罪の終わり

著者 :
  • 新潮社
3.48
  • (11)
  • (27)
  • (29)
  • (8)
  • (2)
本棚登録 : 256
感想 : 32
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103346524

作品紹介・あらすじ

読書の興奮を希求する紳士淑女の皆様へ。心配ご無用。東山彰良は裏切らない! 小惑星衝突後の世界。恐怖や暴力が蔓延し、他人を信じることも難しい。罪だけ増え続けていた。そこに彼は降り立つ。価値観を破壊し、悩める者を救済する。数々の奇跡、圧倒的な力。誰もが知りたがった。後世、神とよばれた男の人生は、どんなものだったのか――。『流』から一年。進化し続ける著者が放つ、世界レベルの最新長編。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 『ブラックライダー』に引き続き再読。途轍もない傑作。2173年の救世主伝説。自分が六・一六後の世界に生きており、ナサニエル・ヘイレンという実在の人物に関するノンフィクションの翻訳を読み、福音に自分の罪を許されているような気になった。なぜ日本人(台湾生まれの)にこのような物語が書けるのだろう。それ自体も奇跡であるように思える。僕はこれからもこの二書を読み返すのだろう。

  • 2022/4/30
    ナサニエル・ヘイレン。

  • アメリカが舞台のSF小説、の中でもディストピア小説に分類されるもの。ジャンルも作者も初挑戦ではあったが、予想していたより鬱々とすることもなく楽しめた。堅苦しいとまではいかないが、慣れれば咀嚼が心地よく思えてくる程度の硬さの文体。唯一無二と思わせるほどぴったりな比喩表現が印象的で、諸所に光る。

    「神」が如何にして産まれるか、全編を通してその過程に重きを置かれているので、頽廃し、食人が横行するようになった絶望的な世界が舞台でも、その雰囲気に呑まれることなく、むしろ興味深く読み進めることができた。"辛い"という意味ではむしろナサニエルの少年時代の方が刺さる。自分自身を否定する"空っぽ"のナサニエルが、いかに「神」の依代として有用であり、時代が、人々が、いかに食人の神を必要としていたか。キリストの例を擬えての考察も面白い。結果的に、暗い霧の中に差し込む幽かな光よりも僅かな希望を抱き、"空っぽ"ではなくなりつつあったナサニエルがその矢先に死んだのは、彼にとっても、「神」を必要とした周りの人々にとっても、良いことだったのだろう。人々が勝手だとは思わない。食事や排泄と同じく、生きていく上で必要なことだと思うので。

    惜しむらくは、原罪という観念がいまいち身に沁みて理解できないので、食人やその他の罪に対する宗教的な罪悪感が切迫してこないこと。それにしても、皆川博子さんのときも思ったけど、生まれ育ってない国の世界観をこれだけ作り込めるのは本当にすごいと思う。日本が核兵器を隠し持っていてアメリカが激怒したとか、アフリカに逃げたアメリカ人をイスラム原理主義者が殺したとか、世界観を作り込む設定が、いかにも現実に起こり得そうなのも面白かった。

    気が遠くなるような長いスパンで、人間社会が頽廃したり発展したりを繰り返す、そのことこそが人間の営みである、という主張も多少あるように私には感じられた。ディストピア小説って、絶望的な状況下で人々がただ痛めつけられるだけのものだと思っていたので、考えを改めます。それにしても、カールハインツがユダの役割を担ったのはすごく切なかったなあ、、、

  • 文学

  • 『ブラックライダー』と
    この『罪の終わり』の2冊しか
    読んでいないけれど
    東山彰良氏が描かれる作品は
    どうも私の心に引っかかり
    この方の書かれる物語は
    好きなんだと認識。

    『ブラックライダー』の前日談としての
    『罪の終わり』も宗教的な部分があるけれど
    これは、舞台をアメリカにしているからで
    日本に置き換えても語られるべきことは
    同じ罪の重さであり、人間の卑しさ悲哀弱さ。

    デストピア小説・ポストアポカリプスでもある
    同じような背景の名作『ザ・ロード』に
    匹敵すると思う。久々に泣ける作品を読んだ。

  • ☆4つなのは、自分に知識や読解力が不足しているから。作者のせいではありません。
     台風の被害が予想される中読んだので、もう世の中は滅びつつある気がしてならない。

  • 前の本のレビューには、邪宗門とかいてあった。

  • 伝えたい神とは、なんとなくわかるが、
    東山の持つ 独特の文体が失われてしまっていると感じた。

    いわゆる人間味があって、オシャレで笑える発言について、
    登場人物達ができていなかったように思った。

  • ブラックライダー同様、こちらも評価が別れそうな作品。私としてはこちらの方が受け入れやすく読みやすかった。ウディや犬(カール)の設定がありきたりところと、ネイサン(語り手)の口調は気に入らないけれど、景色感はわりとすき。

  • 「ブラックライダー」の前日譚。前作のインパクトには及ばないし、語り手の説明口調も気になった。ただ、「食人」に及んだ人々の絶望、恐怖が「黒騎士」という聖人を作り上げていく過程や、ナサニエル・ヘイレンの底無しの悲しみには胸を打たれる。兄と母を自らの手で殺し、彼らに置き去りにされた感覚でただ生きているだけのヘイレンが、最後に追ってきてくれた犬のカールに救われるラストは忘れられない。

全32件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1968年台湾台北市生まれ。9歳の時に家族で福岡県に移住。 2003年第1回「このミステリーがすごい!」大賞銀賞・読者賞受賞の長編を改題した『逃亡作法TURD ON THE RUN』で、作家としてデビュー。 09年『路傍』で第11回大藪春彦賞を、15年『流』で第153回直木賞を、16年『罪の終わり』で中央公論文芸賞を受賞。 17年から18年にかけて『僕が殺した人と僕を殺した人』で第34回織田作之助賞、第69回読売文学賞、第3回渡辺淳一文学賞を受賞する。『Turn! Turn! Turn!』『夜汐』『越境』『小さな場所』『どの口が愛を語るんだ』『怪物』など著書多数。訳書に、『ブラック・デトロイト』(ドナルド・ゴインズ著)がある。

「2023年 『わたしはわたしで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

東山彰良の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×