しろがねの葉

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103341949

作品紹介・あらすじ

男たちは命を賭して穴を穿つ。山に、私の躰の中に――戦国末期、シルバーラッシュに沸く石見銀山。天才山師・喜兵衛に拾われた少女ウメは、銀山の知識と未知の鉱脈のありかを授けられ、女だてらに坑道で働き出す。しかし徳川の支配強化により喜兵衛は生気を失い、ウメは欲望と死の影渦巻く世界にひとり投げ出されて……。生きることの官能を描き切った新境地にして渾身の大河長篇!

感想・レビュー・書評

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  • 第168回直木賞受賞(2022年)。
    江戸時代の石見銀山の盛衰を見つめた、ひとりの女性、ウメの一代記。

    余分を極限までそぎ落とし、整えられた文章が美しい。

    人はいつか死に、銀山も死ぬ。その運命からはどこにも逃げられない。だからこそ、足掻いて足掻いて生き抜いた人間の強さに心を打たれる。

    塵肺による鉱山病で死にゆく若い鉱夫たち。
    当時、石見銀山鉱夫の平均寿命は30歳。
    鉱山病対策はほぼ皆無であり、すべて事後的なものにすぎなかった。
    しかし、ようやく江戸後期になり、いくつかの効果的な対策が見つけられる。
    その中のひとつが「梅肉」をマスクにはさむことであり、当地では梅の栽培が行われた。
    主人公ウメの名はここから取ったのだろう。

    自らの運命を悟りながら、妻や子のため、家族を食わせるために、穴に潜る男たち。
    彼らをみつめ、ともにあるウメ。

    ひとはなぜ生きているのか。何のために生きるのか。誰もがいだくこの問い。そして、そんなことはお構いなしに、すべてを押し流すように、連綿とつづく人間の営み。

    銀のように冷たく美しい光を放つ、哀しさに満ちた物語だった。

    ウメの生き様は、現代の女性にどう映るのだろう。
    己の力で生きたいという思いを、時代がはねつける。それは400年経つ、今もさほど変わらないのではないか。
    あなたはどう思いますか?ぜひ読んでみてください。

  • あなたは、何歳まで生きられると思いますか?

    男性81.47歳、女性87.57歳、2022年に7月に発表された厚生労働省による2021年のこの国の平均寿命の値です。一体どこまで伸び続けるのかというくらいに私たちの寿命は長くなっていく現実があります。そもそもヒトとはそんなに長く生きられる生き物だったのか、そんな風にも感じます。では、昔の人の平均寿命は何歳くらいだったのでしょうか?

    今のようにはっきりとした統計はないもののさまざまな研究によって例えば今から400年以上前の戦国時代の平均寿命は、武士で42歳くらい、その他の庶民は30歳程度だったのではないかと言われているようです。あまりの短さに驚きもしますが、これは生まれてまもなく幼いうちに亡くなる子供の多さが数値を下げているところもあるようです。幼き日を生き抜いたにも関わらず30歳という若さで誰もがこの世を後にするとしたらそれは驚愕以外の何ものでないでしょう。

    しかし、この国には、そんな驚愕が日常だった人たちがいたことも事実のようです。

    『齢三十にして、無病の者無し。間歩におったら、あと十年も持たん。子を作ったとて、一人前になる姿を見られん』

    そんな風に語られる厳しい現実。そこには、それでもそんな人生を生きる他ない人々の壮絶な人生があったのだと思います。

    さて、ここにそんな短く厳しい人生を生きる人々を描いた作品があります。『おれらと同じ、百姓あがりの天下人』が活躍した時代を描くこの作品。そんな世に銀(しろがね)の山に働く男たちを描くこの作品。そしてそれは、そんな男たちの世の中で、どこまでも凛とした生き方を選んだひとりの女の生き様を描く物語です。
    
