何様

著者 :
  • 新潮社
3.44
  • (44)
  • (186)
  • (225)
  • (36)
  • (8)
本棚登録 : 1568
レビュー : 233
  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103330622

作品紹介・あらすじ

生きていくことは、何者かになったつもりの自分に裏切られ続けることだ。光を求めて進み、熱を感じて立ち止まる――今秋映画化される『何者』アナザーストーリー六篇を収録。光太郎が出版社に入りたかったのはなぜなのか。理香と隆良の出会いは? 瑞月の父に何があったのか。拓人を落とした面接官の今は……。「就活」の枠を超えた人生の現実。直木賞受賞から3年、発見と考察に満ちた、最新作品集。書下ろし作品も収録。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 「羊と鋼の森」以来、約10か月ぶりに小説のレビューを書きました・・・・・・。

    朝井リョウは確かに成長しているのだろう。
    でもその成長の仕方は辻村深月と似ているように思える。

    小説を読む意味はどこにあるのだろう。
    心が折れそうになったとき、どうしていいかわからない時、僕は小説を読む。

    どこかに答えはないか? 
    胸が打ち震えるような感動を与えてくれるものはないか? 
    どこかでカタルシスを感じさせてくれないか? 
    ある意味、現実から逃避するように僕は小説を読む。この年になっても、いやこの年だからこそ悩むことがたくさんがある。
    仕事であれ、プライベートであれ、多くの問題が今でも存在する。

    直木賞受賞作「何者」のスピンオフ短編集とも言えるこの本は、初出を調べると一作目から最後の作品までかなりの時間が経っている。そこには彼の変遷が読み取れる。

    「桐島部活やめるってよ」から始まる、類稀で光り輝くような表現が駆使されていた初期の時代。
    そこには人の心を動かす言葉がたくさんあった。
    心を揺さぶられる感動の場面がいくつもあった。
    でもこの作品集の中で僕が本当に感動したのは2作目だけである。

    もちろん他の作品も、人間の心理の奥底を鋭く突いている言葉で表現されているものがほとんどで、なるほどと唸るような場面がたくさんがあるのだが、最後に感動するという思いには至らなかった。

    どちらかと言えば、心が重たくなり沈みがちな作品の方が多かった。

    文学的な完成度で言えば、おそらく後半部分の最近書かれた短編の方が高いのだろう。
    ただ小説の読み手の1人として考えたとき、読み終えた後の満足感、充実感、カタルシスは若い頃の作品のほうがより多くあったように思う。

    そこでいつも考えるのだ。

    小説は何のために書かれるのかと。
    小説は誰のために書かれるのかと。
    世に出た小説は誰のものかと。

    「桐島、部活やめるってよ」「もういちど生まれる」「少女は卒業しない」「星やどりの声」。
    彼の初期の作品で迸るばかりにあふれていたキラキラと輝く比喩や文章が最近の作品では少なくなってきたと感じるのは僕だけだろうか?
    今までの作品ほど感動しなくなってきたと思うのは僕だけだろうか?
    文学の完成度とはいったい何なのだろう?

    この短編集を読み終えたとき、ふとそんなことを思った。

    • 杜のうさこさん
      koshoujiさ~ん、こんばんは~。
      待望のレビュー、やっと読むことが出来ました!
      お知らせを下さっていたのに、返信が大変遅くなって...
      koshoujiさ~ん、こんばんは~。
      待望のレビュー、やっと読むことが出来ました!
      お知らせを下さっていたのに、返信が大変遅くなってしまい、本当に申し訳ありません。<(_ _)>
      体調を崩してしまって、なかなかPCに向き合うことができませんでした。

      早く読みたいです!待ってます!と、
      ことあるごとに連呼して、忙しいセンパイをせっついて、
      あれほど楽しみに待っていたレビュー。
      あ~~もっと早く読んでいたら、元気が出たのかもしれないのに!
      このひ弱さが情けないです…。

      特にこのレビューは、今の私にとって何時にもまして心に響きました。

      >心が折れそうになったとき、どうしていいかわからない時、僕は小説を読む。
      すごくわかります。
      私も現実から逃避するように、何かの答えを求めるように、
      すがりつくように読むこともあります。
      幼い頃から今まで、本はいつもそばにありました。
      その時々で本は形を変えて、寄り添うように隣にいてくれました。
      なのに、子供のころのように無垢な心で読めなくなってしまっている自分にイラついたり、
      いかなる時にも、感動できる心を持ち続けていたいと思いながら、
      最近は心配事や雑念に翻弄されて、心で読むことが難しくなってしまっていました。
      それでも、読みたい本が目の前にあるワクワク感だけは失ってはいないんですが…。

