトンガ?という部分が引っかかって気が散ってしまった。
    作者の個人的な思い入れなのだろう。

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著者プロフィール

湊かなえ(みなと かなえ)
1973年、広島県生まれ。武庫川女子大学家政学部卒。
2005年に第2回BS-i新人脚本賞で佳作入選。2007年には第35回創作ラジオドラマ大賞受賞、「聖職者」で第29回小説推理新人賞を受賞し小説家デビュー。読んだ後に嫌な気分になるミステリー「イヤミス」の優れた書き手として著名。
「聖職者」から続く連作集『告白』は、2008年、「週刊文春ミステリーベスト10」で第1位、「このミステリーがすごい!」では第4位に選ばれ、2009年、第6回本屋大賞を受賞。デビュー作でのノミネート・受賞は、共に史上初。2012年「望郷、海の星」で第65回日本推理作家協会賞(短編部門)、2016年『ユートピア』で第29回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。ほか、直木賞で度々候補になっており、2018年『未来』で第159回直木賞に3度目のノミネート。同年『贖罪』でエドガー賞候補となった。
映画化・ドラマ化された作品多数。特に映画では、2010年『告白』、2014年『白ゆき姫殺人事件』、2016年『少女』、2017年『望郷』と話題作が多い。

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