    『夜目(よめ)が利く童だと、事あるごとに言われていた』ために、『物心つくまで自らの名をヨメだと思っていた』のは主人公のウメ。『暗闇を怖がらない赤子だ』と言われ、『百姓の家では手のかからない赤子が疎まれることはな』く、『村で同じ頃に生まれた赤子の中では最も早く歩けるようになった』ウメ。そんな中、『母親の腹が膨ら』み、弟が生まれます。一方で、ウメは『村と森の境にある大きな木の洞』を好み、『山で見つけた桑の実や木通を、一人でこっそり食べ』ていました。そんなある日、洞にいるウメに大人たちが語る『声が聞こえてき』ます。『こんままじゃあ冬を越せねえ』、『逃散しかあるめえ』、『めったなことを』という男たちの声の中に『知っとるか』という『聞き覚えのある声』が聞こえます。『お父う』と呟くウメ。『山を二つ、三つ越えた石見の国にな、光る山がある』、『銀を掘れば米が食えるそうな』、『ここを離れて… 銀掘になったらええ』と声を低くして話すウメの父親。そんな中に『どこに逃げても、楽な土地なぞない。銀の山など、まやかしじゃ』という『老いた声が戒め』男たちは立ち去りました。場面は変わり、『月のあかるい晩』、『黙ってついてくるんじゃ』と父、母に連れられ『暗い森』へと立ち入っていくウメ。『こんな夜更けに、人目を忍んで』『何処へいこうというのだろう』という中に『目を覚ました弟は声をあげて泣きはじめ』ました。その時、『おったぞ!』『捕まえろ!』と『村人たちの声が届』きます。『隠田の米を盗みやがって!』という声の中、『先に、いき!まっすぐ、日の沈む方へいきんさい!』という母親。『鬼ごっこではない。これは、狩りだ。ウメたちは狩られようとしている』と思い『闇を駆け』ますが、『足元が滑』り、『躰が浮』き『落ちる』という中に『気を失った』ウメ。再度場面は変わり、『目を覚ますと、河原にいた』というウメは『見たことのない場所だ』と思います。『お母あ』と呟き仰向けになると『頭上に崖がせりだして』おり、『あそこから落ちたのだろう』と思うも、険しすぎて登れるとは思えません。やむなく母に言われた通り『日の沈む方へ』とひとり歩き続けたウメ。『幾度、日が昇り、落ちたのか』という中、『腹がへって、気が触れそう』というウメは『闇に光るもの』を見つけます。『あかるい緑色で、羽毛のようなかたちをしている』『葉のようだ』と思うウメは『こんなきれいなものがあるのか』と思い『手を伸ばし、摑』みます。そして『おう』という『唸り声』に『飛び起き』たウメの前に人影がありました。『どっからきたんじゃい』と訊かれるも答えられないウメ。そんな時、『背の高い男が現れ』、『喜兵衛』と人影の男が言います。『親はどこじゃ。銀を狙うてきたんか』とウメに言う人影の男に対して、『誰にこれをもろうた。これはな、銀の在処を教えてくれる羊歯じゃ』とウメが手にするものを訊く喜兵衛。それに『うちが見つけたんじゃ!きれいじゃと思うて、うちがひとりで摘んだんじゃ!』と『力の限りに叫』ぶウメ。そんなやりとりの中で『威勢のいい餓鬼じゃ。手子にする。間歩じゃあ人手はいくらあっても困らん』と言う喜兵衛。『それが、銀の気が視えると謳われた山師、喜兵衛との出会いだった』という運命の出会い。そして、『山師、喜兵衛』の下、”石見銀山”で暮らすウメのそれからが描かれていきます。

    “戦国末期、シルバーラッシュに沸く石見銀山。 天才山師・喜兵衛に拾われた少女ウメは、銀山の知識と未知の鉱脈のありかを授けられ、女だてらに坑道で働き出す… 生きることの官能を描き切った新境地にして渾身の大河長篇!”と内容紹介にうたわれるこの作品。2022年に第168回直木賞を受賞した千早茜さんの代表作です。そんな作品は表紙の帯に”新境地にして渾身の劇的長篇”という記載がある通り、現代を舞台に執筆されていらっしゃる千早さんには珍しく400年前の戦国時代を舞台に”時代小説”が展開していきます。

    では、まずはそんな時代を特定するような表現を見てみたいと思います。

    ・『おれらと同じ、百姓あがりの天下人じゃと頼みにしとったのによ』

    ・『あの要害山にある山吹城はな、もとは尼子の殿様の城じゃ。今は安芸の毛利がここらを治めとる』

    ・『数年後にな、この国を二分するほどに大きい戦が起きる』

    『天下人』、『毛利』、そして『国を二分するほどに大きな戦』というあの時代がぷんぷんするような表現があちこちに登場します。そんな時代感を演出するように、身近な生活の様子も時代を映し出します。

    ・『土間に降りて甕(かめ)の水で顔を洗いだす』

    ・『握り飯の包みを風呂敷で腰に巻きつける』

    ・『土間に降りた。竈(かまど)の陰に座り込み、蜘蛛を捕まえて遊びはじめた』

    時代を感じさせるようにという意図あってのことだと思いますが、全編に渡って漢字が多く、またふりがなが欲しいと思われるような漢字も多々登場するこの作品。しかし、それでいて不思議と読みやすいという不思議な読み味を感じさせてくれるのもこの作品の特徴の一つだと思いました。

