書庫を建てる: 1万冊の本を収める狭小住宅プロジェクト

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103352914

作品紹介・あらすじ

あふれる本をどうにかしたい、実家の思い出を残したい――。“イエ”の歴史そのものである祖父の半生を遡りながら新たな“家”を建てる――気鋭の住宅作家に思いを託し、たった8坪で始まった家づくり。土地探しから竣工まで、その過程を施主と建築家、それぞれの立場から描いたドキュメント。施工の詳細や図面など図版多数。小説家・松家仁之による書庫訪問記も収録。

感想・レビュー・書評

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  • 有名な学者さんも、我々同様、親子関係で強いルサンチマンを持っていることが意外だった。それ故に祖父への思い入れが強いように感じた。その祖父の鎮魂のために仏壇付き書庫を建てるとは、まるで綾辻行人の小説のようだ。しかし、その情念が一流建築家と化学反応を起こし、あの螺旋状の書庫が建ったとすれば、それはいいルサンチマンと言える。

  • 本屋で目にしたら、思わず手に取り、そして買いたくなるような本である。松原隆一郎さんのことは毎日新聞?の論壇でよく見ていたので、名前は知っていたが、その松原さんが書庫を建てたというのはあとで紹介する西牟田靖さんの『本で床は抜けるのか』で知った。その松原さんの書庫の本を見たのは、神保町の東京堂書店の新刊書コーナーだった。巻頭の、大英図書館の書棚を思い出させる円形の書棚に魅せられたが、荷物になるのでその場では買わず、豊橋にもどったあと精文館に寄って購入した。しかし、精文館では建築コーナーにあるだけで、さがすのに苦労した。こんな本はやはり2階の新刊書コーナーに置くべきではないだろうか。(これは本屋への注文)それはともかく、ぼくは定年まで5年を切り、日夜本屋の処分を考えている身であり、定年後自宅かその周辺に書庫を持ちたいという気持ちはさらさらない。なのに、本書を買う気になったのは、本書冒頭で松原さんのライフヒストリーが語られていたからだ。要するに書庫は、松原さん限定の1万冊の蔵書をいれるだけでなく、祖父からの仏壇をも入れるものにしようと建てたということを知ったからである。松原さんがなぜそのように考えたかは、本書を読んでもらうしかないが、本書後半では、松原さんというより、その奥さんが見いだした建築家堀部安嗣さんと松原さん夫婦とのキャッチボールを通じて、書庫の輪郭が形づくられ、そして実際には(これは家を建てたものなら経験しているが)、図面ではわからない幾多の困難があり、それを施工した工務店、巧の存在があって解決できたということを松原・堀部両人のかけあいによって展開している。内容もそうだが、このようなスタイルも本書を魅力的なものにしている。

  • "BSフジ「原宿ブックカフェ」のコーナー“今週の新刊”で登場。
    http://www.bsfuji.tv/hjbookcafe/highlight/35html

    「この書庫がなぜ、家を継ぐ家として建てられることになったのか、といったところから始まっていくんですけれども、単に一つの建築物が出来上がるまでのルポルタージュを綴ったという意味をはるかに超えて、まるで壮大な人と歴史と、そして本というもの。まるで一冊の物語として読める、、そんな内容になっています。」(B&B 木村綾子さん)



    原宿ブックカフェ公式サイト
    http://www.bsfuji.tv/hjbookcafe/index.html
    http://nestle.jp/entertain/bookcafe/

  • 崩壊した親族関係と、残った「家」と「イエ」。
    タイトルは「書庫を建てる」ではあるが、家族関係に呪いを抱えたまま仏壇と書庫を収める鎮魂の家を建てよう、というお話。
    冒頭は結構暗い動機が続く。四度目の堀部さんとの仕事の決断には奥さんのヒトコト、フタコトが効いている。やっぱりそういうものか。
    ちょっと変わったケースではあるけれど、建築をめぐる様々なファクターが織り込まれていて、また施主と建築家それぞれの視点からの告白でもあり、一粒で何度か美味しい。

  • 家族の歴史を相続する。
    http://bukupe.com/summary/12149

  • 記憶の「よりしろ」 評・青木淳(建築家) : 書評 : 本よみうり堂 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
    http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20140407-OYT8T50299.html

    新潮社のPR
    http://www.shinchosha.co.jp/book/335291/
    阿佐ヶ谷書庫プロジェクト 松原隆一郎+堀部安嗣│とんぼの本
    http://www.shinchosha.co.jp/tonbo/blog/matsubara/

  • 家族の想いと書物を収めた書庫を、著名な建築家が様々な創意工夫で作りあげていくドキュメント。自分のこだわりの本棚を作る、書斎を作るのも十分大変だが、丸ごと書庫となる家を作るのはなかなか出来ることではない。実際にどういった人がどんな目的で建てるのか。とても興味深い。

  • 書庫を作る魅力に惹かれ読み出したが、全く違う点が気になってしまった。
    まず、設計士の話は興味深く面白い。

    しかし施主の話からは、家父長制に縛られた人生の苦しみが1番に感じられる。また、自身に染み付いた長男の呪いを理解しない「家内」に向けられる癇癪のような感情の発露が、読んでいて苦しい。

    大学教授をされているというわかりやすい語り口と冷静さが、仏壇の件になると失われるようだ。祖父の言葉がそこまでさせるのか。

  • 急ごしらえでとりあえず作ったものというのは時間が経つと納得のいかない部分が必ず出てくるものです。それは性能を満たしただけの建物に近いからでしょう。法律や松原さんの要望から即物的に生まれたプランには生命感と根本的な魅力が欠けているのです。設計者が自分で心の底からいいと思うもの、生悪化しているものを何度も心のフィルターを通して検証して形に落ちつかせて行かなければ生命感のある、血の通っている空間生まれないのです。この極めて個人的な孤独の葛藤の後にしか、建築に生命観を開かれません。

    施主の要望をしっかり聞き、咀嚼した後に、その要望を一旦忘れるのです。言い換えれば施主の要望を言葉として捉えることをやめて、もっと抽象的で身体的な感覚としてとらえるトレーニングを開始するのです。言葉で言い表せない、言葉では誤解を生んでしまう本質的で大事なことがその言葉の奥に住んでいます。

    信頼して任せているのだから、堀部さんがいいと思うことを受け入れるしかありません。

  • 書庫を設計した建築家と依頼者が交互にそのプランについて執筆をしている。建築家がどんな風に考えてこういう設計をしたのか、が良くわかり、本を開くのが楽しみでした。素敵な書庫の写真にうっとりしました。

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著者プロフィール

松原隆一郎(まつばら・りゅういちろう)
昭和31(1956)年神戸市出身、放送大学教授、東京大学名誉教授。灘高校・東京大学工学部都市工学科卒、同大学院経済学研究科単位取得退学。専攻は社会経済学・経済思想。著書は『頼介伝』(苦楽堂)、『経済政策』(放送大学教育振興会)、『ケインズとハイエク』(講談社現代新書)、『経済思想入門』(ちくま学芸文庫)、堀部安嗣との共著『書庫を建てる』(新潮社)他、多数。

「2020年 『荘直温伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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