何様

著者 : 朝井リョウ
  • 新潮社 (2016年8月31日発売)
3.45
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  • 本棚登録 :1189
  • レビュー :181
  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103330622

作品紹介

生きていくことは、何者かになったつもりの自分に裏切られ続けることだ。光を求めて進み、熱を感じて立ち止まる――今秋映画化される『何者』アナザーストーリー六篇を収録。光太郎が出版社に入りたかったのはなぜなのか。理香と隆良の出会いは? 瑞月の父に何があったのか。拓人を落とした面接官の今は……。「就活」の枠を超えた人生の現実。直木賞受賞から3年、発見と考察に満ちた、最新作品集。書下ろし作品も収録。

何様の感想・レビュー・書評

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  • 「羊と鋼の森」以来、約10か月ぶりに小説のレビューを書きました・・・・・・。

    朝井リョウは確かに成長しているのだろう。
    でもその成長の仕方は辻村深月と似ているように思える。

    小説を読む意味はどこにあるのだろう。
    心が折れそうになったとき、どうしていいかわからない時、僕は小説を読む。

    どこかに答えはないか? 
    胸が打ち震えるような感動を与えてくれるものはないか? 
    どこかでカタルシスを感じさせてくれないか? 
    ある意味、現実から逃避するように僕は小説を読む。この年になっても、いやこの年だからこそ悩むことがたくさんがある。
    仕事であれ、プライベートであれ、多くの問題が今でも存在する。

    直木賞受賞作「何者」のスピンオフ短編集とも言えるこの本は、初出を調べると一作目から最後の作品までかなりの時間が経っている。そこには彼の変遷が読み取れる。

    「桐島部活やめるってよ」から始まる、類稀で光り輝くような表現が駆使されていた初期の時代。
    そこには人の心を動かす言葉がたくさんあった。
    心を揺さぶられる感動の場面がいくつもあった。
    でもこの作品集の中で僕が本当に感動したのは2作目だけである。

    もちろん他の作品も、人間の心理の奥底を鋭く突いている言葉で表現されているものがほとんどで、なるほどと唸るような場面がたくさんがあるのだが、最後に感動するという思いには至らなかった。

    どちらかと言えば、心が重たくなり沈みがちな作品の方が多かった。

    文学的な完成度で言えば、おそらく後半部分の最近書かれた短編の方が高いのだろう。
    ただ小説の読み手の1人として考えたとき、読み終えた後の満足感、充実感、カタルシスは若い頃の作品のほうがより多くあったように思う。

    そこでいつも考えるのだ。

    小説は何のために書かれるのかと。
    小説は誰のために書かれるのかと。
    世に出た小説は誰のものかと。

    「桐島、部活やめるってよ」「もういちど生まれる」「少女は卒業しない」「星やどりの声」。
    彼の初期の作品で迸るばかりにあふれていたキラキラと輝く比喩や文章が最近の作品では少なくなってきたと感じるのは僕だけだろうか?
    今までの作品ほど感動しなくなってきたと思うのは僕だけだろうか?
    文学の完成度とはいったい何なのだろう?