    そして、この作品の舞台です。物語冒頭、好んで身を丸くする木の洞でウメは大人たちの会話を耳にします。

    ・『山を二つ、三つ越えた石見の国にな、光る山があるんじゃと』

    ・『筑前の商人が見つけた銀の山か…』

    ・『銀を掘れば米が食えるそうな』

    『石見の国』、そう2007年に世界遺産に登録されたアジアで初めての鉱山遺跡”石見銀山”がこの作品の舞台となっていきます。最盛期には世界の三分の一の産出量を占めたという日本の銀。そんな銀の大半がこの”石見銀山”から採掘されたと聞くとその規模の大きさが想像されます。天然資源の大半を海外からの輸入に頼る今のこの国の現状からは想像だにできない過去の栄華を誇った”石見銀山”。そんな銀の鉱脈をこんな風に喜兵衛の言葉に乗せる千早さん。

    『銀気を含む石を鏈(くさり)という』、『その鏈が集まっているところ』を『鉉(つる)』と言う

    そして、そんな『鉉』がつながります。

    『ウメ、葉っぱにゃ筋があるじゃろう… あれと同じじゃ。山にも銀の筋が走っとる』

    一帯の山に銀が眠る壮大な『銀山』の様子が浮かび上がってきます。そんな『銀山』のある村と自らが生まれ育った村をウメは身近なものでこんな風に比較します。

    『村では豊作の祭りでしか食べられなかった米が、銀の山では毎日食べられる。米は光を吸ったように輝いていて、ウメは炊く度、これが銀なのではないかと思う』。

    自らが毎日食する主食である米を用いたこの表現。”時代小説”ならではの重みとその時代を生きる人々の暮らしを思い起こさせます。しかし一方で、そんな『銀山』で生きる人々に深刻な影を落とすものがあります。

    『あの闇に馴染む者はよう生きれん。長いこと潜れば、石粉を吸うて肺を病み、息を奪われ、青い唇で、咳に潰されるように死んでいく』。

    鉱山で働く人々の厳しく、恐ろしくもある勤労の実態を思わせるこの語り。さらに、

    『齢三十にして、無病の者無し。間歩におったら、あと十年も持たん。子を作ったとて、一人前になる姿を見られん』

    400年以上前の話とはいえ、ここからは銀の採掘のために命をすり減らして働く人々の壮絶な生き様が見えてきます。”石見銀山”が世界遺産に認定されたこと自体は私も知っていました。しかし、イメージとして興味があまりわかなかったために、その歴史については知る由もありませんでした。そんな銀山の採掘に関わってきた人たちの生き様を赤裸々に描写していくこの作品。思わず息を呑むような壮絶な場面の連続に昨日まで抱いていた”世界遺産・石見銀山”が別物に思えてきます。そう、”石見銀山”というものが抱える歴史の重さを嫌が上にも物語中に感じることになる、そんな物語がここには描かれているのだと思います。

    そんな物語の全編通しての視点の主、主人公を務めるのがウメです。『夜目が利く童だと、事あるごとに言われ』、『暗闇を怖がらない赤子』と周囲に認識される中に育ったウメ。そんなウメが両親と生き別れた先に出会った存在、それが『銀の気が視えると謳われた山師』、喜兵衛でした。そんな喜兵衛に拾われ、男たちの働く間歩(まぶ)、『銀掘が銀を追って掘った穴じゃ』という間歩に心囚われていくウメ。『夜目が利く童』とされたウメにさえ『目を凝らしても、凝らしても、見えない。ただただ暗い』という間歩。そこに、『己の眼では捉えられない真実の闇をウメは初めて知った』という先に物語は描かれていきます。上記した通り、そこには『銀山』で働く男たちの生き様が描かれています。そして、それに対になるように描かれるのが女たちの生き様です。物語では『女郎屋』で働く女たちが姿を垣間見せる中に展開していきますが、そんな『女郎』の意味するところを知らないウメ。女たちがどうやって生を繋いでいるかを理解しないウメはこんなことを言います。

    『うちは喜兵衛のように強うなる』

    それに対して

    『大きうなっても、おまえは女じゃ。女はどうやっても力じゃ男に劣る。おとよのように柔く、弱く、なんも知らん顔をしておれ。油断させるんじゃ。それも女の生きる術ぞ』

    まさしく”時代小説”ならではの台詞です。しかし、”時代小説”を読む中では、当然のことながら現代の我々の価値観なぞ全く意味をなしません。とは言え、女たちがただただ弱い存在として描かれていくわけではありません。それこそが上記した台詞に登場する世渡りの術でもあります。