      >小説は何のために書かれるのかと。
      >小説は誰のために書かれるのかと。
      >世に出た小説は誰のものかと。

      この病み上がりの頭で考えてみました。
      少しでも心に響くことがあれば、何の疑いもなく自分のために書かれた本だと思い込む私(笑)。
      少し俯瞰して読むことも大事なのかもしれませんよね。

      列島大寒波、お風邪など召されていませんか?
      お仕事お忙しいとは思いますが、お身体を大切に。
      今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
      2017/01/15
  • 「何者」のアナザーストーリー6篇、一気読みしてしまいました。どれも「何者」絡みの登場人物のストーリーだが、それぞれ微妙に手触りの違いを感じた。
    一番気になっていたのは一話目『水曜日の南階段はきれい』、光太郎が何故就職先に出版社を希望していたのかの理由が明らかになる。高校時代のキラキラした日々が眩しくて、甘酸っぱさがパ~っと心に広がっていく描写が印象的。この短編は発表が「何者」より先だったのか。
    理香と隆良の出会いを描いた『それでは二人組を作ってください』、本作のみ「何者」を読む前に別アンソロジーで既読。そのときから印象的な作品だったけど、「何者」読了後、そして映画を観た後に改めて再読すると、その痛さがハンパない。心の内側を引っ掻かれるようだ。見栄やプライドの高さで動いてしまう大学生女子の心情、何でこんなによくわかるかな朝井さん。
    『逆算』(サワ先輩)『きみだけの絶対』(ギンジ)『むしゃくしゃしてやった、と言ってみたかった』(瑞月の父)、「何者」絡みの登場人物は脇役のため「何者」感は薄いけど、それぞれに心がざわざわする短編ばかりだった。いや~苦い苦い。
    そして最終話『何様』。人事部が舞台、人を選ぶことに逡巡する新入社員の克弘。どこか煮え切らない、やたら「当事者」に拘る彼の理由が後半明らかになり、もう一度読み返して色々と腑に落ちる。朝井さんの視点の鋭さと構成の巧さに唸らされた。
    朝井さんの作品を読むと、自分が無意識のうちに蓋をしていたネガティブな感情がちょっとずつ漏れていくような気持ちになる。その都度軽い自己嫌悪に陥るけど、それでもページを捲る手を止められないのだよな。

  • 短編。6編。「何者」(直木賞受賞作品)のアナザーストーリー集。
    バンドにハマるばかりで大学受験勉強がおろそかになってしまうタイプの神谷。夢を追い続ける彼を見つめていた女性。(水曜日の南階段はきれい)
    「何者」では面接をされる側だったが、本作で面接をする側に回り、自分に採用面接をする資格などあるのかを自問自答する克弘。(何様)
    さらっとした感じで描かれているのだが、鋭い人間観察眼はさすが朝井節といった感じ。「いったい何様なんだよ」とうなずくことも。
    一番面白かったのは、最初の「水曜日の南階段はきれい」だった。

  • 初めての朝井リョウさん。
    「何者」のアナザーストーリーとは知らずに読みました。
    展開が読めるところや、ん?って思うところや、オチつけたがるなーとか色々思ったけれど、ちゃんと全部読めました。

  • 少し前に「何者」を読み返しておいて良かった。
    まったく別物の本を読む気分になってたと思うから。
    「何者」のアナザーストーリーなんだよね、これ。
    最後の「何様」だけ、どこに誰が???だったけど今いろいろ検索して納得しました(笑)

    最初の「水曜日の南階段はきれい」が好き。

  • 全体的に何者の話とリンクしていて、読んでいて飽きない。特に水曜日の南階段はきれいは素晴らしい。何度も再読したくなるクオリティ。逆算の仕掛けや発送も好き。朝井リョウさんは初めと最後の一文にこだわっていて、伊坂幸太郎っぽさを感じる。

  • 私はたぶん、朝井リョウという作家がとても好きなんだと思う。
    紡ぐ物語が好きというのではなくて、
    この人が持ってる人に向き合おうっていう覚悟みたいなものがとても好き。
    そしてそれを、自分が必要としているときがあると感じる。

    朝井リョウが書く人間は本当にフラットに人間で、かっこいいとかかっこ悪いとかもなくて、まるまるその人で、きっとこの小説に書かれていないその人物もまだまだあるんだろうと思う。