    この短編集を読み終えたとき、ふとそんなことを思った。

  • 「何者」のアナザーストーリー6篇、一気読みしてしまいました。どれも「何者」絡みの登場人物のストーリーだが、それぞれ微妙に手触りの違いを感じた。
    一番気になっていたのは一話目『水曜日の南階段はきれい』、光太郎が何故就職先に出版社を希望していたのかの理由が明らかになる。高校時代のキラキラした日々が眩しくて、甘酸っぱさがパ~っと心に広がっていく描写が印象的。この短編は発表が「何者」より先だったのか。
    理香と隆良の出会いを描いた『それでは二人組を作ってください』、本作のみ「何者」を読む前に別アンソロジーで既読。そのときから印象的な作品だったけど、「何者」読了後、そして映画を観た後に改めて再読すると、その痛さがハンパない。心の内側を引っ掻かれるようだ。見栄やプライドの高さで動いてしまう大学生女子の心情、何でこんなによくわかるかな朝井さん。
    『逆算』(サワ先輩)『きみだけの絶対』(ギンジ)『むしゃくしゃしてやった、と言ってみたかった』(瑞月の父)、「何者」絡みの登場人物は脇役のため「何者」感は薄いけど、それぞれに心がざわざわする短編ばかりだった。いや~苦い苦い。
    そして最終話『何様』。人事部が舞台、人を選ぶことに逡巡する新入社員の克弘。どこか煮え切らない、やたら「当事者」に拘る彼の理由が後半明らかになり、もう一度読み返して色々と腑に落ちる。朝井さんの視点の鋭さと構成の巧さに唸らされた。
    朝井さんの作品を読むと、自分が無意識のうちに蓋をしていたネガティブな感情がちょっとずつ漏れていくような気持ちになる。その都度軽い自己嫌悪に陥るけど、それでもページを捲る手を止められないのだよな。

  • 短編。6編。「何者」(直木賞受賞作品)のアナザーストーリー集。
    バンドにハマるばかりで大学受験勉強がおろそかになってしまうタイプの神谷。夢を追い続ける彼を見つめていた女性。(水曜日の南階段はきれい)
    「何者」では面接をされる側だったが、本作で面接をする側に回り、自分に採用面接をする資格などあるのかを自問自答する克弘。(何様)
    さらっとした感じで描かれているのだが、鋭い人間観察眼はさすが朝井節といった感じ。「いったい何様なんだよ」とうなずくことも。
    一番面白かったのは、最初の「水曜日の南階段はきれい」だった。

  • 少し前に「何者」を読み返しておいて良かった。
    まったく別物の本を読む気分になってたと思うから。
    「何者」のアナザーストーリーなんだよね、これ。
    最後の「何様」だけ、どこに誰が???だったけど今いろいろ検索して納得しました(笑)

    最初の「水曜日の南階段はきれい」が好き。

  • 初めての朝井リョウさん。
    「何者」のアナザーストーリーとは知らずに読みました。
    展開が読めるところや、ん?って思うところや、オチつけたがるなーとか色々思ったけれど、ちゃんと全部読めました。

  • 内容紹介(公式サイトより引用)
    生きていくこと、それは、
    何者かになったつもりの自分に裏切られ続けることだ。
    光を求めて進み、熱を感じて立ち止まる。
    今秋映画公開予定『何者』アナザーストーリー集。

    光太郎が出版社に入りたかったのはなぜなのか。
    理香と隆良はどんなふうに出会って暮らし始めたのか。
    瑞月の両親には何があったのか。拓人を落とした面接官の今は。
    立場の違うそれぞれの人物が織り成す、`就活'の枠を超えた人生の現実。
    直木賞受賞作『何者』から3年。いま、朝井リョウのまなざしの先に見えているものは――。

    収録作品(関連人物)
    『水曜日の南階段はきれい』(光太郎)
    『それでは二人組を作ってください』(理香、隆良)
    『逆算』(サワ先輩)
    『きみだけの絶対』(ギンジ)
    『むしゃくしゃしてやった、と言ってみたかった』(瑞月の父)
    『何様』(?!)
    ただの前日譚、後日談におさまらない、『何者』以後の発見と考察に満ちた読み応えのある最新作品集。

    朝井リョウさんにハマるきっかけになった「何者」のアナザーストーリー。
    本当は文庫まで待つつもりだったが、結局我慢できずに購入…
    でも全く後悔無し、購入して大正解の本だった(笑)