    『柔く、弱く、なんも知らん顔をしておれ。油断させるんじゃ』

    そんな言葉を喜兵衛からもらったウメ。

    『喜兵衛は父親のようで、父親ではない男だ』

    喜兵衛のことをそんな風に思う中に生きていくウメの姿は、まさしく凛とした孤高の強さを内に感じさせもします。この時代に生まれ、この場所に生きていかざるをえないウメは、一方で身近にある男たちの現実を目にしていきます。

    『間歩の毒がじわりじわりと男たちの躰を蝕んでいくのが恐ろしかった』

    『銀山』が抱える光と闇。そこに確かに存在する深い闇を間近に見ながらひとりの女として気高く生きていくウメ。この作品の何よりもの魅力、それがウメの生き様だと思います。幼きウメがさまざまな苦難の先に大人の階段を駆け上がり、ひとりの女として、石見に生きていく物語。そこには、運命に抗い続け、戦国の時代を確かに生き抜いたひとりの女のすざまじい生き様がありました。

    『あんたは何故生きる。間歩という居所を奪われ、犯され、望まぬ子を孕み、惚れた男に去られても、何故生きようとした』

    そんな問いかけの先に壮絶な人生を生き抜いていく主人公・ウメの生き様を描いたこの作品。そこには、時代は違っても自らに誇りを持ち、気高く生きるひとりの女の姿がありました。『銀を掘れば米が食える』という言葉の意味する光と影を鮮やかに描き出すこの作品。時代を超えてリアルにその”生”が感じられる生々しい描写に息を呑むこの作品。

    千早さんの濃厚な筆の力で、生きていくことの不条理さを古の世の人々の暮らしの中に鮮やかに描き出したこの作品。流石の直木賞受賞を感じさせる素晴らしい作品だと思いました。

  • 現代で言うところの島根の山奥、石見銀山が舞台。
    鉱物を吸い、病気を患い、30代で亡くなっていくあまりに過酷な環境は、想像することも難しい。もちろん富もあろうが、銀の不思議な魔力に惹きつけられる男たちと、男同様に間歩に夢中になる主人公ウメの人生は、読んでいてとても儚く、切ない思いでいっぱいとなった。また、命と魂を削って鉱山に身を投じる男たちの姿に熱くなる。
    神秘的に描かれる自然描写がとても巧みで、和製のファンタジー小説を読んでいるようだった。

    • sako0105さん
      恥ずかしながら、まるで知らない作家さんです。
      ぜひ、読んでみたいと思いました。
      本を手に取るきっかけは表紙の絵もかなり左右されます。
      ...
      恥ずかしながら、まるで知らない作家さんです。
      ぜひ、読んでみたいと思いました。
      本を手に取るきっかけは表紙の絵もかなり左右されます。
      この表紙、植物好きの私には気になります。
      2023/06/18
    • チャオさん
      コメントありがとうございます。
      白金に光る葉の色は、なんとも魅力されますが、作中にも魅力に取り憑かれた者達の熱い生涯が描かれています。
      自分...
      コメントありがとうございます。
      白金に光る葉の色は、なんとも魅力されますが、作中にも魅力に取り憑かれた者達の熱い生涯が描かれています。
      自分も直木賞をきっかけに読んだ作家さんですが、心に深く残る作品だと思いますので、ぜひ読んでみてください。
      2023/07/12
  • 2022年度下期直木賞受賞作品

    前情報一切入れず。「しろがねの葉」というタイトルだけでは全く中身は想像出来なかったです。ただ直木賞ならハズさないだろう。それだけの理由でとりあえず読んでみました。

    読み進めてビックリです。
    な、なんと!!あの懐かしき島根県の石見銀山をテーマにしたストーリーではありませんか!

    というのも実は私、2005年の初夏〜2008年の春まで島根県西部地域に住んでたんですよ〜。西部地域というのがポイントで旧国名で言うと石見国(いしみでなくいわみ)です。
    ちなみに島根県は、石見国と出雲国からなりますが同じ県でも両国は言葉も文化も風習も県民性も全くの別物です。面白いですよね。

    私が石見国に住んでた2007 年に石見銀山が世界遺産に登録されたので、本作を読み進めながら世界遺産に選ばれた当時の地元の熱狂ぶりを懐かしく思い出しました。

    石見銀山は、島根県大田市にある、戦国時代後期から江戸時代前期にかけて最盛期を迎えた当時日本最大の銀山です。この最盛期に日本では世界の銀の約3分の1を産出されていたのではとも言われていて石見銀山の銀がそのかなりの部分を占めたとされるのでまさにシルバーラッシュですな。地元は潤ってたんだろうな~。

