正欲

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 2008
レビュー : 78
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103330639

感想・レビュー・書評

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  • 朝井リョウさんの本は読んだことがありませんでしたが、インターネットで見かけた、オンリーワンのつらさに関する記事を見て、自分の想像力のなさを、見せつけられた気がしたのを覚えています。

    多様性、ダイバーシティという言葉はよく聞きますが、全部救えるほど、両手は大きくなくて、どうしたって掬った水は溢れてしまう。

    わかり合おう、と言いながら、許容範囲を広げようのように使われて、「でもあなたの「それ」は違うから」という声が聞こえてくる。

    きっとこの本は、そんなテーマを持って生まれた本なのだろう、と私は思います。

    冒頭の事件を見て、あぁ、そういう本なのか、なんて思っていましたが、読んでいるうちに、彼らの頭の中を見ているうちに、単純なことではない、という事実を知らされます。

    マイノリティの受け皿は、これからもどんどん広がっていくと思います。
    ただその受け皿が広がっても溢れていく人がいる。

    そのとき、受け皿は「あなたは異常者」だと、何度も突きつける暴力となるのです。

    -----

    読んでいるうちに、文章が主人公たちの叫びのように聞こえてきて、時間を忘れて読み進めてしまいました。

    今まで読んだ本の中で、誰ともテイストが違っていて、そして、自分と年齢が近いので、ここまで考えられることに、ちょっと憂鬱な気持ちになりました。

    しかし、自分よりも、ずっと優れている人間がいるという現実は、明日への活力になる気もします。

  • 確かに「私ってこういうところ変なんじゃないか」と思うことはあります。
    内容は恥ずかしくて言えません。

    でも特に不安でもないし、
    「ネットで検索して同じことを感じる仲間と繋がりたい」とは今のところ考えていません。

    一見普通の私(と自分では思っている)がそうなんだから
    意外と世の中そういう人で溢れているんじゃないかと。

    八重子うざい。

  • 「生き延びるために、手を組みませんか。」
    うん、おもしろかった、とても
    おもしろすぎて次読む本が見つからない
    なんてことをしてくれるんだ 、朝井リョウ

    「多様性」
    この本で1番でてきたであろう言葉
    人と人が分かり合おうとする必要性があるのか
    そんなことを考えた

    確かに、人に気がついて欲しい、わかって欲しい、知って欲しい
    そんな欲は誰しも必ず抱えているであろう
    だが、歳を重ねると
    気がついてくれない、わかってもらえない、理解してもらえない
    と痛感する
    良くて、「わかるわかる」相槌で終わる会話

    いつからだろう
    人と人との見えないはずの壁が見えたのは
    その壁のせいで愛想笑いが上手くなったのはいつからか
    社会に出たら勝手に身についていた
    もしくはその前から

    「学校に行かなくてもいい」
    そんな子供を抱え、悩む親

    「今何歳?結婚しないの?」
    ずかずか人の心に入ってくるのが嫌でたまらない社会人

    「異性が怖い」
    トラウマを抱える大学生

    ここからストーリーが進んでいきます
    当たり前だが人が抱えている悩みは人の数ほどある
    耳が痛くなるほど聞いた言葉だ
    だが、それを理解しない人や、当たり前だと決めつける人
    空気を読まない人間が山ほどいる
    「自分の考えが常識」
    でかい顔をしている大人が溢れている

    この世の全てに
    ムシャクシャしている方にとてもおすすめです

    「明日、死にたくない」
    そう思える日々が続いたら
    どれだけ幸せなんだろう

  • 近頃の朝井リョウの作品は傑作のオンパレード。作家生活10周年を記念したスターと当作の正欲どちらも素晴らしく。ページを捲る度に胸が締め付けられ、高鳴っていく感覚があった。

    どちらの作品にも共通している点として、これほどまでに時代を正確に捉えている人がいたのかと驚かされたこと。スターは「YouTubeと既存メディア」、正欲は「多様性社会」が題材でしたが、一歩奥に足を踏み入れた問題提起は独自の視点もあいまって唸らされた。

    当作は取り扱う題材の難しさに比して、驚くほどそれぞれの登場人物に感情移入することが可能です。それは筆者の文章力のみならず、「正しい欲をもった人」なんて本当は世の中には一人もいないからこそ生まれる共感が心の中でひっそりと顔を出すから。

    それぞれがそれぞれに抱えた十人十色の欲望に向き合う中で、正しいも間違いもないんだと気付けたこと。それがこの本を読んで得ることが出来た大きな財産です。

  • 簡単に言ってしまえば、この本をすべての人が読めば、ヒエラルキーやいじめといった学生に親しみの深い(と認識されがちだが全ての人間関係の根幹にある)問題はなくなるのではないかと思う。
    けれど同時に、こんなにも考え込む人が増えてしまったら、世界は臆病な人ばかりで何も挑戦できなくなってしまうのでは、そしてしまいには動かなくなってしまうのではないかとも思う。