    普段はあまり短編は好きではないのだが、気に入った話が3つ。

    まずは「水曜日の南階段はきれい」。
    バンドマン、光太郎の話。
    青春ど真ん中、終始ニヤニヤしながら読んだ(笑)
    なんて甘酸っぱい話なんだろう。
    なにせ、最後の「おまけ」にヤラれる。
    光太郎にとっても、そして読者にとってもまさに「おまけ」に違いない。
    自分もこんな青春時代があればなぁ…
    ただ、そこは朝井リョウの作品。
    単純な青春ストーリーでは終わらせてくれない。
    光太郎の「夢に向かって頑張っている人間と思われたい」感覚、すごく分かるなぁと。
    自分は33歳になってしまったけれど、結局今の自分にも答は見えていない。
    光太郎と一緒に、もう少し探してみようかな…
    「何者」以降で2人はどうなったんだろうか、続きがとても気になる。

    次に「それでは二人組を作ってください」。
    自分を賢く見せようとする気持ち、人に弱みを見せられない弱さ。
    そしてそれが壁になり、結果として人を遠ざけるてしまう感じ、痛い程分かる。
    こういうことに、そしてこういう自分に気付かせられてしまうから、朝井リョウさんの作品は困るなぁとつくづく思う。
    自分を変えることはなかなか出来ないけれど、同じ感覚・考えを持っている人がいると思えること。
    それが、少し気持ちをラクにしてくれることもあるような気がする。
    きっとコレを書ける作者も、同じ感覚を持っているに違いない(笑)
    ちょっと「何者」の理香のイメージとは少し違ったかもしれない。

    そして最後に「何様」。
    「100%誠実でなければいけない」という強迫観念的な思想、ものすごく共感できた。
    自分も、そう思ってしまい身動きがとれなくなるタイプだ。
    「間違ってはいけない」、「正しいことを言わないといけない」という感覚。
    それが結果的に自分を制限してしまっている気がする。
    君島さんの言葉に少し気が楽になったかな。
    それにしても君島さん、なんか憎めない。
    なんか好きになっちゃうなぁ、ズルいなぁ…

    <印象に残った言葉>
    ・神谷くんも同じ気がする。(P28、夕子)

    ・俺は、夢がぎゅうぎゅうづめになっている教室の中で、とにかく一番大きな音を出さなければ、と、必死だった。自分には夢があるって思いたかった。夢に向かって精いっぱい頑張っている人間だって、誰かに思ってもらいたかった。あの人ならミュージシャンになれるかもしれない、そう誰かに思ってもらうことによって、自分のやわらかい、覚悟のない夢を固めていきたかった。夕子さんは違った、ぎゅうぎゅうづめの教室の中で、擦り減ってしまわないよう、摩耗してしまわないよう、外側からの力で形が変わってしまわないよう、両腕でしっかり自分の夢を守ってきた。(P54、光太郎)

    ・結局私は、自分よりバカだと思う人としか、一緒にいられない。(P102、理香)

    ・本当か嘘かもわからない情報の渦の中にいると、人間は、とにかく何でもいいから「○○は××だ」とはっきり言い切ってくれる人に惹かれる。それは、就活生も面接官も同じだ。(P212、正美)

    ・ああいうの、不思議ですよね。昔遊んでた人のほうが、人生分かったような気になるのって。(P229、田名部)

    ・そして私も、こういうふうに正しくないことを、してみたかったはずだ。栄子や東郷晴香のように、衝動のままにしてしまった正しくないことの上に立ったときだけに見える景色を、見てみたかったはずだ。そんな場所にだけ眠っている何かがあるならば、掘り出して、きれいに洗って、つぶさに観察して、そのうえでそうかこんなものなのかと投げ捨ててやりたかったはずだ。(P249、正美)

    ・その子の名前は何だっただろう。私はそう思いながら、目の前の男の舌を吸った。(P250)

    ・あらゆる行動において、これといった動機なんて、ないのだ。もともと当事者でない限り、行動に見合った動機なんて、ない。こちら側に座っている誰だって、きっとそうだ。だけど、面接を受けに来る学生には、切実な動機を求める。当事者としての、切実な、誠実な動機を。胸の奥の、奥の奥の、源泉から湧き上がってきたような理由を、その理由を表現する濃厚な言葉を。(P296・克弘)