    前置きが長過ぎましたね
    本作は、銀山の最盛期に生まれ育った一人の女性を主人公として彼女の波瀾万丈の人生が描かれています。
    主人公と銀山やそれに関係する人たちとの関わりを濃密に味わい深く表現されています。

    百姓の家にうまれたウメは、生まれつき夜目が利く子供でした。ウメ一家は貧しく、山の向こうへ夜逃げするも失敗し、幼いウメひとりが落ちのびました。行き倒れているところに喜兵衛という鬼才の山師に拾われて銀山で生きることになります。喜兵衛の手子(雑用)となり、間歩に入ることに。

    間歩で働くことを目指したウメでしたが、初潮を迎えると穢れた存在とされ、間歩に入ることが叶わなくなります。
    男達は劣悪な環境でも健康を害しながら銀を掘りまくります。この間に領主は尼子、毛利、徳川と変わりまさに激変期の過程で銀山の最盛期を迎えます。

    銀が全ての中心となる町。銀を取り消費し、常に新しい銀を欲する。物々交換の村で幼少期を過ごしたウメの暮らしもまた、銀に支えられ、そこから逃れることができなくなります。銀を掘るほどに暮しは豊かになり、人は狂乱していきます。人間の欲望の深さに、その浅はかさに恐ろしさを感じます。本作は岩見銀山が衰退していく、その直前の際に余韻を残して幕を閉じます…

    なんとも言えない余韻が残り、なかなか読み応えのある物語でした。さすが直木賞!

    • 風鎮さん
      読んだ気にさせるそんな内容の
      素晴らしい感想文を拝読させて頂きました。これは読まずにいられません。
      良い本に出合えました。
      有難うございます...
      読んだ気にさせるそんな内容の
      素晴らしい感想文を拝読させて頂きました。これは読まずにいられません。
      良い本に出合えました。
      有難うございます。
      私もフォローさせて頂きます。

      あかん!
      また、積読が増えてしまう。(笑)
      2023/05/06
    • TAKAHIROさん
      風鎮さん
      コメントありがとうございます!
      フォローもありがとうございます。
      気が向いたらたまに感想文を投稿してますのでまた読んでやって下さい...
      風鎮さん
      コメントありがとうございます!
      フォローもありがとうございます。
      気が向いたらたまに感想文を投稿してますのでまた読んでやって下さい。
      2023/05/06
  • 山を穿つ逞しい男達の
    腕に抱かれたがごとく、

    力強い人肌の温もりを
    感じました。

    あまつさえ、汗ばんだ
    体臭や無骨な手触りも。

    真に迫る著者の言葉の
    運びに感服しました。

    ─闇から出で闇に還る。

    人が生まれ死んでいく
    様は空海の言葉どおり。

    どこか虚ろで淡く儚い。

    扉絵に描かれた羊歯の
    葉。

    その葉脈に宿る虚ろな
    しろがねの光は、

    それらを端から饒舌に
    語っていました。

    文句なしの星五つです。

  • なるほど、直木賞は納得の一冊。
    物語の深さ、勢いのある筆致は流石受賞作だなぁと感じた。



    時は戦国末期、主人公、ウメの生涯を生々しく描いた一冊。

    評価の高い本だなぁと思い、これまた新品を購入。

    ウメの幼い頃の話から幕が開く。
    両親に連れられ、何が起きているのかもわからないまま、夜逃げをする。
    夜逃げをしている最中、両親とはぐれてしまい、たった1人になってしまう。

    天才山師、喜兵衛に拾われたウメは、石見銀山の鉱脈や、知識を授けられ、女でありながらも間歩で働き出す。

    ウメの幼い時代の話は、次々に過酷な試練が待ち受けており、女であるが故の苦痛が自分にも突き刺さり、もう途中でこの本を投げ出してしまいそうになった。

    しかしウメは女でありながらも、とにかく強い。
    気持ちも強い。数々の試練に立ち向かっていけるほどの強さを感じた。

    ウメの強さのおかげで、最後まで読み切ることができた。

    私の全く得意でない時代小説ではあるが、壮絶なウメの人生を丁寧に描いており、ジャンル的には苦手な話だが、読み通すことができた。

    刺さる人にはかなり刺さる小説なのではないだろうか。。。

    島根に旅行した時、ここにも足を伸ばしたかったのだが、日程の都合で行けなかったことが今更ながら悔やまれる(^^;;