    だから、やっぱり一定数の人には何も疑うことなく鈍感なままで、そのきらきらとした目と胸を輝かせて生きてほしい。

    でも、この本が世に出されたことには大きな意味があると思う。
    きっと私のように、この本がこの星との摩擦になった人は沢山いるはずだから。

  • あってはないない感情なんて、この世にはない。

    偏見や争いはなくならず、悪者が悪者でいるのも、悪魔と名付けるのも、辿り着く理由はみんな自分を守るためなんだと思う。

    そう思うと何の「意見」もできなくなる。マイノリティを理解して欲しい人も、気づかれたくない人も、マイノリティを理解しようとする人も、それを批判する保守的な人もいるけれど、いつだって多数派のモラルが良い立場につくだけ。どんなに善良だと思える言葉や態度でも傷つく人は必ずいるし、どんなにマイノリティを理解しようとしても、マイノリティの中にも様々なんだから、もう他者なんて理解できない。そう、理解できない存在として受け入れるのが良いんじゃないか?ただ、1ピースでも分かり合えた気分で自分以外の他者と繋がっていることで、明日も生きていける気がする。


    以下、気に入った文。

    『この世に生きている人は皆、宗教が違う』

    『多様性とは、都合よく使える美しい言葉ではない。
    自分の想像力の限界を突き付けられる言葉のはずだ。
    時に吐き気を催し、時に目を瞑りたくなるほど、
    自分にとって都合の悪いものがすぐ傍で
    呼吸していることを思い知らされる言葉のはずだ。』

    『幸せの形はそれぞれ。多様性の時代。自分に正直に生きよう。そう言えるのは、本当の自分を明かしたところで、排除されない人たちだけだ。』

  • わかりあえる、なんて簡単にはいえない

    自分の想像の外にあるものに対する拒否反応は、防衛反応でもある。
    私の使っている多様性という言葉は本当に多様か?

    わかりあえるなんて、簡単にはいえない

  • 泣きたくなる程の希望も死にたくなるほどの絶望も詰まっていて、ずっと息が苦しかった。
    また読み返す勇気があるか分からないけれど、一生本棚に置いておきたい一冊。

  • 多様性ってなんだろう。
    自分の中に渦巻く疑問が、そのままエグい形で表現された文章だった。

    ここで大切なのは神戸八重子の視点。ある点で彼女のいかにも寄り添ってあげてるというような視点は恥ずかしさを覚えるくらいに気持ち悪く、それでいて共感できるものだった。

    LGBTも不自然ではない。みんなで分かり合おう。そんな世の中の普通のレールに乗った人が、手を差し伸べる構図みたいなものが間違ってるのかもしれないなあ。

    世界の正しさってなんだろう。この視点を忘れぬように、日々仕事に取り組まないとなあ。

  • 関係者に衝撃を与えた「児童ポルノ」事件。3人逮捕されたが、そのうち2人は、隠された秘密があった。検察側の視点や逮捕された2人の視点、関係者の視点から「なぜ、このようなことが発生したのか?」を紐解いていく。


    読み終えた直後は、今の感情をどう言葉にすればいいのか、表現しづらいぐらい色んな感情が渦巻いていました。
    大まかに言えば、朝井さんの中に潜んでいる「影」の部分をこれでもかと深掘りされたくらい、グレーに近い黒な部分が多くありました。

    正直、感想を書きづらいなと思いました。というのも言葉を発することで、それを受け止める人は、色んな印象を与えます。酷く傷つくかもしれませんし、心に響くかもしれません。

    自分の常識では考えられない行為や感情が、この世の中には蔓延っており、なかなか理解しづらい部分が多くあります。
    色んな性癖があるのも事実で、この作品でも色んな人が登場します。読んでいても理解できるのもあれば、理解不能なのもあります。

    なので、この作品は読む側の人によって、受け取り方は様々です。共感できました!という人もいれば、全然理解できない!という人もいて、そういった意味では、面白いかなと思いました。


    内容としては、最初の部分で「児童ポルノ事件」の概要が提示されます。その段階での印象と読了後の印象は、同一ではありませんでした。

    なぜ、そう思ったのか?は、様々な登場人物の視点を通して、明らかになります。事件発生までの道のりが心理描写をメインに丁寧に書かれています。特に「世間」と比較することで、心の葛藤が多く書かれています。
    そこには、魂の叫びも含まれていて、正直今後、人とどう向き合っていけばいいのか不安にさせられました。

    何が「普通」で、何が「異常」なのか。何で周りと違うのか?様々な疑問を投げかけられたようで、どう答えればいいかわからないばかりでした。

    ただ、人にわかってもらえない悩みや一生分かり合えない悩みには共感する部分もあって、ちょっとした安心感を得られながら読んでいました。

    色んな人の解釈や「癖」が登場するのですが、全てを理解することはちょっと無理かなと思いました。
    結局は、相手を深掘りせず、そっと見守っていることが大事なのではと思いました。

    また、マスコミによる情報の印象操作も大事だなと感じました。言葉一つとっても、その印象は大きく変わります。
    背景を知ることで、違った印象を得たということをこの作品を通じて改めて感じました。

    自分から発した何気ない言葉が、人にどう影響するのか。その人の背景を知らないと、なかなかわかることはできませんが、世界には自分とは違った人が多く多くいるということを自覚しなければいけないなと感じさせてくれました。

    明日から「人」との接触がちょっと不安になりそうです。

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著者プロフィール

'朝井リョウ
一九八九年岐阜県生まれ。二〇〇九年『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。一一年『チア男子!!』で高校生が選ぶ天竜文学賞、一三年『何者』で直木賞、一四年『世界地図の下書き』で坪田譲治文学賞を受賞。その他の著書に『星やどりの声』『もういちど生まれる』『少女は卒業しない』『スペードの3』『武道館』『世にも奇妙な君物語』『ままならないから私とあなた』『何様』、エッセイ集『時をかけるゆとり』『風と共にゆとりぬ』などがある。

「2020年 『夜ふかしの本棚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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