    朝井リョウが覚悟として持っているのは、自分は人を勇気づけるために本を書いているってことだと私は思う。
    その勇気づけを決してきれいごとにはしたくないっていう意思を感じる。
    人の色んな所をみて、そんな中にもただひとつでも、信じられるコレはどうかなと差し出されているような気持ち。
    主人公たちと同じようなことで悩んだりは決してしていなくても、
    その差し出されたものに、確かに私は勇気づけられて、それで少し前に進む。

  • 『何者』のような衝撃はなかったが、短編それぞれに何か胸に引っかかる台詞があり、読んだ後自分のいろいろな気持ちが蘇ってきた。

    『それでは二人組を作ってください』はタイトルからして嫌な話になるなと予想していたが、想像したよりキツめの話だった。理香と朋美の会話に恐怖を感じた。理香はだいぶ自意識過剰に描かれているが、合わないグループに所属しているとこういう人間関係のズレって私もあった気がする。えっ、そういうつもりで喋ってたのか、額面通り受け取ってしまってた、みたいな。女子の会話って表向き無意味なくだらないことを話しているように見えて実は高演算機で相手がどれだけイケてるか値踏みしていて、それができない子はおいていかれる。そのことを描いてて怖かった。

    『むしゃくしゃしてやった、と言ってみたかった』は、MR.TANABEというまさかの人物をとりあげて、真面目に生きてきて行き詰まってしまった女性を主人公に描いていた。案外こういう女性は多い気がする。私も、ずっと真面目に生きてきた人より、破茶滅茶に生きて更生した人の方がより評価されることが不思議だった。きっとみんな、怖いもの見たさなんだろうなあ。自分は出来ないし、そういう人生送りたくもないけど、話は聞いてみたいっていう感じ。だから私個人としてはずっと真面目に生きてきた人のことを信頼したいけど。

    表題作の『何様』。人事って仕事は、確かに大事な仕事だが、いくらでもテキトーにできる仕事のような気がしていた。働いてる時は、あんな数分の面接で何がわかるんだよ、適材適所でちゃんと異動させてるのか、人事って何がわかってるの?といつも思っていた。きっと人事に配属された人もこうやって悩んでるんだろうな。みんな異動した場所でよくわからないなりに"誠実に"仕事してるんだなと思った。

  • 「何者」のアナザーストーリー。
    6編からなる短編集。

    「何者」を読んでいなくても無理なく読み進められるとは思うけれど、読んでいた方が楽しめる1冊。
    何者を読んだ後のガツンとくる様な衝撃を期待して手に取ったのだけれど、恥ずかしくなるくらいの鋭いヒリつき感は少なめ。

    表題作が良かったなぁ。
    大人といわれる年齢になり、親にもなったものの、
    自分みたいな勝手な人間が何を偉そうに…
    と、ふとした瞬間に思ってしまう。
    初めから100パーセントなんてのはムリなのだ。
    少しずつ、そうなっていくのだろうな。

  • 『何者』はだいぶ前に読んだから、あんまり覚えないけど、1つの短編の気持ちで読みました。

    人間の中にある書きにくいモヤモヤを表現するのか上手だと感じました。個人的にはすごく様々なシーンで心に刺さったと思います。

    特に印象に残ってるのは、『きみだけの絶対』かな。
    多分この本を読んでも感じ方はそれぞれの価値観によって違うということを、本を読んで感じさせられました。

    私にとって拾っちゃった言葉の多かった、好きな一冊。そんな感じ。

全233件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

朝井 リョウ(あさい りょう)
1989年、岐阜県生まれの小説家。本名は佐々井遼。早稲田大学文化構想学部卒業。
大学在学中の2009年、『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー、後年映画化された。
大学では堀江敏幸のゼミに所属し、卒論で『星やどりの声』を執筆。2013年『何者』で第148回直木賞を受賞。直木賞史上初の平成生まれの受賞者であり、男性受賞者としては最年少。『世界地図の下書き』で、第29回坪田譲治文学賞受賞。
その他代表作に『少女は卒業しない』、映画化された『何者』がある。

何様のその他の作品

何様 Kindle版 何様 朝井リョウ
何様 (新潮文庫) 文庫 何様 (新潮文庫) 朝井リョウ
何様(新潮文庫) Kindle版 何様(新潮文庫) 朝井リョウ

朝井リョウの作品

何様を本棚に登録しているひと

ツイートする