    実際行っていたら、更に前のめりでこの物語にどっぷり浸かれたのではないかな。。。

    • bmakiさん
      pさん

      というと、、、
      ひょっとして夕張ですか?
      かなり前に訪れたことがあります(^^)
      もうないのかもしれませんがテーマパーク...
      pさん

      というと、、、
      ひょっとして夕張ですか?
      かなり前に訪れたことがあります(^^)
      もうないのかもしれませんがテーマパークのようなところだったか?遊園地みたいなところだったか??
      赤蜻蛉がたくさん飛んでいて、小学生だった息子が両手に沢山捕まえていたことだけ記憶に残っています(笑)

      炭鉱のお話を小さい頃からお聞きになられていたら、このお話も身近なものとして感じるのかもしれません(^-^)
      2023/04/16
    • pさん
      おはようございます

      夕張ではないですけど近いです

      炭鉱の跡が、あちらこちらにあって
      近くを通る時は、いつも気になって横目で見てます
      テー...
      おはようございます

      夕張ではないですけど近いです

      炭鉱の跡が、あちらこちらにあって
      近くを通る時は、いつも気になって横目で見てます
      テーマパーク?
      夕張に昔あった、石炭の歴史村とかかな?
      今もあるのか微妙なとこですが…
      私も小さい時に行った記憶が何となくあります
      ^_^
      2023/04/17
    • bmakiさん
      pさん

      夕張ではありませんでしたか。失礼しました。
      炭鉱自体は一度も見たことがないのですが、炭鉱を見ている人だと、情景思い浮かべやす...
      pさん

      夕張ではありませんでしたか。失礼しました。
      炭鉱自体は一度も見たことがないのですが、炭鉱を見ている人だと、情景思い浮かべやすいですよね、きっと。

      夕張はどこだったのか?
      ググってみたのですが、思い出せず(^^;;

      旦那のお父さんが運転して色々連れて行ってもらっていた頃なので、自分がプランを考えていないと全く記憶に残らないものですね^^;

      すっごい寂れたとこだったのは覚えているんですけどね。。。
      2023/04/17
  • 第168回直木賞受賞作。
    最後までネタバレで書いていますので、これから読まれる方はお気をつけください。



    戦国時代、石見銀山に育ったウメという名の女の一生。
    ウメには両親がなく、天才山師の喜兵衛という銀山で働く男の手子となります。
    ウメは喜兵衛に連れられて銀山で働きます。
    ウメは夜目が効いたし使える子だったので「間歩で生まれた鬼娘」と呼ばれるようになります。

    ウメはある時身を守ろうとして多助という評判のよくない男を誤って死なせてしまいます。
    ウメは喜兵衛に言われて多助の妻のおとよの世話をしにいきます。
    そこでウメは石銀で生きる女の人生を垣間見ます。

    喜兵衛はまた南蛮人の捨て子をもらってきて龍と名付けウメと一緒に連れ歩きます。
    ウメはまた、子供の頃から一緒に働いていた隼人に嫁に来ないかと言われます。
    その後ウメは男たちに襲われて子を宿します。
    それでもいいと言って隼人はウメを待っていてくれました。

    そして喜兵衛は銀を吸い、肺をやられて逝ってしまいます。
    ウメは隼人の嫁になり、三人の子どもを成しますが隼人は銀山で働いているのでまた血を吐いて死ぬのが目に見えています。
    ウメが隼人のことを想いながらも喜兵衛のことをいつまでも忘れられないのが哀しみを誘いました。

    銀堀は黒い血を吐いて死ぬのが定めでした。
    隼人が亡くなるときに「次は龍と一緒になれ」と言って逝ったのが泣けました。
    そしてウメより若い龍の命さえも、龍と同じ顔をした子さえも銀の山は奪っていったのです。