    ・面接してる自分嘘っぽいなーとか何様だよーとか私も思うけどさ、そんな中でも、あ、この学生のこともっとちゃんと見抜かなきゃやばいとか、この学生採用すべきとか、そういうことを本気で思う瞬間みたいなものもちゃんとあるんだよね。その一秒からちょっとずつ拡張していくっていうか。だから、あんたを面接したときの武田さんは、必死に面接官やってたんだよ。あんたがこれから必死に父親をやるみたいに。その中で、あんたを採用したいって、ほんの一秒でも、本気で思ったんだよ。その一秒間が、もともと面接官でもなんでもなかった武田さんが、今みたいな姿になるはじめの一歩だったんじゃないの。あんたもさ、子どもができたって言われて、うれしいって本気で思った一秒くらい、あったでしょ?すぐ不安な気持ちに呑み込まれたのかもしれないけどさ、でも、その一秒だって誠実のうちだと思うよ。(P313、君島)

  • 図書館にて。
    最近子育て中のためたまにしか読めていない小説だったが、久々に堪能。
    ほかの方のレビューを読むと1話目の「水曜日の階段はきれい」が高評価のようだったが、わたしは「むしゃくしゃしてやった、と言ってみたかった」が好きだった。
    ただ残念ながら元の「何者」を読んでから時間が経ちすぎていた上、申し訳ないが「何者」はあまり印象に残っておらず、なおかつ後日談を求めるほど多分当時も登場人物に愛着を感じていなかったため、逆にこの本が何かの続きって言うんじゃなかった方が良かったなという気が今はしている。
    もう一度「何者」を読んでみたら違うんだろうか。
    それには今の自分が就活の頃から変わりすぎていて、あのテンションや環境を描いた小説を読みたいと思うほど余裕がない気がする。
    この本のせいではないけれど、ちょっと残念。

  • 他人を見下すことで自分の位置を確認する。あるあるネタだと思うけど誰もそんなことしてるなんて言わない。自分の汚さをわざわざ晒す必要ないし、そんなことをしたら自分が見下される。
    自分より下だと思ってた人が本当は自分よりしっかりとした考え方や、行動をしていたときのダメージは大きい。

    『何者』のスピンオフらしいけど、そういうの関係なしに面白かった。朝井さんはデビュー作から一貫して、感情の醜い部分をトリックとして使うのが上手な作家さんだ。

  • 『何者』を読んでからこの本を読んだ方が良かったかな。読んでないものは仕方なく。続きものでなかったので救いかしら。私にとっては、普通の短編集となっていまいました。
    作中あるよう、「大きい物語として」ではなく「生きづらさ」に「寄り添う」、「自分一人じゃない」と思えるような内容で書いていているのかなあと。若者の心の中をうまく書いてはいますが、嫌な面でもうまく書いてますね。ドロドロしすぎていないのがいいとこです。ただ、<むしゃくしゃしてやった、と言ってみたかった>は30代女性が主人公で、これは浅い。朝井さんが描くのは少々無理があったのでは。

  • 自意識にとらわれて悩む6人の男女の姿を描いた短編集。

    『何者』のサイドストーリーとのことだが、個別の登場人物についての記憶がないため、独立した作品として読んだ。
    立場はそれぞれだが、他人の目、評価を異様に気にするという点ではみな共通する。自意識の塊のようなタイプが足掻く様を、じくじくと追い詰めていく息苦しい展開は、相変わらず健在。ただ、短編のためオチがあってさらりと次にいくので、読み手の気分としてはラクだ。
    こういう青臭い悩みは、年齢を重ねるとともに消えていくものだが、作者のような感覚の人にはずっとついて回るのかも。

    表題作の本気の一秒がスタートになるというポジティブな捉え方は、何をするにも励みになっていいな。

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