    三人の男とウメの今生の別れはどれも大変切なく胸にせまるものがありました。

    さすが直木賞受賞作でした。

  • オススメしてもらって手に取った一冊

    直木賞受賞作です。


    時代小説はどうも苦手で
    いつも文字が横滑りしてしまうのですが
    不思議とこの作品はそんなことがなく
    じっくりと読み進めることができました


    この作家さんは、
    香りシリーズのみ読んでいますが
    また違ったテイストで驚きました


    でも間歩の質感や、
    血の匂い、土の感触など
    読んでいると本当にそこにいるように感じるのは
    同じだなとも思いました


    なんとも苦しい作品で
    読み進めるのが辛いところもありました
    苦しさの中でウメの強さが際立ち
    不思議な心地の読了感でした


    十年以上前に石見銀山へ一人旅に行ったことを
    思い出します

    でもほとんど覚えてなくて…
    この作品を読んだ上で
    改めて訪れ、間歩の冷たさなど感じたいと思いました

  • 千早作品、3冊目の読了となりましたが、本作は戦国時代末期の石見銀山を舞台に描かれた傑作長篇。

    天才山師・喜兵衛に拾われたウメが主人公、そんなウメの生涯と山に生きる男達の生に纏わる物語です。

    家族とはぐれ、喜兵衛に拾われ手子として育てられるウメ、そんな彼女が男達と共に銀掘に憧れるのは必然だったのかも知れません。

    喜兵衛から銀山で生きる術を学び、自らも間歩で男達と共に銀を掘る。

    しかし、成長と共に体はウメが望まなくとも女となり、間歩に入ることも許されなくなります。

    何故?葛藤するウメ、そして喜兵衛との別離。

    隼人と所帯を持ち、子を産み、育て、ようやく女としての幸せを掴んだかのように見えるウメ。

    しかし、石見の山はそんなウメに安寧を与えてはくれません。

    間歩で働く男達はみな若くして咳をし、血を吐き、命の灯火を消していきます。

    女達は間歩で働く男を育てる為に、子を産む。

    隼人も病に倒れ命を落とす。

    ウメに寄り添うのはその昔、喜兵衛が一枚の銀板で買いとった龍。

    そこで生きる人々の息づかい、土の匂い、川の水の冷たさ...全てを感じる事が出来ました。

    銀山で生きるウメの生涯を描いた傑作長篇。



    第168回直木賞受賞作!
    男たちは命を賭して穴を穿つ。
    山に、私の躰の中に――

    戦国末期、シルバーラッシュに沸く石見銀山。
    天才山師・喜兵衛に拾われた少女ウメは、銀山の知識と未知の鉱脈のありかを授けられ、女だてらに坑道で働き出す。
    しかし徳川の支配強化により喜兵衛は生気を失い、ウメは欲望と死の影渦巻く世界にひとり投げ出されて……。
    生きることの官能を描き切った新境地にして渾身の大河長篇!

    • かなさん
      ヒボさん、こんばんは!
      読了お疲れ様でした。
      ヒボさんも高評価なので、嬉しいなぁ~♪
      ウメの生き様も、ウメとともに過ごす男性達も
      す...
      ヒボさん、こんばんは!
      読了お疲れ様でした。
      ヒボさんも高評価なので、嬉しいなぁ~♪
      ウメの生き様も、ウメとともに過ごす男性達も
      すべての登場人物が生き生きと描かれ
      それでいて、読後は静かな余韻に浸れる作品ですよね(*´∀`*)
      2023/06/18
    • ヒボさん
      かなさん、こんばんは♪
      個人的に直木賞受賞作は没入感を得られる作品が多いので好きなのですが、本作もすごく良かったです。
      時代物ってまだまだ苦...
      かなさん、こんばんは♪
      個人的に直木賞受賞作は没入感を得られる作品が多いので好きなのですが、本作もすごく良かったです。
      時代物ってまだまだ苦手意識もあるのですが^^;
      銀掘という閉鎖された世界の中でそれぞれが生きた物語。
      「生」と「性」、「男」と「女」、「成長」と「苦悩」、それぞれがウメの生涯を通じて見事に重なり合い描かれていましたね。
      2023/06/18
  • 乙一祭り中でしたが、『GOTH』がなかなか借りられず、今年始め頃に予約した『しろがねの葉』の本の方が…やっと届き、読みました。
    凄く良かった!!ずっと読みたかった本でした。
    冒頭からひきこまれて一気読み、流石の直木賞受賞作

    時は戦国末期。島根県石見銀山が舞台。主人公ウメと、その周辺に、生きる人々の生き様が、描かれた時代小説。
    銀山での暮らしは男なら鉱山で働くしかない。たとえ、肺を病む鉱山病になり30代くらいまでしか生きられないことになったとしても、そうして妻子を養って生きていく…。女の生き方は二通り。『銀山のおなごは三たび、夫を持つ』と作中で言葉が出てくるように、夫に先立たれても女の方は長生きするから子供や生活のために、他の男に何度も嫁ぐしかない…。
    あるいは若いうちから貧しさ故に売られて女郎になってしまった女たちも、長く続けられる仕事ではないしその仕事故の病になったり精神を病んだりしがちだ。
    ここで生きるしかない、これしか生きる術がないというような、生き方。そして働き方を選べない土地であったりするような時代の物語だった。それぞれに皆、腹を括り、人生を全うしていく姿に引き込まれて読んだ。
    『此処にいた証』を求めたり『人が生きる理を知りたい』と、懸命に生きる姿に私は切なくなったり、胸が苦しくなったりもした。
    ウメがもともと家族と、幼い頃住んでいた農村では、男は兵役もあり命を落とすこともある。その隣の石見銀山に一人移って来た、そこでは銀山の貴重な仕事のために男たちは、兵役も免れられるようだが、その仕事で病気になり寿命は短い。どちらにしても命がけで生きる。
    また、女も好きなように生き方を選べない、そんな時代の波に翻弄される宿命があった。

    シルバーラッシュに沸いた時代の石見銀山。
    私は行ったこともないのだが、今では世界遺産にもなっている有名なその場所で当時は、この小説のように……壮絶だったり、命を削って働き生き抜いて来たウメ達のような多くの人達がいたのかもしれないなぁと、読み終わって考えさせられた小説だった。

    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      しじみさん、こんにちは~♪
      好山病➰(笑)

      そう、そう。山蛭が、ウメの足などに吸い付いてるのを塩を振りかけて取る描写もありましたよ〰️「蛭...
      しじみさん、こんにちは~♪
      好山病➰(笑)

      そう、そう。山蛭が、ウメの足などに吸い付いてるのを塩を振りかけて取る描写もありましたよ〰️「蛭に噛まれた傷口は絞って洗え。血止めもするんじゃ」ウメは蓮の葉をちぎって揉み込んでたというのも…(笑)
      ヒルに噛まれたときの対処法を知りましたよ。塩とか良いんですね!!しじみさんも山行くとき塩とか持って行ってますか?怖いナ…

      曼珠沙華…
      躑躅の蜜を吸う…
      要害虫という毛虫…
      狗尾草…など山の中の描写ありました-☆彡
      2023/05/09
    • つくねさん
      予約入れたら12人待ちでしたww

      ヒルに噛まれたことないですよ。未遂はありますが気持ち悪い奴です。
      気温20℃位が最も活性化すのです...
      予約入れたら12人待ちでしたww

      ヒルに噛まれたことないですよ。未遂はありますが気持ち悪い奴です。
      気温20℃位が最も活性化すのですが沢沿い歩くときは結構いますよ。昼下がりのジョニーってスプレー付けたら寄ってきませんので大丈夫ですww
      ウメさんは塩もみしちゃったんですかww
      花の季節とかなると虻とか蜂とかもいるのですがたまに刺されますorz
      2023/05/09
    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      ヒルについてですが。
      大人(喜兵衛)に塩を振りかけてもらって、吸い付いてるヒルをちゃんと落としてました。もし、ヒルを手で払って落とすと…ちぎ...
      ヒルについてですが。
      大人(喜兵衛)に塩を振りかけてもらって、吸い付いてるヒルをちゃんと落としてました。もし、ヒルを手で払って落とすと…ちぎれたヒルの頭が傷口に残っていたりすると毒が取れないみたいですよね〰️。だから塩をかけてヒルが自分からポロっと、口を離して取る方法が、良いみたいですね…
      作中では、そのあとはウメは自分で蓮の葉をちょっと揉んで傷に当てて…また、頑張って歩いて行ってました。止血のために、そうしたんだと思いますね。ウメは幼くても薬草などに、詳しいのです。たぶん、蓮の葉って止血の作用があるみたいですよね…私は知らなかったけれど検索してみましたよ。そしてしっかり傷口から毒を絞り出して、ちゃんと毒を洗い流して手当てしないとダメみたいですね。

      少し歩いたあとで、手当てが不十分なのに気がついた喜兵衛がウメの傷をよく洗い流して、持参していた軟膏を塗ったりしました。ウメは、元気な女の子で、喜兵衛たち大人と一緒に山の中を頑張ってついていくそんな場面がありましたよ~予約した本が来たら読んでみて下さいね~♪

      そんな風に昔は塩だけど…。
      今は『昼下がりのジョニー』(笑)っていう便利で、面白いネーミングの虫除けスプレーがあって、良かったです♡

      レビュー楽しみに待ってますね~
      2023/05/09
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著者プロフィール

1979年北海道生まれ。2008年『魚神』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。09年に同作で泉鏡花文学賞を、13年『あとかた』で島清恋愛文学賞、21年『透明な夜の香り』で渡辺淳一賞を受賞。他の著書に『からまる』『眠りの庭』『男ともだち』『クローゼット』『正しい女たち』『犬も食わない』(尾崎世界観と共著)『鳥籠の小娘』(絵・宇野亞喜良)、エッセイに『わるい食べもの』などがある。

「2021年 『ひきなみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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